面倒が舞い込んで来たっぽい
初投稿から1か月経ちました。
ブックマークしてお待ち頂いている方々、有難う御座いますm(__)m
今後も頑張って更新していきますので、稚拙な文章で恐縮ですが、我慢して読んで頂ければ幸いですm(__)m
「ほえー、おっきい家だねー」魔族の女性ことケーラが伯爵邸を見て驚いている。
「ケーラ、だっけ? とりあえず君はここで待ってて」そして門番二人に事情を説明する健人。
「分かった。待ってるね」ニコっと笑顔で答えるケーラ。門番二人はその超絶美少女スマイルにドギマギしている様子。
「ほんと雰囲気似てるな。顔や姿形は全然違うのに」ケーラの天真爛漫な様子に小さく笑う健人。そして門番に門を開けてもらい、一人中に入る。ケーラは門の外で待っている。あ、門番と談笑してる。コミュ力凄いな。
その様子を見てから踵を返し、やや早歩きで邸宅まで急ぐ健人。馬でくれば良かった、と若干後悔しながら。そもそもこんなに遅くなる予定ではなかったのだが。
今日から伯爵邸で修行開始と聞いている健人。当分ここでお世話になるので、今日は一旦家に帰って、泊まるための荷物などを取りに帰っていたのだ。ヴァロックは後数ヶ月でいなくなるらしいので、いなくなるまでの間に、出来るだけ色々教わらないといけない。
そしてここに向かう最中にケーラに出会ったのだ。引き止められて放置も出来ないので、一旦伯爵邸まで一緒に来て貰ったのだった。
そして、修行が終わってからは、健人の今後の方針も決まっている。冒険者として生計を立てていくのは勿論だが、やらなければいけない事がある。ただ、リリアムが付いてくるのは誤算だったが。
広い邸宅内を急いで歩き、ようやく邸宅の入り口に到着し、若干息を切らせながら、待機していた執事に声を掛ける。暫く待つよう言われると、すぐさまリリアムが出てきた。
「タケトさん。結構遅かったですわね。何かトラブルでも?」ちょっと心配そうにリリアムが質問する。
「トラブル、そうだなあ。トラブルあったね」苦笑いしながら答える健人。
その曖昧な返事に首を傾げるリリアム。
※※※
「いやあー、こんな大きなお家にボクも入れるとは思わなかったよ。そしてすっごく綺麗だねー」ニッコニコご機嫌な様子で話すケーラ。一方そんなケーラに対し、不機嫌そうなリリアム。腕を組んでブツブツ言ってます。確かにトラブルですわね、と呟いたのはどうやら周りには聞こえなかったようだが。因みに家に招き入れたのはアイラである。
「タケトさん。この方はどうしてこの家に来ているのかしら?」こめかみに青筋をピクピクさせながら健人に質問する。
「放って置くわけにもいかないからさ。一旦家に戻っていいなら、連れて帰るけど」健人が説明がてら家に連れて帰ると言う。
「連れて帰る? タケトさんの家に? 私も行った事ないのに?」リリアムがそれは許さないと言わんばかりに大きな声を上げる。最後の言葉の意味は何なんでしょうね?
「え? リリアムも俺の家に来たいの? じゃあ来る?」良く分からないが家に来たいのなら勝手にすればいいと思ってる健人。王女だから一般領民の家に興味があるのか?
「え? あ、いいのかしら?」まさか自分も行っていいなんて言われるとは思わず、健人のまさかの提案にポッと頬が赤くなり困った様子でクネクネするリリアム。一方リリアムと健人のやり取りなど気にせず、豪華な造りの邸内を、目をキラキラさせながら興味津々でキョロキョロして見ているケーラ。
「……もういいか?」傍でどうでもいいやり取りを見ていたヴァロックが、若干イラっとしながら、いい加減にしろと言わんばかりに会話に割って入る。
「で? 魔族の嬢ちゃん。結局何しに来たんだ?」ヴァロックがケーラに質問する。
「い、いやあ。人族の都市に来てみたはいいけど、泊まるとこがなくて」テヘヘと苦笑いしながら頭を掻くケーラ。
「手持ちのお金もあんまりなくって。人族の宿泊所って高いんだね」困った困ったと、額をペチっと叩いて参ったってジェスチャーをするケーラ。
「ここに来る途中でケーラに会って、放って置くわけにもいかなくて、それで仕方なくここに付いてきて貰ったんです。宿泊費くらいなら貸してあげようと思ったんですけど、一旦家に戻ると、ここに来る時間が遅くなると思って」健人がケーラを連れてきた理由を話す。
「事情は分かりました。優しいタケトさんに甘えて着いてきたって事ですね?」トゲのある言い方でケーラに確認する。
「そうだね。この黒髪さんいい人だよね」なんでリリアムが怒っているのか分からないが、優しいというのは同意するケーラ。
「じゃあ、丁度いいから魔族の嬢ちゃんも一緒に修行するか? どうせ暇だろ?」ヴァロックがいい事思いついた、とばかりに提案する。
「おおー、ボクもいいの?」なんだか楽しそう、そういう感じで嬉しそうなケーラ。無邪気な子だ。
「ところで闇属性は持ってるか?」おもむろにヴァロックが確認する。
「うん。使えるよ。攻撃系もね」そう言って上腕二頭筋をフンスと折り曲げ力こぶを作ってみせる。が、綺麗な麗しい腕にちょこんと申し訳程度に盛り上がった程度だったが。気持ちは伝わった、と思われる。
「じゃあ対闇属性対策出来るじゃねーか。こいつぁラッキーだな」フフンと笑うヴァロック。
「闇属性対策?」どうしてそんな事するの? とでも言いたげなケーラ。
※※※
「魔薬……」その言葉を口にして厳しい顔をするケーラ。闘技場に向かう最中、ケーラは闇属性対策をする理由を聞いていた。そして健人は、自分の大事な人が、魔薬を魔族に使われ、死にそうになった事をこのタイミングで話していた。会ったばかりだが誰かさんに似た雰囲気もあって、若干心を許している健人。一緒に修行する事だし、そのくらいなら問題ないと思ったのだ。
「知ってるのか?」考え込んでいるケーラに健人が質問する。
「知ってるよ。でも、あれ禁忌なんだ。隷属と同じく。確か五年前の勇者との戦いの時に、研究だけはされてたはず。でも、人族と和平締結してからは、研究自体禁止になったんだよ」
「するってぇと、その禁止になったはずの魔薬を、魔族の誰かが開発をやめず、造り出した、て事か」ヴァロックが推測するが、間違いなさそうだ。
「もしそうなら大問題だよ。もし魔族側にそれが見つかったら、処刑ものだよ」ケーラが真剣な顔で返す。
「魔薬の効果は、動物や人間の魔物化、人間の洗脳、魔物の増加のはず。ただ、人族に使うと、魔物化に失敗したら即死だったと思う。だから、人族だけじゃなくて魔族も他の種族も大混乱になっちゃうでしょ? 動物の魔物化と魔物増加の効果で魔物が溢れて、更に洗脳で意のままに操られる人が増える。魔族にとっても有害だから造らないように製造方法は隠してあるはずなのに」厳しい顔でケーラが魔薬について説明する。
「そんなヤバい物だったのか」ヴァロックが神妙な顔をして呟く。
「そうだよ。存在自体知らない魔族もいるかも」ケーラはずっと複雑な表情のままだ。
「……どうしよう。報告しないと」周りに聞こえないくらいの小さく呟くケーラだった。