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死後の世界じゃなかったのは分かった

毎日とりあえず1話ずつUPしていきます。

読んで頂いている方感謝ですm(_ _)m

誤字脱字変な箇所あったら、ご教示頂けたら幸いですm(_ _)m

「とりあえず移動しようか」


 健人が真白にそう話す。「了解にゃ」そう答えてすぐ、「でもどっちに行けばいいにゃ?」と、質問する真白。


「この道舗装されてるから、多分人が作った道だと思う。だからこれに沿って歩いていけば、人が住んでるところに行き着くと思うよ」と、真白の問いに答えた。


 真白がなるほど~と頷きながら、とりあえず二人並んで歩き出した。既に両側にあった森からは抜けていたので、道の両側には草原が広がっている。季節は春なのだろうか? 草木の爽やかな香りや花の香りを感じる。乾いた風も心地良い。青空が広がり、時折流れる雲が、爽やかな気持ちにさせてくれる。雨じゃなくてよかった。放牧とか出来そうな草原だなあ。ふと何の気なしにそんな事を考えてしまう健人。


 とりあえず自分は生きていて、別の世界に飛ばされた、転移されたってのは分かった健人。元の世界では死んだみたいだが。とりあえず健人は、こちらに飛ばされた当初と比べ、真白のおかげで情報が入った事で、ようやく落ちつく事が出来たようだ。そして疲れたりした理由等も、色々合点がいったようである。


 因みにスマホとか定期、財布は健人のポケットに入ったままだ。ふと思いついて、健人はスマホの電源を入れてみた。やっぱり圏外。財布に金は札で二万五千円と、小銭が八百円くらい入っている。ブルートゥースのイヤホンは、ポケットをあちこち探したが見つからなかった。


 スマホに入っている曲をかけてみる健人。スマホの機能が使えるのは確認できたが、電波が届かないからネットは見れないし、圏外なので当然電話も出来ない。そして、充電は出来ないかも知れないから、もし出来なかったら結局いつかは使えなくなる。そう思うと、もしかしたら何か使う事があるかも知れないと思い、そこで電源を切った。


 しかし魔法が使えて、真白みたいな獣人とやらがいる世界か。あの有名な魔法の世界を映画化したのを想像する健人。昔付き合っていた彼女に無理やり連れて行かされて、そういうジャンルの映画を観たのを思い出す。しかし正直健人にとっては、余り興味のないジャンルなので、内容はうろ覚えだ。


 確か電気やガスがなかったよな? でも機関車はあったな。手押しポンプとかで水を汲み出してたか? じゃあ同じレベルの文明なら、電気やガスは期待しないほうがいいかも? うろ覚えの記憶を探るように、何とかあれこれ思い出してみる健人。


 スマホを確認したり、昔の事を思い出したり、一人ぶつぶつ言いながら、真白と歩きながらあれこれ思案する健人。一方真白は、人間になって間もない事もあり、スキップしたりダッシュアンドストップしたり、両足ジャンプとかしたり、「あー、あー」とか声出してみたりして人間をになった自分の動きを確認しているようだ。さっき化け物達と戦って、そして健人と喋ってたというのに、今更あれこれ珍しそうに試している真白。


 そんな真白の様子を見ていたら、「そういや私、ここ来る前エサ取りそびれたんにゃ。お腹へったにゃー」と真白が健人に話しかけた。そこで忘れていた空腹を思い出してしまう健人。ああ、そうだった。俺も腹減ってんだ。チキンのタルタル弁当買いそびれたんだった。


 「そうだなあ。俺も腹減った。腹ごしらえしたいなあ。じゃあとにかく先を急ごうか」


「ラジャ! にゃ!」と元気に返事する真白。しかしいくら理性と知性貰ったとはいえ、真白の語彙力凄いな、と健人は感心する。ラジャとか知ってるんだ。


 それにしても真白の身体能力は凄い。と改めて感心する健人。化け物達と戦っている様子を、ほんの少しだけ遠目で見ていたが、全て一発で倒していたのは分かった。俺を手助けする為に、真白はこの世界に来たと言っていたが、真白が化け物相手にやりあっていた事を考えると、この世界にはああいう化け物が普通に存在していて、戦う必要があるのかも知れない、とも思った健人。


 俺喧嘩苦手なんだよな。ふとため息が出てしまう。基本コミュ力で色んなトラブルを回避してきた健人だけに、この世界での戦いについて考えると、少し気が滅入った。


「どうかしたかにゃ?」一人あれこれ考え込んだり、ブツブツ言っている健人を訝しんで、真白が健人の顔を下から覗き込む。10cmくらいの距離まで顔を近づける。近い近い! ああもう! 近くで見たら尚更可愛いなあもう! と、焦る健人。


「いや何でもない。近いから離れてくれ」そして慌てて真白の肩を押して離れる健人。


「むー。なんか怒ってるにゃ?」少しふくれる真白。


 健人が慌てて、そういう事じゃないんだ、と弁解しようとしたら、真白が「あ」と声を上げた。「あっちの方に家みたいなのが見えるにゃ!」


「あっち?」真白が指差す方向を健人が見るも、何も見えない。「……どこ? 見えないけど」。真白は普通の人間より目が良い。「多分ここから一時間くらい歩いたところかにゃ?」健人の問いに真白がそう答えた。


 一時間は結構遠いと思った健人だが、目的があるなら踏ん張れる、と奮起した。正直腹が減っているだけじゃなく喉も乾いている。そして疲れもある。でも何とか頑張って向かおう、そう決めた健人。この世界で生きていくなら、まずは生活している人のところに行かないと何も分からない。とにかく情報が必要だ。


 そして歩きながら、人となった真白に、これまでの猫生? を聞いてみた健人。野良で産まれ、兄弟姉妹は事故で死んだり、人間に無意味に殺されたりした事。その後独りになってからは、生き残る為に他の野良猫と戦い、とある一角の縄張りを持てるようになった事など、真白はあれこれ健人に話した。


「都会の猫だったけど、野生の猫より頑張ってたつもりにゃ。野生の猫には負けてないにゃ」真白は自慢気だ。フン、と鼻にかけ話している真白を見ながら、猫の生き様をリアルに聞く事なんてなかった健人は、中々興味深いなあ、と感心していた。そして何故真白が、人間を恐れ、嫌いになったか。真白の妹が人間に無残に殺された事を聞いて、健人は理解したのである。


「すまなかった」真白の妹の事を聞いた健人はふと真白に謝った。「え! なんで健人様が謝るにゃ? 関係ないにゃ?」健人の謝罪に真白がびっくりしている。


「いや、そんなクズな人間さえいなければさ、真白は人間嫌いにはならなかった、怖がる必要はなかったはずだろ? 同じ人間として、関係ないとしても、申し訳ないと思ったんだ」


「そんなもんなのかにゃ……。でも、健人様は良い人だという事は分かったにゃ」ニコニコしながら真白はそう言った。


 うん。真白もきっと良い子だよ。健人も同じく笑顔を返しながら、心の中でそう呟いた。


「しかし人間とこうやって会話する日がくるとはにゃー。猫生は分からないもんにゃ」


「……おばあちゃんみたいな感想だな」


「むー。 私はこれでも十八歳の設定なのにゃ! 年寄り扱いは失礼なのにゃ!」


 真白は十八歳らしい。そして年齢は設定のようである。


「ごめんごめん。まあ軽い冗談だよ。俺は二十四歳ね」


「冗談にゃのね。これが冗談を言い合うっていう人間独自のコミュニケーションなんだにゃー」ふと感心する真白。「猫の時はこういうやり取りなかったからにゃー」


 そして健人も自分の地球での人生を、真白にあれこれ語った。日本以外の海外に何度か旅行に行った事、自分は色んな仕事を三十個くらいやってた事など。そうやって二人話ししながら歩いていると、時間はあっという間に過ぎ、そろそろ一時間は経とうとしていたところで、健人にも家のようなものが見えてきた。


「おお、確かに家だ」家を発見。それはこの世界に来て初めて、健人が感動した出来事だった。




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