片桐綾花※蠢く思惑
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今日は話の展開的に、2話更新します。
ここはとある酒場。見た目麗しい、男なら皆振り返って眺めてしまうような、額に二つの小さなこぶのような角がついたオレンジの髪の美女と、素敵な微笑みを携えた、こちらも世の女性が放っておかないだろうと思われる白服の白銀のイケメンが、二人談笑しながら酒を酌み交わしている。
「パーティとして冒険に出る事はあっても、こうやって酒を飲む事はなかったからねえ」カランとグラスを傾けながら、その美しい女性を優しい眼差しで見つめ、語りかけるイケメンの男。
「そうだな。まあ、二人きりになるのは仲間だと中々難しいからな。酒を嗜むなら彼女を外さないといけない。それが中々難しかったというだけだ」フッと笑いながら、美女が答える。
「しかし、神官ってのは、酒飲んでいい職業だったのか?」人族の常識に疎い、魔族の美女が質問する。
「ああ。そうだったね。君はまだ人族の都市にやってきて間がなかったね。酒は皆普通に嗜んでいるよ。食後のワインなど、水みたいなもんさ」優しく微笑みながら、ニコっと笑いつつ応える白服の男。
この二人は、綾花のパーティーメンバー。魔族の美女はナリヤ。そして白服の男は神官のギルバート。この三人は現在、パーティ契約をして、仲間として共に行動している。光属性持ちのギルバート、闇属性持ちナリヤ、そして四つの属性持ちの綾花だ。魔法の種類としては、この三人で既にこの世界にある属性全て網羅出来ているので、綾花はあと前衛が欲しいと思っていたが、実際のところ今のメンバーでも結構うまくいっている。ナリヤが元々蹴りを中心とした拳闘士で、前衛型なのだ。
元々ナリヤが綾花に声をかけ、それからギルバートが、綾花をナンパしてきて、半ば強引に仲間になった。光属性は魅力的だという打算が綾花にあったのも理由だが。また、神官という職業なら、綾花は安心だと思ったのだ。尚、ナリヤが綾花に声をかけたのは、彼女自身、とある目的があったからなのだが。その内容を聞いて、綾花はナリヤと仲間になる事を決めたのだ。
今この三人がいる場所は王都メディー。アクーの五倍広い敷地と、同じ比率くらい多い人口のこの都は、人族最大の都市である。綾花はこの世界に降り立った後、いくつかの村を経由し、ここメディーに辿り着いていた。今は既に綾花がこの世界に来てから二か月以上が経過している。
現在はここのギルドを中心に冒険者として活躍している。そして、この黒髪で黒い瞳の美しい女性は、ギルドで噂になっている。
四つの属性持ちという、この世界では絶対にあり得ない能力者。更に鑑定スキルを持っている。約五年前に現れた勇者カオルとかぶるわけで、話題にならないわけはなかった。綾花は魔法を複数ミックスさせて使う事で、数々の魔物討伐を達成している。例えば風の魔法でトルネードを起こし、その中にファイアボールを混ぜる事で、ファイアトルネードなるオリジナル魔法を使う。トルネードとファイアボール自体は、低レベルでも使え、魔力もあまり必要のない、単体ではさほど威力は無い魔法なのだが、合わせる事で高火力に変貌する。そうやって4つ使える事を最大限に利用して、レベルが低い時から、沢山の魔物討伐を成功させていた。
更に鑑定スキルは、魔物の固有スキルを見つける事が出来る。毒や麻痺、炎を吐く等々。なので確実に弱点を突く事が可能なのだ。クアッド持ちで鑑定スキル持ちである事は、正に以前彼女が神に言った通り、チートスキルだった。
「ふぅ。何だか頭がクラクラするな」頬を赤らめながらフフっと微笑む美女。酔ったのだろうか。
「そう言えば、君もそんなにお酒は得意じゃないって言ってたね」クイっとグラスの底に入っていた酒を飲み干し、そう答えるイケメン。
……そろそろかな?
※※※
「おーい行くよー。何やってんのー?」その黒髪そして黒い瞳の、見た目麗しい女性は、仲間二人に声をかける。
「ああ、もうすぐ行くよ」白服の白銀の髪のイケメンの青年が答える。その後ろには額に二つの小さなこぶのような角がついたオレンジの髪の美しい女性。
「ん? ナリヤ、そんな腕輪昨日してたっけ?」綾花がナリヤの腕を見て、疑問に思って質問する。
「ああ、これは僕からのプレゼントなんだ」ニコっと爽やかイケメンスマイルで、そのギルバートが代わりに答える。
「ようするに、ね?」分かるよね? と言いたげな顔でそれ以上は聞かないでくれという感じで続ける男。
「ああ~、そういう仲になったのねー。いいねえ、こちとら若い盛りなのにそんな浮いた話一個もないよー」羨ましそうに話す綾花。
「ハハハ。アヤカに声をかける勇気ある男がいたら知りたいもんだ」爽やかに笑うイケメン。
「なーに言ってんの。ギルバートは私に声かけてきたじゃない。ま、そりゃ、そんだけイケメンなら自信あったんだろうけどね」綾花はギルバートにナンパされた事を言ってみる。
「まあ、確かにアヤカは可愛いからね。欲望に負けてしまったんだよ」ずっと爽やかスマイルのまま、ギルバートは弁解する。
「ていうか、ナリヤ元気ない? 大丈夫?」余り喋らないナリヤを気遣う綾花。
「あ、ああ。大丈夫だ。今日もダンジョンに行くんだったよな?」慌てて元気な振りをするナリヤ。
「そうだねー。今日も災厄のヒント探しだね。レベルアップも兼ねてるけどね」綾花はめんどくさそうに答える。
「ギルバートはレベル32。ナリヤはレベル44だね。私が今40だから、もっと頑張らないとね」鑑定スキルを持っている綾花は、皆のレベルを数値で知る事が可能だ。
「ギルバートはもうちょっと攻撃魔法覚えないとね。あと5000EXPでレベル上がるよ。ナリヤは14720EXPで次のレベルだね」言いなれた様子で二人に伝える綾花。
「そのいー・えっくす・ぴー だっけ? 経験を数値化しているんだよね? 相変わらず聞き慣れないね」苦笑しながギルバートが話す。
「ま、そうだろうね。私が元居た世界では、結構使っていたけどね」ゲームで、だけどね、と心の中で呟く。説明しても分からないからだ。
「しかしまさか、また勇者がこの世界にやって来るとはね。しかも災厄は何なのかが分からないって厄介だね」ギルバートは綾花から、異世界から来た事、その理由が災厄を解決するためである事を、既に聞いている。
確かに災厄を解決してくれとは言われたけど、自分が勇者とはどうも思えないんだよねー、と、心の中で呟く綾花だった。
もう1話更新します。