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久々の白いあの人

いつもお読み頂き有難う御座いますm(__)m

初投稿でまだまだ未熟者なので、レビューや感想などで叱咤頂ければ嬉しいですm(__)m

ブックマークしてお待ち頂いている方々、感謝ですm(__)m


 少し時間を遡る……


 二人は既に新居に引越し終え、家財道具も全て必要な分揃えた。二階建てのその家は、一階にダイニングとトイレと風呂、二階には三部屋あり、一部屋は倉庫のように使い、二人の服や武器や防具などが置いてある。そしてもう一つの部屋で二人は共に寝ている。恋人同士となった二人が別々の部屋で過ごす事はあり得ない。特に真白が許さない。そして真白が結構寝相悪いので、ベッドはキングサイズだ。そうしないと健人が蹴落とされるのだ。最後の部屋は空き部屋だが、一応来客があった時のために、ベッドと机を置いてある。そしてこの家には、ちょっとした庭がついているので、そこに馬小屋を設置している。


 ベルアートの宿を出てから今現在、既に五日は経過している。今や健人も真白を自分の恋人として完全に受け入れているので、一緒に出掛ける時、真白が必ず腕に絡みついてくるのは、もう拒否しない。寧ろ健人も嬉しそうだ。今は徒歩でとあるところに向かっている。そんな二人のラブラブイチャイチャぶりに、周りから「グギギ」という音? 声? が聞こえてきているのは聞こえていない事にして。


「おー結構立派だな」「大きいにゃー」二人はその大きな立派な建物に見入った。


 今二人が来ているのは神殿。今日は真白が持つ、まだ何も入れていない8角形クリスタルに、光魔法を入れて貰おうとやってきたのだ。これから冒険者とやっていくにあたり、とりあえず治癒魔法があった方がいいと判断したのだ。真白は既に魔力入りの8角形クリスタルを持っているし、健人は元々魔力はある。いざという時、怪我の治療や毒物などの治癒が使える魔法があれば、魔物討伐がかなり楽になると考えたのだった。


 アクーの神殿はビルの四階建てくらいの高さはあり、幅は20mくらいか。白を基調にした壁色で、入り口と思われる場所を挟んで二本の白い円柱の柱が、その建物の高さまで伸びている。ただ派手な装飾は一切なく、全て白い色で統一されている外観。中はベルアートの宿くらいの広さはありそうだ。


 この世界の神官という職業は、王の側室から枝分かれした血縁の者を基本に構成されている。他にその血縁者をサポートする者もいる。王の血縁の者の一部だけが、光属性持ちになれるので、当然側室の血縁の中にも光魔法が使える人間が存在する。だが、側室の血縁であるがため、王の一族に入るのは極めて難しい。そのため、その者達のために、治癒や治療ができる光属性を用いて、人々の役に立って貰おうと、神官という職業が作られたのだ。この世界には医者という職業がないので、その代わりとも言える。


 なので神と名の付く職業として、建前として、神に祈りを捧げたり、神の教えを学んだりもしている。道徳的価値観を養う場としても、人々の役に立っている。実際に神を信仰しているかどうかは別として。


 なので神官は、治癒・治療能力のある光魔法を、クリスタルに入れて人々に売ったり、または直接治癒魔法を使ったりして生計を立てている。ただ、光属性は元々特殊な魔法で、一部の王の血縁者しか使えないため、それを笠に着て横柄な態度をとったり、傲慢だったりする輩がいるのも、神官の特徴である。そしてその事は、この世界の人々周知の事実だった。勿論中には犠牲の精神を持ち、神官の務めを立派に果たそうと、人々のために尽力している神官も少なからずいるのだが。


 二人が入り口に向かう。白い円柱の柱の側には、白いローブのような服を着た、中年男性が一人座っていた。


「何用か?」その白服が近づいてきた二人を訝しげに見て質問する。


「あのー、クリスタルに光魔法を入れて欲しいんですが」健人がここに来た理由を説明する。


 健人が質問に答える前から、その白服は真白をジロジロ見ている。因みに今は健人にくっつかず、横に並んでいる真白。さすがに受付の人と話しているのに、イチャイチャしてはいけない事くらいは分かっている。


「……予約はしているのか?」真白をジロジロ見ながら、おもむろに健人に質問する白服。


「いえ、ここのシステム自体知らないので」答える健人。


「じゃあ無理だ。帰れ」不躾な態度で受付を拒否する白服。


「え? じゃあどうすればいいんでしょうか?」白服の突然の失礼な言い方に驚きつつも、目的は果たしたいので、手順があるなら教えて欲しい健人。一方その間ずっと真白をジロジロニヤニヤしながら見ている白服。真白は余りいい気分ではない。健人を困らせたくないから我慢しているのだ。


「健人様、もういいにゃ。別の方法考えるにゃ」ちょっと気持ち悪くなって健人に耳打ちしてみる真白。


「(様)? そこの女。こいつの()()なのか?」耳打ちした声が聞こえてしまったらしい。白服がニヤニヤしてエロい目で真白を見ながら質問する。


「「はあ?」」二人して素っ頓狂な声が出る。なんだ奴隷って?


「おい、お前。この女貸してくれたら、予約くらいは取らせてやる。ああそうだ、値段にもよるが買ってやろうか? 知っての通り神官は金持ちだ。そこの男より不自由させないぞ?」フヒヒヒといやらしく嗤いながら、さっきよりもっとエロい目で真白を見ながらそう提案する白服。舌なめずりの音が聞こえそうです。


「……」健人は突然のその無茶苦茶な提案に、怒りを通り越して呆れていた。もしかしてレベルの高い冗談? ドッキリ? と疑うほどに。


「すみません。仰っている意味がよく分からないんですが」額にうっすら青筋を立て、それでも丁寧に、言った意味を確認する健人。


「お前はバカなのか? 女を寄越せと言ってるのだ。それなら便宜を図ってやるって言ってるのだ」やれやれと言った表情で、健人を馬鹿にするように説明する健人。その瞬間、ドン! と音がして、それから奥の方でズドーン、と大きな音が聞こえてきた。


 白服が座っていた椅子と一緒に後方に飛んでいって奥で伸びている。頭の上でピヨピヨ何かが飛んでそうに見えるくらい伸びている。実は真白が我慢ならずに殴ったのだが。


「~~~にゃ!」言葉にならないくらい怒りまくっている真白。地団駄踏んで怒っている。自分はまだいいとしても、健人を馬鹿にされた事が許せなかった。


 そして普段の健人なら、初対面の人間に、そんな事したら叱るのだが、これは完全にあっちが悪いと思っているので、健人も怒らない。寧ろ真白の頭をポンポンとして「ありがとな」とお礼を言うのだった。


「いいえにゃ」健人にポンポンして貰ってご満悦の真白。さっきまでの怒りはどこへやら。健人を見上げニコーっと猫耳美少女スマイル。そんな真白を見た健人も笑顔になる。


「……まあ、受付いなくなったし入るか」結構大胆な事を言う健人だが、真白は即同意した。


 しかし、以前ベルアートさんから聞いてはいたけど、神官ってこんなやつばっかなのか? グレゴーさんも元は似たようなもんだったし。(神)と名のつく仕事してんなら、人に崇められ尊敬されるよう努力しろよな。心の中で呆れる健人だった。


 そして大きな物音がして、何事かと駆け付けたとある人物。吹っ飛ばされた白服が、椅子の残骸と共に、奥の方でピヨピヨ伸びてるのを見て驚いた。そしてそんな事も構いもせず、入り口から入ってくる二人の人影を見つけ、慌ててそれを制する。


「ま、待て! お主ら受付しておらんのではないか?」その人物が健人達に声を掛け制止する。


「ん? お主達……」 「「あ」」 その人物とは、白いオッサン、もとい、グレゴーだった。


 ※※※


「ハッハッハ、しかし受付を殴って無断で入ってくるとは、お主達そんな剛毅だったかな?」以前とは大分イメージが変わり、快活に笑いながら、久々の再会を喜ぶグレゴー。今はグレゴーに案内され、神殿の応接室に3人とも来ている。


「しかしグレゴーさん、既にメディーに戻ったのかと思っていました」健人も笑顔で答える。


「うむ。本当は戻る予定だったのだがな。こちらの問題を放置して戻るのは出来ないと判断したのだ」


「問題?」


「ああ、まあ、恥ずかしい話なのだが」と、頭を掻きながらグレゴーは二人に説明する。アクーは治安もよく、財政も毎年ほぼ黒字で、他の都市と比べ一番安定し人気のある都市だが、そんなアクーでも領主でさえ手が出せない、解決できない問題がある。それはここの神殿の神官達だ。


 いくら領主と言えど、王の側室からなる神殿に口出しが出来ない。そしてその立場を利用して、また、光魔法を使える事を傘に来て、傲慢無礼な態度でアクーの領民を困らせている。神官達はバツの悪い事に狡猾な者もいるので、例えばアクーの領主ゲイルのような、元勇者メンバーとは、絶対に敵対しないし、その関係者には手を出さない。直接何かやって来ないかな? 来たらやっつけちゃうのになあ、と、ゲイルが日頃思っているかどうかは知らないが。


 基本神殿は、各都市最低一つは置かれている。病院に変わる治癒治療施設となっているためだ。だが、先述の通り、神官の偉ぶった態度、権力を利用した裏取引、欲に狂ってのやりたい放題等々は、各都市で問題になっていた。今話しているグレゴーも、以前は似たようなものだったが、ヌビル村での真白との出会い、そして道中ベルアートに諭された事で、グレゴー自身は自分を律する事が出来た。自分が間違っていて、変わらなけれないけないと気づく事が出来たのだ。


 ともあれ、改心したグレゴーは、ベルアートと健人達と共にここアクーに一旦戻り、それからすぐ王都メディーへ向かう予定だったが、丁度その時、ここの神殿が運営していた孤児院で、子どもの世話をしていた二十代の寮母が襲われるという事件が起こった。犯人はなんとここの神官。しかも「俺に抱かれるんだから幸せだろう? 子ども孕んだら光魔法使えるかもしれないんだから」と悪びれもせずのたまったのだ。グレゴーはその神官に対し怒り、そして彼を諭した。ただ、効果は余りなかったようだが。


 結局寮母を襲った神官は、その罪で兵士達にしょっ引かれ、領内にある牢獄に投獄される事となった。しかしそんな事があっても、他の神官達は意に介せず。心配どころか運が悪かったなどとお互い笑い合って話しているではないか。グレゴーはこの状況を何とかしたい。まず出来るところから、と、アクーに残って改革をしようとしていたのだった。


「幸い、儂のように今の状態を憂いている者も中にはいる。協力者を募って何とか変えていきたいのだ」


 真剣な眼差しで語るグレゴー。しかしこの人、180度どころか540度変わったな。ヌビル村の時と同じ人だよな?


「ああ。無駄話だったな。そして、またも二人に気分を害させたな。済まなかった」頭を下げるグレゴーだった。


「いえいえ。とりあえず事情は分かりました」健人は恐縮して頭をあげるよう促す。


「気にしないでにゃ」真白もお前扱いは既になく、普通に対応している。


「あ、そういやお主達は何しにきたのだ?」そこで本題に入る。


「ああ、クリスタルに光魔法入れたいと思って」健人が8角形クリスタルを取り出し、ここに来た理由を説明した。


「なるほど。なら儂が今から入れてやろう。8角形クリスタルか。1時間はかかるが良いか?」


「いいんですか?」願ってもない依頼に感謝する健人。


「勿論構わん。知らぬ仲ではないし、迷惑もかけたしな。ああ、金は要らん。だが、次回からはきちんと貰うぞ?」フフっとちょっとダンディなスマイルで答えるグレゴー。嫌な人がいい人に変わると扱いに困ります。苦笑いで感謝する健人。


「そうだな。その間神殿からは出ない方がいい。ここから一旦出てしまうと、また受付で揉めるだろうしな。そして、光魔法が空になったら、儂指名で来るといい。暫くはアクーにいるだろうからな」有難い提案だ。うーんしかし、それって忖度じゃないのか? まあ権力を行使しているわけでもないし、グレゴーさんの時間の都合を最優先で、という事にして融通してもらうか。


 そういや受付の人放ったらかしだ。どうなったんだろうか。……ま、いいか。自業自得だし。ふとそんな風に思ったがすぐ割り切った様子の健人。


 そして無事クリスタルに、光魔法を入れて貰う事が出来、二人はその後騒動を起こす事なく、無事帰宅したのだった。









夕方頃また投稿しますm(__)m

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