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ようやく第三章、筆が進み始めました(;^_^A


「リ、リリィた~ん、は、おでのヨメええええぇ」徐々に中年デブの滑舌がおかしくなる。捕らえていた縄はビキッビキと裂けて切れていき、それと共に、まるで風船のように徐々に大きく膨らんでいく中年デブ。頬がただれてボトッボトと液状になって地面に落ちるが、何故か紫色の粘質の液体になっている。眼球の位置、鼻の位置が、もう元人間だとは分からないくらい、崩れ落ちていく。


 抑え込もうと必死に取り囲んでいた兵士達は、段々大きくなる()()を抑える事が出来ず、その場から逃げるように離れる。


「リ、リリィ、だあああああん」更に大きくなる中年デブ。既に3mほどの高さとなり、顔の大部分は既に存在していないが、新たに元腹だった部分に、目、鼻、口が形成されていく。


「ゴアアアアアアア!!!」新たに出来た口から、まるで怪獣のような巨大な咆哮が放たれる。劇場の裏の広場の周りには、人家や店が所狭しと建っている。その家々が震えるほどの大きな咆哮。


「キャアアアア」「あ、あれはなんだ?」既に夜なので人通りはないが、就寝の準備をしていた人々が、ほぼ一斉にその咆哮に驚き、各々窓からその怪物を確認すると、家から飛び出し蜘蛛の子を散らすように、着の身着のままで逃げていく。


「な、なんだあれは!」カインツが叫ぶ。健人も驚いてその化け物を見つけるが、異常事態なのは理解出来たので、急いでドラムを乗せてあった台車に、同じく置いてあったオリハルコンの大剣を手に持った。


「真白!」「はいにゃ!」息の合ったやりとり。既に猫耳ぺたんのしょんぼり真白は見る影もなく、真白の猫耳はピン立っている。そしてオリハルコンナックルを両手で一発ガシンと叩く。既に臨戦態勢だ。


「とりあえず何とかしないと! お前ら! リリアム王女をこの場所から急いでお連れしろ! 王女の安全が第一だ! それから家から逃げ惑う人々の誘導だ! とにかくこの場所から離れるように指示しろ!」


 カインツが急いで兵士達に指示をする。しかしそれと同時に「いえ。私も出ます」と、仮面をつけていないリリアム王女が馬車から出てきた。カインツがその発言に驚きつつ、リリアムの行動を制止する。


「リリアム王女! 何を仰っているのですか! あなたの身に何かあれば大変なのです! ここは我々が何とかします! お逃げ下さい!」カインツが必死になって説得する。


「カインツ隊長。私は光魔法の属性持ちです。察するにあの化け物は闇属性では?」リリアムが化け物を一瞥し、自分の予想を口にする。


「や、闇?」カインツが驚く。「まさか、また魔族か?」カインツは5年前の魔族との戦争を経験しているので、その言葉を聞いて戦慄した。


 そのやり取りの最中、突然紫色の液体が、カインツ達の元に飛んできた。それが地面に当たると、まるで強酸性の液体のごとく地面がブシューと言って溶ける。更に二つ三つといくつも飛んでくる。中年デブから放たれたものだ。


「真白! 行くぞ!」考えていても仕方ない。新しい能力を上手く開放して、化け物を倒そう。無理なら何か方法を考えねば。どちらにしろ良策は倒す事しかなさそうだ。


「了解にゃ」真白も同じ事を考えているようだ。二人並んで化け物に向かっていく。


「こら! お前ら勝手に行くな!」カインツは二人を制止しようとするが、時既に遅し。


「アクセル」「プレッシャー」「ブースト」一気に3つの能力を開放する健人。グンと健人の駆け足が速くなる。


「とりあえず50%だ。そしてリズムだ」さっきまでドラムを叩いていたから、いつもよりリズムの掴み方は絶好調だ。頭の中でリズムを刻み、化け物に向かっていく。


 化け物は健人を見るやいなや「オオオ~マアアア~エエエエ~~!」と新しい口? から怨念のような言葉を発する。怒りをぶつけるかのように、強酸性の液体を健人に集中して飛ばす。が、当たらない。ブーストとアクセルがおかげだ。ブシュウブシュウと地面が溶ける。健人は全て交わしながら「とりあえず一太刀! 」上からプレッシャーのかかったオリハルコンの大剣を一閃する。


「ウギャアアアアアア!」叫びながら真っ二つに割れる化け物。ん? 呆気ないな。そう思ったのも束の間、分かれた物体2つは、グジュグジュと気味の悪い音を立て、再度融合し、一つの塊になった。


「やっぱりそう簡単にはいかないか」ちょっと苦笑する健人。今度は健人の後ろから真白が飛んでいく。比喩ではなく正に一直線に、その身体能力をフルに活かして飛び出していたのだ。そして化け物を突き破るべく「うにゃああああ! 」と叫びながら化け物をナックルで突き破った。ボシュウッという音と共に真白が化け物から出てくる。


「うーん? 手応えないにゃ」真白が振り返ると、やはりというか、化け物は真白に貫かれた体の穴を徐々に塞いでいく。


「こいつ物理攻撃効かないんじゃないか?」健人が気づく。真白も物理攻撃しか手段がない。ちょっと困った。


「お二人とも! さがって下さい!」突如馬車の方から透き通った美しい声が聞こえた。リリアムだ。何をするのか分からないが、その声を聞いて二人とも一旦化け物から距離を置く。


「ホーリーレイン」リリアムがそう呟く。ホーリー系は闇属性の魔物または魔族に対してもっとも効果的な魔法だ。その雨を降らすという小範囲光魔法を発動するリリアム。化け物の上空に白く輝く雲が広がり、夜の帳を明るく照らす。それと同時に一斉に小粒の雨のような光の粒が、化け物めがけて大量に落ちていく。


 リリアムの聖なる魔法が効いている。彼女の予想通り、この化け物は闇属性だった。


「グギャアアアアアアア」苦しそうに悶える化け物。光の雨が化け物に当たる度、ジュッという熱に溶けたような音がする。そして化け物が、まるでナメクジに塩をかけたようにドンドン小さくなっていく。しかし化け物が、ようやく大きさ2mくらいに縮んだところで、雨がやんだ。


「はあ、はあ。やっぱりお姉さまのようにはいかないわね」リリアムの方が限界だった。肩で息をするリリアム。だが、化け物の様子が変わった? グジュグジュ蠢いていた液体のようなものが無くなっている。


 真白が化け物の異変に気づく。「いけるにゃ!」すかさず化け物にダッシュして、もう顔も体も原型をとどめていない、紫色の塊に、オリハルコンナックルを思い切り打ち付ける。勢いそのまま吹っ飛ばされる化け物。化け物は数メートル吹っ飛び、そしてズダーンと地面に叩きつけられながら着地した。打撃が効いている。


 真白の攻撃を見ていた健人が、同じくいけると判断し、今度は自分の番、とばかりに3mほど空高くジャンプし、プレッシャーの圧力そのまま、化け物に上から斬りつけた。


「ギュアアアアアア」叫び声と共に真っ二つに割れる化け物。ブッシャーという、赤い血のような液体が、健人の斬撃の後から飛沫した。ビクッビクと痙攣する真っ二つの亡骸。少ししてその動きも止まった。どうやら事切れたようだ。


 ふぅ、と健人が一息ついたその時、「ん?」真白の表情が変わる。そして急にキョロキョロしだす。「何か聞こえたにゃ」


「チッ」真白はその小さな舌打ちを聞き逃さなかった。バッと聞こえた方向を見る。どこかの家の2階の屋根の上だ。「あ、やばい」その()は呟くがもう遅い。真白が化け物の亡骸の側からフッと消え、即座にその影のそばに現れる。


「誰にゃ?」真白が影を睨みながら、拳を構える。


「あちゃあ~、見つかったあ~。いやあ~、アハハ。強いねー君達」頭をポリポリ掻きながら苦笑いするその影は、額の両端から黒い角が出ていて、背中にはコウモリのような小さな翼。しかしそれ以外は見た目完全に人間と変わらない。髪はスポーツ刈りのように短く、身長が140cmくらいと小さいので、まるで人間の男の子のように見える。瞳は赤いが顔が童顔なので、恐ろしさより可愛らしい印象だ。


「俺は魔族なんだー。ああでも、君達と敵対する気はないんだよ?」だから勘弁して? みたいな言い方をする魔族。


 魔族? 5年前人族と戦ったという? だが、今は和平状態で敵対していないはずだから、そういう意味なのか?


「あの化け物は何なのにゃ?」当然逃がすつもりはない真白が、臨戦態勢を崩さず再び質問する。


「あーあれねえ。失敗しちゃった」テヘっという感じで頭をポリポリ掻いて答える魔族。


「失敗にゃ?」欲しかった答えとは違う返事に、真白は戸惑う。何か、と聞いているのに、失敗?


「そうなんだよー。まさか嫉妬心がここで出てくるのは計算外だったんだよねー。それがなければもっと完成度が高かったはずなんだよー。それとねー、まさかリリアム王女がいるなんて思いもしなかったからねー。光魔法使われると、物理無効は解除されちゃうんだ」


 なんか暢気な話し方に、若干緊張感が薄れる真白。だが、童顔で可愛らしかった顔が、急に醜悪な顔に変化する。目が赤く光りながら吊り上がり、口角を上げ気味悪く嗤いながら言葉を続ける。その口の中から二つの牙を覗かせながら。


「フフフ。でも、リリアム王女、こんなとこにいたんだね」


 真白の危機察知がまずいと判断したが、「シャドウラン」魔族がそう呟くと、急に目の前から魔族が姿を消した。急いでリリアムの方を見るが、どうやら無事のようだ。ホッとする真白。しかし逃げられてしまった。仕方なく健人達のところに戻る。


「真白? どこ行ってた?」健人が質問する。急に消えたので驚いていた。


「あそこの屋根の上に、魔族がいたにゃ。その化け物を作ったって言ってたにゃ。でも逃げられたにゃ」真白が下に降りてきて説明する。


「何? やっぱり魔族がいたのか?」カインツが真白に詰め寄る。カインツのその必死な様子ににちょっと驚く真白。一方リリアムは真白から聞いた話に、難しい顔をしていた。


「でも、あれってその魔族が襲わせたのかしら?」それにしては余りにも唐突だ。もしかして自分の事を知っていた?


「リリアム王女がいた事は知らなかったみたいにゃ。そしてその魔族が、この化け物は失敗だって言ってたにゃ」真白が魔族の言葉を伝える。


「失敗? じゃあ何かの実験って事なのかしら?」益々分からないリリアムだった。


 ※※※


「まーさかここでまたあの黒髪と猫獣人に会うなんてねー」ダークシャドウで真白から逃げ切った魔族が呟く。既に騒動となった舞台裏の広場から相当離れている。ダークシャドウとは闇魔法の一種で、影のあるところなら、どこでも影の中に潜み移動が事が出来る魔法だ。特に夜なら、ずっと暗闇なので、術者の魔力が切れない限り、かなり長い距離を、影に潜んで進む事が出来る。但し術者は一切攻撃出来ない、攻撃を食らえば魔法が解ける等というデメリットもあるが、逃げるには十分役に立つ。


「今回の実験は半分成功した感じかな? 人間の嫉妬心って厄介なのが分かっただけでも良かったかな? まあ、その嫉妬心を利用するのもアリか」ブツブツと今回の結果を振り返る魔族。


「しかしあの黒髪、攻撃する前何か呟いていたな。気になるな。一応注意しておくか」


 以前オーガロードを倒した理由と関係あるのかも知れない。頭の隅にとどめておく魔族だった。


「それよりも、それよりもだ。グフフフ。リリアム王女がここにいたぞ。王都なら無理だったろうが、アクーなら……。フフフ」どこか楽しそうだが、しかし怪しい嗤いと共に、夜の闇に消えていく魔族だった。


 ※※※


 化け物を倒してから数時間が経った。ようやく辺りは落ち着いてきたようだ。逃げていた家々の人々は既に我が家に戻っており、化け物の亡骸も兵士達によって片付けられていた。


「しかしお前ら。勝手に突っ込んで行ってはいけないだろうが。俺達兵士に任せるのが筋だ」カインツが健人と真白に説教している。


「ごめんなさい」「すみませんにゃ」二人とも頭を下げた。


「まあまあ、とりあえず片付いたし良かったじゃないですか。カインツ隊長、余り怒らないで下さいね」美しいほほ笑みを携えながら、カインツに話しかけるリリアム。


「あ、いえ、怒るというか、注意なのです」しどろもどろになるカインツ。天然たらしスキル半端ないっす。カインツさん確かご結婚されているんですけどね。


「でも、リリアム王女の光魔法がなければ、こんなにすんなりうまくいかなかったと思います。有難う御座います」健人がお礼を言う。


「いえいえ。私の方こそ、タケトさんとマシロさんがいなかったらどうしようもなかったわ。お二人ともお強い冒険者で良かった」超絶美女スマイルで二人にお礼を言うリリアム。


「こちらこそ助かったにゃ」さっきの攻撃的な対応とは打って変わって素直な真白。


「お役に立てたようで良かったです」天然たらしさんは男女関係なく超絶美女スマイルを振り巻くので、真白にも同じスマイルだ。真白も超絶美少女スマイルをお返し。ん? おかしい。なんか二人の間に火花が見える気がする。爽やかなやり取りのはずなのに。


 そしてスッと真白の側に近づくリリアム。「負けませんわよ」と、小さな声で呟いてフフっといたずらっぽく微笑む。そういう意味なのかからかっているのか。


 その呟きを聞いてムキーと怒る真白。「やっぱあの女好きになれないかもにゃ!」憤ってます。あの女って言った。王女なのに。


 その事を注意しようとした健人だが、それよりも前にカインツが話しかけた。


「しかしタケト。強くなったな。あのスピードとパワーはどうやったんだ? あれならオーガロードを倒したと言われても納得行くぞ」

 

 バンバンと健人の肩を叩きながら褒めるカインツ。


「ああ、どうやら俺、能力あったみたいなんです。その使い方がようやく分かったんです」端的に説明する健人。


「おお、そうだったのか。いや、でもそうじゃないとさすがにオーガロードを倒したってのは説明がつかない。寧ろ納得した」


 ふむふむ、と頷くカインツ。だが、そこで既に夜遅くなっていて、周りも暗い事に気づいた。


「しまった。リリアム王女。そろそろ戻られないとまずいです」カインツがリリアムに声を掛ける。リリアムも予定より相当遅くなっているはずだ。


「あら、そうね。じゃあ、タケトさん、マシロさん。またお会いしましょう」そう言って笑顔で手を振り、馬車に乗り込むリリアム。


 またお会いしましょう、ね。会うわけないよね。そう心の中で呟く健人。


 もうお会いしたくないにゃ。特に健人様とは会っちゃダメにゃ。真白は真白で、初めての恋のライバル? に怒り心頭だった。





夕方頃また投稿しますm(__)m

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