伯爵夫妻の狙い
いつもお読み頂き有難う御座いますm(__)m
感想・レビューなど、気になった事なんでも構いませんので、コメント頂ければ幸いですm(__)m
そしてブックマークして頂いている方々、感謝ですm(__)m
既に第三章執筆中です。楽しみにお待ち頂きたくm(__)m
「グハッ、ど、どうして、にゃ? ……」またも血を吐きながら、膝をついてついにうつ伏せに地面に倒れこむ真白。倒れた真白を確認して、ようやく真白から剣を抜くゲイル。剣についた真白の血を、ブンと一振りして払う。
「え?」健人は何が起こっているのか理解が追い付いていない。真白はそのままうつ伏せに倒れて動かない。腹部が徐々に赤く染まっていく。傍にはアイラがいるが、アイラはそこに立ったまま、無表情のまま動かない。
「いやあ、マシロさん、思った以上に強いんでね。先に始末させて貰ったんだよ」ゲイルが淡々と話す。
「まあ、僕かアイラ一人でも何とかなったんだろうけどね。面倒になりそうだから、こうやって油断して、隙が出来た時に刺したんだ」続けて事も無げに理由? 説明するゲイル。
「え? ゲイルさん。アイラさん。真白どうしたんですか?」
さっぱり分からない健人。ただ、物凄く嫌な予感がしている。ほんの少し冷静になった健人は、再度真白を見てみる。うつ伏せに倒れていて腹部が赤く染まっている。間違いない。怪我をしている。まずい!
「あ! 真白! 血が! どうした真白!」ようやく現状を理解し、急いで真白の元に駆け寄ろうとした途端、フッと目の前にゲイルが現れ、首に剣をあてがわれ、動きを止められる。
「ゲ、ゲイルさん? 何を?」健人が驚いて質問する。速く真白を助けないと。
「分からないのかい? 僕がマシロさんを刺したんだよ」ゲイルが無表情で説明する。
「どうして?」何故真白が倒れているのか、徐々に頭が回ってきた健人。
「どうして? 邪魔だからさ」ずっと無表情のまま、健人の問いに答える。
「……邪魔?」次は徐々に健人から殺気が沸き立つ。その様子を見て少しニヤリと笑うゲイル。
「君を倒すのに、マシロさんが邪魔だったって事だよ」
とゲイルが言った瞬間、頭上から途轍もない圧力が落ちてきた。咄嗟にバックステップで避けるゲイル。そしてズドーンと大きな音が闘技場に鳴り響き、音の源には、直径2mほどのクレーターが出来ていた。
圧力の正体はオリハルコンの大剣。健人が放った攻撃だった。
「なんで、なんでそんな事したんやああああ!」健人から怒涛の如く湧き上がる殺気。
「ほう。いい殺気だねえ」フフンと余裕の表情で笑うゲイル。
「何がいい殺気やねん! 真白を返せや!」怒り狂う健人。ゲイルに攻撃を仕掛ける。右斜め下から大剣を振るう。それをレイピアのように細い透明の剣で片手で軽く受け止めるゲイル。その余裕の様子を気にも留める事なく、必死な、それでいて怒りに溢れた調子で、上、下、斜め左上、横、と大剣が振り回されるが、全て片手の細剣で受け止められる。
「ほらどうした? 早く助けないとマシロさん死んじゃうよ?」他人事のように、未だ余裕の表情で健人を挑発するゲイル。
「はあ、はあ、くそっ!」その挑発に乗らずに我慢し、肩で息をしながらも、殺気はそのままで、健人は一旦離れて攻撃を止める。そして今度はブツブツ呟き始める。「リズム、リズム」
りずむ? 微かに聞こえた知らない言葉。そしてすぐさま、「うらあああああ!」大声で叫びながら、再び健人が殺気を乗せた大剣をゲイルに振るう。それをこれまで同様片手で細剣で抑える。が、今度はどんどん重くなる。どんどん速くなる。まるで竜巻のように縦横無尽に、そして一定のリズムを刻みながら。
「な、なんと」ゲイルが驚く。片手で捌ききれなくなり、仕方なくもう片方の細剣を使い双剣で抗う。攻撃が重くなる。攻撃が速くなる。更にあり得ない位置からとてつもなく重く速い一撃がやってくる。例えば右から攻撃してきているのに、再度右から攻撃が来る。遠心力を使うなら、右から続けて逆方向の左からくるはずなのに。しかもりずむと呟いてから、不思議な間合いで攻撃してくる。
「チィ!」ゲイルが一旦バックステップで距離を取る。も、瞬速で健人がゲイルに肉薄する。そのスピードに驚く暇もなく、渾身の一撃がゲイルの上から降ってくる。ガシーンとゲイルが両手の細剣をバツの字にしてギリギリと受け止める。二つの剣戟が拮抗する。が、徐々にゲイルが圧倒されていく。
「む、ぐう。レベル94のこの僕が圧される?」思った以上に攻撃出来る健人に驚くゲイル。
「ねえ。ゲイルそろそろ」突如その様子を見かねて、真白のそばにいるアイラが声をかける。
「あ、ああ。了解。だがよく分かった。思った通りだ」ゲイルはそう言うと、いきなり「ウォーターウォール」と水魔法を唱える。
地面からいきなり二人の間に、幅3m高さ5m以上にもなる水の壁が天に向かって湧き上がる。その壁に健人の大剣が弾かれる。というより、水圧で上に持って行かれる。「うがあ!」いきなりの水の壁に、後ろにふらつく健人。ガランガランと音を立て、大剣が地面を転がる。その水の壁の勢いに負け、手放してしまった。
その一瞬をついて、ゲイルが健人の後ろに周り、首の後ろに打撃を加え、気絶させた。それでも「ま、真白……」と声を発しながら起き上がろうとする健人。しかしそれは成せず、そのまま、地面に崩れ落ち、気を失ってしまった。
そして、ふう、と一息ついて、
「よし、アイラ。マシロさんを頼む」ゲイルはアイラに振り返ってそう言った。
※※※
暑い。だが、何か心地いい感触と温もり。まどろむような感覚。
「う~ん?」その暑さが苦しかったからか、目が覚める健人。どうやら自分はベッドにいるようだ。
「! 」ガバっと上半身だけ起きあがる健人。
「真白! 真白だ!」思い出した。真白がゲイルさんに刺され、自分も戦っていたのを。
焦って急いで状況を確認する。どうして自分はベッドにいる? あれ? ベッドの横になんかいる。
「う~ん。健人様~ にゅふふ~」なんか聞き慣れた声が聞こえる。
「……」そして気持ち良さそうに、一緒に寝てる猫耳美少女を発見してしまいました。そして自分の足に、白く綺麗な太ももが絡まっている。
そしてどさくさ紛れなのかどうか分からないが、健人の下半身にギュッと抱きつく猫耳美少女さん。心配してたのに。若干イラっとした健人は、真白の頭を枕でボンボンと叩いて起こそうとする。
「こら真白。起きろ。何やってんだ」
「むにゅふ~、もうちょっと~」ヘラヘラしながら健人から離れない真白。口からチョロっと涎が垂れてるのに、美少女だからか、それさえもなまめかしいです。
必死になって助けようとしたのに。この能天気な様子が腹立って、思い切り真白の額にバチコンとデコピンする。
「ふぎゃ! 痛いにゃ! なんなのにゃ!」ようやくそこで目が覚める真白。気持ちいい睡眠タイムを邪魔されてご機嫌斜めです。
「なんなのにゃ じゃないだろ! これはどういう事なんだ? そもそも怪我は大丈夫なのか?」怒りながらも真白を心配する。
「あ! 健人様起きたにゃ。怪我は全く大丈夫にゃ。アイラさんに治してもらったにゃ」と、まだ健人の下半身をギュッとしている真白。
アイラさんに治してもらった? ゲイルさんが真白に攻撃する隙を作ったアイラさんが?
とりあえず真白の頭をグイーと押して引き離す健人。あうー、と悲しそうな顔をする真白。ようやく引き剥がしました。
「なんで真白は俺と一緒に寝てるの?」眉を引く付かせ口角をピクピクさせて質問する。怒ってますね。
「……寝たかったからなのにゃ」自分の欲望を正直に話す真白。怒られたからなのか、猫耳がペタンとへたり込んでる。
「いや聞きたいのはそこじゃないから」イラっとしてツッコむ健人。
真白が何か言おうとしたところで、コンコン、のドアをノックする音が聞こえた。
「入って大丈夫か~い?」ゲイルの声だ。
聞いたくせに返事を待たず、ゲイルはドアをバンと開けてズカズカ入ってきた。そこには健人と真白がベッドでイチャコラしてるっぽい様子が目に飛び込んできた。
「おおぅ、済まなかった。……一時間で済む?」その様子を見て、ああ、見ちゃったゴメンネ、みたいな感じで顔を両手で覆い隠し時間を確認するゲイル。何の時間? そして何が済むんでしょうかね?
「……それでOKにゃ」真白がグッとサムズアップで答える。OKって何が?
「いや、何もありませんし、きっと誤解してますし、そんな時間も必要ないです」と、きっぱり言い切って健人は急いでベッドから飛び降りる。いや逃げ出す。
口惜しそうにベッドの上で「チッ」と舌打ちをする真白。なんか悪者っぽいです。
「いや、いいんだよ。若いってのはそういう事には一生懸命なものだしね」何処か遠くを眺めながら、ああ、こういう青い春っていいよね~って感じで懐かしむように語るゲイル。
「……いい加減怒りますよ?」健人はいい加減腹が立ってきた。ゲイルにも真白にも。
「ま、冗談はそこまでにして、まずは済まなかったね」と、謝るゲイル。
そして今回の件について説明する。
伯爵夫妻は、事前にベルアートから、健人がオーガロードを倒したいきさつを聞いていた。いきなり強くなったキッカケが、(真白)だった事を。なら、健人の本気を引き出すべく、一芝居を打ってやろうと、アイラと相談して、健人を挑発したのだった。一旦真白を傷つけてしまう事は申し訳なかったが、そこは光魔法の使い手のアイルがいるので、急所を外せば即効で治癒出来る。そして一芝居を打った結果、健人の真の能力が分かったという。
そして、次にゲイルが告げたその言葉は、健人にとって信じられない一言だった。
「タケト君。君、カオルと同じ能力を持っているよ」
夕方頃また投稿しますm(__)m