200円の魔物
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今はベルアートの高級宿に泊まらせて貰っているが、そのうち出ていく事になるだろうという事を説明し、もしそうなったら、是非紹介してほしいと話しする健人。
「ほう、あんな高級宿にお前らみたいな、若い、見た目冒険者の二人が泊ってんのか?」ロックは不思議そうな顔をする。
「多分、俺がたまたま持っていた素材が良かったようです。それが理由だと思います」と、半分嘘半分多分本当の理由を説明する。今回伯爵夫妻に会う大事な客人という建前だが、500円玉を売ってくれる大事な客という意味もあるだろう、と健人は思っていた。
「ふーん。一体何をあの商人様に売ったのか気になるが。まあいい。そういやここアクーに来るの初めてだって言ってたな。ギルドも初めてらしいじゃねーか。後の説明はさっきいたファルにさせるからよ、また俺に用があったら言ってくれ」
そう言ってロックは手を振り、奥の方に消えていった。そしてロックの隣で話を聞いていた、元いたバーの人間が話始める。
「この後の対応は、私ファルが致しますので、何なりとご質問ください」と、頭を下げ挨拶した、バーの人間ことファル。蝶ネクタイに黒いチョッキ、下は黒ズボンと、まさにバーテンダーのようないで立ち。茶色の髪にちょび髭の30代半ばといったダンディなおじさんだ。
有難う御座います、とお礼を言い、まず気になったバッツの事を聞いてみる。
「ああ、あの斧を武器にした若い冒険者ですね。有名でしたよ。ここアクーでは稼ぎ頭の一人でしたね。高レベルの魔物相手に出来るくらいの実力はあったんですが、村に帰ってしまわれましたからね」バッツの意外な情報に驚く健人。
「あのバッツがにゃ? 変な奴ってイメージが強いにゃー」真白もちょっと信じられないといった表情だ。
「いくら知り合いの息子だからといって、普通はギルド長が面倒みるはずないですよ。将来有望なバッツだったからこそ、懇意にしていたと思います。当時バッツとパーティを組みたいという依頼が多かったですよ。前衛としてはかなり優秀でしたし」と、淡々とバッツの昔の評判を説明するファル。
あのバッツがね~。いつか村に帰ったら冒険者の時の事聞いてみよう。
それからファルは、このギルドについて説明する。事前に健人達が聞いていた通り、仕事の依頼がギルドに持ち込まれ、それを冒険者などが依頼の中から仕事を選び、達成したところで報酬がギルドより支払われる仕組みだ。仕事内容は草刈り、屋敷の掃除、店番といった雑務から、やはりというか、魔物討伐の依頼もある。魔物討伐の依頼は、田畑を荒らしたり、家畜が襲われるための退治から、領主や王都レベルで依頼される、ドラゴンのような大物の退治まで様々らしい。他に、街道にいた盗賊や山賊の討伐依頼もあるとの事。
「ただ、最近何故か、また魔物の討伐依頼が増えてきていましてね。ここ半年くらいでしょうか? 魔王の戦い以降数年は平和だったんですが、魔物が増えてきているようでして」と、説明を付け加えるファル。ふ~ん、と聞いている二人。あ、そうだ。
「魔力と属性を知る水晶がここにあるって聞いたんですけど」健人がふと思い出す。属性はないと思うが、以前オーガロードと戦った時の自分の力が気になっていたので、何かヒントになるかもと思い、ギルドに来たらきちんと測定したかったのだ。
「はあ。でも普通属性と魔力判定は、子どもの頃にやっているはずなんですが、今更試してみたいと?」と、不思議そうに聞き返すファル。
「あ、はい。もしかしたら、て思ったので」そりゃ疑われるよな。冷や汗をかきながら、変に怪しまれないよう無理やり笑顔で答える健人。余計な詮索はされたくない。
「まあ、極稀に再度測定したいっていう人もいますし、別に構いませんが」ま、いいか、という感じで、特に気にする様子もなくカウンターの下から、直径30cmくらいの水晶を2つ取り出す。どちらも無色透明だが、右側の水晶は赤い台、左側の水晶は紫色の台に乗せられている。
「赤い方が属性、紫色の方が魔力の測定です。属性は、クリスタルの色と同じ色で光れば、その属性持ちという事になります。魔力は紫色の光を放ちます。光が強ければ強いほど、魔力量が多いという事になります。って、当然ご存知ですよね? 」
世の中の常識ですしね、と、一言付け加えて準備を始める。すみません、知りませんでした、と心の中で呟きながら、冷や汗をかいて微妙な笑顔で頷いていた健人。
「じゃあ、手を水晶に乗せてください。どうぞ」まずは属性の方から試してみる。
ドキドキしながら手のひらを水晶に乗せてみるも、何色にもならない。透明なままだった。
「はい。(無)ですね。残念でしたね」無感情な様子で淡々と語るファル。やっぱり(無)なのか。分かっていたけどそれでも少しがっくりする健人。オーガロードを倒した時のあの力の理由が分かれば、と思ったんだけどなあ。属性があったから勝てた、という可能性は消えたか。
続いて魔力を測定する。すると、こちらは紫色の光がどんどん溢れ出て、徐々に大きくなり、紫色だというのに、とても眩しく、水晶を中心に、ギルド内を覆うかの如く強力に輝きだした。中にいた数人がおお、と驚く。でも一番驚いていたのは健人だ。めっちゃ眩しい。
「も、もう結構です。手を離してください」とファルが慌てて手を離すよう急かせる。健人が急いで手を離すと、一気に紫色の光が水晶の中にしぼんで消えた。
「物凄い魔力量ですね。それだけ魔力があれば、クリスタルの魔力入れの仕事だけでやっていけそうですね。これだけ魔力が多い人は、アイラ様とリリアム様以来かもです」初めてファルが笑顔で話した。
アイラ様? リリアム様? 誰か知らないが有名な人なんだろうか? 有名人だとしたら、ここでその人達について質問すると、きっと怪しまれる。愛想笑いで誤魔化しておこう。まあ、ファルさんが言いたいのは、きっと俺の魔力量は相当多いって事なんだろう。
でも、魔力量が多くったって、属性がなけりゃ、意味ない気がするんだが。クリスタル使えばやりようはあるんだろうけど。魔力量が多い事は、直接的に戦闘力とは関係ないんだし。結局、水晶を試してみても、オーガロードを倒した時の、自分の力のヒントは得られず、少し落ち込む健人だった。
一方、健人がそうやって属性と魔力の測定をしていた頃、退屈していた真白は、暇つぶしに黒板みたいなところに貼られた依頼を興味深げに診ていた。真白は獣人のため、元々属性と魔力共にないので、ハナから測定はしない。
「結構魔物の討伐依頼あるにゃー。ゴブリンもあるにゃ。討伐料は……え? 一匹50銅貨にゃ?」真白は村をあれだけ脅かした、ゴブリンの討伐の報酬の低さに目を丸くして驚いていた。
そして紫の光にギルド内が満たされて、驚いて振り返ってみたら、光の発生源は健人だった。
「健人様、今の凄い光はなんなのにゃ?」真白が黒板から健人のところに戻ってきて聞いてみた。
「タケトさんの魔力量ですよ。この人、稀に見る魔力量の持ち主です」ファルが代わりに答えた。
そうなのにゃー、と呟いた後に、気になった事をおもむろにファルに質問する真白。「あっちの黒板に貼ってあった、魔物討伐依頼の中に、ゴブリン一匹50銅貨って書いてたにゃ? それって安いのにゃ? 高いのにゃ?」
「確かあそこに貼ってある依頼は、はぐれゴブリン数匹だったはずですから、単価は高い方です。ゴブリンが集団の場合だと、1匹辺り2~30銅貨が相場ですね」業務的に淡々と答えるファル。
「そんなに安いのにゃ」驚く真白。「じゃあ、ゴブリンチャンピオンとオーガロードだといくらくらいにゃ?」気になって、ついでに村で倒した大物について聞いて見る真白。
「ゴブリンチャンピオンなら金貨5枚。オーガロードなら白金貨2枚ってところでしょうか。更にオーガロードは目と牙が素材になりますので、その素材も売ればもう少しお金になるでしょうね」
真白とファルのやり取りを、黙って横で聞いていた健人が頭の中で計算する。
……村で倒したゴブリンチャンピオン三匹とオーガロード一匹で合計金貨15枚と白金貨2枚、日本の通貨に換算すると35万円ってとこか。ベルアートさんに売ったオーガロードの目が5金貨、牙が1金貨だから、合計40万円? これ結構高いんじゃないか。
「そして更に、ゴブリンチャンピオンくらいになると、クリスタルの欠片が大体見つかるでしょうし、幸運にもクリスタル自体が入っていれば、それを売れば高収入になりますね。オーガロードに至っては、クリスタルが出る可能性が高いといわれる魔物で、最高で12角形のクリスタルが確認されています。まあ12角形など滅多に出るものではないですが。それを売れば12~15白金貨にはなるかと」
今回ベルアートさんが18白金貨で買ってくれたんだよな、12角形のクリスタル。じゃあ依頼があってオーガロードだけ倒して、素材を売ったりしたら、うまくいけば日本円で200万円くらいになるって事か。金額に換算したら、オーガロードがどれだけ大物かよーく分かった気がする。良く倒せたな、俺。
一方真白は「ゴブリン三百匹でも1匹20銅貨なら6金貨くらいにしかならないにゃ。ゴブリンチャンピオン1匹と変わらないにゃんて。あれだけ大変って村で騒いでいたのににゃ」と、複雑な顔をしていた。
「こんな価値じゃ、もし村で討伐依頼出してたとしても、きっと誰も来ないにゃ」真白の言う通りだ。安いのは知っていたが、具体的に金額を聞くと、尚更そう感じる。
あの日のゴブリン退治は正に命がけで、村民達も落とし穴の作戦があって初めて倒せたんだもんな。もしそれがなければヌビル村は全滅していた。それなのに1匹20銅貨と言われたら虚しくなる。日本円にして200円だもんな。あれだけ命の危険を感じ、ダンビルさんの家族を殺した魔物なのに。
あの時作戦が失敗していたら、たった200円の魔物達に、皆殺されていたのかもしれなかったのか。