そしてここにもテンプレがあるんですよねー。健人は知らんけど。
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第2章には重要な新キャラが複数登場する予定ですので、楽しんで読んで頂けると嬉しいです。
「失礼します」健人は一応ひと声かけながら、中に二人で入っていった。
看板がかかってあってすぐ分かった。入り口は西部劇のドラマに出てきそうな、木で出来たドアで、カランコロンと音が鳴り、ゆらゆらと前後に揺れている。中はこれまた西部劇の居酒屋のような雰囲気だ。実際酒を飲んでいる者もいる。食事をしている者もいた。職業安定所みたいな感じだと思っていた健人だったが、その様子に、どうも違うかもしれない、と認識を改めた。バーみたいな感じ? 真白も珍しいみたいで、入ってすぐキョロキョロしていた。
健人の声を聞いて、中にいた者が一斉に健人と真白を見た。十人くらいはいるだろうか。女性も2人程いる。それぞれ武器を持っている。それもとても興味深い。弓や槍を持っている人もいる。道で見かけた獣人がいた。そして男連中は、真白を見て「ひゅ~」とか言っている。またか。健人はうんざり、真白はイラっとしていた。
奥の方にバーカウンター? があって、そこで飲み物を提供している人がいたので、真白をじろじろ見る連中を無視し、その人に声をかける。
「すみません。初めてここに来たのですが、ギルド長はおられますでしょうか?」
「ギルド長? おいそれと会える人じゃないんだが。どちら様?」訝し気に健人に質問するバーの人間。
「失礼しました。俺はヌビル村からやってきた健人と言います。こっちの獣人は真白。村でバッツという者から、ギルド長への紹介状を貰っています」と、その紹介状を出す。
「ほう、バッツって、斧を武器にしていたバッツか?」突然健人の後ろから声が聞こえた。バーの人間じゃない、別のテーブルで酒を飲んでいた、ひげ面で酒臭い、怒り肩の体格のいい、40歳くらいのおっさんが、声をかけてきた。
「バッツをご存じなんですか?」息が臭いのを我慢して、バッツを知っているようなので質問する。
「そりゃあ、結構名を馳せた冒険者だったからな。道半ばで故郷に戻ってしまったのがもったいなかった。よお、そんな事より、そっちのねーちゃん獣人だろ? 混血か? そこまで別嬪なのは珍しいな」
ニヤニヤしながら、やっぱり真白の事を聞いてきた。真白がカチンときて何か言おうとしたのを遮って、健人が答える。
「ええ、そうみたいですね」それだけ酒臭いオッサンに答えて、そしてすぐに踵を返して再度バーの人間に方に向き直る。バッツの事を知ってたようだから、色々聞いてみたい気もしたが、このオッサンも真白狙いなのが分かったので、トラブルの匂いしかしない。そういうのは放置が一番だ。
「で、どうでしょうか? 偽物ではないのですが」そして健人がバーの人間に確認を促す。
「ちょっと聞いてみます。待っててください」そういうと、そのバーの人間が、奥の方に入っていった。
「まあ、これも何かの縁だ。一緒に飲もうや。ああ、坊主は用事済ませてこいや。俺がそのねーちゃんと楽しくやってっからよ」
無視していたのを気にせず、酒臭いオッサンは、今度は真白の横にやってきて、ニッヒッヒと、いやらしく笑いながら、真白の肩に手を置こうとした。が、真白は黙ってすっとそれを避けた。それに懲りず、もう一度、今度は真白の腰に手を回そうとするも、それもするりと交わし、そしてスッと見せつけるように健人の腕に絡まった。
「健人様、この場合はいいにゃ? 」健人に許しを請う真白。仕方ない。まあ、こういう輩が絡んできたら、男が守るべきだしな。真白一人でどうとでもなるだろうけど、真白が目立つのも面倒な気がする。
しょうがないな、と言うと、真白は見えないように拳をグッと握ってガッツポーズするのだった。やっぱり確信犯でしたね。
「おうこら、何避けてんだ? そんな弱々しいガキより、俺の方が頼りになるぞ。獣人の女、俺んとこに来い」と、真白に命令しつつその腕を取ろうとする。
するとオッサンの手を健人がバシっ弾く。その音で一瞬中が静かになった。
「おい。このガキ。この俺が誰か知っててやってんのか?」明らかにイラついた表情で、あ? こら? みたいな、ヤンキー漫画に出てきそうなメンチを切るオッサン。
この展開、ギルドに行ったら小悪党が絡んでくるという、よくあるテンプレだ。盗賊の時のテンプレでは、健人は大笑いしていたが、今回は最初から小悪党が真白狙いで、手をかけようとしていたのが気に入らなかったようだ。なので笑うより先に腹が立っていた。最初に健人に何かしかけていたら、盗賊の時のように、大爆笑してただろう。「こ、このオッサン、メンチ切った! 漫画やんけ~」とか言いながら。
「この子は俺の大事なパートナーなので。見ず知らずの人に付き合わせる筋合いないです」と、はっきりオッサンの申し出を拒否する健人。
健人様~、と目がハートになっている真白。自分を庇ってくれた事と、大事なパートナーと言ってくれた事が相当嬉しかった。
でも真白さん、確か健人を守りにこの世界に来たんですよね? それでいいのか?
とりあえずほっぺを赤らめてぼーっとしてる猫耳は置いといて、健人の拒絶に怒りを露にするオッサン。
「おらあ! てめえ! この俺様に逆らうとどうなるのか分かってんのか!」と大声で怒鳴る。
逆らうとどうなる? 知らんがな。お前なんか知らんがな。と、心の中で鬱陶しいと思いつつ突っ込む健人。健人がオッサンを睨んだような表情になると、いきなりオッサンは健人の胸ぐらをグッと掴んだ。そのまま持ち上げられ少し浮き上がる健人。黙っているが、さすがに健人もイラっとして、その手を振りほどこうとする。が、それより先に、真白が胸ぐら掴んでいたオッサンの腕をグリッと掴む。そしてギリギリと握り潰すように強く握る。
「お前、健人様に何やってるのにゃ」せっかく健人の腕に捕まっていたのに、余計な事されて腹が立った。そして健人に手をあげた相手には容赦はしない真白。さっきまでのハート目が、今はアサシンアイに切り替わって、オッサンを殺しそうな殺気が溢れている。
「う、うぐぐ」と、徐々に握り潰される腕。まるで万力に挟まれたかのような途轍もないパワーで掴まれ、ついに痛みを堪えきれず健人を離すオッサン。健人はそれで地面に足を付ける。そして痛みに苦しみながら、そのまま腕を抑え蹲るオッサンに、「兄貴、大丈夫っすか?」と二人ほど手下っぽい男が駆け寄って来る。
「こ、この女、なんて馬鹿力なんだ」「おいこら、お前兄貴に謝れ」手下達が怒鳴る。
「は? なんで私が謝るにゃ?」真白が睨み返す。既に手にはナックルが握られている。一触即発だ。
その様子を面白そうに見ているギルド内の他の連中。どっちが先に手を出すか、そういうぎりぎりの状況で、ワクワクしなが楽しんでいるようにも見える。そんな中、いきなり誰かの大声がギルド内に響き渡った。
「よーし、そこら辺でストップ!」
手をパンパンと叩く大きな音がして、皆そちらを見てみると、禿げ頭に髭を蓄えた、背丈は185cmくらいの、肩の筋肉が盛り上がっているのが分かるくらいの筋骨隆々な大男が、大声をあげてそのやり取りを制止した。
「チッ、ロックかよ」腕を抑えようやく立ち上がったオッサンが舌打ちをした。
「ああ、お前が嫌いなギルド長ことロック様だ。お前また女にちょっかいかけただろ」ギロリと一睨みするロック。
「そんなの、あんたの知った事かよ」逆らうような口ぶりだが、どこかオドオドしている。どうやらこの大男には頭が上がらないらしい。
「ここで騒いで中の物壊されたら面倒なんだよ。用が終わったんならならさっさと出ていけ」
大男がシッシと手であしらうと、そのオッサンと手下二人しぶしぶギルドを出て行く。「覚えてろよ!」とお決まりのセリフを忘れずに。
「で、お前さんがタケトか。俺がギルド長のロックだ。バッツは元気か?」今度はガラッと変わって、人懐っこい笑顔でニカーと嗤るロック。
「助けて頂いて有難う御座います」と、逃げるように出ていくオッサン達を見届けてから、丁重にお礼を伝える健人。
「ハッハッハ、まあ、あのままあいつらと揉めてたら、そっちの獣人がボコボコにしてただろうけどな。それはそれでこっちも困るんだよ。この中壊されちゃ修繕が大変だからな」またもガッハッハと快活に笑いながら気にすんな、と答える。
「改めて初めまして。私が健人です。こちらは真白。バッツには村で大変お世話になりました」頭を下げる健人と真白。
「まあまあ、堅苦しいのは無しだ。バッツはあいつが冒険者やってた時に世話してやったんだよ。エリーヌが俺の元パーティメンバーだった縁でな」ガハハとまたも豪快に笑いながら説明するロック。なるほど、そういう関係なのか。
ロックは今現在ギルド長をしているが、魔族が人族を襲ってきたよりもっと前に、エリーヌと共に冒険者をしていた。今は引退しアクーのギルド長を任されている。
「で、バッツからの紹介だし、悪いようにはしねぇ。泊まる先とかなければ俺がいい宿紹介してやる」
バッツは二人の宿を心配して紹介してくれたようだ。しかし幸運にもベルアートさんのとこの宿に無賃で泊まらせてもらっている二人。しかしいつかベルアートの宿を出る事になるかも知れないので、その時に声をかけさせて貰う、そうロックに話した。
夕方頃また投稿する予定ですm(_ _)m