ベルアートさん凄い人っぽい
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「おおー!」健人は感嘆の声をあげた。ようやくアクーの城壁が見えてきた。盗賊を縛った後、再度馬で移動していたのだが、間もなくそれが見えてきた。
真白の言った通り、ビルほど高さがありそうな城壁。20mはあるだろか。レンガ造りでとても壮大だ。城壁の一番上には、等間隔に三角錐の部屋があり、そこから外を監視するようだ。戦争の時に使うのだろうか? どうやら城壁はぐるっと都市を囲っているようだ。まるで中世ヨーロッパ時代にタイムスリップしたような錯覚をしてしまう。そんな雰囲気を醸し出していた。
健人はテンションが上がる。この世界の文明の一端を見た気がしたからだ。早く中に入ってみたい。無意識に馬を入り口に急がせるのであった。ベルアートが健人のそんな様子を微笑みながら見つつ、健人に遅れないよう、同じく馬車を急がせた。
入り口付近に着くと、少しだけ行列が出来ていた。入り口は、まさに中世ヨーロッパの城門のようにアーチ状になっている。その手前辺りに小屋があり、そこで兵士が数人警備をしている。
兵士が入り口で何か手続きしている。前の世界の入館手続きみたいなものかな? この世界にもパスポートがあるのだろうか?
「王都を含め、各都市には、入るのに許可が必要なのです。犯罪歴があったり、問題のある者をここで選別しています」ベルアートが説明する。
「お尋ね者は、似顔絵や容姿の特徴で判別しています。まあ、タケトさんとマシロさんはまず大丈夫でしょう。私の知人として許可を取りますから。私はここの住人で、自分で言うのもなんですが、それなりに名前の知れた商人ですので」
ちょっと照れた様子でベルアートが語る。やっぱ前の世界の入管手続きに似てるな。そしてベルアートさんはやっぱりというか、名の知れた商人だったのか。そりゃ伯爵夫妻と顔見知りなんだもんな。
そう話しているうちに、自分達の番になった。
「そこに馬に乗っている二人、一旦降りて下さい」兵士に言われ、健人と真白は降りた。
「こんにちわ。ベルアートです」兵士が二人に指示したと同じくらいのタイミングで、後ろの馬車の御者席にいたベルアートが声をかけた。
「おお、ベルアートさん。行商から今お戻りですか?」兵士が恭しく挨拶する。
「ええ。これから家に帰った後、伯爵様ご夫妻にお目通り頂く予定です。因みにその二人は、私の客人ですので、通しても大丈夫ですよ」にこやかに兵士に説明するベルアート。
「おお、ベルアートさんのご客人なら問題ありませんね。ただ、お名前と種族だけお教え頂く規則になっておりますので、そこはご協力願います」それくらいは勿論OKだ。
そして兵士に促され、詰所のような小屋に入っていく健人と真白。そして、ここでグレゴーの懸念が当たっていた事が判明する。。
兵士は皆男だったが、皆一様に真白を食い入るように見ている。間違いない。見惚れています。
「マシロ……」真白が書類に名前を記入すると、それを声に出して口走る兵士。
「マシロちゃんか」皆ずっと真白を見ていた。
「なんか気持ち悪いにゃ」真白は兵士全員からの視線を気味悪がっている。そりゃそうだよな。
そしてすかさず健人の腕にすがる真白。おい、それはここでは非常にまずいだろ。
そして詰所の中に急に殺気が沸き立つ。「グギギ」あちこちからグレゴーでしか聞いた事のなかった音が聞こえてきた。そうか。「グギギ」ってのは嫉妬音なんだな。そんな音あるかどうか知らないけど。
「と、とにかく宜しくです~」と、何が宜しくかよく分からないが、とりあえず逃げるが勝ちと決めて、ピューという音が聞こえそうなほどの勢いで、真白と一緒に詰め所を出て、急いでベルアートのところに戻った。
う~ん。グレゴーさんの懸念通りか。下心だけだったわけじゃなかったのか。健人は今後も気を付けようと思った。
真白はまだ健人にくっついている。なんかニマニマしています。こら、誰のせいで逃げてきたと思ってるんだ?
ちょっと無愛想に腕を外す。あう、という声と共に、真白のしょぼん顔が目に入った。猫耳も元気なくぺたんとなってる。
「とりあえず城門くぐるぞ」気も止めない感じで真白を促した。しょぼんとしたまま、健人の後を追う真白。
そして馬を引きながら、城門をくぐった。すると、馬車が三台は通れそうな大通りに出た。その両側には様々な店が軒を連ねていた。あちこちから喧騒が聞こえる。とにかく人が多い。賑やかなところだというのが分かる。健人はその様子を見て、再度テンションがあがった。
「おおー、これが都市かー。人が多い店が多いな!」嬉しくて仕方がない。
「おいしそうな匂いがあちこちからするにゃ。食べ歩きしたいにゃ」食い意地も張っている真白も、違う意味でテンションが高い。さっきまで落ち込んでいたが復活したようだ。
その二人の様子を微笑みながら見ていたベルアートから声がかかった。
「お二人さん。今日はとりあえず、泊まるところに案内します。私も素材を店に持って行って、グレゴーさんを屋敷へ送らないといけないので。本格的に行動するのは明日にしましょう」
「分かりました。でも、泊る場所って?」健人が質問する。
「私の商店の系列の宿です。設備も整っていて、過ごしやすいと思いますよ」ベルアートはニッコリ笑って答える。そして案内します、と言って、二人についてくるよう促した。
「ああ、それと、宿に荷物を置いたら、今日のうちにギルドに行っといたほうがいいと思いますよ」ベルアートが提案する。
そうだギルドだ。バッツから貰った紹介状もあるし、これから稼がないといけないので、どんな仕事があるか気になるし。是非行ってみたい。
しかしアクーは広い。デカい。これが都市なのか、と感心する。家は木造とレンガ造りと両方ある。服屋や八百屋、肉屋もある。おお、武器屋だ。そしてその店の前に作られている歩道には、人がごった返している。沢山の人々が往来していた。
真白も珍しいようで健人と同じくキョロキョロしている。「ヌビル村と違って広いにゃー、人が多いにゃー」健人と同じ感想だ。
そして道中、やっぱりというか、あちこちから真白に、男達の視線があるのを気にしながら、アクーの入り口から10分程歩いたところにある、ダンビルの家くらい立派な邸宅のような建物の前に着いた。
「ここがお二人に泊って頂く宿です。馬はそこの使用人に渡して下さい。裏に馬小屋がありますので、彼らが世話してくれます」
これが宿なのか? もっと質素だと思ったけど、かなり豪華絢爛だ。大きさはダンビル家と同じくらいだが、そのいで立ちや飾りつけは、確かにおもてなしを主にした装飾だ。よく見ると三階建てのようで、外観は白で統一され、大理石のようにその白い柱や壁は、太陽の日差しを反射して輝いている。入り口の赤い両扉は、高さ3mくらいはあるだろうか? 取っ手の金色の装飾も、一流の職人が作ったと思えるほど立派だ。そして入り口の扉前には、使用人とおぼしき黒服の男性二人が立っている。
ベルアートさんが使用人に声をかけると「おかえりなさいませ。旦那様」と使用人がそう答えた。
旦那様? 旦那様って答えてた。ベルアートさん。もしかして偉い人? 健人はやや緊張した面持ちで、お願いしますと一礼し、使用人に馬を預ける。そして健人に恭しく頭を下げ、馬の手綱を預かる使用人。別に俺偉くないのになんか申し訳ない気持ちになる。健人は前の世界では単なる真面目なフリーターだったのだから、小市民マインドなのは仕方ない。
馬車の中にいるグレゴーには少し待って貰う事を伝え、それからベルアートが宿に向かうと、両開きの大きな扉を使用人が開ける。恐縮して中に入ると、真っ赤な絨毯が敷かれた三十畳はありそうな、広くて吹き抜けになっている玄関フロア、あちこちにある高価そうな絵画、白塗りでところどころについている金箔の装飾、明らかに高級宿だと、この世界の知識に疎い健人でもよーく分かった。
「……豪華だ」健人は宿泊費が気になった。一応手持ちに18白金貨ある。全部使うって事はないだろうが。それでも結構宿泊費がかかりそうだ。
まあ、ここが高過ぎたら丁重にお断りして、自分達で探せばいいか、そう思って、健人は恐る恐る宿泊費をベルアートに聞いた。
するとアハハとベルアートが笑う。「お金なんて取りませんよ。お二人はお客様なんですから」と、ニッコリ笑いながら、宿泊費を拒否した。さすがにそれは気を使う。
「それは俺もさすがに図々しいと思うので、お支払いしたいのですが。でも、持ち合わせが足らなければ他に行きますし」そういうと、今度はベルアートが優しく微笑む。
「タケトさん真面目ですねえ。こういう時は甘えておけばいいんですよ。まあ、とりあえず今回はこちらの顔を立ててくれませんか? 伯爵様ご夫妻にお目通りするご客人から、宿泊費を徴収するなんて無粋な真似すると、私の面目が立ちませんので」
うう~、そういう言われ方してしまうと断れない。
「……分かりました。お言葉に甘えます」と、丁重に頭を下げた。
「こちらこそ、お話を理解頂き感謝します」同じく頭を下げるベルアート。「さて、お客様二名、ご案内お願いします」と、大きな声を出し、パンパンと手を打ち、宿の使用人を呼んだ。すぐさま女性の使用人が、ベルアートのそばにやって来て一礼する。
「伯爵様ご夫妻にお目通り頂く大事なお客様です。粗相のないように」ベルアートがそう指示すると、その使用人は、跪いて頭を下げた。
……ベルアートさんて、思っていた以上に偉い人っぽい。
夕方頃また投稿しますm(__)m