表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

49/241

テンプレも、知らない人にかかったらこうなるらしい

いつもお読み頂き有難う御座いますm(_ _)m

「もうそんな時間か」


交代のためか、真白がテントからゴソゴソ出てきた。健人は現在野営の警備中だ。時間にすると午前ニ時頃だろうか? もう真夜中なので、薪の火を頼りに、座って本を読んでいた。


「ちょっと早かったけどにゃ」ニコニコしながら、健人の隣にちょこんと座る。


「真白。この本面白いよ。この世界の色んな事が書いてある」そう言って真白に、ベルアートから借りた本を渡した。

 

 ありがとにゃん、と言ってそれを受け取って、 それからおもむろに「ふふーん」とか言いながら、健人にもたれて、肩に頭をちょこんと乗せる。猫耳がピクピク動く。健人の顔にちょっと触れてこそばゆい。


 健人は真白の遠慮ない甘えた様子に困っていた。どうしよう。嬉しい。いや、ダメだ。今はまだダメなんだって。


「真白。んじゃ俺寝てくるよ」ぎこちなく真白の頭をどけて、テントに入っていこうとする健人。


「あ、待ってにゃ」切なそうに健人を腕を取って止める真白。


「もうちょっと、一緒に居てほしいにゃ」恥ずかしそうに上目遣いでお願いする真白。


「~~~」あーもう! 俺だって我慢してんだぞ! そんな可愛い言い方するなよ! 卑怯だ! と心の中で叫びながら、真白の横に無言で無造作に座った。結局真白のお願いを聞いてやる健人。


「ありがとにゃん」ちょっと無愛想な健人のその動作にも、嬉しそうに猫耳を立ててまたもピクピクする真白。そしてさっきのように健人の横に座って、健人にもたれて、肩に頭を乗せるのだった。


 数分ほどそのまま、健人と真白は黙っていた。健人に寄り添う真白。いつの間にか真白の手が健人の手の上に添えてある。が、健人がそろそろ耐え切れなくなって、「そろそろ俺寝るな」と、手を離し、逃げるようにそそくさとテントに入っていた。


 あ、と何か言いかける真白だが、「ま、いいにゃ」ちょっと残念そうに呟く。もう少しそうしていたかったが、それでも満足できた真白は、気を取り直して健人から借りた本を読み始めた。


 次の日はやや曇り空だが、雨が降る気配はない。少し湿気た空気だが、風はあまりなく、今日も順調に進めそうだ。魔法で水を出し、顔を洗う。健人は朝食の準備をする。以前ダンビルの家でも作った、固くなったパンを崩してスープに入れ、ヤギのミルクと野菜を煮込んだスープで作ったポタージュと、鹿の肉を塩コショウで味付けして焼いたものだ。


 ベルアートはそれを美味そうに食べる。グレゴーがようやく起きてきたようだ。


「お、おはよう」ん? 挨拶したぞ? 


「おお、お早うございます。グレゴー神官。挨拶されるなんて、どういう風の吹き回しです?」結構辛辣ですね、ベルアートさん。


「いや、あんたの言った言葉が突き刺さってな。儂も変わらないといけないと思ったのだ」そう言うといきなり皆に頭を下げた。


「済まなかった。失礼な事を沢山申してしまった。許せというのは難しいかもしれんが、何卒容赦して欲しい」今までの態度が嘘のように変わったその様子に、真白さえもびっくりしていた。


「まあ、私も偉そうだったにゃん。私もこれから気をつけるにゃん」そんな殊勝な態度を取られると、さすがに真白も偉そうに出来ない。


「マシロ。済まなかった。お主の気持ちを考えず、自分の気持ばかり押し付けてしまった」再度頭を下げるグレゴー。


「い、いや、もう大丈夫にゃん。気にしないのにゃん」顔が引き攣ってる。相当驚いている。


「儂も、タケトのように頑張って魅力的な人間になれるよう、努力する」いや、俺が魅力的とか言わないで下さい。ものっすごい恥ずかしいです。


「まあ、とにかく朝食をどうぞ」健人も顔を引き攣らせながら、グレゴーに朝食を勧めた。


 それからグレゴーは大人しくなった。ただ、それでもやっぱり真白は気になるようで、道中馬車の中からチラチラ見ていたが。相変わらず真白は健人が乗る馬の前に跨っている。昨日までのグレゴーならグギギって言ってただろうが、今日はチラチラ見るだけだ。


「儂は嫉妬する資格さえないのだ。正直タケトが羨ましい、妬ましいが、本来はそんな感情も持ってはいけない。儂はマシロにとって、タケトより魅力のない人間なのだから」素直なのはいいけどちょっとへりくだり過ぎかも知れない。


 そして平和になって良かった良かった、と、喜ぶベルアートがそこにいた。


「結果的に更生がうまくいきましたね」そう言えばそういう理由でヌビル村に来たんだった。


 それから旅は八日目に入っていた。魔物も出ず好天にも恵まれ順調に旅は続く。すると、道の両側の深かった森が開けてきて、道がどんどん広くなってきた。今までは馬車一台通れる程度だったのが、一気に三台は通れるくらいの広さになった。


「近くなってきましたね。そろそろ見えてきますよ。大きな城壁に囲まれているので、そのうち遠くからも分かると思います」


 と言ったと同時に、目のいい真白が「あ、あれかにゃ?」と指さした。まだ俺達には見えていないが。


「健人様、凄い大きいにゃ! 前の世界のビルくらいあるかもにゃ」そんなに高いのか。楽しみだ。


 そうやって、逸る気持ちを抑えながら、広くなった道を進んでいると、真白の猫耳がピクっと動いた。


「健人様、ベルアートさん、ストップにゃ」真白がそう言って二人の馬を止めるよう指示し、そして辺りを警戒する。


「何か林に隠れているにゃ」


 ここに来て魔物か。道中、時間のある時真白とたまに訓練はしていたが、どれだけやれるか試してみたい。もし強くて倒せなかったら、ベルアートさんとグレゴーさんだけ逃げてもらおう。あ、白いオッサンって言うのはもうやめました。心入れ替えたしね。そんな風に健人が心の中で呟いていると、


「……ん?」真白が何かに反応した。「人間なのかにゃ?」


 健人が真白に確認すると、どうも話し声が聞こえるらしい。人間の言葉を話せるオーガロードみたいな強敵か? 健人は警戒して身構える。


 するとベルアートが警戒するように小声で話す。「マシロさん、多分盗賊です」


 盗賊? 健人がそう疑問に思っていると、いきなりナイフがベルアートのところに飛んできた。咄嗟に大剣を出して弾く事が出来た。急な展開に、一旦真白と共に馬から降りる。御者をしていたベルアートには、一旦グレゴーのいる馬車の中に入って隠れてもらう。


「おいおい。護衛二人かよ。しかも一人は超いい女。俺の女にするか、娼館に売るといい値段つきそうだな」


 そう言いながら、そう話したリーダーっぽい男と、他にも10人くらい、へっへっへっと人相の悪い顔で薄気味悪く笑いながら、明らかに見た目盗賊達が、各々武器を手に現れた。


 人間だ。多分盗賊だ。そして武器持ってる。そしてなんか悪そう。あ、これ、悪役さんだ。やられキャラだ。


 それを見た健人はいきなり「ブフゥッ」と吹き出した。


「こぉらガキィ、何が面白いんだ?」健人の様子を見た盗賊が悪態をつく。わかり易すぎる悪役の言葉に、健人はそのまま腹を抱えて「ウワハハハハ! やめてくれえ! 面白すぎる! 悪役! チンケな悪役そのままやー!」と大爆笑していた。


「お、俺の事ガキィ! シャキーン! (※健人の頭の中で響いた効果音ですね)とか言ったー!」余程面白いらしい。


 真白も、その悪役達も、突然発作のように笑っている健人の様子にポカーンとしていた。しかしすぐに盗賊達は、自分達が馬鹿にされて笑っている事に気づくと、


「この野郎! 俺達バカにしてんのか!」と、怒りながら、健人に剣で上から飛び掛かって斬りつけた。


 アハハハと笑いながら健人がそれを避ける。更に他の盗賊達も、次から次へ健人を襲いかかるも、ひらりひらりと躱して全く当たらない。その最中も健人の笑いは止まらない。当たらないし笑われるしで、いい加減腹が立ってきた盗賊達。


 最初にベルアートにナイフを投げた盗賊が叫ぶ。


「この野郎! おちょくってんのか!」イライラして怒鳴る。


「違うぞ、からかってんだぞ」健人が笑いながら答える。


「「「一緒だろ!」」」 一斉に突っ込まれた。


 更に怒りのボルテージがあがる盗賊の一人が、真白を指さし、

 

「てめぇ! いい加減にしやがれ! そこの女がどうなってもいいのか!」と、大声で怒鳴る。


「ウワハハハ!てめぇだって! てめぇ! って言われた! どうぞどうぞ」笑いすぎて苦しくて、そういうのが精一杯の健人。


「どうぞどうぞって……」怒りが若干引いた盗賊達。まさかお勧めしてくるとは思わず、唖然とする。


「もう健人様、そんな言い方ないのにゃ」プクーとふくれる真白。


「いやだって真白。ワハハハハ。こんな奴らに負けないだろ。ブワハハハハ」健人笑いすぎ。


 相当怒り狂った盗賊達は、次は真白に狙いを定め、何とか捕まえようとするが、当然ながら捕まらない。こちらも全く捕まらない。ひょいひょい躱される。


「こいつら人間だけど攻撃していいのかにゃ?」躱しながら馬車の中で様子を見ているベルアートに質問する。魔物しか相手にした事がないので、怪我させたら問題になるのかも知れないと、真白は思ったのだ。


 ベルアートが馬車の中から真白に聞こえるよう、大きな声で答える。「大丈夫ですよー。善良な民を傷つけ物を奪う悪者ですからー。魔物とある意味同じですよー」


「わかったにゃ。ほら、健人様、ちゃっちゃと倒すにゃ」それを聞いた真白が、ようやく笑いが止まった健人に盗賊達を倒すよう促す。だがまだ笑いを堪えているっぽい。よほどツボったんだろう。


 真白はそんな健人の様子にため息を付きながら、とりあえず行動する。疾風の如く盗賊達の後ろに周り、真白の動きに驚く暇もなく首に打撃を食らい、そのまま地面にうつ伏して気絶していく。多分殺すのは良くないだろうと真白は判断し、全て気絶させる事にしたのだ。


 健人もようやく落ち着いて、正面の一番偉そうな盗賊に向き合い、大剣の柄を前に着きだして構え、そして一瞬で突進して近くまで行き、その盗賊が驚き急いで反応しようとするのと同時に、大剣の柄をみぞおちに入れて、気を失わせた。


 そうして健人と真白で、盗賊全てをものの数分で倒した。


「はあ、はあ、ぜー、ぜー、こいつら、面白すぎ」落ち着いたが呼吸は荒い健人。命懸けの必死な戦いをしたわけではないのに、肩で息をしている。


「健人様笑いすぎにゃ」ちょっと呆れる真白。


「いやあ、こんなにわかりやすい雑魚キャラって凄くないか?」


 大きな街に入る前には、盗賊に襲われるというテンプレが存在するという事を健人は知らない。なので健人は、まるでヒーロー物に出てくる沢山の悪役(◯ョッカーみたいな感じですね)とダブったのだ。もしくは〇斗の拳のモヒカン軍団。一般の人々を襲うわかりやすい雑魚悪役が、相当面白かったようだ。


「しかしまあ、相当弱いなこいつら。こんな弱いのによく盗賊なんてやってるなあ」健人はその盗賊達の無謀さに若干呆れる。


「タケトさん。我々行商人や一般の民は、普段戦闘などしませんから、このレベルの盗賊でもかなり脅威なんですよ。お二人が単に強いだけです」


 盗賊達が片付いたので、馬車から出て来て説明するベルアート。


 まあ、確かに自分も最初の頃は、弱いゴブリン相手に何も出来なかったもんな。ある程度戦えるようになっているのかな? 

ほんの少しだけ自信をつけた健人だった。大笑いしたけど自信になったよ。ありがとう、盗賊達。


「ベルアートさん。こいつらとりあえずどうすればいいんです?」ようやく落ち着いた健人が、地面に倒れている盗賊達を見まわしながら、ベルアートに質問する。さすがにこのまま道の真ん中に放置だと邪魔になるし、かと言って自分達が全員連れていけるほど、馬車のスペースに余裕がない。


「また悪事を働いたら困りますし、この辺りの木にくくりつけといて下さい。アクーに着いたらギルドか兵士に伝えて、引き取ってもらえばいいかと」


 なるほど。兵かギルドで処理してくれるらしい。健人と真白はベルアートに言われた通り、気絶している盗賊達全員を、紐で近くの木にくくりつけ、そして再びアクーに向かった。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ