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門出

これで第一章終了します。

お読み頂いている方々感謝ですm(__)m

思ったより長くなってしまいましたが(;'∀') とりあえず区切りまで書ききる事が出来ました。

全くの初心者で、見苦しい点も多々あったかと思いますが、それでも読んで下さる方々に感謝ですm(__)m

もし宜しければ、これまでの感想(叱咤でも苦情でも)、レビューまた評価などして頂ければ

励みになります。宜しくお願いしますm(__)m

ブックマークもして頂ければ嬉しいです。

「ふにゃあ~、よく寝たにゃ~」


 もう既に太陽が顔を出している、いつもより遅めの朝、真白は目を覚ました。いつもは農作業のため、朝日が昇り切らない時間に目を覚ますのだが、今日は農作業はしない。今日から村を出てアクーに向かうのだ。今日も晴天。旅に出るには最高の天気だ。


 窓を開けてみる。春の陽気のような暖かさの中に、乾いた心地いい風がヒュンと吹き抜ける。いつもの鶏の鳴き声と、草原からやって来る快い草木の香り。うん、いい朝だにゃ。


 そして旅の支度を整え、着替えて下に降りようとした時、机にコップが置いてあるのを見つけた。


 それを見て昨晩の事を鮮明に思い出してしまった。


「ぎ、ぎにゃあああああああーーーー!!!!」大絶叫だった。


 「な、な、なんという事をしでかしてしまったんだにゃ! た、健人様と、チ、チッスまで、ふ、ふぎゃあああーー!!」


 もうなんかどっかの怪獣みたいな咆哮をする真白。


「そういやいつの間にか自分の部屋に戻っているにゃ。多分健人様が運んでくれたんだにゃ。お姫様抱っこでかにゃ。にゅふふ~それは嬉しい……いや、そんな事でニヨニヨしている場合じゃないにゃーー! 私は馬鹿かにゃーー!」


 ものっそいテンパってる真白。昨晩の事はよーく覚えていた。


 昨晩、ダンビルと話しして皆して泣いて、それから部屋に戻って、真白は(想い)というものについて、考えていた。特に健人に対しての自分の(想い)。最近はますます我慢している自分が辛かった。


 告白したからって何も解決しないし、成就する訳でもない。ほんと厄介な気持ちだけど、この恋心っていうのは、逆に色んな力になったり、幸せを与えてくれるものでもある。それも知っている。


 元猫の真白には、この人族特有の恋心がもどかしくて仕方なかった。気持ちを伝えたくて仕方がない。


 明日からまた健人とは一緒に行動する事になるし、これからもずっと一緒だろう。なら、黙っていたほうが、健人に変な気を使わせる事もなく、平穏に過ごせるはず。


 そんな常識は分かっている。でも、恋心はいつも非常識を求めてくる。


 モヤモヤするのは苦手だし、我慢するのは嫌いな猫。じゃあ、酒の勢いを借りてアタックしてやる。そう思って、健人の部屋に突撃したのだった。


 しかし、まさか自分があそこまで大胆な行動を取るとは思わなかった。お酒怖い。お酒凄い。


 キス以上もいけるかも、と、期待していた事は、絶対に内緒にしておこう。理性と知性が、それは内緒にしとけって言ってるし。


 既に起きて朝食をとっている男性陣は、下の食堂でその大絶叫を聞いていた。


「マシロの声か? どうしたんだ?」ダンビルが気にしている。


「むう。儂が治癒してやった方がいいのか?」余計な事を言い出すグレゴー。


 カインツとベルアートも訝しげに上にある真白の部屋を見上げている。


「まあでも、きっと大丈夫ですよ」健人は理由が分かっている。が、別の意味で気にしていた。内心健人はドキドキしていた。真白と目があったらいつも通りに出来るだろうか? 


 正直昨晩の真白はめちゃくちゃ可愛かった。いや、もとより容姿はいいんだが、昨晩のあの出来事は、真白を初めて、一人の女性として見てしまった。キスまでしてしまうなんて。ほんと昨晩は一杯一杯だった。よく持ったな、俺の理性。


 真白の部屋に運ぶ時も、色っぽさが残っててほんと困った。何とかお姫様抱っこして連れていく事が出来たが。なんで下半身、下着以外着けてなかったんだよ? 昨日来た時はショートパンツ履いてると思ってたのに、上のシャツで隠れていたとは。まあ、昨日の真白はあれだけ迫られて、じろじろ見る機会なかったけどね。白い綺麗な二本の肢体が露になって、もういいや、このまま襲ってしまおうかって、頭によぎってしまうくらいだった。


 でも、昨日の事で、真白は、俺の事を真剣に考えているのも分かった。正直俺は逃げていた。半端な恋愛しかしてこなかった俺なんかに、あんないい子を受け入れる権利はないと思っていたからだ。


 じゃあ、俺が変わればいいのか。


 そうやって、健人は朝食の後片付けをしながら一人あれこれ考えつつ、自身の本心に気づきかけたところで、ロボットみたいにぎくしゃくした様子で真白が降りてきた。なんかガシャーンガシャーンとか聞こえそうな足取りで。


「お、おはよう、ございます、にゃ」食堂にいる皆に、ぎごちない挨拶をする真白。


「お、おう、おはよう」健人が引き攣った笑顔で返した。同じくぎこちない。


「お、おはようですにゃー」こそこそ小さい声で返事してそそくさと食卓の席に着く真白。明らかに様子がおかしい。健人には理由は分かっているが。


「どうした? 大丈夫かマシロ」ダンビルが心配する。「せっかく今日は大事な門出なのに。体調でも崩したか?」


「いや、大丈夫ですにゃ。心配かけてごめんなさいにゃ」慌てて真白が恐縮して謝る。


「そうだぞ。マシロに何かあったら儂が心配するではないか」グレゴーが心配そうな顔で話す。


「お前は死んどけにゃ」さっきまでのあわあわは一体何だったのか。一瞬でスッと冷たい目になりグレゴーを一瞥する真白。うわあ冷たい。殺しそうなほどに冷たい。そしてダイヤモンドダストが舞い散るばかりの冷たい一言。


 ええ~、とうなだれるグレゴー。今のはちょっと可哀相だ。


「と、とりあえず朝食終わったら、もう出発だから」ぎこちなく話す健人。


「は、はいにゃ」同じくぎこちない真白。


 それなりに大人の三人は、「ははーん。昨晩なんかあったな」と気づくが、同じくそれなりに大人の白いオッサンだけは全く気づいていなかった。


 ※※※


 ダンビルから馬を一頭貰った。餞別に持って行けと言われ遠慮なく貰う健人。健人の前は当たり前のように真白が跨る。その様子を見てグギギと恨めしそうに睨むグレゴー。もうめんどくさいからスルーしてる二人。そして二人の荷物は、ベルアートが引いてきた荷馬車の中に置いて貰っている。


 今回、ベルアートと、一緒に戻るグレゴーの警備を任されている二人だが、その報酬は断っていた。その報酬の代わりとして、健人の知らない色んなこの世界の常識を教えて貰う事にしたのだ。


 カインツと兵士達も、これからケーツ村に出発するようだ。方向は逆なので、ここでお別れとなる。


「じゃあ、タケトとマシロ。また会う機会があったら宜しくな」


 こちらこそ、と、カインツ達に手を振った。


「じゃあダンビルさん、行ってきます」 「ダンビルさん、また必ず戻ってくるにゃ」


 そして、二人はダンビルにお別れの挨拶をする。


「ああ、頑張れよ。帰ってきた時には二人の子どもがいたりしてな」ガハハと快活に笑うダンビル。


「洒落にならないっす」健人はまさかダンビルがそんな事言うとは思わず、びっくりして背中に汗ををかきながらおどおどする。何か気づかれたのだろうか? まさか昨日のやり取りは知られてないと思うが。


「た、健人様との、子ども、ふきゃあ~~」一方真白はなんか想像して顔を赤くして、顔を両手で覆ってイヤイヤンってなってる。照れないでくれ。なんでかこっちも恥ずかしくなるから。健人も何故か顔が赤い。


「とにかく、ありがとうございました」 「あ、ありがとうございましたにゃ」


 恥ずかしそうにしながら最後の挨拶する二人に、ダンビルは笑顔で手を振っていた。昨日既にお別れをしていたので、ここは気軽に挨拶出来た。


 それからダンビルの家を出て、馬を引いて村の出口に向かう。広場が近づいてくると、ジルムやバッツ、それとエリーヌ、他に村の皆がそこに集まっているのが見えた。皆二人を送り出すために集まっていたようだ。


「タケト、頑張れよ、また戻ってこいよ」


「俺ももしかしたらいつかアクーに行くかも知れないから、機会があれば会おうな」


「マシロちゃん、タケトのハートをゲットよ」


 ジルム、バッツ、エリーヌがそれぞれ笑顔で声をかけてきた。エリーヌさん、あなた何言ってるの?


 他の村民達からも声をかけられ、笑顔で手を振って答える二人。答える村の皆も笑顔だ。


「タケトさんとマシロさんは、本当にこの村の人々に好かれていたんですね。まるでこの村の人みたいだ」


 ベルアートはその様子を見て微笑んだ。


「そうですね。俺の中では、この村は俺の故郷です」


「私もにゃ。この村はほんと、私の大事な故郷だにゃ」


 健人と真白は二人、笑顔でそう答えた。







今日の夕方頃から第二章開始します。

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