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悲しいね。さよならはいつだって

いつもお読み頂き有難う御座いますm(_ _)m

感想、レビュー、頂けたら有難いですm(_ _)m

「よし。これで素材分の支払いは終了ですね」


 ベルアートは、ゴブリンチャンピオンの大槌と大斧、そしてオーガロードの目と牙、更に十二角形のクリスタルを、健人とダンビルから預かり、そして支払いをした。大槌と大斧はそれぞれ三金貨、オーガロードの目は五金貨、牙は十本ほど使い道のある牙があって、合わせて一金貨だった。これらの売れたお金は、ダンビルに受け取ってもらった。最初断っていたダンビルだったが、健人も真白もお世話になっているので、その分のお返しとして持っていて欲しいとお願いし、渋々ダンビルは了承したのだった。


 ゴブリンメイジが残した土の魔法クリスタルと、魔力が入ったクリスタルは、共に売らず、村で使う事にした。土を耕したりするのに土魔法は便利らしい。そして健人は、12角形のクリスタルの分、十八白金貨を受け取った。


「硬貨のお金は、先程も言いましたが今は手持ちではないので、アクーに着いてからお支払いします。それまでタケトさんが持っていて下さい」ベルアートからそう言われ、了承した。


 そして村民達へお別れの挨拶をしたいので、出発は明日にしたい旨をベルアートに伝えると、ベルアートは笑顔で、そうでしょうね、と了承した。それから健人達は、ベルアートが今日売買した素材を、荷馬車に載せるのを手伝ってから、お世話になった村の人達へ挨拶に行った。


 まずはバッツの家に行った。バッツとエリーヌは、二人がいつか出ていくのは分かっていたので、嬉しそうに門出を喜んでくれた。……エリーヌが何か真白に耳元で囁いてるようです。 


「マシロちゃん、タケトはああ見えて結構モテると思うから、早めに気持ちをゲットするのよ」


「で、でも私、獣人にゃ」


「あら、そんなの関係ないわよ。気にしちゃ負けよ」エリーヌがフフっと微笑む。


 顔が赤くなる真白。何を二人でコソコソ言っているのだろうか? ふとエリーヌさんが俺の視線に気づいて、「タケトも頑張りなさいよー」と言ってくれた。何を頑張るのだろうか? これからの事かな? しかしほんと、エリーヌさん、そしてジルムとバッツにはお世話になった。特にバッツがいなければ、俺が戦えるなんて分からなかっただろうし。


「バッツ、ほんと色々ありがとな。お前のおかげで色々出来る事が分かったよ」そんな事を考えつつ、しんみりしながらお礼を言う健人。


「湿気た面すんなよタケト」ワハハと笑いながら背中をバーンと叩く。咳き込む健人。結構思い切り叩かれ、つい痛い! と叫んでしまう健人。


「ああ、それと、タケトちょっと待ってくれ」何か思い出したようにそう言うと、一旦家に入っていき、すぐさま何かの紙を持ってきた。


「これ、俺の紹介状。アクーのギルド長に見せるといい」と言って健人に渡した。「きっと役に立つぞ」


「何から何まで、すまないなバッツ」健人は素直に頭を下げた。


「だーから! 湿っぽくなるから真面目くさって挨拶すんのやめようぜ!」ちょっと涙目になっているバッツが、無理に大声で笑う。


「そうだな」健人もつられて笑う。「きっとまたここに帰ってくるから」と言ってバッツと握手をする。


「私からもバッツ。ありがとにゃ」そして真白もお礼を言う。「バッツとエリーヌさんのおかげで、私も強くなれたにゃ」滅多に健人以外には見せない、素敵な超絶猫耳美少女スマイルを、バッツに浴びせる。


 ドキューン、という音が聞こえそうなほど、撃ち抜かれた様子のバッツ。


「マ、マシロちゃん。俺のかのj」「お断りにゃん」 速攻だ。(じ)の文字が打ち込めない程速攻断った。なんて早技だ。


「というか、獣人の私とお付き合いなんか出来るのかにゃん?」前から気になっていた真白は、良いタイミングだと思いバッツに聞いてみる。獣人と人族は付き合えるのかどうか。


「へ? 当たり前じゃん。アクーに行けば混血種(ミックス)なんか沢山いるよ? まあ獣人と人族ってのは珍しいけど」


 ほ~、いけるのにゃ~ と、フフンと凄く嬉しそうに聞いてる真白。これで不安はなくなった、という顔だ。満面の笑みだ。


「まあでも、バッツはお断りだにゃん」二回も振った。別に一回でいいはずなのに。二回振った。


「ああ、はいはい分かってますよ。どうせマシロちゃんはタケトの事が……」と、言いかけて、何故か真白の鋭い蹴りがバッツの腹にズドーンと決まる。


 ふぐぅ! と蹲ったバッツの胸ぐらを掴んで持ち上げ、「それ以上言うなにゃ? あ? 分かったかにゃ?」とまるでヤのつく人みたいにああん? と脅している。真白さん怖いです。

 

 真白は、健人に対する気持ちが伝わるとしたら、他人が勝手に言って伝わってほしくないのだ。伝えるなら自分の口からじゃないといけない。バッツの嫉妬心が原因で偶然伝わるとか許せないのだ。


「は、はい。ごめんなさい」凄く素直に謝るバッツ。可哀想なバッツ。二回振られてしかも蹴り食らわされてる。だが、失恋とはいつも痛いものなのだ。心も体も。多分きっと。


 そんなコントみたいな二人のやり取りを、健人は若干頬を引き攣りながら見ていた。


 その後ジルムにも挨拶に行く。あいつもバッツと同じくこの世界で初めて出来た男の友達だ。


「そっか。明日なんだな。お前らがいつかこの村を出ていくのは分かっていたけど、ハハ、やっぱちょっと寂しいな」少し涙目だ。そう言ってくれて嬉しいね。


「ジルムも元気でにゃ」真白が初めてジルムの名前を呼んだ。


「ハハ、マシロちゃんようやく名前呼んでくれたね」グスっと涙ぐみながら、それでも笑顔で真白に話す。


「ま、暫くお別れだしにゃ。そしてジルムはバッツよりは気持ち悪くなかったにゃ」そういう基準で見てたんですね。


 ハハハ、と真白のその言葉に、乾いた笑いしか出てこないジルム。まあ、ジルムも真白を気に入っていたけど、バッツほど必死じゃなかったかな? ジルムくらいの距離感が普通なんだよな。


 そしてジルムにも、また必ずここに戻ってくる事を伝えて、最後に握手をして別れた。


 そして他のお世話になった村の人達に挨拶した後、家に帰ってきた時にはそろそろ夕方に差し掛かろうとしていた。


 ※※※


 今は既に夕暮れ時だ。外の空気は少し冷たい。風もなく穏やかだ。少しだけ顔を覗かせている夕日が、そろそろ夜に差し掛かろうとしているのを知らせてくれている。


 ベルアートとグレゴー、そしてカインツは、ダンビルの家の客室に泊まる事になった。兵士達は、村の各家の空いているところに、それぞれ分散してお邪魔している。


 健人は一人、調理場で夕食の準備をしていた。イノシシの肉が沢山あるので、思い切ってステーキを振る舞うつもりだ。焼き加減と塩コショウのタイミングを間違えず、キチンと筋を切って、強火の後弱火で蒸らし、ミディアムで焼き上げる。ソースは肉汁を使う。ウスターソースもケチャップも醤油もないのが辛いが。


 要するにキチンとしたステーキの焼き方だ。ただ単に焼くのとは全然違う。それを実践してみた。ただ、この焼き方は牛肉の場合のやり方なのだが、案外上手く行ったようだ。


 そして野菜が沢山あるので、沢山煮込んでコンソメスープを作り、それを山羊のミルクと混ぜて、なんちゃってポタージュを作った。本当はコーンがあればいいのだが、無いのでヤギのミルクで代用した。コンソメスープがいい感じに下味をつけてくれているおかげで、まあまあ美味い。そこに、クルトン代わりのパンを細かく切ったものを入れた。


「タケトさんは前の世界では料理人だったのですか? こんな美味しいステーキ、初めて食べました」ベルアートがはしたなくもぐもぐさせながら感想を言う。


「確かに、そう思わせるくらいこの料理は美味い。このミルクで作ったスープも最高だ。特に私は兵士だから、遠征先では固いパンと干し肉が多いからな。私にとって相当なご馳走だ」カインツも料理に賛辞を送りながらバクバク食べている。


「ふん。やっぱり質素だな」と、悪態付きながら食べるグレゴー。でもあなたが一番スープをおかわりしてますよ。


「なんかこそばゆいな」そんな大した料理じゃないのに。苦笑しながら、皆の褒め言葉を聞いている健人だった。


 その様子を一人、寂しそうに見ながら、そして時折笑顔で、健人が作った料理を忘れないかのように、何度も咀嚼するダンビル。


 そしてふと、今度は真白を見る。真白もうまうま~ととても美味しそうにステーキにかじりついている。猫だからか、熱いのは苦手みたいで、ふぅふぅいいながら、スープはかなり冷ましてから飲んでいた。


 真白のそんな様子も、静かに微笑みながら見ているダンビルだった。





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