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白いオッサンの想い。え?どうでもいい? 

夕方頃また投稿しますm(__)m

 グレゴーの手が眩く光り、そしてそのままエリーヌの両腕に光が注がれる。エリーヌは冒険者の頃、治癒魔法を受けた事があったので、特に驚きもせずじっとしていた。


「よし。もう終わったようね」エリーヌはおもむろに両腕の当て木を自ら外した。「あー、やっぱり動けるっていいわね~」と、ようやく開放された気持ちを隠す事なく、嬉しそうに言葉を発した。


「グレゴー神官、有難う御座います」そして頭を下げお礼を言うエリーヌに対し、「う、うむ。感謝せよ」と、俯いたまま返事をするグレゴー。


「こら! ちゃんと相手の顔見て返事するにゃ!」と、真白がグレゴーの首を持って、半ば強引にエリーヌの方に顔を向けさせる。なんかグリって音が聞こえたのは気のせいにしておきます。


 グレゴーは首の後に、柔らかくて気持ちいい感触を感じていたので、グリっとされてエリーヌに向き合った時は、痛いはずなのに少しニヤニヤしていた。


「ほら! もっかい言うのにゃ!」その柔らかくて気持ちいいものの持ち主は、そんなグレゴーの様子には気づかず、首をしっかり持ってエリーヌに向け、挨拶を促す。


「う、うむ。もう良い」と、返事かどうか微妙な返事をエリーヌに返した。そんな不器用なグレゴーの返事に苦笑いするエリーヌ。そして、うーん? 神官ってこんな感じだったかしら? と、真白の言いなりになっているそのヘタレ神官を見て疑問に思ってたりする。


「こいつはこれでいいんだにゃ」そんなエリーヌの気持ちを察したかのように、ニコーと笑いながらこいつと言った真白。……まあいいか。と、これ以上詮索するのはめんどくさくなったエリーヌ。怪我さえ治して貰えば正直どうでもいいのである。


「と、とにかくこれで怪我人全員の治療は終わりだろう? 戻るぞ」そして何だか気まずそうに、そそくさと先に出ていくグレゴー。


「あ、勝手に行くなにゃ! エリーヌさん、またですにゃ」と、先々出ていくグレゴーを、急いで追いかけていく真白。


「なんか慌ただしいわねえ。ま、治ったからいいけど」二人のやり取りを見ながら、不思議に思うもなんか面倒っぽいからスルーしとこう、と思うエリーヌだった。


 そして先に出ていったくせに、真白が追いつくのを待っているグレゴー。「ほら! 何やってる! 遅いぞ!」と真白に振り返りつつ大声で注意する。


「は? 私を待つ必要ないにゃ。ダンビルさんの家分かるにゃ? 勝手に先行ってろにゃ」グレゴーが待っていた事を、当然気にする様子もない真白。


「と、ところでマシロ。お前メディーに来い。儂が面倒見てやる」なんか緊張しながら唐突に真白によく分からない提案をするグレゴー。


「儂はこう見えて王家の血を継いでおる。まあ、だから光魔法が使えるのだが。だから儂の家はそれなりに格式が高く、相当広いのだ。お前が住む部屋も用意できる。メイドもつけてやる。とにかく悪いようにはしない。儂の家に来ればいい」


 当初とは相当違う、彼なりに優しい口調で提案するグレゴー。まあ、それでも下心見え見えなのだが。


「なんで私がお前のところに行かないといけないにゃ? 私は健人様と一緒なんだにゃ」なんだか上から目線の言葉に腹が立ち、ツーンとした態度で拒否する真白。まあ、真白も年上のグレゴーにお前呼ばわりしているが。


「お、お前だと? く、くそ、儂にはグレゴーという名前があるというのに。そ、それよりタケト様だと? じゃああの男がいなくなれば、お前は儂のところに来るのか?」本音ダダ漏れのグレゴー。


「……健人様が居なくなれば、だとにゃ? ど・う・い・う・い・み・にゃ?」またもアサシンアイのブリザードスマイルで、グレゴーを脅すように話しかける真白。


「い、いや違う! 消そうとか殺そうとか、そうじゃなくてだな」おっかなびっくり、真白の凍てつくような視線に、慌てふためきながら弁明するグレゴー。


「まあ、健人様がメディーに行きたいって言ったら一緒に行くけどにゃー」だが、ふといつもの表情に戻り、一応グレゴーの言葉に答える真白。


「でも多分、メディーは行かないかにゃー。多分アクーに行くにゃ」事前に健人から計画を聞いていたので、多分そうなるだろう、と答える真白。


「アクーか」そういったままグレゴーは黙ってしまった。


 はあ、モテる女は辛いにゃー、と聞こえないくらいの呟きを吐く真白。そりゃやっぱりグレゴーの気持ちに気づきますよね。


「しかし、真白ほど美しく顔貌が整った獣人は相当珍しいのだぞ。お前が、この村を出て都市や王都に行けば、きっと大騒ぎになる。だから匿ってやりたいと思っておるのだ」


 これはグレゴーの半分本音半分下心だ。この世界でも、真白の美貌は相当なのである。王都という、人が最も多いところに住んでいたグレゴーが思うほど。そして自分が美しく顔貌が整った、と最高の評価をされても、全く気にする様子もなく別の事を考える真白。もっとも、この言葉を健人が発していたら、また変わっていただろうが。


「やっぱり獣人って、余り人族に近い人って少ないみたいだにゃ」そっちの事実の方が興味があった。


 全く見当違いの真白の言葉を聞いて、イライラするも真白には強く当たれないグレゴーは、一人ぶつぶつ言いながら、とりあえず真白と共にダンビルの家に着いた。


「ただいまにゃー、皆治してきたにゃー」治してきたのはグレゴーですけどね。


「おう、真白。お帰り」ちょうど玄関の広間にいた健人は笑顔で迎える。そして真白の後ろから、健人をグギギと睨むグレゴー。


「……オッサンの嫉妬はカッコ悪いっすよ」ため息を付きながら、小さく呟く健人。ちょっとおちょくってやるか。


 おもむろに真白に近づいて、肩に手を回す健人。はわわ、とびっくりして、でも嬉しそうにはにかんだ笑顔を健人に向ける真白。


 その後ろで大きく口を開けて、愕然とした顔でその様子を見ている白いオッサン。そしてガクーンという音が聞こえそうなほどうなだれ、四つん這いになってその場にへたり込んだ。


 ……おいおい。さすがにいい歳したオッサンの行動じゃないだろ。健人はグレゴーの様子に心底呆れてしまった。ここまでダメージ食らうとは。


 健人は前の世界でバンドをやっていた事もあり、女性にはそこそこモテたので、女性の扱いには慣れている。一方グレゴーは、自分の権力や立場を利用した接し方しか知らない。


 うーん、ちょっとやり過ぎたか。てかいい歳してこの程度で動揺しすぎだろ。とりあえずそのまま、健人は真白を二階の自分の部屋に誘う。四つん這いで項垂れている白いオッサンは放置して。


「あ、あの、健人様。どうしたのにゃ?」ドキドキした様子で恥じらいの表情を見せながら、肩を抱かれたままの真白が、健人の顔を見て聞く。猫耳が緊張のせいなのかピクピクしている。さすがに顔が近い。そしてさすが超絶猫耳美少女。健人もつい真白の頬が赤い顔を見てドキっとしてしまった。


「いや、オッサンおちょくったんだよ」そして肩から手を離して、「そして大事な話があってね」と、急に真面目な顔をする。


 雰囲気の変わった健人に、真白も居直す。二人は部屋に入って椅子に座って向かい合う。


「突然だけど、今日、村を出ようと思う。ベルアートさんを護衛しながらね」


「今日? ですかにゃ?」急な話に驚く真白。


 そして健人は、ベルアートやカインツ、ダンビルと今日話しした内容について伝えた。


「ケーツ村に行く予定だったベルアートさんが、行かずに今日帰るにゃ。でもケーツ村には兵士さん達が行くにゃ。だから帰りの護衛はいないにゃ。健人様も元々アクーに行きたいと思っていたにゃ。だから護衛ついでに丁度良かった、というわけかにゃ? 」真白が纏めてくれました。


「そうなんだ。急だけど、真白の腕も治ったしね」


 そうかにゃ~、と、真白は健人の急な申し出に、若干戸惑っている様子。「じゃあ健人様、せめて明日でもいいかにゃ? 村の皆にも挨拶くらいはしたいにゃ」


 そりゃそうだな、真白の言う事も最もだ。ダンビルさんともきちんと挨拶しないと。ちょっと俺が焦りすぎたな。テンパってたかも。ベルアートさんには事情を説明して、明日旅立つようお願いするか。そう逡巡する健人。


「じゃあそうしようか。明日ここを出よう」そして健人は真白の提案を受け入れ、出発を明日に決めた。


そして、二人がこの村を出て、旅を始める日が決まったのだった。



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