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売ったり売ったり驚いたり

いつもお読み頂き有難う御座いますm(__)m


 カインツと健人の模擬試合が終わって、それから今度は、ダンビルの家にある裏庭の倉庫に向かう。そこでベルアートに大槌と大斧を見せた。この大槌と大斧は、元々ゴブリンチャンピオンが持っていたものなので、所有者は本来真白なんだが、真白は使い道がないし、ぶっちゃけ邪魔だからという事で、ダンビルにあげていた。


「おお、これは」ベルアートが驚く。「間違いない。ドワーフの仕事です」


 ドワーフ? そう言えば以前ダンビルさんがそういう種族がいるって言ってたな。ドワーフの仕事だから何なんだろうか?


「素晴らしい業物です。ダンビルさん。これうちで買い取らせてもらっていいですか?」おお、なんか急に商売の話だ。


「ええ、どうぞ。うちに置いていても誰も使えませんからね」ダンビルさんは心からの笑顔で了承した。


 そもそも今回の緊急の要請には、行商人は呼んでいない。要請をする前は、村は全滅する事が前提だったからだ。なので今回、行商人が同行していた事で素材が売れる。ダンビルにとって、村にとってベルアートがいる事は、相当有難かった。


「タケトさんが使ってる大剣は、いや、それはあなたが持っていた方がいいでしょうね」ベルアートは笑顔で話す。


「どうしてですか?」健人が疑問を返す。


「さっきの戦いぶりを見て、大剣は健人さんに向いている武器だと思ったからですよ」


 そうなのかなあ。他の武器試したのって、バスタードソードくらいだから分からないけど。でも確かにしっくり来てるんだよな。


「真白、これ俺が使っていいの?」


 何で今更私に聞くのにゃ? とでも言いたげな顔で「もうそれ、健人様の武器にゃ。名前書いててもいいにゃ」とサムズアップで返した。真白が倒したゴブリンチャンピオンが持ってたんだから、所有権は真白だったつもりなんだけど。


「じゃあ遠慮なく貰うね。ありがとう真白」


「健人様は変なところで律儀だにゃー」半ば呆れ顔で答えた。


 確かに前の世界でも、バイトのくせに真面目だってやたら言われてたな。真面目の何が悪いんだ。そして次はオーガロードが置いてある保冷庫に再度向かう。


「オーガロードの目が、武器や装飾具を作る際の素材になります。他に牙。これも鏃やショートランスの先に使えますね」


 おおー、そんな箇所が売れるのか。


「クリスタルの欠片の確認、私がやっていいですか?」オーガロードをチェックしながら、ベルアートが自分のナイフを取り出す。


 ダンビルがどうぞ、というと、慣れた手つきで胸元をザクっと切り開く。すると、「おお!」と大声を上げた。


「クリスタルです! しかも12角形! 王都でも希少価値が高いものですよ!」ベルアートは感嘆の声をあげながら、クリスタルを取り出す。


 おお~、と皆そのクリスタルに見入る。カインツも初めて見たようだ。ダンビルも当然初めてなので、食い入るように見ていた。


「タケト、このオーガロードお前が狩ったんだから、このクリスタルはお前のものだ。どうする?」ダンビルがクリスタルに見惚れながら健人に聞く。すると速攻でベルアートが声を上げる。


「タケトさん! 是非このクリスタル、私にお譲りください! 言い値で売りますよ!」


 そんなにか! ベルアートの必死の懇願に驚いた。


「ぶっちゃけいくらくらいでお考えです?」自分には価値が分からない、と、ここで正直に言わないところが、営業スキルが無駄にある健人らしいところである。軽く駆け引きしている。


健人は真白に耳打ちして、「真白。クリスタル出して」と小さな声で伝える。 にゃ? と、なんで? という表情をしながら、とりあえず言われた通り、健人に、魔力の入っているのと、そうでない2つの8角形クリスタルを預かる。


「因みに、これだといくらです?」とりあえずこの世界の物品価値を知らないので、健人はまず魔力の入った八角形クリスタルをベルアートに見せて金額を聞いてみる。


「ほほー、八角形クリスタルですか。でもこれ魔力入っちゃってますね」そう。だから魔法は入れられない。


「魔力入りなら金貨五枚ですね。魔法だったらもっと安く、金貨二枚でしょうけど」


 なるほど。「なら、これはどうです?」と、今度は空の八角形クリスタルを見せてみる。「これなら白金貨一枚ってところですかね」と、ベルアートの様子を見ながら、適当な金額を言ってみる。


「おお! 空の八角形クリスタルですか! そんなのまでお持ちで。それなら白金貨2枚ですね」


 ほうほう。やっぱ空のクリスタルは高いんだな。健人はそれを確認すると、


「じゃあこの十二角形、白金貨十五枚くらいでどうです?」と、ベルアートに提案した。


「ほほう、適正価格が分かりますか。タケトさん、中々見どころありますね」やりますね~、という表情でベルアートが微笑む。


「よし、タケトさんのその目利きに免じて、十八枚で手を打ちましょう」どうだ? とばかりに胸を張って金額を提示するベルアート。


 おー、いいんじゃないか? 前の世界の感覚で、白金貨一枚十万円って設定してるから、百八十万円って感じだな。すげぇ高いな! 前の世界の宝石みたいなイメージかも。と、心の中で皮算用しながら、しめしめとほくそ笑む健人。だが表情は至って平静を装っているのだが。


「そしてそっちの二つの八角形クリスタルはどうします?」ベルアートが揉み手で聞く。完全に商売人モードです。


 これも、と真白が言おうとしたのを制止して、「これは持っておきます」と、健人が答えた。

 

 そうですか、と、ちょっとショボンとなったベルアート。


「健人様、これも売ればいいんじゃないのかにゃ? せめて空のクリスタルはいいんじゃないのかにゃ?」気になったので小声で健人に質問する真白。


「いや、それも真白が持っておけって。売るにせよ魔法使うにせよ、今後何かで使うかも知れない。このクリスタルってのは、思った以上にレアみたいだから」と、真白に小声で耳打ちした。ふむふむ、と健人の話を聞いてから、納得して真白は二つの八角形クリスタルをポケットにしまった。


「よし、じゃあゴブリンチャンピオンとゴブリンの耳は、俺が伯爵様に報告しておくので、持っていくぞ」商売が終わった様子を見て、そこでカインツが言葉を掛けた。


「それに、実は早朝ここに来てから、まだ何も腹に入れて無くてな。そろそろ兵達にも飯を食わせたいし」ああ、その意思表示でしたか。確かにそろそろ昼時だ。もうそんな時間になってたのか。兵士さん達待たせて悪かったなあ。カインツの言葉で改めて気づいた健人は、申し訳ない気持ちになってしまった。


 そしてベルアートがオーガロードの素材を取るのを待って、そろそろ皆で保冷庫から出ようとした時、健人のズボンのポケットから小銭入れを落としてしまった。札の入った財布は部屋に置いてあるが、小銭入れは、細かいものを入れるのに便利だったので、健人は持ち歩いていた。それをベルアートが拾いあげて、ふとその小銭入れを見つめ不思議そうに質問する。


「見た事ない小物入れだ。タケトさん。それはどういう構造なんですか?」ベルアートが健人に渡しながら、不思議なものを見た、という顔で聞く。「そのつまみ? がついてる、ギザギザの金属は……」


「ああ、チャックです」拾ってくれたお礼を言って、小銭入れを受け取り、そう言ってチャックを開けてみる健人。「おお! 面白い仕組みだ」感激するベルアート。チャックで驚くのか。この世界の文明の基準がよく分からんなあ。そういえばダンビルさんから貰ったズボンの社会の窓はボタンだったけど、そういうデザインかとばっかり思ってた。というか、そもそもチャック自体がないらしい? ベルアートの反応でふと気づく健人。


 そして小銭入れを開けた向きが悪かったのか、中から小銭がチャリンチャリーンと床にいくつか落ちてしまった。


 ああ、しまった、と健人が急いで小銭を拾うが、そのうちの一つ、五百円玉がベルアートの方に転がっていった。それを拾って、しげしげと見つめた後、「え、えええ!」と驚いた声を出して、腰を抜かして地べたにぺたんと座り込んだ。


「タ、タケトさん。こ、これは……」ベルアートがガクガク震えている。五百円玉が魔物に見えるのか? 怪訝な表情をする健人。

 

「これは、」前の世界の通貨です、と言いそうになったが慌てて止めた健人。前の世界、などと言ってしまっては色々面倒だと気づいたのだ。「……拾ったんです」そして苦し紛れの説明をする健人。無理があるのは分かっているのだが仕方ない。


「こ、これは、これはとんでもないものを見つけてしまった」だが、ベルアートは未だ地面にへたり込んだままだ。そんなに凄いものなの? 今度は不思議そうな顔をする健人。


 そしてガバっといきなり立ち上がり、健人の両肩をワッシと掴んで、「タケトさん! これを是非、私に売ってください! 白金貨二百枚用意します! 今は手元にありませんが、都市に戻れば全額お支払いします!」と、必死の形相で健人に叫ぶように話した。


「……え?」白金貨二百枚? 二千万万円相当じゃないですか。



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