ようやく落ち着きました
PVがもうすぐ1000に行きそう(*´▽`*)
いつもお読み頂き有難う御座いますm(__)m
ブックマークして頂ければ、更新がわかるかと思いますので、
是非宜しくお願いしますm(__)m
レビュー、感想なども頂ければ有難いですm(__)m
「イチチ……」まだ日が昇り始めたくらいの早朝、健人は頭を抑えながら目を覚ました。
「さすがに昨日は飲みすぎた」
ベッドから出て窓を開け、外の様子を見てみる。まだ早朝なので日差しは強く無いが、草原からやってくる草の匂いを携えた穏やかな風が心地いい。今日もいい天気だ。
元々そんなに酒が強くない健人だが、昨日は村民達から飲め飲めと結構勧められ、中々断り切れず、何度か戻しながら、まるで一昔前のサラリーマンの接待の如く飲まされた。二日酔いなのかどうなのか、とにかく頭が痛い。
とりあえず今日から普通に農作業を始めないといけない。そう思ってズキズキする頭を押さえながら、洗面所に行って、水の魔法を発動させて顔を洗った。
「そうだ。チャンピオンから取れたクリスタルに、俺の魔力入れてやらないと」そういいながら、ポケットに入れていた長さ5cm程度の8角形クリスタルを手に取る。
魔法が使えず魔力もない真白が洗面所を使う時は、3角形のクリスタルに健人かダンビルが魔力を入れたもの使っていた。しかし3角形だと、すぐに魔力がなくなってしまうので、2人のどちらかが、毎日魔力を補充していたのだ。なので、8角形なら面倒が減るはずだと思った。
「むにゃ~。健人様おはようですにゃ~」寝ぼけまなこの真白が降りてきた。
が、「うん、真白。着替えてこい」豊満な双丘の先が見えそうなくらい、首元が下がったシャツと、下はどうやら履くのを忘れたようで、白い綺麗な太ももが、シャツの合間からチラリと見えている。着替えずそのまま降り来たのだろう。ほげーとした様子だった真白だが、自分の姿に気づいて、「にゃっ! 失礼したにゃ~」と、慌てて部屋に戻っていった。
右腕折れてるし、着替えも大変なのは分かるけど、忘れるってのはどうなんだ? 心の中で突っ込んだ。まあ、おかげで? 猫耳美少女のあられもない姿を見れましたけどね。ラッキースケベ万歳。ちょっとニヤつく健人。
昨晩の宴会の様子では、どうやら元の真白に戻ったようだった。バッツに昨晩質問されたが、真白から直接バッツに「もう大丈夫にゃ。病気だったのにゃ」とにっこり微笑んで話していたし。
昨晩の事を思い出しながら、健人は8角形のクリスタルに魔力を入れていた。暫く魔力を注ぐと満タンになった。やはり3角形よりは時間はかかる。不思議な事に、満タンになると、魔力がこれ以上入らないと、感覚で分かる。明らかに3角形のものより容量が多いのも分かった。これだと、水を出したりランプを使う程度なら、十日は持つんじゃないか?
着替えて改めて降りてきた真白に、「真白、はいこれ」と、魔力を入れた8角形クリスタルを渡した。
「本当にいいんですにゃ?」真白が困惑した顔で聞く。
「勿論。昨日事前に確認したろ?」この8角形クリスタルは、真白が倒したチャンピオンから出たものだから、当然所有権は真白だ。そして事前に、真白に俺から魔力入れたらどうだ? と提案していた。真白は俺が取り出したんだから俺のものにすべきと言っていたが、そんな訳ない。取り出すのなんか誰にだってできるんだから。変なとこで遠慮されてもな。そしてその8角形クリスタルは、もう一つ真白が持ってる。それをどう使うかは、勿論真白が今後決めればいい。
「とにかく、魔力入れたよ。多分普通に生活の魔法だけ使ってたら、十日は持つんじゃないかな? 」
「ありがとうですにゃ」真白は素直にお礼を言って、それを受け取った。
「さて、今日から農作業開始だな」健人は笑顔で言った。ダンビルは昨日の宴会で相当飲んだくれ、まだ寝ている。なので今日は健人が朝食を作る。さっそく準備に取り掛かった。
「ふわぁ~、二人ともすまんな」欠伸をしながら、ようやくダンビルが降りてきた。そして健人の作った料理を見て「なんだこりゃ?」と怪訝な顔で見る。
「あ、それオムレツっていう料理です」健人が答えた。この世界の食料は、本当に地球に近かった。だが、味付けが大味で大雑把な料理が多い。切って焼くか色々ぶっ込んで煮る。大体それくらいだった。
いつもはダンビルが料理を作ってくれるが、今日は自分が先に起きたので、じゃあ作ってしまえと、バイト時代に培った料理の腕を振るったのだった。
「他にエッグペーストも。これはゆで卵を粉々にして、バターと塩で味付けしています。パンにのせて食べてください」本当はマヨネーズが欲しいところだが、それはさすがになかった。マヨネーズ作れればいいけどなー。酢はあるのだろうか? と、前の世界の最強の調味料マヨネーズに思いを馳せる健人。
「ほほー、これがタケトの世界の料理か」ワクワクしたような口調のダンビル。「んじゃ頂くとするか」
そしてダンビルはほうばってみる。「おお、この食感は初めてだ。これが卵なのか? オムレツってのは面白い料理だな」ダンビルは初めての料理に興奮気味だ。ほんとは中にケチャップで味付けした挽肉いれたかったんだけどね、と心の中で呟く健人。
「卵をパンに塗るというのは面白い発想だな。こっちも美味い」ダンビルは大喜びでぱくつく。
「鹿の肉かイノシシの肉を、薄くスライスして焼いて、その卵と一緒に挟んで食べても美味しいと思いますよ」
「おお! その発想はなかった。今度またお前に料理やってもらっていいか?」
「勿論ですよ」健人は笑顔で答えた。
それから久々の農作業のため、健人と真白は二人、村の離れにあるダンビルの倉庫に馬で二人乗りで向かった。健人が後ろ真白が前で馬に乗っている。健人が後ろから抱き付く感じで手綱を握っているから、無駄に体温感じて辛い。無駄に心地いいから辛い。
「健人様、昨日は楽しそうだったですにゃ」真白が馬に揺られながら思い出したように楽し気に話す。
「そうだな。結構騒いだかもな。でも飲みすぎた」猫耳美少女の無意識な誘惑に負けないよう頑張りながら、苦笑する健人。
真白はまだ三角巾を首からかけて腕を固定しているが、元々力もあるし、動かないと体がなまるから、と、無理をしない事を条件に、一緒に手伝いのため来ている。
昨日はほんと久々にバカ騒ぎしたなあ、と思い出す健人。簡単なドラムセット(といってもハイハットとバスドラはさすがに無理だったが)を机で即席で作って、色んなリズムを叩いてみたら、周辺にいた人達が踊り出したんだよな。リズミカルじゃなかったのがおかしくて、みんなして大笑いしたんだっけ。ただ踊ってるだけなのにこける人もいて。でもそれで気づいた。この世界にはリズム感という概念そのものがない。知らないのだ。でも俺が刻むビートは皆気に入ったようなので、こちらでもそれなりに音楽は好かれるかも知れない。
そして倉庫に到着し、羊やヤギを放牧し、小屋掃除をしながら、昨日バッツが言っていた事を思い出していた。
「タケト、家に来た時も言ったが、お前アクーに行ったらどうだ? 俺がギルド長に紹介文書いてやるから」
「紹介文?」
「ああ、アクーのギルド長は、俺を懇意にしてくれてたんだ。初めてあの都市に行くとなっても、ギルド長を頼れば、きっと向こうでもやりやすいと思うぞ」
「俺、冒険者なんか出来る気がしないんだが」
「何言ってんだ! お前くらい強い奴が冒険者やらなきゃ勿体無い! この世の中にはもっと強い魔物が沢山いる。でも倒せる人間はそうはいない。でもお前なら、お前とマシロちゃんなら、きっとやっていける。それに金にも困らなくなるぞ」
バッツは真剣に健人に説き伏せるように話していた。酒の勢いもあったのだろうが、至極真面目だったのは間違いないだろう。
紹介文とやらがどんな効力を持つのか、ギルド長というのがどれくらい偉い人なのか、さっぱり分からないが、あれだけバッツが熱く語るなら、考えてみてもいいのではないだろうか。そう思った健人。
真白は放牧している羊やヤギを見ながら、蹴りの練習をしていた。ここまで結構距離あるけど、風切り音が聞こえそうなくらい鋭い蹴り。放牧地なのにその姿が妙にマッチしているから不思議である。
正直、この村を出て色んな所に行けるというのは、物凄く興味がある。そもそも旅行好きなのだから。しかも元の世界とは大きく違い、魔法が使え、魔物がいて、色んな種族がいるというじゃないか。是非見てみたい。
あれこれ考えながら作業をしているうち、日も高くなってきて、そろそろ腹も減ってきたので真白を呼ぶ健人。昼御飯に用意した、健人が作ったサンドイッチを、真白と一緒に倉庫で食べていた。
「なあ、真白。この村出て都市に向かってみたいんだが、どう思う?」思い切って真白に聞いてみた。
「健人様が行きたいならいいんじゃないかにゃ? 勿論私はついていくにゃ」即答の真白。
「そうか。でも稼がないといけなんだよな。バッツが冒険者になったらどうだって言ってくれてるんだよな」
「いいと思うにゃ。今何が出来るかって考えたら、せっかく強くなったし、冒険者が一番適当だと思うにゃ」うみゃうみゃと言いながらサンドイッチをぱくつく真白。
やっぱそうだよな。俺も薄々出来そうかも、と思うようになってきてはいたが。真白にそう断言されると、より自分の意思が明確になってきた健人。
「よし、じゃあ真白の怪我が治ったら、アクーってとこに行ってみようか」そう、健人は決断した。