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本当の終わり

いつもお読み頂き感謝ですm(__)m

ブックマークして頂くと、続きが分かりやすくなるかと思いますので、

お試し頂けたら幸いですm(__)m

「うぐっ」ようやくバッツは起き上がる事が出来た。どうやら気を失っていたようだ。


 すんでのところで斧でオーガロードの攻撃を受け、致命傷は免れたものの、それでもダメージはある。腕が折れたか? 痛みが激しい。


「なんて化け物だ」母さんが恐怖に怯えていたのもよく分かる。しかしあれからどうなったのだろうか?


 自分はオーガロードから攻撃を食らい、蹲って気を失っていた。マシロちゃんは先に吹っ飛ばされ、ジルムも同じく飛ばされた。母さんは無事か? 無事を確認したいが。タケトは? オーガロードは? 


 何とか体を起こし、斧を杖代わりにして立ち上がるバッツ。見ると、ジルムもどうやら無事だったようだ。ジルムは盾で何とかオーガロードの攻撃をギリギリ防ぐ事が出来た。が、それでも、バッツと同じくダメージを受けていた。アバラが折れたかも知れない。向こうも気づいたようで、バッツと同じく武器を杖代わりにして、こちらに歩いてくる。


「はあ、はあ、バッツ。エリーヌさんは?」バッツの母親を心配する。「とりあえず探してこい。俺はマシロちゃんとタケトの様子をみてくるから」


 戦闘はどうなったのだろうか? 今現在戦っている様子はない。静かだ。どうなっているか気になるが、自分の母親も気になる。二人の確認はジルムに任せ、飛ばされた自分の母親を探しに行くバッツ。


 そしてジルムもそのままショートソードを杖のようにして体を支えて歩き出す。向こうの方に二人? 横たわっている姿と、立膝をついている人影が見えた。


 ※※※


「はぁ、はぁ、ぜー、ぜー」オーガロードの首を刎ねた健人は、荒々しい息づかいと共にがくんと膝から崩れ落ちた。ガランと大剣を地面に落とす。


「真白…無事、か」声にならないようなかすれた声で問い掛けるが、真白は答えない。


 気になって真白の方へほふく前進のように這いずりながら行ってみる。真白は仰向けで倒れたまま動かないが、微かに息をしているのが分かった。


「よか…った。生きてる」安堵しハハっとかすれた声で笑い、そのまま地面に仰向けで大の字になる健人。


 あんな強敵を俺が倒すなんて、思ってもみなかった。夢じゃないだろうか? そもそもこの世界自体、そして真白の存在自体、夢みたいなもんだから、夢みたいな事が起こってもおかしくないか。と、変な達観? をする健人。


 しかしあれは何だったんだろうか? どんどん攻撃が()()()()()()()()。リズムのおかげなのか? あんなでかい大剣を、まるで小枝でも振るうかのように振り回せた。自分のあの力は何なのだろうか?


 オーガロードと戦っていた時の事はよく覚えている。やつの大槌の軌道がよく見えていたし、受けているうちどんどん軽くなっていった。不思議だ。


 真白によると、俺には魔法が使えないし、能力がないらしい。じゃあさっきのあれは? 俺の元々の素質とでもいうのだろうか? いやいやそんなわけない。もしかしたら前の世界と比べて、ここの世界は重力が軽いとか? 


 まあ何にせよ助かった。奇跡みたいなもんだ。俺がオーガロードを倒せた理由は後で考えればいい。俺ら全員、もっと言えば村の人達も全員死んでたっておかしくなかった。あんな化け物がいたんだから。元々ゴブリンだけだと思ってたのに。


 健人がそんな事をあれこれ考えていたら、「おーい」と弱々しい声でジルムがこちらに歩きながら呼びかけてきた。その声を聞いて、健人が大剣を杖代わりにして立ち上がり、「ジルム無事か?」と声を掛ける。


 なんとかな、と腹の辺りを痛そうに押さえながら、無理に笑うジルム。あれだけ吹っ飛ばされたんだから無傷なわけないか。でも生きてて良かった。そしてジルムはびっこを引くような足取りで二人に近寄っていった。


「こ、これ、倒したのか? 」それからジルムは、首のない横たわっている化け物の亡骸を見て驚愕した。近くまで来ないと分からなかったが、これはゴブリンチャンピオンとは違う、別の魔物だ。一体何があったんだ?


ジルムはいきなり攻撃され、吹っ飛ばされたので、その魔物が何なのか分からなかった。強敵である事は分かっていたが。 


「ま、まさか、倒したのか?」ジルムが信じられないといった表情で健人に聞いた。


「まあ、運が良かったんだよ。真白も手伝ってくれたし」ハハ、と弱々しく笑いながら健人は答える。「正直俺も未だ信じられない」


 運が良かっただけで倒せる相手じゃないだろう? と、ジルムは健人の言葉に呆れた顔をした。タケトとマシロは一体どこまで強くなったんだ? それも気になるが、まずは先にみんなを連れて帰って治療しないと。それを聞くのは落ち着いてからだ。


「とりあえず戻ろう。今バッツは今エリーヌさん探しに行ってる」ジルムは健人に村に戻ろうと促す。そうだ、エリーヌさんは無事か?とりあえず気を失っている真白をおぶった。そしておぶって驚いた。


「真白って、こんなに軽いんだな」改めて感じる真白の軽さ。身長150cmしかない、こんな小さな女の子が、2m半もあるのゴブリンチャンピオン三匹を倒し、更に3mはあるオーガロードに、怪我をしながら立ち向かったのか。そう考えると、いたたまれない気持ちになった。


 健人の驚いている言葉を聞いたジルムが、肩に手をかけ「起きたら労ってあげろよ」と、言葉をかけた。勿論そのつもりだ、とジルムに対して大きく頷く。そしてジルムと一緒にバッツのいる辺りに向かった。


 どうやらエリーヌさんも無事なようだ。恐怖で体をこわばらせていたにも関わらず、さすがは元冒険者。咄嗟に腕で腹を庇い、オーガロードの攻撃の威力を逃していたらしい。着地の際も受け身をとったおかげで、死なずに済んだようだ。ただ、両腕は骨折しているようだが。それが分かりホッとする健人。怪我はしても誰も死ななかった事に安堵した。


 ダンビルと村民達は、健人達の戦いを固唾を飲んで遠目で見守っていた。四人は疲れた足取りでゆっくりと歩いて皆の元に行くと、わあああ! と大歓声で五人を迎えた。


「お前ら本当によくやってくれた! もう感謝しかねえ!」ダンビルがハイテンションだ。他の村の人達も大喜びで声をかけてくる。


 笑顔でその受け答えをしていた健人だが、その最中、真白を背負ったまま、意識を失って前のめりにドサっと倒れた。一瞬沈黙が走る村民達。そして慌てて健人に駆け寄った。だが、単に疲れて意識を失った模様。健人は思っていた以上に疲労困憊だったのである。


 ※※※


「チッ」その影は舌打ちをした。「せっかくこんな辺鄙な場所選んだのに、まさか倒されるなんて」怒りを顕にする影。


「でもまさか、ゴブリンチャンピオン三匹を倒すやつがこんなとこにいるなんて思いもしないし。オーガは、まさか魔物食ってオーガロードになるとは。まあ、今回は実験だ。一応は成功だから良しとするか」そう無理やり納得させるように頷く影。


「しかしあの黒髪、一体何だ? 武器にエンチャント(付与魔法)でもついてたか? いやでも、あの大剣にはクリスタルはつけていなかったはずだ。じゃあ元の強さがあれって事か? あんな達人がこんなとこにいたなんてな」首を捻る。「聞いた事もないが」


 影はそんな独り言を呟きながら、この場所から去っていった。


 ※※※


 チチチ、と鳥のさえずりが聞こえる。眩しい朝日が窓の外から入ってきていた。どうやら朝のようだ。ここは、多分ダンビルさんとこの居候させてもらっている俺の部屋だ。あれから意識を失って、そのまま寝てしまったようだ。意識を取り戻した健人は、ベッドの上でふう、と一息つき、上体を起こした。


 ダンビルが、昨日意識を失った健人をここに連れて来てくれたのだった。着の身着のまま寝ていた健人は、ベッドから降りて、戦闘で汚れてしまっている服を新しいものに着替えた。


「そうだ真白!」そこで大事な事に気がついた健人。大丈夫だろうか? 急いで隣の真白の部屋に行き、コンコン、とドアをノックすると、「誰にゃ?」といつもの調子の真白の声が聞こえた。その声にホッとした健人。


「健人だけど、入っていいか?」


「……だめにゃ」だが、真白は拒否した。


「え?」つい疑問の言葉が口に出るも、ああ、着替え中か? と思い直す。「そうか。とりあえず元気そうで良かった。それが確認したかっただけだから。じゃあ、先に下に降りてるな」と、ドア越しに声をかけ、真白の返事を待たず、下に降りていった。


「どうしようにゃ……」何やら真白は大層困っていた。


 下に降りると、ちょうどダンビルが朝食の準備をしていた。「ダンビルさんお早うございます」顔を合わせ挨拶する健人。


「おお! タケト! 体はもう大丈夫なのか?」心配していたダンビルが、健人の顔を見て嬉しそうに声を掛ける。


「はい、俺は大して怪我してませんので」笑顔で返事する健人。その通り、健人は怪我をしていない。ただ急激なレベルアップと慣れない戦闘で精神的に疲弊して、疲れて倒れただけなのだ。


「そうか。そりゃ良かった」笑顔で健人の背中をバンバン叩く。ケホッケホとむせるが、その痛みがなんだか嬉しい健人。


「そういや真白の怪我は大丈夫ですか? 今着替えてるみたいでまだ会えてないんですが」


「腕は骨折していたが、それ以外は大した怪我はない。まあ腕も暫く安静にしていたら治るだろう。それにそろそろ都市から神官か光のクリスタルが届くだろうし」


 そうだ。都市に兵と神官をお願いしてたんだった。ゴブリン討伐ですっかり忘れていた健人。


 そして真白が中々降りてこないので、健人はダンビルと二人で先に朝食を取りながら、他の三人の怪我の状態について聞いていた。ジルムは肋骨骨折と腕にひび、バッツは腕を骨折、エリーヌは両腕複雑骨折と、皆それぞれ重傷だが、命に別状はないとの事だ、良かった、と胸を撫で下ろす健人。


「それに、村の連中も誰一人死んでおらん。あれだけのゴブリンがいたにも関わらずだ。お前の作戦のおかげだ。改めてお礼を言う。ありがとう」と、ダンビルは頭を下げた。


 そう。今回の落とし穴の作戦を考えたのは健人だ。村を襲う時は一斉に全員攻撃という、ゴブリンの特徴をバッツとエリーヌから聞いた健人は、じゃあ落とし穴で一網打尽がいいと提案した。単純な作戦だが、普段戦いとは無縁の村民達には、わざと自分達の村を襲わせると言った発想は毛頭なかった。健人も戦いに縁は無かったが、罠を仕掛けるといのは、前の世界の戦争では当たり前だったので、歴史の勉強などで知っていた。


「いえいえ、皆さんの協力あってこそです。うまくいって本当に良かったです」恐縮しながら健人は答えた。しかし今回うまくいったのは本当に奇跡だ。俺の事もそうだ。まあそれは追々考えるとして、今は無事解決した事を喜ぼう。


 ダンビルと健人が朝食の後片付けをしながら、二人あれこれ会話していたら、ようやく真白が降りてきた。


「おー真白。大丈夫か?」健人がいつもの調子で真白に挨拶する。見た感じ、腕以外は大丈夫そうだと安心した健人。


「は、はいにゃ!」突然ビクっとして返事する真白。「と、とても、健康的な感じ、でしゅにゃ」あ、噛んだ。


 右腕は骨折しているので、三角巾で首から吊り下げている。まあそれは当然だが、なんだか真白がおかしいです。






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