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ニュー◯イプ覚醒?的な?

※健人の強さの理由については、物語の後半に分かると思います。

気になってもそんなもんだと思って読んで頂ければ幸いですm(_ _)m

 武器がなくても手こずっていたのに、武器を持たれたらまずい。何とか武器を取らせないよう、オーガロードに向かっていく。が、遅かった。健人が近寄る寸前、ブンという音と共に、物凄い風圧が健人を阻む。その風圧だけでよろけてしまう健人。圧倒的だった。


「これいいな。お前ら殺したらこれ貰って行くわ」思ったよりしっくりきたようで、オーガロードはご機嫌だ。


「こんなんどうしたらええねん……」絶望を感じて呟く健人。


 もうどうしようもなかった。力の差は歴然。余りに差がありすぎて恐怖さえ感じない。で、今動けるのは俺しかいないが、だから何なんだろうか?


 もう諦めるか。この世界に来てからまだ半年も経っていないが、結局一旦死んだ身だ。この数ヶ月は夢だったと思えば割り切れるじゃないか。


「ハハ……」何か悟りきったような、諦めたような、乾いた笑いが、健人の口から出た。


 オーガロードはその健人の様子に無関心に、健人に上から大槌をふるった。健人は何も出来ず、呆然と立っている。大剣を使って抗う気力さえ起らない。


 オーガロードの攻撃は、武器を持っていなかった時とは段違いのスピードだ。間に合わない。大剣で防ぐ事さえも出来ない。


 前の世界と合わせて二回目の死を覚悟した。


 ドン! と音がした。ああ、死んだか。


 が、痛みはない。というか、()に飛ばされた。


 ……何があった?


「え?」オーガロードが振り落としたはずのその場所には、自分はおらず、クレーターのように陥没した後があった。


 あれ? 俺生きている? しかしその理由がすぐにわかった。


 真白だった。健人に体当りして辛うじて大槌から守ったのだ。


「はぁ、はぁ、ぜー、ぜー」 腕をだらんとさせた真白が、健人の横に立っていた。生きてたのか! 


「健人、様……。 ごめんなさい、にゃ……。 守らないと、いけない、のに」息も絶え絶えに言葉を紡ぐ真白。


 真白の口からは血が垂れていて、右腕はだらんとして傷だらけで血が滲み出ている。それを庇うかのように左腕で支えている。危機察知がギリギリ働いて、真白はオーガロードの不意打ちを、何とか自分で飛んで勢いを殺す事は出来たが、元々防御力が弱い真白は、それでもさすがに無傷ではいられなかった。


「真白! もういい! もういいから!」必死に言い聞かせるように、真白に叫ぶ健人。


 それを見た真白が、尻もちをついて地面に座っている健人に顔を向けて、弱々しくもニコっと笑う。


「よくないにゃ。守るのが、私のやる事。健人様が戦う必要ないんだにゃ。せっかく、この世界で、生きていけるのにゃ。ここで死んじゃ、だめなの、にゃ」


 そこで突如二人の会話を遮るかのように、大槌がブンと唸って健人の頭上から物凄いパワーとスピードで、落ちてきた。つかさず傷だらけの真白が間に入り、両手でガシィ! と止めた。ググっと競り合う真白と大槌。真白の腕からはプシュッと血が吹き出す。そして滴り落ちる。


「うぐあ・ぁ……」腕を怪我しているにも関わらず、健人を守るために必死でそれを受け止める真白。しかし耐えるのがやっと。大槌の圧力に負けそうになり、そのまま地面に膝をついてしまう。


「やめてくれ! もういいんだって!」側でその様子を見ながら、悲壮な顔で泣きそうな声をあげる健人。


「……私が、抑えるから」もう声を出すのさえ辛そうな真白。「に…げて」


「つまんねえ」もう飽きたといったような口ぶりでそう呟くオーガロード。「もういいや。死ね」そう言うと、そのまま大槌にググっと力を込める。このまま真白を圧迫して潰す気のようだ。


 身体の小さな真白が歯を食いしばる。口元からは更に血が落ちていく。「た…けと…。ま…も…る」力の源である名前を呟きながら必死に抗う。


 だが力の差は歴然。小さな真白は立膝を付きながら抵抗するも、どんどん地面に埋まっていく。このまま潰されるのは時間の問題だった。


 その時、プッツン という音が、健人の頭の中に聞こえた。


 ※※※


 ヒュン、と何かの風切り音が聞こえた。


「あ?」オーガロードの声だ。その音が聞こえたと思ったら、足に一筋、血の跡がついていた。


 またもやヒュンという音が聞こえた。今度は腕に一筋の血の跡。それに痛みを感じ、何が起こったか確認するため、オーガロードは、一旦真白への圧迫をやめ、下がる。大槌が真白から離れると、フラっと真白がうつ伏せで倒れた。


 何が起こった? オーガロードはすぐには分からない。すると後で殺す予定だった雑魚の大剣を持った人間が、何やらぶつぶつ呟いている。


「俺が、守る。俺も、守る。……ここで、ここで、終わってたまるかあああ! 」いきなり大声を上げ大剣を振り上げ攻撃してきた。


「リズム、リズムだ」そう呟きながらオーガロードに立ち向かう。半ば呆れ顔のオーガロード。「へっ」余裕の表情でそれを迎え撃つ。「今更何する気だ? 雑魚が」


「まだまだまだまだ。どんどん速く、速く、はやく、ハヤク」ぶつぶつ言いながら大剣をオーガロードに向かって振り回す。


「雑魚が今更抵抗しても……」とめんどくさそうに大槌でそれを受ける。が、途中から何故かどんどんスピードが上がっていく。


「な、何?」驚愕するオーガロード。


「まだまだまだまだ。どんどん重く、重く、おもく、オモク」スピードはそのままに、今度は何故か大剣が重くなる。


 受ける大槌との鍔迫り合いが、一撃一撃ごとに強く速くなっていく。徐々にぶつかり合う音が激しく大きくなっていく。


「どういう事だ!」焦るオーガロード。少しまずいと感じ、バックステップで一旦健人と距離を置く。


「このおおおお! 雑魚のくせにいいいい!」オーガロードは怒りの余り額に青筋を浮かべ殺気を放つ。台風のような風の圧力が健人にぶつかるも、動じない。その様子に若干焦りながら、今度は本気で健人を攻撃する。


「まだまだまだまだ。速く、重く、はやく、おもく、ハヤク、オモク」ぶつぶつと言いながら、何故かその呟きのとおりにどんどん速く重くなる大剣。まるで竜巻のようなその剣圧とスピードに、とうとうオーガロードは捌ききれず、「ぐああ!」と叫びながら、大槌を弾き飛ばされた。


 一体何があった? 雑魚のくせに、俺の食い物になるくせに。


「このやろおおおーー!」武器を失っても殺意は失わない。そこはさすがオーガロードと言ったところか。


 健人に向かっていくオーガロード。それを大剣を斜め下に構え迎える健人。拳を振りおろす。バックステップで躱す、躱された拳は地面を叩き、大きく陥没する。そして今度は健人が上から大剣を振り下ろす。大剣なのにまるで風が通ったかのように速く、大きな岩が落ちてきたかのように重い一撃。


 それをオーガロードは何とか真剣白刃取りの要領で、両手で挟んで止める。も、ズズッと腕が沈んでいく。同時に体も沈んでいく。「な、なんだこの力は?」すると健人が、その掴まれた大剣を急に真横に向ける。抗う事もできず、挟んでいた両手と一緒に横向きになってしまうオーガロード。言うまでもなくオーガロードは巨体だ。それを線の細い健人が、関係ないと言わんばかりに、いとも簡単に横にした。そのパワーに驚くオーガロード。


 そしてブン! と大剣を横に振り、オーガロードが飛んでいく。ズザザーと地面に投げ出される。


「クッ わけが分からねえ」まさか人間にこんなに一方的に攻撃されるとは思っていなかったオーガロード。


 しかし一体どういう理屈だ? ついさっきまであんなに弱かったのに。急に強くなりやがった。何か挽回する方法はないか。辺りを見回す。武器は、あそこに大斧があるが届くか? いや、それよりも。


 オーガロードはいきなり飛んで、地面にうつ伏せで倒れている、真白の元に着地した。真白は意識を失っている。オーガロードはその真白のそばに行くと「せめてこいつだけでも連れて行って食ってやる」と、ニヤリとして真白を抱えて逃げようとした。


 それがいけなかった。よりによって真白を選んだのが間違いだった。


 逃げようとした瞬間、オーガロードはゾワっと今までに感じた事のない殺気を感じた。健人が発した、生まれて初めての殺気だった。


「お前ぇ! 誰に手ぇかけてんねん!!」オーガロードが聞いた事のない言葉だったが、言いたい事は分かった。


 それに一瞬怯んだと思ったら、フワっと風を感じた。それと同時に真白を抱えていた腕が、体から離れていた。20mは離れていたはずなのに、いつの間にか健人がオーガロードの肩に大剣を入れていた。


「うがああああ! 俺の腕がああああ!」噴水のように、オーガロードの肩辺りから血飛沫が吹き出す。


 どうやってここまで移動した? 肩を抑えて蹲りながら、考える。しかしその疑問を知る事は叶わず、オーガロードは自分の身体が上から下へ、スローモーションのように見えていた。そして徐々に意識がなくなる。それはオーガロードの首が落ちた事を意味するのだった。





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