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とりあえず片付いたのかどうなのか

夕方頃また投稿しますm(__)m

「……」バッツとエリーヌは真白とゴブリンチャンピオン三匹との攻防を、唖然として見ていた。


「……化け物かよ」呟くバッツ。勿論化け物とはチャンピオンではない。真白の事だ。


 ゴブリンチャンピオンは、それ一匹でも相当強い。バッツやエリーヌレベルなら、一匹倒すのに四人パーティで挑むのが普通だ。なのに、真白は既に一人で二匹倒していた。


「マシロちゃんは戦闘センスの塊なんでしょうね」半ば呆れながらエリーヌがそう言った。


 そんなレベルか? バッツが呆れたように心の中で呟く。


 バッツ達は既にゴブリンを全て倒し終わっていた。特に健人は、真白とのパーティ契約のおかげもあって、一気にレベルが上がったようで、両手で使っていたバスタードソードを、片手で枝を振るかのように使えるようになっていた。だから今は四人とも真白とチャンピオンとの攻防を固唾を飲んで見守っている。


 バッツ達は真白を手伝えない。寧ろ手を出すと邪魔になる。レベルが違いすぎるのだ。真白が強いのは分かっていたが、まさかここまでとは、元冒険者のバッツやエリーヌでさえ驚きを隠せないでいた。


 体が小さい、素早い、でもパワーはある、という自分の長所を最大限に活かし、弱点である防御力の低さを全く感じさせない動き。そもそもチャンピオン達から一発も攻撃を貰っていない。レベルが上がったのもあるのだろうが、それ以前にあの思い付きと瞬発力は、天才と言っていいくらいだ。


「勇者……」ジルムが呟いた。「勇者のパーティメンバーが戦ったら、多分こんな感じなんだろうな」苦笑しながら言葉を続けた。


 バッツもジルムのその言葉に同意した。勇者とそのパーティメンバー。五年ほど前、魔族が一方的に人族に宣戦布告し、魔族と沢山の魔物が攻めてきた。しかしそれを解決すべく、最前線に立って魔族や魔物と戦い、更に魔王とも対決し、人族を救った伝説の四人。


 バッツがまだ新米冒険者だった頃、都市のあちこちでやたら聞かされた武勇伝。そんな武勇伝を、まさに目の当たりにしているような真白の戦いぶりだった。


 バッツとジルムが話していると、ダンビルと村民達がいるところから、気勢が上がった。どうやら最後の一匹を倒して、あちらも終わったようである。「やったー!」「俺達の勝利だー!」あちこちで歓声が上がっている。


「みんな本当によくやった!」ダンビルが涙声になりながら大声で叫んでいた。


 ダンビルさんは仇を討てたと思っているかな?健人がその声を聞きながら、ダンビルの気持ちを慮った。後は真白がチャンピオンを倒せば終了だ。



 ※※※


「グアアアア!」大槌が真白を襲うも、当然の如く当たらない。ちょこまかと逃げ回る。「ウガアアアアア!」相当イライラしているチャンピオン。「ふーむ」避けながら真白がふと思いつく。大槌が再度上から真白を襲う。が、真白はそれを避けずに、ガシィ! となんと両手で受け止めた。


「ナ、ナンダト?」驚くチャンピオン。「おおー、やっぱいけたにゃ」片腕で振り回している大槌を、両手だが受け止める事が出来て、真白自身も驚いている。「なんか出来る気がしたんだにゃ。これがレベルアップの恩恵だろうにゃ」冷静に真白は分析する。


「じゃあ」真白はニヤリとチャンピオンを見る。「力のハンデもなくなった、て事だにゃ」と、話すと同時に「ハア!」と思い切りチャンピオンのみぞおちに、ナックルを打ち込む。


「ウ、ウガアア」蹲るチャンピオン。さっきの二匹は勢いをつけないと攻撃が効かなかったが、今は違う。もう普通に攻撃してもダメージを与えられる。蹲ったチャンピオンが唸りながら真白を見上げる。自分が見下されている。ゴブリンのボスだった自分が。


 そう思うとまた怒りが沸々と湧いてきたようで、「グルアアアア!」と気合で起き上がる。


 すると、今まで気づかなかったが、起き上がったそのチャンピオンの首から、しゃれこうべが一つ、首飾りのように、ひもを付けられてぶら下がっていたのに気づいた真白。


「にゃ? その首の骨、なんなのにゃ?」攻撃を一旦止めて、真白がチャンピオンに尋ねる。


「エ? コ、コレハ」突然質問されて驚くチャンピオン。でもこの隙に倒すチャンスが出来るかもしれない、と考え、答える。


「チョットマエニ。ゴブリンガヒロッテキタニンゲンダ」


 よく見ると、少しだけ髪の毛が残っている。金髪だ。実はヌビル村には金髪はいない。ただ一人を除いて。


「……もしかして、若い男だったにゃ?」


「ア、アア。ソノトオリダ」チャンピオンが続ける。「コイツガオモチャニナルカラ、ムラヲオソウナッテイウカラ、イロイロアソンデタラシンダ。メズラシイニンゲンダッタカラ、クビニカケテルンダ」


 当時の事を思い出してか、グフグフ笑うチャンピオン。


「ソリャアモウ、ユビツブシタリ、ウデヒッコヌイタリ、アシツブシタリシタゾ。ナキワメクノガオモシロイノニ、ムラノタメ、トカブツブツイッテナキワメカナイカラ、ケッコウタノシメタゾ」ニタニタしながら話すチャンピオン。


 それを黙って聞いていた真白。そしてチャンピオンはハッと気づいた。真白から途轍もない殺気が、隠す事もなく溢れていた事を。この小さな獣人から殺気を感じたのは初めてだ。真白の目には涙が溜まりつつも充血し、ナックルを持った手は、血が出るんじゃないかと思えるくらい拳を握り締めている。


 それを見て、感じて、チャンピオンは、初めて命の危険を感じた。兄弟みたいに殺される。こいつは強い。認識が変わった。


「ナ、ナア。チャントコタエタゾ。ニゲテイイダロ?」つい命乞いをするチャンピオン。


「お前は、お前は……」怒りを含んだその声が、張り叫ぶ。「お前はそうやって、命乞いをした人を、逃がしたのかああああ!」


 真白の背中から怒りのオーラのようなものが見える。チャンピオンは本能的に感じた。この小さな獣人はやばい。


 咄嗟に逆方向に逃げようと駆け出すチャンピオン。「逃がすか!」当然真白の方が早く、直ぐ追いついて後頭部を飛び蹴りする。前のめりにドスーンと大きな音を立てて倒れるチャンピオン。


「お前は!」着地してその巨体を上に蹴り上げる。ぶわっと1mほど浮き上がったそれに、すかさず中段蹴りを入れる。


「お前は無駄に、自分の娯楽のために!」吹っ飛んだチャンピオンを追いかけ、今度は上から自らの両手を組んで下に叩きつける。またもドーンと大きな音がして、地面が陥没し、チャンピオンがうつ伏せで落ちる。


「そんな事のために、罪もない人を、殺したのかあああああ!」陥没した地面からチャンピオンの腕を掴み、ふっと一旦上に投げ、思い切りピンポイントで顔面を殴る。またも吹っ飛んでいくチャンピオン。


あ、そういや「にゃ」がなくなってる。


 追撃をしようとしたその時、「真白! もう終わってる!」健人が真白の腕を掴んで止めた。ゴブリン退治を既に終え、真白の様子を見ていた健人だが、急いで真白の元へ駆け寄ってきて止めたのだった。


 チャンピオンは最後の真白の攻撃で、首から上がなくなっていた。胴体は仰向けに倒れている。


「はぁ、はぁ」健人に腕を掴まれ、息を切らしながらも落ち着いていく真白。そして涙目になりながら、「健人様、あれ……」チャンピオンの首に未だついてある、しゃれこうべの首飾りを指さした。


 健人が近づいて見てみると、少しだけ金髪が残っているのが分かった。「もしかして、これ……」真白が涙目で頷く。きっとダンビルさんの息子さんだろう。なるほど、真白の怒りの理由はこれだったのかと理解した健人。


 そして屍となったゴブリンチャンピオンの首から、それを外し、丁寧に布にくるんだ。


 とにかく、真白は結局圧倒的に、無傷でゴブリンチャンピオン三匹を倒した。これでようやく終わったな、とホッとする健人。


「ふぅ」と一息ついて、「とりあえず終わりましたにゃ」と、笑顔を健人に向ける真白。


 あれ? 「にゃ」が復活してる。


「そうだな。とりあえずダンビルさん達のところに行こうか」同じく安堵し笑顔で返す健人。そしてバッツ、エリーヌ、そしてジルムも、終わった事を確認できたようで、健人と真白の元に向かおうとしていた。


 そうして五人で動き出そうとした瞬間、「ドン!」と大きな音が聞こえ、真白が消えた。


 音が聞こえた後、真白が、地面にバン! バン! と二回バウンドして飛んでいき、それからゴロゴロと転がり、うつ伏せで寝転がった。





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