黒い3〇星。いや、黒い3魔物
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「グッグエ。テシタガカッテニシンジマッテ、オレタチガヤルコトニナッタジャナイカ」
一番最初に飛んできたチャンピオンが、めんどくさそうに片言の言葉で話す。
「デモアレ、ネコジュウジンノメスダ。アレオレホシイ。イッパイオカス」
「オレモホシイ。ハヤイモノガチダゾ」残りの二匹が、真白を見てニヤニヤしていた。
「オマエラ、コワスナヨ。オレモオカス」
最初のチャンピオンがその様子を見て二匹を窘めた。
ゴブリンチャンピオン達は、他のゴブリン達と違い、肌の色が真っ黒だ。背丈は2m半~3mくらい、顔はゴブリンの鷲鼻、目、耳を小さくしてコンパクトに顔に収まっている。腹は出ているが腕や足は筋肉の塊のように太い。腰には申し訳程度に下半身を隠す布がまかれている。
そしてこの三匹は、それぞれ違う武器を持っていた。大剣は長さ1.5m、幅80cmくらいのかなり大きなもの、大斧は幅1.5mくらいで両側に鋭い刃がついていて、柄を合わせると2mくらい。そしてもう一匹の大槌、これも長さ2mはありそうで、武器としては一番重量がありそうだ。50kgはあるんじゃないだろうか。
真白は初めて言葉を話す魔物に驚きつつも、とりあえず今の状況が相当やばい事は理解していた。こいつらは相当強い。バッツが叫ぶのも分かる。でもこいつらを何とかしないと、結局村は襲われてしまう。
倒さねば、真白はグッと拳に力を込めて決意した。
「ンジャ、シナナイテイドニツブス」大槌を持ったチャンピオンが、ブンと軽々それを横なぎに真白に振る。
真白はすかさず後ろにステップして避ける。その大槌が巻き起こす風圧も相当なもので、風に煽られふらつきそうになったが踏ん張った。
「ンモー、ヨケルナヨゥ」めんどくさそうに何度も真白に大槌を振るう。横から縦、また横。まるで木の枝を振り回しているかのように軽々と大槌を振るう。一発でも当たれば即死するだろう。それを風圧を受けながらも交わす真白。突然、今度は大斧の大きな刃が真白の上から降ってきた。
ズドーンという音と共に地面にめり込む大斧。地面は大斧の刃で真っ二つに割れている。真白は間一髪右に避けた。かすった真白の白い髪が数本ハラハラと落ちる。真白の額には汗が滲む。さっきからずっと危険察知がガンガンアラートを鳴らしているのが耳障りだ。
「ソレダトシンジャウダロー」大槌を持ったチャンピオンが呑気に大斧持ちに文句を言う。
「ハエミタイニウットウシイカラタタキオトス」大斧持ちはグアッグアッと大声で笑った。
攻撃が速くて重い。しかもこいつら本気じゃない。久々に感じる命がけの戦い。しかもこっちは狩られる方だ。真白自身初めての経験だ。掌に滲んで出てくる汗が止まらない。
だが、本気じゃない今がチャンス、とばかりに真白は動く。フッと真白が消える。そして大斧持ちの背後に回り、まず思い切り首辺りに飛び蹴りを入れる。
しかし、「ガッ!」横にいた大剣のチャンピオンが、その蹴りを手で止めた。
「オーアブナカッタゾータスカッタゾー」と、大斧持ちは呑気に言う。
掴まれた真白はまずい、とすぐさま自分の体を錐揉みのように捻って回転させる。その回転で大剣持ちがつい手を離してしまい、何とか逃れる事が出来た。
「モウイイダロ。メンドクサイカラツカマエルカコロスゾ」手を離してしまったのが気に入らないのか、若干イラっとした感じで、大剣持ちが動き出した。すると雰囲気が変わる。大剣持ちからゾゾッと音が出るような凄まじい殺気が溢れ出す。目は野獣のように、口からは上向きに鋭い牙が見える。その様子はまるで悪魔のようだ。
真白は戦慄した。今から殺される。そう覚悟して当然のような威圧。何もないはずなのに、大剣持ちの背中からどす黒いオーラのような、影のようなものが見えた気がした。
真白は初めて魔物を恐ろしい、怖いと感じた。
「……猫に追い詰められたネズミがこんな感じなんだろうにゃ」そう考えると、なんだかお面白おかしくなる真白。思わずフッと笑う。
「窮鼠猫を噛むってにゃ? じゃあ、窮猫魔物を狩るのにゃー!」そう言うと大剣持ちの殺気に負けじと大きな声で「ハア!」 と叫んで両腕を下に向けてグッと力を入れて、気合を入れる。
そしてクラウチングスタートのようにしゃがんでスタンバイする。大剣持ちは「?」と首を傾げて真白が何をするか様子を見ている。真白は足を屈伸させるように、地面にぐぐっと力を入れる。そして一気に力を溜め込んだその力を地面に解き放つと、ドン! という音と共に真白が大剣持ちに飛んでいった。
そのスピードはかなりのもの。大剣持ちも反応できない。スピードそのままに真白はナックルで、ゴパーンという音と共に、大剣持ちの顎を撃ち抜いた。
「グアァ!」さすがのゴブリンチャンピオンもこれはたまらない。大きく仰け反り5mほど吹っ飛んでいく。
真白は攻撃の手を緩めない。勢いそのままに今度は倒れていく大剣持ちの顎を、鉄板の入った踵で、一旦空中でくるっと一回転してから屈伸し、上から思い切り踏みつけるようにもう一度顎に蹴りを入れた。不意を付かれた上、的確に二回も同じ顎に攻撃を喰らい、顎がひしゃげて大剣持ちは伸びてしまった。うまくいった。しかしまだとどめを刺していない。
伸びて仰向けに倒れている大剣持ちの横に着地した真白だが、急に後ろから強い殺気を感じ、やばいと思って左にサイドステップした。と、当時に、大斧が襲いかかった。そしてなんと仰向けに寝転がっている大剣持ちにそのまま振り下ろしてしまった。
びっくりする真白。その大斧の攻撃で、大剣持ちは上半身と下半身が千切れかけている。が、まだ辛うじて生きている。何のつもりか分からないが、とりあえず真白は、急いで大剣持ちの頭をグシャっと思い切り踏みつけて潰し、とどめを刺した。
今度は大槌が、真白を地面と平行に横薙ぎで襲ってくる。風圧に押されながらもバックステップで交わす。続けて大斧が真白を襲う。どういう事か理解が追いつかず、とりあえず二匹の攻撃を交わす真白。大斧と大槌が交互に真白を襲う。風圧も凄いので、風に当てられバランスを崩しそうになるも、紙一重でかわし続ける真白。真白は体が小さいので、二匹は中々当てられない上、お互いの武器が大き過ぎて当たりそうになるので、うまく攻撃できない。
「ウガアアアアア! コイツウウウウウ! キョウダイヲコロシヤガッテエエエエ!」
「キョウダイノカタキダアアアアア!!」
どうやら真白が大剣持ちを倒したと勘違いしているようだ。真白が吹っ飛ばした時点で事切れたと思っている? 確かにとどめを刺したのは真白だが、致命傷を負わせたのは大斧なんだが。大斧は余りの怒りで、大剣持ちを攻撃した事さえ分かっていないようだ。
「うーん余り頭がよくないのかもにゃ? 言葉が話せるからマシかと思ったけど、思った以上に単純にゃ。ゴブリンと変わらないかもにゃ」真白は呟く。
そしてまさかこんな小さな猫の獣人に、自分のキョウダイがやられるなんて思いもよらなかったのだろう。実はこのゴブリンチャンピオン達は三兄弟だった。元々普通のゴブリンだったが、とある日、理由は不明だが三人揃って進化したのだった。
一旦距離を置いた真白に、再び二匹のチャンピオンが横並びで怒髪天を衝く表情で攻撃を仕掛ける。大振りなのに凄いスピードだ。しかし真白は気づいた。確かにパワーもスピードも凄いが、単調だ。軌道が単純なのだ。まるで少し前の真白のようだった。訓練してないと気づかなかった事だ。訓練しといて本当に良かったと思う真白。
まあそれに気づいたとしても、かわし続ける真白が相当凄いのだが。
真白は気持ちに余裕が出来た。実はさっき大剣持ちを倒した事で、レベルが上がった事も理由の一つだったりするのだが、戦闘中の真白はそれに気づいていない。どちらにしろ余裕が出来た事で、チャンピオンと言えど怖くなくなっていた。
「やっぱり」あの有名なセリフを言う。「当たらなければどうという事はないにゃ」そう言いながら二匹のヴォン!ヴォン! という台風のような攻撃をかわしていく。大斧と大槌が小さな真白を縦横無尽に攻撃するも、当たらない。徐々にイライラしていく二匹。
「でも、躱しているだけじゃ倒せないにゃ。でもさっきみたいな隙は出来ないだろうにゃー」と考えながら、二匹の攻撃のスピードとパワーに感心しながら躱していると、ふと、とある方法を思いつく。
やってみるにゃ、と呟きながら、一旦距離をとった。すかさず横並びで追いかけてくる二匹。「「ウゴゴオオオオオオ!」」二匹同時に上から大斧と大槌が真白を襲う。それを右サイドステップで避けてまた距離をとる。すると左側にいた大斧持ちは大槌持ちの陰になり、真白側にいる大槌持ちだけが攻撃できる状態となった。
そこでバックステップで少し距離をとると、すぐさま大槌持ちが血走った目で追いかける。またも上から大槌が攻撃してくるのを、サッと後ろに回って躱した。
「ほら、こっちだにゃ。上からばかり攻撃してたらそりゃ当たらないにゃ」真白が大槌持ちを煽る。そしてその背後には大斧。真白の煽りに乗ってしまった大槌持ちは、大斧持ちより先に、大槌を横に向けて振り切る態勢をとる。
チャンスとばかりに、タイミングよくジャンプして、体を横向きに浮かせ、両足をグッと屈伸して、大槌に足をトン、と置いた。振り切った大槌に乗って吹っ飛ぶ真白。タイミングを合わせて大槌を土台に思い切り蹴り出す。振り切った後で大槌持ちは真白のその動きに唖然とする。
飛んだ方向には大斧がいる。大槌の振り切った力と、屈伸してジャンプする要領で飛び出した勢いで、物凄いスピードどパワーが乗った真白のナックルを、反対側にいた大斧が、思い切り顔面に食らった。余りに速く力の乗ったナックルを、大斧は避ける事が出来ない。ナックルが顔にめり込み、鼻がひしゃげるもナックルの勢いは止まらない。後頭部まで達したかと思われるほどの強烈なナックルパンチを食らって、大斧は「ゴバア!」と叫びながらスローモーションのように後方に吹っ飛んで、仰向けにドスーンと倒れた。
大槌の攻撃の威力を利用し、更に自分の脚力も利用して、反対側にいた大斧を攻撃したのだ。大槌はその一連の真白の攻撃を見て呆然と立ち尽くす。大斧は手足をピクッピクッと痙攣しているかのように動かしているが、それも程無く動かなくなった。事切れたようだ。
真白の俊敏性と戦いのセンスがあって出来た技。体が小さい事も幸いして、真白の狙い通りうまくいった。
「コ、コノ、ネコオンナアアアア~~~!!!」大槌は兄弟二匹を倒されて、またも怒髪天を衝く表情になる。目は充血したように真っ赤になり、黒々しい体躯が、殺気を帯びて今にも爆発しそうである。
「だ、誰が猫女にゃー! そんな妖怪みたいな呼び方するにゃー!!」真白は怒り叫んだ。呼ばれ方が余程気に入らなかったみたいです。