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助っ人ガイコツさん

いつもお読み頂き有難う御座います。

ブックマークまでしてお待ち頂いている方々、感謝です。

※更新が遅れがちで申し訳ありません。現在書き溜めしている最中です。


「……ヘンさん?」


 綾花の言葉に返事せず、ナリヤが使役する魔物、ヘンは、未だアークデーモンがのたうち回っている方向を見る。


「お前はここにいろ」そう一言、綾花に声をかけ、ヘンは風のようにサァっとアークデーモンが倒れている場所まで進む。


「ギギャ?」自分を飛ばしたのはこの骸骨の魔物だ、それに気づいたものの、同時にこの魔物は相当強い事が分かったようだ。不味い。このままだと間違いなく殺される。そう思ったアークデーモンは、倒れている状態から急いで立ち上がり、ゆっくり近づいてくる骸骨の魔物から一目散に逃げ出した。


 だが、ゆっくり近づいていた筈の骸骨の魔物、ヘンはいつの間にかアークデーモンの横に既にいたのである。「ギャ、ギャヒ?」驚くと同時に、ヘンの大鎌がユラリと一回転する。瞬間、ストン、とアークデーモンの首が胴体からずれ落ちた。


「……ふむ。やはり一匹だけだったか」辺りをキョロキョロしながら確認するヘン。そして綾花の元まで戻る。


「アークデーモンは他にはおらぬ。もう大丈夫だろう」「ど、どうもありがとう」


「気にするな。お前が死んだら、ナリヤ様が悲しむからな。それよりさっさとメディーに来るがいい。……まあ、今は大混乱の最中ではあるが」


 大混乱? ヘンの最後の言葉が気になり、質問しようとする綾花だったが、ヘンはすぐにヒュン、と風のようにその場から立ち去ってしまった。


「……メディーはそんな大変な事になってんの? というか、とりあえず助かったぁ~」と言いながら、ヘナヘナ、とその場にへたり込む綾花。死を覚悟しいてた分、一気に力が抜けたようである。


「あ。バッツ達ウインドクッションに乗せてどっかやったままだ。でも、ちょっと休憩してから追いかけよう。アークデーモンが他にいないなら大丈夫だろうし」


 そう呟きながら、綾花はその場にグデーと大の字になって寝転んだ。


 ※※※


「ちょっと待て。……神官が殆ど捕らえられていた、というのはどういう事だ?」


 怪訝な顔をしながら、メルギドはリリアムとビーナルから発せられた言葉の真意を確認する。


「私達が総神殿のレムルス達と共に、隷属の腕輪について調査してたの、お父様もご存知よね? その結果、残念ながら殆どの大神官を含めた神官達が関わっていたの。だから捕らえてギルド本部の地下牢に入れていたのよ」


「……それは誠か」「ええ、勿論」


「……何という事だ」リリアムの返答を聞いたメルギドは、信じられないと言った表情で額に手を置きながら、深く大きなため息をついた。


「で、でもリリアム。それとアークデーモンとはどう関係があるんだ?」ライリーもリリアムの報告に驚きながらも、さらなる疑問を問いかける。


「そこはまだ推測なのだけれど、どうやら魔薬で捕らえられていた神官達が魔物に、要するアークデーモンになってしまったようなの。そして、ハーピーとキラービーは……、神官達が慰み者として隷属の契約をしていた、元孤児の女性達の可能性が高いわ。彼女達はそういった意味では、単なる犠牲者なのだけれど」


 悔しそうな表情を浮かべながら、リリアムが更に驚愕の内容を報告するのを聞いていたメルギドとライリー、更に他臣下達は、皆沈黙してしまった。余りの事に言葉が出ないようだ。ハーピーとキラービーは相当数いたと、報告に来た兵士から皆聞いている。という事は、神官達は禁忌である筈の隷属の契約を、結構な数の孤児達に使用していた、と同意だ。


 しかも孤児達は抗う事も出来ず、強制的に魔物にされた事も容易に想像できる。そして自身の気持ちとは裏腹に、街中を荒らしていたのだ。


 その事実だけでも大変重大な問題である。メルギド達が閉口してしまうのも無理はない。


「……一体何処の誰がやったのだ?」「一応、その犯人は既に捕らえているわ、お父様」


 リリアムの答えに今度はざわつくメルギド達。


「……魔族、ですかな?」クイと柄のない眼鏡を上げながら、確認するビーナルに、リリアムは黙って頷く。


 そこでメルギドがドン、と強くその場を踏みしめ、怒りを顕にする。


「魔族と人族とは和平を締結した筈。なのに一体どういう事なのだ!」


 リリアムはメルギドがこめかみに血管を浮かび上がらせながら、相当怒っているのを傍で見ながら、捕らえたギズロットとプラムから詳細を聞かねば、と思っていた。


「お父様。首謀者と思われる魔族は既に捕らえているわ。ここの牢に収監されているはずよ。王城の牢に連れてくるよう伝えていた筈だから。彼らに聞けば、何か分かるかも知れないわ」


「ふむ。その件はまだ我々には報告が上がっておりませぬな。おおよそ、兵士達は都内の片付けに忙しくしておるためでしょうが」


 ビーナルの言葉に、きっとそうね、とリリアムは相槌をうちながら返事をした。


「あ、そうだわ。その魔族達から聞き出すには適任者がいるのよ。後で連れてくるわ。それより……」


「負傷者の治癒で御座いますな」チラリと見たリリアムの意図に気づいたビーナルはそう言うと、そのとおりよ、とリリアムは相槌を打つ。


「しかしリリアム王女殿下。今のお話ですと、メディー内には現在、殆ど神官がおらぬのですな?」「そうね。ただ、レムルスがいた神殿は、どうやらまともな神官達みたい。それに、シーナ様お抱えの神官達も何人かは期待出来るんじゃないかしら? でも、それでもメディー内の様子からして、間違いなく人手は足らないわ」


 勿論私も手伝うけれど、と、リリアムが言いかけたところで、リリアムはメルギドが突如、豪奢なガウンと王冠を取り外しているの見て不思議そうな顔をする。


「……お父様? 何をなさっているのかしら?」「無論。光属性魔法を使える我も、都民の治癒に参加しようと思ってな」


 そう、リリアムが言った後、メルギドとライリーは、申し合わせたように見つめ合い、互いに頷く。ライリーも同様、治癒に向かうつもりのようだ。


「よしでは、ライリーも街へ参ろう。出来るだけ都民を救うためにな」


 その言葉を聞いた臣下達は一斉にどよめく。ただ、ビーナルは、メルギドならきっとそう言うだろう、と予想できていたようだ。


「陛下。せめて護衛だけは付けておいた方が良いかと」「あら。じゃあ丁度いい人材がいるじゃない」


 ニッコリ微笑みながら、ずっと退屈そうに、頭の上で休憩していた白猫を、自分の豊かな双丘の辺りに持ってきてだ抱くリリアム。そしてビーナルは、それが誰か気づいたようだが、何故だか、はあ、と大きなため息をついた。


 ※※※


『と、言うわけなので、タケトとケーラ、王城まで来てくれるかしら?』『ああ、分かった』『了解だよ』


『それとレムルスも後で呼びに行って合流する予定よ。それから総神殿に行くわ。だから着いたら連絡貰えるかしら?』


 レムルスは王城に兵士達を呼びに行った後、疲れて寝ていると聞いていたリリアム。なので健人とケーラにそう伝えた後、リリアムは、白猫と共にレムルスが寝ている寝室へと向かった。


 メルギド自ら光属性魔法を用いて、都民達の傷を癒やすという、普段であればあり得ない、前代未聞の事となったので、その護衛に健人とケーラをリリアムは進言したのだ。彼らであれば実力は折り紙付き。問題ないだろうと、ビーナルを含めた神官達も、渋々ながら納得したようである。


 本来であれば、グオール将軍辺りがやるべき事ではあるが、現在街中の瓦礫撤去や怪我人の対処等、大忙しであるため、身動きが取れない事も、健人とケーラが適任であると決めた理由だったりする。


 瓦礫撤去作業を手伝っていた健人とケーラはそれを一旦止め、王城に向かおうとしていた。しかしもう馬は使わず、健人はアクセルとブースト、ケーラはレベル80を越えた事で使えるようになった、闇魔法での高速移動を用いて移動する事にした。


「ケーラ、遅れんなよ」「大丈夫だよ! 初めて使う魔法だけど!」そう言いながら何だか嬉しそうなケーラ。


「じゃあ行くか」健人の言葉にニッコリ頷くケーラ。次の瞬間、ヒュンと健人の姿が消える。だが、ケーラには見えているようで、既に踝辺りに纏っている黒い霧上の靄に魔力を込め、ケーラも同様にその場から消えた。


 いや、実際は二人共消えたわけではない。余りに高速な移動のため、そう思えるだけなのだ。既に屋根伝いに、まるで光の速さで移動していく二人。直ぐ様、王城前に辿り着いた。


「うう~! 速いけど寒いー!」「……だな。俺も移動する事ばっか考えてて、この寒さの事すっかり忘れてたよ」


 今日は雪は降っていないものの真冬である。氷点下とまではいかないものの、ヒュウゥと二人の間を吹き抜けるからっ風は相当身にしみる。しかも高速移動した事で、一気に体温が下がったようだ。なので王城前に到着してすぐ、体をあちこち擦ったり、地団駄踏んだりして、どうにか体温を上げていた。


「……タケトとケーラ、だな?」突然目の前に現れ、何だか凍えている二人を怪訝な目で見ながら一応質問する門番の兵士。事前に二人がここに来る事を聞いていたので、怪しいとは思いつつも、以前見た事はあったので間違いないだろうと思いつつ。


 名前を言われ震えながら黙って頷く二人。訝しむもとりあえず、門番の兵士は健人とケーラを王城内に招き入れた。


 そしてもう何度か訪れている王城。さすがに健人とケーラはもう慣れた様子で、当初の頃のようにキョロキョロはしない。そして暖かい王城内にホッとしながら、そのまま謁見の間まで案内されると、そこでは既に、メルギドがいつもの豪奢なガウンと王冠を外し、防寒用の軽装姿で玉座に座らず立って待っていた。ライリーもメルギドの横にいて、パッと見冒険者のような出で立ちになっている。


「おお来たか。今日は宜しく頼む」「こちらこそ、宜しくお願い致します」軽装だとしても王である事には変わらないので、健人とケーラはその場で膝を付き頭を下げる。だがメルギドは直ぐに、よいよい、と健人とケーラを立たせる。気を使いながら二人は立ち上がった。


「おお! ケーラ! 僕のために来てくれたんだね!」そこで空気を読めないちょっと残念イケメンライリーが、突如ケーラにハグしようとするも、ヒョイと躱されおっとっとー、とケンケンする。


「ケーラ! 僕だよ! ライr」「知ってるよ。あ、じゃない。知ってますよ」


 途中で言葉を遮り答えるケーラだが、その目はとっても冷ややかだ。一応敬語に直すだけ冷静ではあるものの。


「あ! そうか! ケーラ、恥ずかしいんだね! 全く、気にしなくていいのに」「いや違う。つか、ウザい。あ、ウザいです」


 ケーラの言葉に、顎が床に落ちるんじゃないかってくらいガーンと口をアングリするライリー。イケメンがかなり残念な顔になってます。そして、ウザいです、ってそこ敬語にしても失礼には変わらないぞ? と健人はこころの中で突っ込んでたりする。


「……ま、とにかく準備できたら行きましょうか」


 様子を見ていたメルギドはため息混じりに、そうだな、と一言こぼし、とりあえず四人は、リリアムがレムルスを連れ、ここにやってくるのを待つ事にした。




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