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勇者絶体絶命?

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※更新頻度が遅くて申し訳ありません

 気絶したバッツとリシリーを背に、アークデーモンに対峙するジルムと綾花。当然二人を放置して逃げるなんて出来ないが、目の前の強敵に対しどうすればいいのか、中々いい案が思いつかない。


「ギャヒヒィ!」綾花があれこれ必死に考えている最中、突如綾花が創り出したファイアストーンをアークデーモンが遠くに放り投げた。そして何やら陽気にドンドン足踏みしている。その様子を見ながら、ジルムが何かを決意した様子ながらも、綾花にニッと笑顔を向けた。


「アヤカちゃんの魔法なら、二人共連れて逃げる事が出来るよね? 俺、囮になる」「だ、ダメだよそんな事!」


「でも、他にいい方法思いつかない」「だ、だけど……」


 既に覚悟を決め、ジルムは自らの剣と盾を構える。どうやらシールドバッシュを仕掛け、隙をつくるつもりのようだ。。


「ジルム! そんな事したらあなたが……」「大丈夫。きっと生き残って逃げ切ってみせるから」


 再度笑顔を綾花に向けるジルムだが、明らかに顔がこわばっているのが見て取れる。綾花はその表情を見て焦りの色を隠せない。


「じゃ、リシリーちゃんとバッツを頼むよ」そう言いながら、ジルムはキッとアークデーモンを睨み、一気に突進していった。


「ギャヒ?」ジルムの突進に気づいたアークデーモン。だが余裕があるのだろう、ニタァと耳まで裂けている口を開きながら「ギヒヒヒ!」と嗤い、待ち構えずジルムの突進に向かって走り出した。


「!」アークデーモンの予想外の動きに一瞬ためらってしまうジルム。そのせいで自身の盾を力一杯ぶちかます予定が狂ってしまう。勢いが若干弱まってしまった。


 そこにアークデーモンが逆にジルムに思い切り体当たりを浴びせる。「うあああ!!」ガシイと大きな衝撃音が響き、ジルムはまるでトラックに轢かれたかのように数十メートル吹き飛ばされた。ドン、ドン、とボールのように地面にバウンドするジルム。そしてドシャアと最後に地面に叩きつけられ、バウンドが止まった時には、ジルムの体は若干ピクピクと動いて入るものの、明らかに危ない状態である事は、綾花はすぐに理解できた。


「ジルム!」急いで駆け出したい衝動に駆られる綾花だが動けない。自分の後ろには未だ気絶しているバッツとリシリーが地面に寝転がっているからだ。仲間が三人皆動けない状態で、一人目の前でギャッギャ騒いでいるアークデーモンに対峙する綾花。


 頬を冷や汗がツーと伝う。どうすればいいの? こんな強い魔物、私一人じゃ倒せないよ。心の中で弱気な言葉を呟きながら、それでも、初めて仲間と呼べる、友達のような関係になれたこの三人を捨てて逃げる気にはなれない綾花。


「くっそー! 私だって勇者? らしいんだから、やってるやるわよ!」


 そう半ば開き直りながら大声を出す。そして未だ余裕をかまし、その場で一人遊びをするようにダンダン地面を踏み鳴らし、ギャッギャ叫んでいるアークデーモンに向かって、綾花は「ゴーレム召喚!」と土魔法を唱えた。


 その瞬間、ゴゴゴゴ……、と綾花の目の前の土が大きく音を立てながら盛り上がり、腕や足、体や顔が形成されていく。それが二体、綾花の前に現れた。因みに顔はガ◯ダムっぽいが、綾花はロボットアニメに明るくないので、何だか微妙に違うのだが。


 それはともかく、全長5m程の二体のロボットのようなゴーレムが、綾花の前に立ち並んだ。


「……本当はこの魔法、使いたくなかったのよね。魔力を相当使っちゃうから」そう呟きながら、魔力を使ったせいだろう、肩で息をしながら、綾花は改めてアークデーモンに対し身構えた。綾花が呟いた通り、このゴーレム召喚の土魔法は、強力なゴーレムを創り出せる代わりに、魔力の枯渇が激しいのである。


 そしてこのゴーレムを使って、綾花はアークデーモンを倒そうなどとは考えていない。逃げるための囮に使おうと思っているのだ。だが、既に魔力は二桁にまで減ってしまっている。遠方に飛ばされたジルム、後ろにいるバッツとリシリー全員を連れて、アークデーモンが追いつかないほどのスピードで逃げるには、風魔法の利用は避けられない。


 だが、綾花の魔力もギリギリだ。だがもう、他に方法が思いつかない。


「よし行け!」綾花がハート型の杖をアークデーモンに向けると、ゴゴゴ、と音を立てゴーレム二体は、ドン、ドンと大きな足音を立てながら、アークデーモンに走っていった。


「ギャヒ?」初めて見たゴーレムにちょっと驚いたものの、すぐさまゴーレムに向き合い身構えるアークデーモン。それを見た綾花は、「ウインドブーツと唱え、自身の膝から下にかけて風魔法を纏わせた。魔法が纏っている間、走るスピードを上昇させる魔法だ。


 そしてドン、と一気に駆け出す。まずは遠方に飛ばされたジルムを拾いに行く綾花。その横ではゴーレム二体とアークデーモンが戦っている。よし、時間稼ぎできそうだ、と少しホッとしたのも束の間、


 ドドーン、と大きな音を立て、二体のゴーレムが同時にその場で仰向けに倒された。更にその上に乗って、アークデーモンはゴーレムの顔を叩き壊す。更に腕、足、胴と粉々に壊してしまった。


「……嘘」その様子につい固まってしまう綾花。いくらアークデーモンが強いとは言え、あのゴーレムは綾花の言わば最終兵器とも言える魔法。それなのにあっさり倒されてしまった。もっと粘るかと思っていたのに。


 だがすぐ、気持ちを改め、既にジルムのいる場所にたどり着いている綾花は、急ぎジルムを背負い、未だウインドブーツの効力が残るその足で、バッツとリシリーが寝ている場所に戻った。


 と、同時に、もう一体のゴーレムが粉々にされてしまった。


「なんて強さなの……」


 ガラガラと崩れていくゴーレムを、絶望の面持ちで見ながら呟く綾花。だがすぐ、綾花は残りの魔力を使い切り、「ウインドクッション」と唱える。綾花の隣に直径3m程の大きさの渦巻きが出来上がり、その上に急いで三人を乗せた。


「この三人は死なせない。もう魔力残ってないけど、私が引き付けているうちにウインドクッションで遠くまで逃がす事は出来る」


 自分の命はもう諦めた綾花。……はあ、折角二度目の人生掴んだのに、ここで死ぬんだ。災厄も結局分からず終いで。勇者って肩書一体何だったの? 


 そう考えると何だか泣きそうになってしまう。何だか情けなくも思えてきた。だが今はそんな感傷に浸っている場合ではない。未だ何のダメージを受けていないアークデーモンが、とうとう綾花にターゲットを絞ったようだ。


 ツツ、と冷や汗が背中を伝うのを感じながら、三人が寝ているウインドクッションをこの場から移動させる。どこへ行くかわからないが、ウインドクッションは馬より速い。アークデーモンが追いつくにはさすがに無理があるだろう。


 だから、出来るだけ自分がアークデーモンをこの場に留めておかなきゃ。そう覚悟を決める綾花。だが白兵戦には全く自信がない。でも魔力はもう残っていない、本当は立っているのも辛いがそうも言っていられない。


「ギャヒヒィ!」アークデーモンが遠慮なく飛びかかってくる。物凄い迫力。怖い。それでも何とか怯える自分を奮い立たせ、綾花はミスリルの杖でその攻撃を受け止めようと身構える。


 だが次の瞬間、フッと、アークデーモンの影が消えた。


「……え?」半目状態でアークデーモンの攻撃を受けようとしてた綾花は、何が起こったのか事態が飲み込めない。瞬間、「グワハアア!!」と、遥か遠方でアークデーモンが吹っ飛ばされ、のたうち回っているのが確認できた。


「……どういう事?」何が起こったのか分からない。綾花はキョトンとしてしまう。


 するとすぐ、綾花の目の前に、ファサァと風でたなびく外套が目に入った。


「間に合ったか」そこには、いつぞやの骸骨さんが、何処か安堵の表情を浮かべているような感じで立っていた。骸骨だから表情分からないけど。



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