蹂躙の跡
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「……思った以上に酷いわね」『悲惨な状況だにゃー』
健人とケーラが使っている宿から、王城へ向かう途中のリリアムは、メディー内の惨状を見て言葉を失った。同行している白猫も、リリアムが操る馬上に乗り、辺りを見渡す。夜通し戦っていた時は、暗くて周りの状況は判別できなかった上、一時的にリリアムの光属性魔法にて確認したのはギルド本部前だけだった。あそこも冒険者や兵士達の亡骸が散乱していて、相当悲惨な状況だったのだが。今は既に昼を過ぎ明るいのでよく分かるメディーの様子に、リリアムは言葉を失い、白猫も辺りを興味深く見回している。
つい、リリアムが馬を駆る歩みが遅くなる。カポ、カポと馬の蹄を鳴らしながら、瓦礫の山となった商店や家々、時折血生臭い風を漂わせてくるのを鼻腔に感じる。犠牲者は思った以上に多いのが窺い知れた。時折人々の悲しむ声や泣き叫ぶ声が寒風に乗って聞こえてくる。
「もし、あの魔物達を倒せなかったら、メディーは壊滅していたかも知れないわね」『ほんとだにゃー』
辺りの凄惨な様子を、苦渋の表情で見渡しながら呟くリリアムに答える白猫。因みに、瓦礫の撤去や人々の救助活動には、王城から兵士達が駆け付け対応していた。普段なら冒険者達がギルドからの依頼を受けやっている事なのだが、冒険者達はその大半が殺されてしまって殆どいない。
「そうだわ。光属性魔法を持った神官達もほぼいないはず」それを思い出し、すぐにでも治癒治療に当たりたい思いに駆られたリリアムだったが、あまりにも負傷者が多い。リリアム一人では明らかに足らない。なので、まずは王城へ向かい、父であるメルギドに会って、今後の対応を聞いてから負傷者を治癒しようと決断し、急ぎ馬を駆り王城に駆けだしていった。
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「一体何が起こったというのだ!」
謁見の間の高台にある玉座より下方を眺め、激昂する王メルギド。その言葉を受け、膝を付き恭しく頭を垂れながら、ビーナルは淡々と説明する。
「昨日の混乱は、どうやら大量の魔物がメディー内に現れたのが理由のようで御座います。その規模や状況、更に原因については、現在目下調査中で御座います故、しばしお待ち頂きたく」
ビーナルの返答に沈黙し、焦りの表情を浮かべながら、王メルギドは、蓄えた顎髭を弄りつつ、うーむとつい唸ってしまう。夜中にメディー内が、約六年前に起こった魔族からの総攻撃の如く大混乱に陥ったと、報告を受けたのは早朝の事だった。
メルギドに報告が遅れたのは、将軍であるグオールが率先して駆け出していった事と、同様に兵士達も次いで後から現場に向かった事と、更にここ数年、平和が続いていたため、有事の対応が緩慢になっていた事も理由だろうと思われる。
ビーナルと複数の家臣、それにメルギドが皆深刻な表情を浮かべ沈黙していると、ツカツカと靴の音を鳴らしながら、第一王子ライリーも謁見の間に馳せ参じた。
「お父様! 大変な事態になっていると聞きましたが」メルギドに頭を下げ挨拶をし、早々に声を上げるライリー。その表情にはメルギド同様焦燥感が漂う。
「うむ。かなり深刻な状況になっておるようだ。そう言えばリリアムはどうした?」「今朝から見当たりませんね」
「お恐れながら申し上げます。昨晩の混乱の後処理に向かった兵士の一人より、リリアム王女殿下について聞いております。王女殿下は、メディー内に多数現れた魔物達相手に、一晩中戦っておられた、との事で御座います」
メルギドとライリーの会話の合間に報告をするビーナル。その内容を聞いた二人は驚いた顔をし、ついメルギドは玉座から立ち上がってしまう。。
「何だと! 報告によると魔物達は相当高レベルだったと聞いておるぞ! リリアムの所在は確認できておるのか!」メルギドが声を張り上げ、ビーナルに質問する。
「ご安心なさりませ。報告によりますと、リリアム王女殿下は、正に勇者と共に戦った姉上、アイラ殿下の如く、大活躍だったとの事で御座います。寧ろ兵士達は王女殿下に助けられたと。そしてその場には同様に、タケトとケーラも王女殿下と共に戦い、魔物達を蹴散らしていたようです。尚、三人共全くの無傷だったとの事」
「「……」」ビーナルの報告を聞き、今度はホッと安堵の表情を浮かべると共に、驚いた表情になるメルギドとライリー。
「しかし、報告によると魔物はハーピーとキラービー、更にはアークデーモンが百匹以上いたらしいではないか。それらを蹴散らした、というのか?」「御意に」
正直答えたビーナルも、何処か信じられないと言った表情である。それらの魔物がどれだけの脅威で、そして百匹以上いたという途轍もない数にも関わらず、その三人は生き残っただけでなく、全て倒したらしい。
「正に勇者メンバーみたいだ」その圧倒的な戦果。ライリーがそう呟いたのを聞き、メルギドを含めその場にいた全員が、つい頷いてしまった。
そこへ、丁度話題に上がっていたリリアムが、謁見の間に現れた。頭に白猫を乗せて。
「おお! リリアム! 無事か!」「心配したよリリアム!」リリアムの姿を見たメルギドとライリーは、顔を綻ばせリリアムに声を掛けるが、リリアムはそれどころではない、といった表情で挨拶もそこそこにメルギドに進言する。
「お父様。メディー内には未だ沢山の負傷者が溢れております。至急神官の手配をしないといけませんわ」
「おお、そうか。では神殿妃のシーナに連絡して、至急派遣させよう。メディー内全ての神官総動員して当たらせれば良い」
「あ、でも、お父様。実は……」メルギドの提案に、リリアムが渋い顔をして何かを言おうとする。神官の調査内容についてはメルギドは今は何も知らない。丁度報告しようとしていたところで、今回の騒動が起こったからだ。
そこへビーナルが、リリアムの表情を察して口を挟む。
「僭越ながら申し上げます。リリアム王女殿下は、殆どの神官がギルド本部にて捕えられているのを気にしておられるのですね?」
「ええ、まあ。それもあるのだけれど。何と言えばいいのかしら」何だか言いにくそうに口ごもるリリアムに、メルギドを含む家臣達が怪訝な表情を浮かべた。
「実は、その神官達全て、どうやらアークデーモン、魔物になってしまったようなの」
※※※
「「……」」
言葉を失う健人とケーラ。リリアムが王城に戻った後、夜までイチャコラしていた二人は、次の日の朝起きて、宿の外に出てみて、その凄惨な光景に驚いていた。夜通し戦っていた健人が明るいさなか、改めてこの光景を見たのは今が初めてだったのだから仕方ないのだが。ケーラも昨日、ナリヤと共に確認していたのだが、今日は街中を二人歩いているので、思った以上に被害が広がっているのを再確認し、唖然としているようだ。
「一日経ったのに、まだ瓦礫が全然片付いてないね」「ああ……」
あれ程綺麗だったメディーの街並。それがまるで爆撃でもされたかのように、殆どの家が瓦礫と化し、人々も道端で項垂れていたり座り込んだりしている。
ふと、グラリと崩れそうになっていた屋根が傾いた。その下には女性がいる。「危ない!」咄嗟にケーラがその屋根に向かって飛び出す。「ケーラ!」健人も急いで後を追う。が、ガシイ、とその細腕で、ケーラはおよそ1トンはありそうな瓦礫を、何と片手で受け止めていた。
「ふう、危なかったね」「あ、ありがとうございます」落ちてきた屋根の下に蹲っていた女性が、ズドーンとその屋根を飛ばすケーラの様子に恐れおののきながらもお礼を言い、慌ててその場から逃れた。
「……馬鹿力だ」「ちょ、ちょっとタケト! 違うよ! 闇属性魔法使ったんだよ!」そう。その怪力に呆れる健人に対し、必死にケーラが言い訳している通り、ケーラは咄嗟に闇属性魔法で自身の力を強化していたのだ。ただ、今までのケーラならそんな芸当出来なかっただろう。やはり昨晩の戦いで、ケーラのレベルが相当上がり、使える闇魔法が増えたのが理由だ。
「ま、まあ、すげぇよケーラ」「タケト! ドン引きしないの!」ぶー、と頬を膨らませ拗ねるケーラ。
「相変わらず仲いいな」そこへナリヤが苦笑しながらやってきた。ナリヤも街の様子を見ながら歩いていたようだ。
「そういやヘンは?」「何か気になる事がある、とか言って、一旦メディーを出ていった。それが何か分からないんだが」
首を傾げながら答えるナリヤ。
「とにかく、瓦礫の撤去等、人手が足らないようなので手伝おうかと思う」「じゃあ俺達もそうするか」「そうだね」
そして三人は作業をしている兵士達に声を掛けようとすると、
「あ! いたぞ! ケーラさんだ!」「おおお! よく見つけたな!」
「「あ」」健人とケーラがハッとする。すっかり忘れてた、とケーラが呟きながら頭を抱える。ナリヤは彼らには会っているが、そういやケーラに言われてどうのこうの、とか言ってたな、と思い出す。
そしてザザっとケーラの前にきれいに整列した彼ら。その胸には「K・E・L・A」と誇らしげに光る? ワッペン。いや実際は光ってないのだが何だか輝かしく見える。
「よしお前ら! 威勢よくいくぞ!」「おうともよ!」「せーのーで……」「ちょおっとまったあああ!!!」
そこでケーラが負けじと大声でストップかける。不意をつかれおっとっとー、とかなってる彼ら、そう、ケーラ親衛隊の皆さんです。
「あのねえ! この惨状の中、呑気にボクの名前をでっかい声で叫ばない!」「「「「「イエッサー!!!」」」」」」
一糸乱れぬ統制。さすが鍛え抜かれた兵士達。そして結局でかい声でイエッサーとか言う彼らを見て、はあ~、と思い切り大きなため息をつくケーラ。しかし彼ら、イエッサーって言葉知ってたんですね。
「な、なあタケト。彼らは一体何なんだ?」「ああ、ケーラのファンだよ」
はあ? と呆気にとられるナリヤだが、それに構わずケーラは「瓦礫の撤去とか手伝いをしなさい!」と指示をし、またも全員ビシイと気をつけをして「「「「「「イエッサー!!!!」」」」」」と元気よく返事し、作業を止めポカーンとしている兵士達の元へ駆け出していった。
「まあ、丁度良かったんじゃないか?」「何が丁度良かっただよ! ボクの身にもなってよね!」
むくれるケーラについ笑ってしまう健人。そしてポンポン頭を軽く叩く。全くもう~、と言いながらも、何処か嬉しそうなケーラと、何だか呆れた様子のナリヤと共に、健人は兵士達の作業の手伝いを始めた。
何故か超絶美少女に嫌われる日常
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