ようやく終わりそうです
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「……」「酷いわね」「ほんとに」
辺りに立ち込める、むせるような血の匂いと屍の臭い。更にアークデーモン達の亡骸も含めて、普通の人なら気を失うのではないか、と思えるほど、凄惨な光景のギルド本部前。
リリアムの光属性魔法「ライト」にて、暗闇の中をまばゆい光が照らす。改めてギルド本部前がどうなっているのか、三人はようやく目に見えて分かったようだ。
「ケーラ様。まだ安心は出来ませぬ。全て倒しきったのかどうか不明です。逃げたアークデーモンがいたとしたならば、メディーの街中でまたも人を襲う可能性があるかと」コウモリ姿のままのモルドーがケーラに進言する。
「うーん、確かに。モルドーの言う通りだね。仕方ない。手分けして探すか」
「そうだな。他の人に被害が及ぶ前に倒さないと不味いよな」
「でも、こんな暗がりだと、見つけ出すのは相当難しいわよ」
リリアムの言う通り、現在は光属性で明るくは有るものの、逃げたであろうアークデーモン達を探し出すのは、この夜中の間では厳しいだろう。
「モルドー。魔素は感じ取れる?」「多少近くに寄れば、不可能では御座いませんが。ヘンがおれば、奴の能力で何とでもなるのですが」
そうなんだ、とケーラが返事したところでタイミングよく、ナリヤとヘンがやってきた。
「! 新手か?」「骸骨? アンデッドかしら?」健人とリリアムが構えるが、ケーラが待って待って、と慌てて二人を止める。
「あの魔物はナリヤ姉さんが使役してる、リッチーのヘンだよ。だから大丈夫」
「リッチー?」「じゃあ、モルドーさんと同じく、敵ではないのね」
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「ケーラ様。ご無沙汰しております」「ヘンも元気そうでよかった」
骸骨なのに元気? と違和感を感じながらも、健人は二人の会話を聞いている。健人とリリアムは、この麻のような布を纏い、大きな鎌を持つ骸骨の魔物が、リッチーという呪いを操る、モルドーと同等程度の強力な魔物で、ナリヤが使役していると説明を聞いたので、今はいささか安堵した表情である。人族に似ているモルドーとは違い、やはり見た目のインパクトは強烈だったからだ。
今もギラリとしゃれこうべの目の奥が時折赤く光る。それは単にヘンの感情を表すサインでしかないのだが、それを知らない者からすれば、ゾッとするのは仕方ないだろう。事実、健人と同様、ヘンについて説明を聞いていたグオール達は、未だどこか警戒しているようである。
因みに、腕や脚を失っていた、ファンダル含む兵士達は、皆全てリリアムの光属性魔法で快癒していた。健人がリリアムに預けたクリスタル内の魔力は空になってしまったが。
「して、リリアム王女。ナリヤ様の隷属の腕輪を外してくれたそうだな。その事について改めて感謝する」そう言いながらヘンはリリアムに向き合い、しゃれこうべを下げ礼をした。
「ケーラのお姉さんなのだから当然。気になさらないで」丁寧な態度を取るヘンに対し、微笑みながら答えるリリアム。
「で、お前がタケトか」そして今度は、しゃれこうべだけくるりと健人に向けるヘン。人外の動きにちょっとびくってなる健人。
「えーと、始めまして、って、え? なんで俺の名前知ってんの?」と驚く健人。確かに面識がないので知っているはずがない。ナリヤから聞いた? 少し怪訝な顔をする健人。ヘンはメディーに来る前、綾花達と共にいたバッツやジルムから話を聞いていたので分かったようなのだが、健人は当然、その事を知らない。
「でさ、ヘン。ちょっとお願いがあるんだけど」気になったので質問しようとした健人だが、ケーラがそこで口を挟んだ。
「ケーラ。分かるぞ。逃げたアークデーモンの捜索だろ?」ナリヤがそこで重ねるように話に入る。
「なんでわかったの?」「実は私も襲われてな。あと、ギズロットとプラムを逃してしまった。すまん」
「あー! そうかしまった。口塞ぐの忘れてたね」申し訳なさそうに頭を下げるナリヤに、あちゃー、と額に手を当て失敗したあ、と呟くケーラ。きっと魔法を使ってうまく逃げたんだ、と予想できたようだ。
「じゃあ、その二人も捜索しないとな」「そうね」「でも、ヘンがいるから大丈夫だよ」
そうなのか? と健人がケーラに聞こうとすると、ヘンがおもむろに両手を広げた。
「ケーラ様の仰る通りだ。お任せあれ」そしてギラリとしゃれこうべの奥の目がより一層赤く強く光った。そして「カースサーチ」と唱える。途端、ヘンの背中辺りからブワア、と一気に黒い煙のようなものが空に向かって立ち昇り、そこから傘が開くように一気に広がった。
「範囲は……メディー一帯で宜しいでしょうか?」「ああ。頼む」ナリヤに確認した後、「フン」と何やら気合を入れるヘン。すぐに黒い煙がバッと上空で大きく広がった。
このヘンが使った魔法カースサーチは、ヘン特有の魔法だ。魔素を濃く持つ魔物のみを広範囲に捜索できるのである。ガトーの捜索魔法の劣化版とでも言えるだろう。ただ、使用中は一切身動きができないデメリットもある。
「ふむ。アークデーモン達はまだ然程遠くへは行っておらぬようです。大体数匹固まって共に行動しているようですな。全体の数は……、十二匹。王城に向かっているのが二集団。他北に二集団、ですな」
「よし、手分けして倒しに行くか」「そうね」
「して、ギズロットとプラムですが……」そこでヘンは突如声を小さくし、ナリヤに近づき耳元で囁いた。途端、びっくりした表情をするナリヤ。
「……分かった。ケーラ、ちょっと良いか?」「どしたの?」
コテンと首を傾げるケーラだが、ナリヤに言われた通り近づくと、今度はナリヤがケーラに耳打ちした。なるほど、と頷くケーラ。
その後、健人が驚いた表情をした後、黙ってケーラに頷いた。
「よし。モルドーはボク達についてきて。ヘンとナリヤ姉さんは北をお願いできるかな?」そして何事もなかったかのように話し始めるケーラ。
「分かった」「承知」
ナリヤとヘンがそう返事したところで、ケーラと健人はお互い頷き合う。そしてフッと二人してその場から消えた。「なんだ?」とナリヤは二人が突如消えたので驚いたようだが、リリアムとヘンは二人が何処に行ったかすぐに分かった模様。
「く、くそ! なんで分かった?」「しまった」ギルド本部の裏手の陰から、何やら大声が聞こえてくる。健人とケーラが、ギズロットとプラムを捕えたのである。それを見たリリアムが、そういう事ね、と納得したように呟く。
「さて、今度は逃げられないように口を塞ぐか」「そうだね」そしてすぐに二人の口を布で縛り、更に後手にして縄で縛り付けた。
「まさかギルド本部の傍まで来てたとはな」「どうなってるのか気になったんでしょ? 残念だったね。ご覧の通りだよ」
ケーラがそう言ってギズロットとプラムにギルド本部前の光景を見せる。「「……」」二人は唖然とした表情で、その光景を眺めた。
「ア、アークデーモンの亡骸? まさか!」「神官達全員をアークデーモンにしたのに? 全滅?」
明らかに狼狽える二人。そしてケーラが自慢げにフフンと鼻を鳴らす。
「ま、ギガントサイクロプスを倒したボク達と、モルドーがいたからね」
「し、信じられん……」「なんて事だ……」二人して絶望した様子に、ケーラはやっぱりこいつらの仕業か、と確信した様子。
そこへ、王城方面から夜の闇の中にいくつかの光が点々と見え、次第にドド、ドド、ドド、と地響きを立てながら、馬に乗った大勢の兵士達が王城の方からやってくるのが見えた。
「レムルス殿から状況を伺い、馳せ参じました!」
※※※
「ギャッギャヒ?」「ギャアハア!」健人の一太刀がアークデーモン二匹を一気に切り裂く。断末魔の声を上げ絶命するアークデーモン二匹。
「こっちも終わったわよ」「同じく」リリアムとケーラもそれぞれ二匹ずつアークデーモンを倒し、健人の元にやってきた。
ヘンによりアークデーモンの大体の場所を知り得た健人達は、すぐさま王城方面に向かった。逆に王城からやってきた兵士達は、アークデーモンとは遭遇しなかったようなので、ある意味彼らは助かった、と言えるだろう。
そして近くまで来ると、今はコウモリ姿のモルドーが魔素を頼りにアークデーモンを捜す。そうして見つけたアークデーモン達を、たった今健人達が倒した、という事だ。
「お? 夜が明けてきたな」「さすがに疲れたあー」「本当ね」
東の方向から少しずつ明るくなってきているのが見えた健人達。夜通しずっと戦ってきた健人達。いくらレベルが上ったと言っても疲れまでは解消されない。それなりに体力も向上しているとは言え、流石に三人共疲労困憊だ。
「お風呂入りたーい」「私も。返り血を沢山浴びてしまったし、寒いとは言え汗もかいたから、服や防具を洗いたいわ」
そうだな、と二人の疲れた様子を見ながら健人も頷く。
因みに白猫は、巨大化してギガントサイクロプスを倒した後、ずっと健人のカバンの中で寝ていた模様。神獣効果という白猫の不思議な能力で、あの危機を乗り切った健人達。その件について、白猫に色々聞きたい健人だが、さすがに今は先に休みたいようである。
「一旦ギルド前に戻るか」「さんせー」「そうね。とりあえず状況確認はしないといけないわね」
「本当はすぐ宿に帰ってゆっくりしたいけどねー」「ハハ、全くだ」
リリアムも王城に戻るのは遠いので、健人達が使っている宿に泊まろうと考えているようだ。とりあえず健人達はギルド本部前に戻った。そこでは、王城からやってきた兵士達が後片付けをしてくれていた。そしてグオールやファンダルは、捕まえたギズロットとプラムの処分について話し合い、その後グオールがリリアムの元にやってきて跪く。
「リリアム王女殿下。此奴等は一旦王城の牢屋に閉じ込めておこうと思いますが、宜しいでしょうか?」
「そうね。お願いするわ」リリアムの返事に、かしこまりました、と頭を下げる。因みに今度こそ、ギズロットとプラムの口には轡がつけられ、魔法を唱えられないようにされていた。
「そう言えばレムルス殿ですが、魔力が枯渇している上、慣れない戦闘で相当疲弊していたらしく、今は王城で休んでいるとの事です」「分かったわ。レムルスには明日改めて会いましょう」
リリアムの返事に、改めて頭を下げ、踵を返し戻っていくグオール。
「クリスタルは一旦回収する! 素材も使えそうなものは残さず入手するように!」ファンダルの掛け声に皆「ははっ!」と返事し、キビキビと作業を続けだした。
「夜が明けたな」健人の言葉に、リリアムとケーラは同じ方向を見る。朝日が徐々に昇ってきて、空が白めいて来た。
長かったメディーの混乱は、これでひとまず終止符を打った。
※更新が滞っており申し訳ありません。
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