まだまだ終わらない長い夜
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「ヘン。助かった」「いえ。主をお守りするのが我が使命。寧ろ、今までお守り出来なかったのが、未だ大変申し訳なく思っております故、お気になさらず」
お礼を言いながら立ち上がるナリヤに、未だ跪き頭を垂れる、というよりしゃれこうべを垂れるヘン。そんなヘンの様子に気にするな、と笑顔を返すナリヤ。
「しかし此奴等はアークデーモン? なぜこの様な場所に? しかもどうやら本来の赤色ではないようで?」ヘンによって首と胴体が別々になり、息絶えあちこちに転がっているアークデーモン達の死体を見ながら、ヘンが首を傾げる。皆、紫色だったからだ。
「ああ。こいつらはどうやら元神官達で、魔薬で魔物になったみたいだ。だから紫色をしている。実は元々こいつらは、ギルド本部前に沢山いたのだが、どうやら分散してしまっているのかも知れないな」
健人達は大丈夫なのだろうか? ふと心配になったナリヤ。こうやってアークデーモンが自分のところにまでやってきたとなると、苦戦しているのか? と思った模様。
実はこのアークデーモン達は、健人達と分身モルドーの圧倒的な戦力に恐れおののき、逃げてきたのである。既に現在辺りは夜も更け闇の中。健人達もさすがに全てのアークデーモンを見つけ出し、倒しきっていたわけではなかった。モルドーも同様で、分身を使い魔力を膨大に使った事で、逃げたアークデーモンの魔素を感知出来なかったのである。
その様に逃げおおせたアークデーモン達が、たまたま捕えられているナリヤを見つけ、襲いかかった、という事なのだが、ナリヤとヘンはその事実を今は知らない。
「ヘン。実はギズロットとプラムを取り逃がしてしまってな。追いかけられるか?」
「ギズロットとプラム、で御座いますか?」取り逃がした、という事は捕まえていた? どうして幹部の魔族が捕えられていたのだろうか? そしてプラムは確か和平賛成派のはずでは? ふと疑問に思うヘン。
「可能では御座いますが、その間ナリヤ様をお一人にするわけには参りませぬ。先程のようにアークデーモンがまた襲ってくるかも知れませぬので」自身の疑問はとりあえず、ヘンはここから離れられない理由を説明する。
「それもそうだな……」ヘンの言う事は尤もだ。アークデーモンを倒せる程強くない。それはナリヤの本人も自覚している。主の意見に反対するのはヘンにとって、相当勇気のいる事ではあったが、それはヘンがナリヤを心配しての事。それをナリヤも理解しているからこそ、そこで納得したのだが。
しかし自身の失態のせいで、健人達に迷惑をかけたくない、と悩むナリヤ。
そこで、西の方角から何やら騒がしく人々の声が聞こえてきた。そしてその人影はナリヤ達の方へ走ってくるようだ。
「うわああ!」「やばい、やばいよ!!」「とにかく逃げろ! 俺達ではどうにもならない!」
「む?」「どうした?」声のする方向を見るも、ナリヤには暗くて見えない。だが、ヘンはわかった模様。未だ跪いていたのをナリヤに一礼してから立ち上がり、大鎌を構える。
「ヘン。見えるか?」「人族が十人、こちらに向かってやってきておりますが、更にその後ろから、結構な数の魔物がこちらに向かってやってきているようです」
「また魔物?」ナリヤが驚いて返事すると間もなく、人族達、というより兵士達が、ナリヤ達の元に息を切らせながら走ってきた。
が、
「ぎゃあああ!! ここにも魔物があああ!!」「が、骸骨? あんなでかい鎌持ってる? やばいよやばいよ~!!」
「「あ、しまった」」ハモるナリヤとヘン。その見た目からして恐れられるのは当然だ。そこを失念していた二人だが、程なくして奥の方から、魔物達がやってきた。
「あれは……、ハーピーにキラービー、のようですな」
「なんだと? タケト達が倒したのではないのか?」
「とにかく危険ですので倒してまいります」
ああ頼む、とやや戸惑いの表情を浮かべながらもヘンに返事するナリヤ。そしてフッとナリヤの傍から姿を消すヘン。兵士達は突如目の前に現れたヘンに驚き皆腰を抜かして地面にへたり込んでいたのだが、それを気に留めずスルーし、その後方からやってきた魔物達の元へ向かうヘン。
「数が多いな。面倒だ」ヘンが呟くと同時に、ヘンが着ている麻の布の全面が突如開く。露わになるヘンの肋骨の真ん中についている直径10cm程の水晶体がキラリと光った。
「矮小な魔物共よ。我の呪いにより死すが良い。カースビロウ」ヘンがそう唱えた途端、水晶体から黒い大量の水のようなものが一気に迸る。そして滝の壁のようにヘンの目の前に立ち塞がり、一気に上空までドン、と立ち昇った。
「ふん」とヘンが気合を入れたような言葉を呟くと、その大量の黒色の水がハーピーとキラービー達に一気にかぶさる。ドドドド、と黒い水が魔物達と共に地面に叩きつけられた。
だが、それは単なる水圧のダメージのみでしかない。ハーピーはキラービーは黒い水をかぶったものの、それぞれ地面から起き上がる。
刹那、
「ギギャ?」「キチキチ?」どうやら痛みを感じて始めている魔物達。「ギ、ギギャア!」「ギャギャア!」そしてあちこちで直ぐさま絶叫が響き渡る。それから程なくして、皆ドロドロと溶け始め、皮とクリスタルを残して死滅した。
「ふむ。こいつら足や翼に傷を負っていたようだが?」ヘンが思った以上に簡単に全滅できたのはそれが理由のようだ。ハーピーとキラービーは空を飛ぶ事なく地面を這うように兵士達を追いかけてきたようだ。
「「「「「……」」」」」その様子を後ろから見ていた兵士達は唖然とする。あれだけの魔物を一気に倒したこの魔物は一体?
「あ、ちょっといいか?」そこでナリヤが、兵士達に話しかける。
「え? あ、あんたは魔族か?」「ああ。あの骸骨の魔物は私が使役している魔物だ。だから危害を加える事はしない」
そこへヘンが颯爽とナリヤの元に風のようにヒュウゥと戻ってくる。うわあああ!! と一斉に叫び腰が引けながらも逃げ惑う兵士達。
「使役しているから大丈夫だと言ったのに」「この外見では致し方ないかと」と、兵士達のへっぴり腰に、呆れた様子を見せるナリヤとヘン。
「で、全滅させたのか?」「ええ。一匹残らず殺しました」
「あれだけの魔物を……見ていたけど信じられん」「しかもハーピーとキラービーってそんな弱くないぞ」「すげぇな」
それぞれ感心している様子の兵士達に、ヘンには少し距離を置いて貰い、再度ナリヤだけ近づいて話しかける。
「で、あんた達はなんで追いかけられていたんだ?」
「ああ。俺達はケーラさんにお願いされて、あの魔物達を監視してたんだ」「そうそう。ずっと大人しかったんだが、突如暴れだして襲いかかってきたんだよな」
「ケーラが?」どういう事だ? 首を捻るナリヤ。よく見ると、兵士達の胸のワッペンには「K・E・L・A」の文字が見えたようで。
※※※
「逃げる事は出来ましたが、如何致しますか?」「うーむ……」
メディーの瓦礫の陰を伝いながら話し合うギズロットとプラム。ナリヤから逃げおおせたはいいが、その後の行動について迷っているようだ。
まさかギガントサイクロプス二体とも倒されるとは思っていなかったギズロット。計画では、あの巨体を使い王城を破壊しつつ、元孤児達のハーピーとキラービー、そして元神官達のアークデーモンに、メディー内で暴れさせ、混乱させ、あわよくば壊滅する予定だったのだが。
「さすがに、ハーピーやキラービー、更にアークデーモンが大量にいては、メディーの冒険者や王城の兵士達では対応出来ないだろう。様子見も兼ねてギルド本部前に向かうか?」
「アークデーモンには隷属の腕輪を付けておりませんが?」「それを言ったら、ギガントサイクロプスを倒された時点で、ハーピーとキラービーも同じだろう。主が死んでしまった訳だからな」
それもそうですね、とプラムは返事し、夜の闇に身を潜めつつ、二人はギルド本部前に向かった。
更新が滞り申し訳ありません。新作の更新に手間取っておりました。
何故か超絶美少女に嫌われる日常 https://ncode.syosetu.com/n0302fl/
現代恋愛日間&週間ランキング一位獲得しました!宜しければ合わせてお読み頂ければ幸いです。
※次回更新は数日後の予定です。





