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終焉を迎えるも

いつもお読み頂き有難う御座いますm(__)m

ブックマークまでして頂いてお待ち頂いている方々、感謝ですm(__)m

「はあ!」「といや!」「えい!」


 健人達の威勢のいい声と共に、ドンドンアークデーモンの命が消えていく。


「ふん!」「ほおあ!」「せい!」


 こちらはこちらで、三十体ものモルドー達が、これまた一方的にアークデーモンを殺処分していく。


「む? そろそろ終いのようだな」と、モルドーが呟いた途端、ヒュンヒュンと一斉に複数いたモルドー達が消え失せ、一人のモルドーに戻った。どうやら時間切れのようだ。


「はあ、さすがにしんどい」「ふう、だね」「はあ、はあ。だけど、そろそろ、終わりじゃないかしら」


 三人は息を切らせつつそう話ながら一旦攻撃をやめる。というのも、既に健人達に襲いかかってくるアークデーモンは一匹もいなくなっていたからだ。さっきまでアークデーモン達の怒声で騒がしかったギルド本部前も、現在はシーン、と静まり返っている。そこでモルドーが健人達の傍にやってきた。


「あちらも粗方片付きました。しかしケーラ様。とてもお強くなっておられますな。このモルドー、感服致しました」そう言って恭しく頭を下げるモルドー。


「そうだね。でもモルドーのおかげだよ。ありがとね」微笑みながらちょっと嬉しそうにケーラが答える。


「え? ……ケーラ様が私めにお礼? おお! 奇跡だ! なんて有難きお言葉! 感謝致しまするぅぅ!」そして夜空に「おおおお!!」雄叫びあげたかと思うと、今度は急に静かになって、マントのような黒い翼を目に当てて、ウウゥとむせび泣くモルドー。余程感極まったようです。


「おおげさだなあ。でも本当に感謝してるんだよ? ボクがこれだけ強くなれたのはモルドーおかげだもん」そんなに感動するなんて、とモルドーの反応に少し驚いているケーラ。……ボクそんなに酷い扱いしてたっけ? とも思いながら。


「……成る程。仰る意味が分かりました」と、ピタリと泣くのを止め、何かに気付いたモルドー。


「ケーラ、どういう事なんだ?」そんな二人の会話の意味が良く分からず、健人が質問する。


「きっとタケトも相当強くなってるはずだよ。ギガントサイクロプスを倒した後よりもね。それは、モルドーがボクの使役してる魔物だからなんだ。モルドーが倒した分の経験値も、ボク達に入っているから」


「おお、マジか」「そうなの?」


 そうだよ、とケーラが答えながら、未だ感極まっているモルドーの頭を、労わるようにポンポンしている。


 そしてケーラの言う通り、モルドーが倒した分の経験値は、ケーラとパーティを組んでいる健人達にも入っていた。しかもそれは、モルドーがハーピーやキラービーを倒した時も同様に。なので彼らは知らぬ間に、思っていた以上に経験値を得ていたのである。


「どうもおかしいと思ったのよね。いくらマシロさんやモルドーさんが手伝ってくれたとしても、ギガントサイクロプスみたいな巨大で強い魔物を、あんな簡単に倒せるはずないもの」リリアムがどこか納得したようにふむふむと頷いている。


「そうだリリアム。グオール将軍達を治してやってくれないか?」そこで健人がハッと思い出し、今は端の方でへたり込んでいるグオール達を指差しながら、リリアムに声を掛ける。


「あら、いけない」健人に言われリリアムは、慌ててグオール達の元に駆け寄った。アークデーモン達の脅威が去った今は、グオール達は一つところに固まってぐったりしている。ファンダルや兵士達のように、腕や脚を失った者達は、既に座る事さえ難しいようで、それぞれ地面に仰向けになって苦悶の表情を浮かべ寝転んでいた。そんなファンダル達を見てリリアムに対し急いで「ヒール」を唱え、とりあえず怪我の治癒を行うリリアム。更にグオールやグンター、キロットにも唱えていった。それでグオール達の怪我は一気に回復するも欠損した腕や脚はヒールでは勿論治らない。


「王女殿下。お手を煩わせてしまい、誠に申し訳御座いません」失った腕以外の怪我が治った事で、ようやく話ができる様子のファンダル。血も相当失い、虫の息状態であるものの、とりあえず命を失う事はないだろう。だがそれでも、流石に起き上がる事はできないようだ。それでも、王女であるリリアムに対し、不敬だとは思いつつも、とりあえず頭だけ申し訳なさそうに下げるファンダル。


 そんな忠誠心の高いファンダルに対し、気になさらないで、とリリアムは微笑みながら返事する。


「不肖このグオール。お役に立てず誠に申し訳御座いません。数多くいた冒険者と兵士達は、皆命を落としてしまい……」今度はグオールがリリアムの前に跪く。その際夜風にファサと鬣がなびく。その表情はとても悔しそうで、ギリリと歯噛みしている。


「仕方ないわ。あれだけの魔物が一斉に現れるなど、誰も予想つかないもの。あなた達はよく頑張りました。お父様にもあなた達の功労を称えるよう、伝えておきます」


「勿体なきお言葉。ですが、僭越ながら意見を申し上げます。出来ますればそれは、命を落としてしまった兵士達、冒険者達の家族へお伝え頂きたく」


「あなたならそう仰ると思ったわ。承ったわ。落ち着いてからで結構なので、ここで命を落とした皆様の所在を全て調べ、報告するよう、お願い致します」憂いと慈愛の表情が降り混ざったリリアムが、グオールにそう指示する。リリアムの言葉に、ハッ! と一言、返事をし改めて跪いたまま頭を下げるグオール。


「リリアム王女、感謝する」「同じく俺も」その横から立ち上がりつつ、グンターとキロットもリリアムにお礼を言った。


「お二人ともご無事で良かったわ」その二人に微笑みを返すリリアム。


「それで、ナリヤは?」


「私達が元いた場所で、別の事をお願いしているのよ」


 別の事? と更にグンターが質問しようとしたところで、うう、と唸り声が聞こえた。ファンダルと同じ様に横たわっている兵士だ。腕だけでなく足が膝先から無くなっていた。怪我は確かに治ったが、この兵士は相当重傷のようで、血も相当失っている。ファンダルとは違い、無くした腕と脚から出血が止まらないようだ。


「元の腕は残っているのかしら」「残念ながら……」


 ファンダルの返答に顔をしかめるリリアム。更に兵士の容態に焦りの表情を浮かべ、これはいくらヒールで回復したところで止血しないと死んでしまう、と理解したようだ。止血するのはやろうと思えば出来るのだが……。


「出来るかしら。初めて使う魔法だけれど。ちょっと試してみるわ」そう呟きながらリリアムは、「リヴァイバル」とその兵士に手のひらをかざしながら唱えた。瞬間、細かい粒子状の光の粒が、兵士の無くなった腕と脚辺りに集まり、そして各々形取り徐々に腕と脚が再生されていった。


「お、おお……」「これは……凄い魔法だ」無くなっていた腕と脚が完全に再生された兵士を見て、感嘆の声を上げるファンダルと他の兵士達。グンターとキロットも驚きながら、リリアムの超回復魔法を見守っている。


「ふう。これで何とか、大丈夫じゃないかしら」何とか成功しホッとした様子のリリアム。


 リリアムが使ったこのリヴァイバルは、光属性の最上級魔法だ。レベル80を越えてようやく覚える事が出来る希少な魔法で、失った箇所を復元できるのである。現在、この魔法が使えるのはリリアムの姉のアイラだけだったのだが、リリアムもレベルが上ったことで使用出来るようになったのである。レベル80を越えた事を実感していたリリアムは、この機会に使ってみようと考えたのだ。



「っつ!」だが突如、リリアムが頭痛を感じ顔をしかめ蹲った。成功はしたものの、初めて使う最上級魔法。更にこれまでの戦いで魔力をかなり消費している。どうやら魔力枯渇が原因の模様。少し離れて様子を見ていた健人は、リリアムの元に急いで駆け寄り無色透明の十六角形クリスタルを手渡した。


「俺の魔力が込められてる。これ使ってくれ」


「ありがとう」と苦痛の表情ながら健人に笑顔を向けクリスタルを受け取り、すう、と息を吸い十六角形クリスタルから魔力を補充するリリアム。


「大丈夫か?」「ええ。落ち着いたわ。これできっと、ファンダル隊長や他の兵士の皆さんにも、リヴァイバルを使えると思うわ」


 無理すんなよ、と肩にポンと手を置き気遣う健人。それにリリアムは笑顔で返し、スッと真顔になって、ファンダル達へ再度リヴァイバルを唱え始めた。


 ※※※


「ぐ、私としたことが!」未だギズロットにかけられたシャドウネットから逃れられないナリヤ。ハーピーやキラービーと戦っていたのもあって、既に魔力が枯渇している。更にナイフ等が入ったカバンは、馬に乗せていて今は手に持っていない。


「先に口を塞いでおけばこんな事には……」口惜しそうに愚痴りながら、未だ何とか脱出しようともがくナリヤ。


 緊急事態で健人達を呼びにやってきたが、まさかこの場所でギズロットとプラムが捕えられているなど当然知らなかった。この二人とは良からぬ理由で顔見知り。その気の迷いもあったからなのか、魔法を唱える事が出来ないよう、口を塞ぐのをつい忘れてしまっていたようである。


 未だ黒い網に捕えられ、逃れようとあれこれ四苦八苦している中、「ギャヒ?「グボボ?」と、聞いた事のある魔物の鳴き声が聞こえてきた。


「この鳴き声……まさか、アークデーモン?」ナリヤの動きがピタリと止まる。どうしてここに?


「おお? 女女ァ! なんでか知らないが捕まった女がいるぞぉ!」「ギャヒハヒ! 犯して食っちまえ!」


「やはりアークデーモン! 不味い!」しかしどうにもならない。足掻いても全く外れない黒い網。焦りながら懸命にもがくも全く歯が立たない。それを知ってか知らずか、ニタニタと下卑た嗤い声を上げながら、数匹のアークデーモンがナリヤに近づいてきた。


 このままでは犯され殺される。寒風の中ドッと背中に汗が沸き流れる。不味い。


「ギャッハア!」そのうちの一匹が、嬉々として飛びかかってきた。更に続けと他のアークデーモンもナリヤに襲いかかる。「うああ!」一層焦るナリヤ。たが、幸いな事にシャドウネットがナリヤを守ってくれ、アークデーモン達の爪はナリヤには届かなかった。


 だが、それもビリビリと鋭い爪で破いていくアークデーモン達。とうとうナリヤの姿が現れる。


「ギャッヒヒィ」「ギュヘヘヘ」耳まで裂けた口がニタアと嗤う。耳まで避けた口からポタポタと涎が滴り落ちる。ここまでか、と呟くナリヤ。唇をぎゅっと噛み、せめて一息で殺されるよう、覚悟した。


 そこへ、ヒュン、と黒い影がアークデーモン達の後方から飛んできた。そしてヒュン、ヒュンと大きな鎌が風切り音と共に振られる。そしてゴトンゴトン、とアークデーモン達の首が、声を上げる間もなく胴体から地面に落ちていった。


「ヘン! 来てくれたのか!」それは自身を守る魔物。その存在が判明しぱあ、と顔を明るくするナリヤ。


「どうにか間に合いました」そして、どうにかギリギリ、主を守るという役目を果たす事ができ、ホッとするヘンだった。




※新作投稿しました!

何故か超絶美少女に嫌われる日常 https://ncode.syosetu.com/n0302fl/

4/15現在、ジャンル別日間ランキング4位です! まだ投稿して間もないですが、こちらも宜しくお願い致しますm(__)m

※次回更新は数日後の予定です。

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