作戦開始
調子良く書き溜め出来ているので、またもや投稿しますm(__)m
「そっか。明日の朝行くんだな」健人も覚悟した様子で答えた。
「そうにゃ。健人様から離れないといけないのが心苦しいのにゃ」真白は申し訳なさそうに言う。本来真白は健人を守るために、この世界に来たのである。それなのに、自分が健人の元を離れないといけないのが辛い。
「前も話したからわかってるとは思うけど、割り切らないとね。真白が行ってくれないと、この作戦は成り立たない。作戦のためには真白が独り森に行く事が大事で、作戦が成功する事が、結果的に俺を守ってくれる事になるから」
だから気にするな、と、真白の頭をポンポンと叩く。「分かってはいるんだがにゃ~」と複雑な表情をする真白。
今回の作戦で、真白は独り森に向かい、ゴブリン達をおびき寄せる囮をする事になっている。そのために、先に、夜も明け切らない早朝に、独り森に向かうのである。
「それと、健人様ちょっとお願いがあるにゃ」真白は健人の手を取り、拳を作って上に向けさせる。
「なにこれ?」健人が不思議そうに真白の行動を見ている。
「パーティ契約にゃ」そう答えると、今度は真白自身の手を握り、健人の手首の辺りに当てた。すると、赤と青のモヤ? 煙? みたいなものが見えた。
「今から健人様とパーティ契約するにゃ。赤を意識すると拒否、青を意識すると受諾だにゃ」と、真白は説明する。
エリーヌとの訓練の際、真白はパーティ契約について聞いていた。パーティ契約は、今健人と真白がやっているように、パーティを組みたい人間が、その意志を意識して、相手の手首にかざすと、パーティの申請が出来る。受諾か拒否は、青か赤それぞれを強く意識するか、パーティを組んでもいいと意識すると、受諾となり、パーティ契約が完了する。逆も同じく、赤を意識する、または拒否を強く意識すれば、パーティ契約拒否となる。因みにパーティは最大四人まで組む事が出来る。
健人は青いモヤを意識する。するとスーッと赤いモヤだけが消えた。そして青いモヤが、二人の腕の中に吸い込まれていった。
「これで健人様にも、経験値が入るにゃ」ニッコリ笑って話す真白。なるほど。そういう事か。真白の意図を理解した。
実質真白はこの村の最大戦力だ。ただでさえ戦える人間が少ない中、真白が最前線で戦う事は必須。なので真白は健人と離れてしまう可能性が高い。守れはしないが、真白が戦い、経験値を得ると同時に、健人にも経験値が入るようにして、健人自身をも強くするという事だ。そうすれば健人も死ににくくなるだろうと考えたのだ。
「なんか済まないな、真白」頭をかきながら健人が謝る。「俺が不甲斐ないばっかりに」
真白は慌てて言い返す。「謝らないでほしいにゃ! 寧ろ謝りたいのは私にゃー」とにゃーにゃー言いながら。
「ほんとは私は健人様のそばにいたいにゃ。守るためにこの世界に来たのに、危ない状況になるの分かってるのに、そばにいれない事がほんと面目ないにゃー」と、アセアセしながら真白も謝る。
なんかその必死な様子がおかしくて、つい笑ってしまう健人。「あはは、二人して謝ってるね」
今度は真白が頭、というか猫耳の後ろをポリポリ掻いて「ほんとですにゃー」とバツが悪そうに返事する。
「ま、とりあえずお互い無事に終わらせよう。そしてまた平和な日常になれば問題無しだ。お互い出来る事をしような」
そして健人は真白の肩に手を置いた。真白はその強さとは裏腹に身体は小さい。身長150cmくらいしかない。胸は大きいが。手を置いた肩の感触から、本当に華奢だと感じる。こんな小さな女の子に重責を負わせるしかないのが今更ながら申し訳なく思う健人。
ふと、真白がその手の上に自分の手をそっと添え、健人を見つめる。強い目だ。大きいが少し釣り上がった茶色の美しい瞳からは、決意を感じる。
「そうですにゃ。健人様、死なないようににゃ」
「真白も気をつけてな」、健人が笑顔で返事すると、真白は同じく笑顔で頷く。そして添えてた手を離し、手を振りながら部屋を出ていった。
「あ、音楽つけっぱなしだ」真白とのパーティ契約や話に夢中で忘れてた。電気がないこの世界で電源入れっぱなしはまずい。すぐさま電源を切った。そして明日は決戦。健人も明日に備え、早々に床についた。
※※※
まだ夜も明けきらない、薄暗い森の中。少しヒンヤリするくらいの気温。霧のような靄がかかっているのもあって、視界は良くない。そんな中一匹の猫、というか真白が、枝と枝とをぴょんぴょん渡って奥の方へ進んでいく。
よく聞こえる耳には、既に大量のゴブリン達の声が聞こえている。聞こえる声は小さい。時間的にも、どうやら眠っているようだ。
暫くして群れの近くに到着した。村からはかなり近い。この集団なら2-3時間でやってこれそうだ。やはり明日には襲ってくる予定だったようだ。
音を立てないよう静かに近づく。明け方近くで森の中なので真っ暗だが、夜目の利く真白にはその様子がよく見える。地べたにごろんと寝ているゴブリン達が大勢見えた。いびきをかいているのもいる。
「奥の方に違うやつがいるにゃ」そのゴブリンだけ特別扱いなのだろうか。岩をベッドのようにして、白いシーツを敷いて寝ていた。でかい。2m以上はある。そばに大剣が置いてある。
「あれが上位種だろうにゃ」真白はそう確信した。
「さて、始めるにゃ」真白は静かにそう言うと、上位種がいる場所から一番遠いゴブリン達に狙いを定め、その近くにそっと飛び降りた。
そして爆睡しているゴブリンをまずは一匹、首を担いでゴキっとへし折る。ゴブリンは声を上げる事もなく事切れた。自分が死んだ事さえも気づいていないくらいだろう。それから他の寝ているゴブリンも同じように次々首を折って倒していく。地べたで寝ているはずのゴブリン達は、どんどん屍に変わっていった。
真白は慎重にずっとこの作業を繰り返す。思ったより順調だ。こうやって既に二十匹は倒した。それなのにまだ一匹も起きない。このまま全部倒せるかにゃ?真白は少し余裕が出来て呟くが、多分この呟きがフラグだった。
小用で起きたらしいゴブリンが、何か様子がおかしい事に気づく。真っ暗だがやたら静かだ。寝息やいびきが聞こえない。寝返りさえもうたないやつがいる。「グギャ?」真っ暗で見えないので、手探りでそいつの近くに寄ってみる。どうやら首が妙な方向に曲がっている。そいつの横のやつも同じだ。
「チッ」と舌打ちが聞こえ、起きていたゴブリンの後ろに、いつの間にか何かがフッと気配を感じさせる事もなく立っていた。そのゴブリンは恐怖を感じ、大声で「グギャギャギャアア!!」と叫んだ。急いでそのゴブリンの首をへし折り、仕留める真白。
その大声に反応し何事かと次々起き上がるゴブリン達。奥の方で寝ていた上位種もその様子に気づいたのか、ムクっと起き上がったのが見えた。
「やっぱりこのままうまく全滅出来るわけないにゃ。次の作戦だにゃ」小さいため息をついて、真白は仁王立ちしてスゥーと息を吸う。
「オラオラー!! ゴブリン達起きろにゃ! 美少女猫の真白ちゃんがやってきたにゃ!」と大声を出した。
ゴブリン達が驚いて声の主を見る。見るが、残念ながら真っ暗で何も見えない。美少女かどうか分からなかった。真白はやらかした。
すると奥の方から「クキャ!」と言う声と共に、ランプが灯った。ゴブリンメイジが魔法を使ったようだ。奥の方なので真白の姿はぼんやりとしか見えないが、ゴブリン達が気づくのには十分だったようだ。
「た、助かったにゃ。暗いの忘れてたにゃ。あのゴブリングッジョブだにゃ」真白は夜目がきくから見えているのだが、まだ夜は明けてない。未だ真っ暗なのだから、姿が見えないのが当然なのに、やらかした真白。とにかくゴブリン達は、仲間が屍累々となっている事にようやく気づいた。
「クキャア!」ランプを持ったゴブリンが真白に向かってきた。それに合わせて他のゴブリン達も一斉に走ってくる。
「よし、付かず離れずだにゃ」ゴブリン達がこちらへ一斉に近づいて来るのを確認すると、後ろを向いて追いつかれないように村の方に逃げる真白。
ようやく空が白くなってきて、明るくなってきた。夜が明けたようだ。とにかく作戦自体には影響はないみたいだ。
ゴブリン達も明るくなってきたのもあって、真白を見失う事なく追いかけてくる。来た時と同じように枝と枝とを飛び移りながら逃げる真白。ゴブリン達がどんどん増えてきた。全てのゴブリン達が追いかけてくるまでにはそう時間はかからなかった。
森の中なのでゴブリン達も障害物を避けながら走ってくるため遅い。時折ゴブリンメイジが土の魔法を使い、石を飛ばしてくるが、真白とは相当距離があるので届かない。その様子を伺いつつ、うまく逃げる真白。
小一時間ほど逃げていると、森から抜けた。森の中より抜けた先の草原はもっと明るくなった。真白はゴブリン達を付かず離れず逃げるを続けている。
そして、以前健人と真白が初めてダンビルに会った倉庫の近くで、一旦止まった。
「みんな来たにゃー!!」真白が大声で叫んだ。
夕方頃また投稿予定ですm(__)m