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ギルド本部前は阿鼻叫喚

いつもお読み頂き有難う御座いますm(__)m

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「グヒャヒャヒャ」「ギャッハギャッハア!」


 余程ご機嫌なのか、テンションが高いアークデーモン達。その手には誰のものとも分からない、腕か脚を持ちながら小躍りしている。その数現在百五十匹。全く数が減っていない。冒険者と兵士達は必死の思いでアークデーモン達からの攻撃に抗っていたが、数でも実力でも勝るアークデーモン達に敵うわけもなく、殆どが一方的に殺されてしまっていた。それは蹂躙と言っていい程の圧倒的な力の差。ギルド本部前には抵抗虚しく屍となってしまった人達の亡骸が、あちこち食いちぎられバラバラになった状態で散らばっている。皆原型を留めていない。


 そんな凄惨なギルド本部前で、はしゃぐようにその場でステップを踏み誰かの足や腕、臓物等を食らうアークデーモン達。アークデーモン達がその場で足踏みする度、ビシャビシャと水気の音がする。既に夜で暗いのだが、月明かりのおかげでその水気の正体が何か分かる。その正体は血。辺り一面血の海になっていたのだ。冒険者と兵士共々、アークデーモン達に殺され食われた者達の夥しい血が、ギルド本部前に広がっていたのである。


 ナリヤとレムルスがそれぞれ応援を呼びに行っているほんの少しの間に起こった一方的な蹂躙。それで殆どの兵士と冒険者が殺されてしまった。それでも数名生き残っている。グオールとファンダル、兵士数名、そしてグンターとキロットだ。ただ、彼らも全員満身創痍。散らばっている亡骸と同じ運命をたどるのは時間の問題だと、その場にいる全員が思っている。


 彼らは今、皆一処に固まって円陣を組み外側を向き武器を構え、四方八方から攻めてくる多くのアークデーモンに対応していた。それは戦っているというより、何とかギリギリ攻撃を防いでいる、と言う状況だ。


「はぁ、はぁ。ファンダル、隊長。もう、体力、が」「がはあ、はあ、何とか持ち堪えろ! 応援が来るまで耐えろ!」何とか腹から声を絞り出し、叱咤するファンダル。だが、兵士達は正に満身創痍。装備していた鎧や盾は既に剥がされ、腕や肩が鋭いアークデーモンの爪で削り取られたのか、一部失くなっている。


「ゴウアアア! 死なば諸共! 一匹でも魔物を道連れにしてやるわあ!」次々と交代で攻撃してくるアークデーモンの爪をギリギリいなしながら、自身に喝を入れるかのように叫ぶグオール。獅子特有の鬣は、左腕から先を失った自身の血を浴びたからか、真っ赤に染まっている。


「はは。人族も獣人もがんばるじゃねえか」キロットも既に限界だ。刃先が既に折れただの棒となってしまっているハルバードで、グオールと同じくアークデーモン達の攻撃を躱している。


「ギャハアア!」またも空からアークデーモンが襲いかかる。「ぐおおお!」「くっそぉ!」今度はキロットとグオール二人がかりで何とかそれを抑える。一匹のアークデーモンの攻撃を二人で遮っている。力自慢の二人でも限界なのだ。そしてアイコンタクトで互いに礼を言い合う二人。声を出すのも厳しいほど疲弊している。お互いそれが分かっているのでそれ以上は何も言わない二人。


「はあ、はあ……。魔力がないのは、相当、きつい」グンターも同じく肩で息をし限界だ。基本魔法を使って戦うのがグンターの戦い方なのだが、ハーピーとキラービーと戦った時に相当魔力を使ってしまい今は魔法が使えない。手に持っている杖で避けるのが精一杯だ。キロットより非力でも、一応それでも魔族なので、人族より力は強い。だからこそ何とか堪えている。これが人族の魔法使いであれば既にこの世にはいないだろう。


 そうやって、お互い助け合いながら、次々と絶え間なく襲いかかるアークデーモン達からの攻撃を防いでいる面々。


「はあ、はあ……。これでもまだ、攻撃を仕掛けて来ていないアークデーモンが、沢山いるのだな」


「ええ……。食事しているアークデーモンがまだ襲ってきておりませんから。ですが、それも何時か終わります。その時が、最後の時かと」ガイン、キイン、とアークデーモンの爪と武器が当たる度音がする。防ぎながらもグオールとファンダルが周りを見つつ話をしている。


「だが、まあ諦めるなよ。応援を呼びに行ってる。それまで、何とか粘れよ」息も絶え絶えにキロットが、二人を鼓舞するように話しかける。だが,当然いつやってくるか分からない。来たとしても、これだけの絶望的な状況を何とか出来るのかどうか。


「ギヒャア!」アークデーモンが再びファンダル含む兵士達に襲いかかる。「ぐわあ!」「がああ!」会話をして少し気が抜けてしまったのか、円陣を組んでいたのがそこで崩れてしまう。ファンダルと兵士達が吹っ飛ばされてしまったのだ。


 更に、さっきまで食事をしていたアークデーモン達数十匹が、食い終わったからか、ビシャビシャと血の海をゆっくりと歩きながら彼らに近づいてきた。各々耳まで裂けた口から血を滴らせ「ゲヒヒヒ」と嗤いながら。


「ハハハ。もう終わりだな。もう一回ケーラに告白したかったぜ」続々と集まってくるアークデーモン達を見ながら、さすがのキロットも観念した様子で、ただの棒となったハルバードをカランと力なく落とした。


「俺も……、ナリヤに……」グンターも小さく呟きながら、既にボロボロになった杖をキロット同様力なく落とし夜空を見上げる。


「ここまでか……」今更応援が来ても間に合わないだろう。グオールもファンダルも、残った兵士達も限界をとうに越えている。皆、諦めた様子で、各々武器を地面にカランカラン、と落とし、その時をただ待った。


「ギャハア! どうした人間? もっと頑張らなきゃダメじゃないか」「ギュヒャヒャ! なんだもう終わりかあ?」


 集まってきたアークデーモン達はすぐに襲いかかろうとせず、グオール達を小馬鹿にするように囃し立てた。だがもう、彼らの表情は既に生気を感じる事ができず、抜け殻のようになっている。


「ギュヒュア! つまんないねぇ。じゃあ食っちまえ!」「食っちまええ!」「ギャハハア!」


 その言葉をきっかけに、アークデーモン達はグオール達に一斉に襲いかかった。


 が、


 襲いかかったアークデーモン達が一処に纏めて吹き飛んだ。ドドーンと轟音が響き、飛ばされたアークデーモン達がギルド本部の壁に激突した。


「グホヘア?」「ゴボホオオ!」「ギヒャアア?」突然大ダメージを食らい何事かと驚いた顔をするアークデーモン達。ずっと一方的に攻撃していただけだったので、まさか自分達が吹き飛ばされるとは思っていない。ガラガラ、と落ちてくる瓦礫の中から、血だらけになったアークデーモン達が振り返ると、


「はあ、はあ。間に合った、のか?」そこには、息を切らせながらやってきた健人が、居合抜きで衝撃波を放った状態で、刀を手に持って立っていた。


 そして次に健人の姿がフッと消える。と思えば、「グギャア!」「ギャハア!」「ゴパア!」と、あちらこちらからアークデーモンの叫び声が聞こえてきた。その叫び声の後には、ブシャアと首から血を吹き出していたり、左右真っ二つに割れていたり、それぞれ色々な状態で絶命していくアークデーモン達の姿。


「……何が起こった?」「……分からねぇ」グオール達は体力が限界を越えていた事もあり、何が起こっているのか未だ把握できていない。ただ、先程まで死を覚悟していた状況から、助かったようだ、というのは朧気ながら理解できているようではある。


 そして更に、上空に黒い影が現れる。それはバサバサとはためいたかと思えば、いきなりフッと消え、真下にいたアークデーモンに強烈な蹴りを入れていた。「ゴバア!」と叫びながら地面に叩きつけられるアークデーモン。首と胴体が分離し絶命した。


 今度は「シャドウビーム!」と健人のやや後方から闇属性魔法を唱える声が聞こえてきた。瞬間、バシューン、と黒い光が健人の横を通り抜ける。光速の黒い光は、一気にアークデーモン達数匹を撃ち抜いた。その威力でダダーンと一気に壁に打ち付けられるアークデーモン達。


 更に更に、「ホーリーハードレイン」と健人の後ろから光属性魔法を唱える声が聞こえ、モクモクとアークデーモン達の上空、グオール達がいない箇所に、光り輝く直径20m程の雲が発生する。そこから一斉に、ドドドド、と雷雨のような激しい光の雨が降り注いだ。


「ギョヘエ!「グハアア!」「ギヤアアア!」次々と体に光の雨が打ち付けられ、痛がるアークデーモン達。


 勿論それらの魔法を使ったのはケーラとリリアム。だが、二人して怪訝な顔で首を捻る。


「……貫けない?」「そのようね」


 二人共レベルがあがった事もあり、魔法の威力には相当自信があった。なのに、アークデーモン達は魔法自体は弾いたのだ。その魔法の威力による物理攻撃だけのダメージしか、与える事が出来ていない。


「……もしかして」「ええ」とある事に気付いたケーラとリリアムは、顔を合わせ頷く。


「ギルド本部の前に突然現れたって聞いたからおかしいと思ったんだよ」「そうね。でも、神官達だとしたら、理解できるわ」


「って事は、ギルド本部の地下牢に入ってた神官達の成れの果てか?」


 一旦二人の傍にやってきた健人が聞くと、二人揃って頷いた。







※こちらも第七回なろうコンテスト一次選考通過しました!


剣鬼ヴァロックの地球転移 ~異世界の英雄が、紛争が絶えず自爆テロが横行する中東地域に現れた~ https://ncode.syosetu.com/n3797fc/


もう少ししたら、ネコと転移に関連する重要なワードが出てくる予定です。

合わせてお読み頂ければ有難いですm(__)m


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