強敵のはずなのにあっさり倒しちゃいました
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「な、な、なんだ、と……?」上空からギガントサイクロプスを倒された事に驚愕しているギズロット。
「バ、バカなバカなバカなあああ~~~~!! ギガントサイクロプスだぞ? レベル75以上はあるという、あの、我々幹部が束になっても到底敵わない強力な魔物だぞ! それを、それをたかが人族の男が? あり得ん! あり得んんんん~~~~!!」
余程信じられなかったのだろう、普段は冷静沈着なギズロットなのだが、モルドーの協力があったとは言え、まさか倒されるとは思っていなかったギズロットは、目の前で屍となっている巨体が信じられず、狂気したように夜空に向かって叫んだ。
「このままでは、このままでは計画が失敗するではないか!」そして上空からギリリと歯ぎしりしながら、突如叫んだギズロットに驚いた顔をして見上げている健人を見下ろす。
「……だが、もう一体いる。神獣だか何だか知らないが、流石に倒せまい」そしてもう一体の方をキッと見るギズロット。
そしてそのもう一体と戦っている巨大白猫は、丁度ギガントサイクロプスを四つの足でバン、と上空に蹴り上げていた。「ホグウォゲェ?」変な声を出し驚くギガントサイクロプス。まさか自分ほどの巨体が上空に蹴り上げられるとは思っていない。そして手足をジタバタさせながらヒューンと落ちてきたところで白猫はサッと避け、そのままギガントサイクロプスはうつ伏せ状態でズダーン、と地響き音をさせ落ちた。「グベエエエエ!」痛みに絶叫する巨大生物。ついでに顔も強打してる様子。
そこですかさず巨大白猫が上から押さえつける。『今だにゃ!』念話で白猫が叫んだのを聞いたケーラがリリアムに合図し、急いで二人共ギガントサイクロプスの足の腱へ移動する。そして眩い光を放つトンファーとダガーで思い切り切りつけた。ケーラは切り裂くというより抉り取るといった感じだが。
「ガアアア!!」それでも効果はあった。激痛でより一層大きな声で叫ぶギガントサイクロプス。「よし!」「うまくいったね!」二人がそう嬉しそうに叫んだ瞬間、
『もうだめだにゃあぁぁ~』と白猫は、へろへろ~、となりながら、シュシュシュシューと元の大きさに戻った。両足の腱を切られ蹲るギガントサイクロプスから、ぴょんとリリアム達のいる場所へ逃れる白猫。
『マシロさん! うまくいったよ!』そんな白猫をケーラが嬉しそうに抱き上げ頬ずり。そしてギガントサイクロプスから更に距離を取る二人と一匹。
『流石に疲れたにゃあ。神獣効果、こんなに使ったの初めてだったしにゃあ』そう呟きながらへろん、とケーラの胸の中でグッタリしている白猫。「マシロさん、大丈夫?」とケーラが心配そうに声を掛けるが『大丈夫だにゃあ。疲れただけにゃあ』とグッと弱々しくサムズアップ的に前足を差し出す白猫。そんな白猫が可愛かったので、お疲れ様、と笑顔でなでなでするケーラ。
「な、…………」言葉を失うギズロット。プラムもまさかの事態に上空で固まっている。
計画では、王城内にいる兵士達と、冒険者達総掛かりでも倒せないであろう、このギガントサイクロプス二体を使い、メディー内を混乱に陥れようという事だった。それだけの魔物をこの様に操る事を、王であるメルギドを含めたメディーに住んでいる人族達に見せしめ、事の優位性を図るのが狙いだったのである。
ギガントサイクロプスはそれ一体だけでも相当な脅威の魔物。それが既に一体は倒され、もう一体も切り裂かれる事はないはずなのに、足の腱を切られ動けずにいる。
「……くそっ。これ程の実力者がいるとは。まるで勇者ではないか!」
そう、口惜しそうに上空でギズロットが愚痴っていると、健人が突如ヒュン、とその場から消えた。そしていつの間にか、空中にいたギズロットの後ろに現れ、黒い翼をバシ、と空中で掴んだ。「な、何?」突然の事に驚くギズロット。それから一緒に地面にダン、と降りたった。
「こ、この、離せ!」「OK。じゃあ離してやる」
そう言って健人は力任せにブンと地面に叩きつける。「ぐあああ!」苦痛で叫ぶギズロット。「は、離すとはそういう事ではないだろう」と健人にツッコみながら。そして健人は苦悶の表情を浮かべ地面で悶絶しているギズロットの腕を掴み、後ろ手に捻った。
一方、プラムはギズロットが捕まったのを見て慌てて逃げようとするも、それに気付いたリリアムが「ホーリーバインド」を唱え、蜘蛛の糸のような網をプラムへ展開した。「うわあ!」驚くプラムを空中で捕える事に成功。そしてそのままプラムは、地面にダーン、と叩きつけられた。
だがそこで、「グアアアアアア!!!」と、足の腱を切られ四つん這いになっているギガントサイクロプスが怒りの咆哮をあげた。辺りの空気が震える程の大きな叫びを上げ、一気に殺気を充満させる。
「何かするみたいだね」「そうね。でも、どうしてかしら? さっきに比べて然程怖くないわ」身構えながらも何だか余裕のケーラとリリアム。
「レベルが上ったからじゃないか?」そう話しながら、叩きつけたギズロットを自分のカバンから取り出した縄で括り付け、ケーラ達の元へやってくる健人。ついでモルドーも空を飛んでやってきた。健人がやってきた事で、白猫はケーラの胸元で休憩していたがむくりと顔を上げ、ぴょん、と健人のカバンにするりと潜り込んだ。
「ケーラ様。ご無事で何よりです」そしてケーラの目の前に跪き、頭を垂れるモルドー。
「モルドーがこっちに来たって事は、ギルド本部前は片付いたんだ?」そう言いながらお疲れ様、と労い顔を上げるよう指示するケーラ。
「左様で。殆ど私めが処置致しました」それを受け恭しくケーラへ顔を上げるモルドー。
「そう、ご苦労様。じゃあ後はこいつを倒すだけだね」そう言ってちらりと、未だ四つん這いになって苦しんでいるギガントサイクロプスを見やるケーラ。
「そうか。先程のは、いつも一緒にいた猫だったのか」健人のカバンから顔だけ覗かせている白猫を見て、モルドーはあの巨大猫が何か、理解したようだ。ケーラの元へ行った際、健人と共に見かけた白猫。これがまさか神獣だったとは。
そこへ、突然紫色の液体がブシャアと健人達に飛んできた。だが皆してそれを四方へ散りながら避ける。避けた先の地面がブシュウと音を立て溶けていた。
「ウガアアア!!」それを放ったのはどうやらギガントサイクロプス。自身が未だ腱を切られ苦しんでいる中、放ったらかしで暢気に会話している健人達にキレたようである。そして更に四つん這いのまま、健人達にズンズンと近より、ブン、ブンと拳を振り回す。だが健人達には全く当たらない。いくらその拳が高速でハイパワーとは言え、四つん這いになっている相手から放たれれば、どこに飛んでくるか容易に分かる上、健人の言った通り、皆レベルが上っているので難なく躱してしまうのである。
「レベル上がった今なら、目を攻撃してもいけるんじゃないか?」「そうね。やってみましょう」闇雲に振り回される拳を避けながら、健人の言葉にリリアムが答える。
「よし、モルドー、何とかして」そして同じく躱しながら、ケーラがモルドーへ指示。
「承知しました。おい黒髪。先程と同じだ」
分かりました、と返事した後、ギガントサイクロプスの正面に居直る健人。健人が何をするのか分からないリリアムとケーラだが、とりあえず健人の両サイドに同じように立ってみる二人。そしてモルドーはギガントサイクロプスの顔の上空に飛び上がり、そこから先程と同じように、バサ、と大きく翼を広げ、黒い粘液を顔に向けて放った。「グワアアアア?」ビシャアとかかり先程同様、息ができず苦しむギガントサイクロプス。
「フグフォ! フゴアオオ!」何とか黒い粘液を取り外そうとするが中々取れないのを確認した健人は、既に鞘に収まっている刀の柄を握り、居合斬りの構え。それを見てリリアムとケーラは、健人が何をするのか理解した。そしてリリアムはホーリージャベリンを唱える。二十本程を一気に創り出し、それを自身の上空で一つ纏めにした。直径1mはありそうな、巨大なミサイルのような形になった。そしてケーラは二つのトンファーを銃のように短い部分を持ち、長い部分を一つ目に向け、魔力をグングン貯める。砲身のような長い部分の先を中心に、黒い円盤がどんどん大きくなる。
「行くぞ」「ええ!」「いつでも!」
「「「はあ!!!」」」健人の合図と共に三人合わせて一斉に攻撃を放つ。健人は居合斬りからの衝撃波。リリアムは巨大ミサイルとなったホーリージャベリン。ケーラは二つ銃を合わせての超特大シャドウビーム。白黒混ざった三つの攻撃が、一気に一つ目に向かう。
ドドーン、と大きな音を上げ、全て同じタイミングで一つ目に命中。「グアアアア!!」その衝撃で後方に跳ね上がって吹き飛ぶ巨体。そしてズドーン、と奥の壁に激突した。
「グ、ググ、アアア、ア……」か細い声がギガントサイクロプスから聞こえる。その声色からは力を感じない。そして、目があった辺りから一気に血がブシャアと噴出した。そしてピクピク、と動いていた腕がズーン、と地面に落ち、ギガントサイクロプスは事切れた。
「ふう。やったな」「ええ」「うわあ! ギガントサイクロプス二匹も倒しちゃったよ!」ため息混じりの健人とリリアムに、ぴょんと飛び上がって喜ぶケーラ。どうやら神獣効果がなくとも、彼らのレベルが上った事で、弱点である一つ目にダメージを与える事が出来たようだ。
「そんな……、うそだ……」「ああ……。あれだけ魔力を吸い上げ、多くの生贄を使ったギガントサイクロプスが二体とも……」
もう一体のギガントサイクロプスも倒され、信じられないという表情とどこか絶望したような表情が入り混じったギズロットとプラム。
「しかし、ギガントサイクロプスを、しかも二体とも倒すとは。神獣や私がいたとしても、これはとんでもない事だな」捕まえているギズロットとプラムの傍から、逃げないよう近くで監視していたモルドー。ギズロットとプラムの会話が気になったが、それより、これだけの魔物を二匹とも倒した事については、素直に感心している様子。二人の会話は、離れた場所にいる健人達には聞こえていないようだが。
「ん?」そこで、何かに気づくモルドー。「あれは……、ナリヤ様? 何やら急いでいるようだが」
そうモルドーが呟いたところで、すぐに馬に乗ったナリヤが健人達の元に現れた。
「タケト! ギルド本部前にまた魔物が沢山現れたんだ!」
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