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巨大な魔物と戦闘開始

いつもお読み頂き有難う御座いますm(__)m

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※評価を入れて頂ければ有難いです。最新話の下にて、評価を入れる事が可能です。

 ※※※


 そろそろ夕闇も終わりを告げ、夜に差し掛かろうとする時間帯。ここメディーの街中は、普段であれば、そろそろクリスタルを使用した街灯が灯り始め、そして家々の窓からも灯りが漏れてくるので、それなりに明るいはずなのだが、そういった家々は二体の巨大生物によって瓦礫となり、その影響からか街灯も灯っていない。なので薄暗い中を、家より大きな魔物が、時折大きな破壊の音を響かせ、ひたすら王城に向かって進んでいた。


「ん?」


 巨大な二体の魔物の後方で、未だ黒い翼を羽ばたかせながら、空中に浮かんでいるギズロットが、まるでこの魔物達二匹を遮るかのように、前方にいる小さな人影に気がづいた。


「久々だねー! あんたこんなとこで何やってんのー!」


「……あれは! ケーラ、様? ……そうか。リリアム王女と共にしていたんだったな」以前部下の魔族からの報告で、リリアムと黒髪の青年の三人で行動している事を思い出したギズロット。


「おーい! こらー! 返事しろー!」


 更に大声で自分を呼ぶケーラを見下ろしながら、仕方なさそうに、二体の巨大な魔物に止まれ、と命じるギズロット。それを聞いてズゥン、と大きな足音を立て、命令通りその場に直立不動となり立ち止まったギガントサイクロプス二体。そしてギズロットは黒い翼をバサ、とはためかせ、ケーラの元に舞い降りた。


「お久しぶりで御座います」恭しく頭を下げるギズロット。


「……頭は下げるも跪づかないんだね。まあそうだろうね。人族の中心都市メディーで、まさかのギガントサイクロプスを魔薬で作り出して、暴れさせてるんだもんね」


「……魔薬について、ご存知なのですか?」片方の眉毛をピクリ、とさせながら、ケーラの言葉に反応するギズロット。アクーの海岸近くの洞窟で、ビルグがケーラ達に魔薬を奪われた事は知っていたギズロットだが、まさかその効果についてまで知られているとは思っていなかった様子。なので、平静を保とうとするも、つい表情が強張ってしまった。


「何処まで魔薬についてご存知なのでしょうか?」何とか取り繕いながら、ケーラに質問するギズロット。


「あんた達と同じくらい知識はあるんじゃないの?」それに対し、あっけらかんと答えるケーラ。


「どうやって……」「それこそ答える義務はないね」モルドーにサンプルを魔族の都市の協力者であるシャリアへ届けさせ、報告を聞いた上、ケーラ自身も実験してみた事をギズロットに教える必要はない。更に魔王の娘なので、ある程度事前に色々知っていた事も理由の一つではあるのだが。製造方法までは知らなくても、ギズロットが動揺するには十分だったようだ。


 ケーラの言葉に、顔を若干の動揺を見せているギズロット。その様子を見たケーラが、ずっと瓦礫の影に隠れている健人に『今だよ』と念話を送る。それを受け取った健人は、サッとギズロットの後ろに忍び寄り、未だ畳まれていない黒い翼をガシ、といきなり掴んだ。


「な、何だ!」突然翼を捕まれ驚くギズロット。そして慌てて後ろを振り向くと、それは見た事のない黒髪の青年だった。


「クッ! この! 何をする! 離せ!」何とか離れようと羽ばたいてみたりするものの外れない。こんな細い体でしかも人族なのに強い。自身は魔族の幹部の一人。それなりに戦闘力が高いと自負している。例え相手が冒険者だとしても、人族に遅れを取る事はないはず、なのに。……そうかこいつが、リリアム王女と共に行動していた、黒髪の冒険者か。ギリリと健人を振り返りながら睨みつけるギズロット。


「離せと言われて、素直に離す人がいるとは思いませんわ。ホーリーバインド」二人のやり取りの隙を見て、今度はケーラの隣に突如現れたリリアム。そして光属性の蜘蛛の糸のような網を展開し、そのままギズロットを包みこんだ。その瞬間健人は手を離してサッとバックステップで距離を取った。


「グッ。やはり、リリアム王女もいたのか」光属性の網に拘束され、身動きが取れなくなったギズロット。その場にガクンと膝をつく。そして今度はケーラの隣に現れた王族の一人を忌々しげに見上げる。翼は開いたままなので、光属性の網を何とか引き剥がそうと羽ばたいてみたり藻掻いてみたりするも、やはり魔族は光属性には弱い。どう足掻いても拘束は解けない。


「その様子だと、やはりドノヴァンは失敗したようだな」半ば諦めたような口調で、リリアムを見上げながら言葉を発するギズロット。そしてその場でガックリうなだれた。


「……という事は、ドノヴァンがデーモンになったのも、やっぱりあなたの仕業だったのね」どうやらうまくいったようね、とギズロットが項垂れる様子を見て安堵の表情を浮かべながら、リリアムが腕を組みながら見下ろした。


「まあ、その事は後で色々聞く事にしようか。とりあえずうまくいって良かった」ホッとした表情で、ギズロットの後ろにいた健人がケーラとリリアムの横に並び、ギズロットの前に現れる。白猫もかばんから顔だけ覗かせ、ジー、とギズロットを見ている。


「とにかく、あれギガントサイクロプスだよね? あれ操ってんのあんたでしょ? 更に、さっきスラムの方からやってきた大量の元孤児達、魔物達もあんたの仕業だよね?」まるで彫刻のように仁王立ちのまま、動かなくなっている二体の巨大な魔物を見上げながらケーラが質問する。


「……だったらどうなんです?」元孤児達、という事まで気づかれていたのか、と内心舌打ちするギズロット。


「だったら、止めなさい」腕を組んだまま跪いているギズロットを見下ろし、リリアムが命令口調で話す。


「……」だが、ギズロットはそれに即答しない。その様子に少し苛立ちの表情を浮かべるリリアム。自分の故郷メディーをここまで荒らし、しかも多数の死傷者を出した上、家族がいる王城に、この大きな魔物を向かわせていたのだから、健人やケーラ以上に腹が立っているのだから当然だ。


 だが、そんなリリアムに、突如黒い光が音もなく飛んできた。「あう!」敵はいないと気を抜いていて、隙だらけだったリリアムの腕に、その黒い光の矢が当たった。


 更に後から黒い矢が複数リリアムを襲う。攻撃を食らった腕を抑えながら、バックステップで黒い矢から身を守るため下がるリリアム。「リリアム! 大丈夫か?」健人が振り返ってリリアムを見る。だが、更に健人やケーラにもその黒い光の矢が襲う。「くっ!」「チッ!」二人は共に刀とトンファーでそれを弾いた。先にリリアムが攻撃されていたのを見ていたので、武器を準備し躱す事が出来たようだ。そしてつい二人もリリアムのところへバックステップで下がる。そして黒い矢の出処を探る。だが、拘束されているギズロットと距離をとってしまった。


 ギズロットも気になるが、先に腕を攻撃されたリリアムが気になった健人。チラっと見るも、大丈夫よ、とニコリと微笑みを返すリリアム。一方ケーラは下がった場所から、黒い光の矢が飛んできた辺りを見てみるが、既にかなり暗い事もあって人影らしきものは見つけられなかった。


「とにかく、他に誰かいるって事だ」「そうだね。当然敵だね」健人は背中に付けていたスモールシールドを左腕に装備し刀を構える。ケーラももう一つのトンファーを取り出し身構え、リリアムも同じくダガーを装備した。そして三人は辺りを警戒する。更にかばんから白猫もぴょんと飛び出て健人達の目の前にスタ、と立った。


 そしてすぐに、その黒い光の矢を放ったのは誰かすぐに分かる。少年のような見た目のプラムが、ギズロットの前に現れたのだ。健人達がギズロットから離れたところを見計らって、プラムは拘束された状態のギズロットの側に出てきたようだ。


「見た事ない魔族? だな。子どもか?」「そうなのかしら?」初見の健人とリリアムに対し、ケーラはキッとプラムを睨む。


「プラム! あんた和平賛成派だったんじゃないの? なんでギズロットの味方みたいな事してんの?」


「プラムがここに来たという事は、あちらもうまくやったんだな?」「ええ、滞りなく」


 だが、ケーラの叫びを無視しギズロットの問いに答えるプラム。そして返事を聞いたギズロットは拘束されたままだがニヤリと嗤っった。それからプラムはギズロットを捕獲しているホーリーバインドを、ナイフを取り出してビリリと破いた。


「とにかくケーラ様、これ以上の邪魔立てはご勘弁願いたい」開放されパンパン、と手で埃を払いながら立ち上がり、ギズロットはケーラに声を掛ける。


「何を言っているの?これ以上メディーの中を荒らされるわけにはいかないわ。それにこの大きな魔物、王城にむかっているのではなくて? ご存知の通り、あそこには私の家族がいるのよ。止めない訳にはいかないわ」腹を立ているリリアムが、眉毛をピクリとさせながら、ケーラの代わりに答えた。


「やれるものならやってみるがいい」そんなリリアムにどこか余裕の表情で、ニヤリと嗤うギズロット。そして再び二体の巨大な魔物に進め、と命令した。すると全長4mはありそうな足の裏が、かなりの速度で健人達を踏みつけようと降りてくる。「チッ!」健人は急いでアクセル・ブースト・プレッシャーを唱え、ケーラとリリアムを抱えてその場からバックステップで下がった。その後すぐさまズドーン、と大きな音を立て、健人達が元いた場所に足が降ろされた。


「ありがとうタケト」「危なかったー」巨大な足なのに相当なスピードだった事もあり、二人は反応できなかったようだ。


「真白!」『了解だにゃ!』そんな二人を目配せしながら、既に健人達の前で何やらスタンバイしている白猫に声かける健人。


 そしてタケトの呼びかけに念話で答えながら、白猫は二体の魔物の前にスタン、と立ち塞がった。……と言っても小さいので塞ぐ事は出来ていないが、とりあえず前に仁王立ち。


 そして、


「にゃああああああ!!!」と鳴き声を放った。その鳴き声は小さい猫のそれではない。辺り一帯に響き渡り、音の波が二体の巨大な魔物に襲いかかる。「グ? グオオオオオ!」それを食らった魔物達は、突如耳を抑えその場に蹲った。「ぐああ! な、なんだ!」「うわああああ! 耳が! 耳がああああ!」更にギズロットとプラムも同様に耳を抑え、苦悶の表情を浮かべる。


「よし、ケーラ! リリアム! 今だ!」「了解だよ!」「分かったわ!」


 健人の叫びに、ケーラはトンファーを銃のように構え「シャドウビーム」を唱え、リリアムは「ホーリージャベリン」を複数、肩の辺りに創り出した。そして蹲っている二体のギガントサイクロプスの大きな一つ目に向かってそれらを放った。


 健人達は、ケーラから事前にギガントサイクロプスの弱点は大きな一つ目であると聞いていた。そこを狙うのが健人達の作戦だった。だが、目を狙うには余りにも魔物が大きすぎて届かない。なので自分達の高さにまで顔を持ってこさせる必要があった。本当はギズロットを捕え、わざとギガントサイクロプス達に助け出させようと、しゃがませる予定だったのだが、プラムの邪魔が入りその作戦は出来なくなった。だが、ギズロットとリリアム達が会話している間に、白猫から念話で健人に提案があったのだ。白猫の音波を使えば、きっとギガントサイクロプスをしゃがませる事が出来る、と。それを念話でケーラに伝え、リリアムにはケーラが耳打ちしていたのである。


 なので白猫が音波を作り出せる鳴き声を発するのを事前に知っていた健人達。そして作戦は成功した。しかも運良く二体揃ってしゃがませる事ができたので、健人は二人に、それぞれの一つ目を狙うよう、指示したのだった。


 だが、ケーラの放つシャドウビーム、リリアムの放つホーリージャベリンは、それぞれの一つ目に当たったものの、バシンと弾かれてしまった。


「効かない?」「おかしい。いくらレベル差があると言っても、目を狙うのは最も有効な手段のはずだよ」


 リリアムとケーラが焦りの表情で話している間、白猫の音波が収まり、ギズロットとプラムは二人してニヤリと嗤う。そしてギガントサイクロプスの後手に周った。


「タケト。おかしいよ。普通のギガントサイクロプスなら、間違いなくあれで倒せたはずなんだよ」


「じゃあ、普通じゃないんだろうな」


「……二匹共紫色よね。もしかしてドノヴァンの時のように、元は神官じゃないのかしら」


 リリアムの推測に三人同時に見合う。それならケーラとリリアムの攻撃が通じない理由が分かる。神官は元々光属性を持つのでホーリージャベリンは効きにくい。神官なら闇属性の魔法に耐えうる。


「厄介だな」「そうね」「でも、ほっとけないよね」


 そうやって話していると、二体のギガントサイクロプスが揃ってギロリと三人を見下ろし、ブン、と直径3mはあろうかという巨大な拳を叩きつけてきた。それを一気に三人揃ってバックステップで躱す。ズドーンと響き渡る重低音。ギガントサイクロプスが拳をあげると、その箇所はクレーターとなっており、拳にこびりついていた瓦礫がパラパラと落ちていく。


 そしてサッサと横に避けていた白猫が健人の頭の上に乗る。そして三人は各々武器を構えた。このギガントサイクロプスの一撃が、戦闘開始の合図かのように、お互い臨戦態勢を取った。


次回は数日後更新致します。

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