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健人の理由。そして新たな種族

いつもお読み頂き有難う御座いますm(__)m

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 ※※※


 白く広大に広がる、どこまでも何もない広い場所。上空には雲どころか空さえもなくただ真っ白だ。以前、元猫が獣人となったり、勇者と言われた黒髪の少女がやってきた場所だ。そこに、二つの光の塊がふよふよと浮かんでいる。


「久しぶりだな」と、片方の光の塊が挨拶をする。


「おお、来たか。前に会ったのは引き継ぎの時だったか? あれからもう何万年になるのやら」それに答える、もう一つの光の塊。


「そもそも、我々が再度会う事自体、とても珍しい事ではある。こうやって呼ばれる事ですらな」


 そうだったな、と光の塊が返事する。それを確認したもう一つの光の塊は、どこか懐かしそうな笑顔? のような感じをさせた。どうやらこちらは前の担当の神のようだ。実は、現在の地球や健人達のいる世界を管轄している神が、以前の担当だった神を呼び寄せたのだった。


「で、用件はなんだ?」ふよんふよん、と、何だか遊んでいるように見える、元担当の神、こと光の塊が質問する。


「実は特例を使わず、勝手に地球から転移した者がいるのだ。更に、その者とは別件で、災厄は訪れる事は判っていたので、別の者を転移したのだが、その際私が授けようとした能力が無かったのだ。どうやら、勝手に転移した者が持っていったようなのだ」


「お前のところには訪れず、直接異世界へ転移した、という事か?」


「そうなのだ。それに、知っての通り、我々は奴らがどんな状況なのか、現状を知りうる事は出来ない。だが、逆に地球に転移していった者がこちらにやってきた時、勝手に転移していった者と偶然にも接触しておってな。それで、能力を持っていっていた事が判明したのだ」


「地球に転移していった? お前、また無茶な事を……。どうせ何か、異世界へ転移した者と約束事でもしてしまったのだろう? 我々は嘘をつけないし、約束は守るものだからな。まあ、上には黙っておくが」


 頼む、と手を合わせるような雰囲気? を匂わせる光の塊。それを見た前の担当の光の塊はやれやれ、と肩を竦めるような仕草? をしたような感じをさせる。


「とにかく勝手に転移していった者、イレギュラーについて知りたかったのだ。前の担当のお前に聞いたら、何か分かるかも知れぬ、と思ったのだ」


 ふむ、と小さく返事する前の担当の光の塊。そして何かに気付いたように、現担当の光の塊に向き直る? 感じになる。


「災厄が起これば勇者を顕現する。この法則は変わりないはずだ。なら、もしかして、災厄は二つ同時に起こるという事ではないのか? そして、そのイレギュラーは、災厄が判明したと同時に偶然死んでしまった。」


 その言葉にハッとする? 雰囲気になる、現担当の光の塊。


「そうか。それなら合点がいく。あのイレギュラーはもう一つの災厄を片付けるために転移した、勇者という事なのか」


 イレギュラーこと山辺健人が転移した理由について、ようやく答えを導き出した様子の現担当の光の塊。そして詳細を確認するため、虚空にタブレットのようなものをヴォンと顕現し、何やらフリックして画面を移動させながらチェックしている。


「……お前の言う通りだ。まさかこんな事があるなんてな。過去何度か転移させてきたがこのパターンは初めてだ。……片桐綾花は間違いなく後一~ニ年後辺り。山辺健人は、……もうこれからのようだ。不味いな。奴は自身の能力について殆ど知らん」


「お前に会っていないなら、能力を伝える方法は無かっただろうからな」


「まあ、前の勇者、三枝薫も殆ど知らない状態だったのだがな。奴の場合、伝えようとしてサッサと転移していったのだから仕方ないのだが」


 一応、能力について調べる方法は伝えはしたが。と呟く現担当の光の塊。


「しかし、その山辺健人とやらは、ほぼ何も知らされず飛ばされたのだろう? このまま放置では少し無責任ではないか? 奴が勇者として転移された事と、能力について説明してやるのも、我々の責務だと思うが?」


 前の担当の光の塊に釘を差され、申し訳無さそうな雰囲気? になる現担当光の塊。


「まあでも、手段はなくはない。一度伝えそびれてしまったのだがな」そう言ってとある方向を見る感じをする。それに釣られて前の担当の光の塊もそちらを確認する仕草をする。


「くわぁー。退屈だにゃー。早くもとに戻りたいにゃー」


 そこには、あの猫獣人さんが、あぐらをかいてつまらなさそうに座っていましたとさ。


 ※※※


 剣ヶ峰と言っていい程、鋭い山頂を連ねるとある山間部。峡谷は風が強く、人がそこへ辿り着くには相当の熟練の冒険者でないと難しいであろう。現在は冬。鋭い山の頂には雪が積もっているのが見て取れる。強風は寒さを助長させるだけで、この辺りに人が棲むのは相当難しいだろう。


 そんな過酷なとある山間部の平野にいる二人の影。一人は見た目麗しき若い女性。もう一人は筋骨隆々の逞しい若い男性。共に、相当寒い環境である筈なのに、申し訳程度の麻製の布をベルトで止めているだけの寒々しい服装。そして二人と瞳は翠色、髪も緑色だ。


「!」ふと、緑髪の女性が何かに気がついた。


「どうした?」その様子を見て、同じく緑の髪の男性が質問する。


「魔族の都市の様子がおかしい」そう言って女性は、遠目をするように魔族の都市の、特に魔王城を見つめる。


 そして、なんだと? と呟きながら、もう一人の背の高い美丈夫な緑の髪の男性が、同じく魔族の都市の方を向いた。そして何かを探るように目を瞑る。


「……魔王城にいるはずのガトーの気配が感じられないな」


「やはりそうよね」長い緑の髪を、腰辺りまである三つ編みにしている、背が高い若い美女。


「長に伝えるか?」「そうね。基本私達は無干渉なのだけど、とばっちりを受けるわけにはいかないわ。それに、ガトーには世話になっているし。奴に万が一の事があれば、長も何か考え、動く事もあるだろうから」


 そうだな、と返事しながら、緑髪の美丈夫の男性が突如大きく膨れ上がる。臀部の辺りから巨大な緑色の尾がニョキニョキと伸び、背中から大きな二つの緑の翼が伸び、ゴキ、ゴキ、と歪な音を立て、顔が変形し大きな顎があるドラゴンに変わった。同時に、長い三つ編みの美女も等しくドラゴンに变化する。元美女のドラゴンより美丈夫のドラゴンの方が一回り大きいが、色は同じく緑だ。


 そしてドラゴンとなった二人は、ほぼ同時にバサ、と大きな翼をはためかせ、一気に空高く上昇する。そして剣山の如く伸びている、雪が積もる頂上へ向かい、飛んでいった。


 世界最強の魔王ガトーを呼び捨てにし、ドラゴンに变化したこの二人は竜人族。魔族より強いと言われる、この世界最強の亜人である。ただ、彼らは元々戦闘を好まず、人口も非常に少ない事から、普段はひっそりと人が入る事が出来ない山間で暮らしている。普段から、他民族同士の戦いがあっても、災厄が訪れても、一切無関係とばかりに関わりを避けてきたのである。


 竜人族はその能力の高さ故、これまで何度も戦争に巻き込まれてきた。時には勇者が戦いを挑んできて絶滅に危機に瀕した過去も、魔王筆頭に魔族が襲ってきた過去もある。いくら強いと言っても数で押し込まれては抵抗は難しい。それに人族と魔族は小賢しく小狡いので、これまで何度も利用されてきた。なので彼らは、多人種と関わる面倒さを嫌という程味わってきた結果、距離を置こう、となったのである。


 だが約六年前、魔族と人族と和平が締結された後、人族の都市から得られる様々な農作物を、ガトーが竜人族へ提供していたのである。しかも無償で。その理由は、ガトーとしては万が一の保険で、もし人族が竜人族と接触して籠絡し、魔族へ攻め入られる事を危惧しての行いだったりする。そもそも、竜人族は数が少ないので、無償の提供と言っても大した量ではないので、対価を得るのも面倒だと、ガトーが思ったのでそうなっているだけなのだが。


 ガトー主導の元、魔族を介して無償で提供される人族の農作物や肉等は、普段狩りをして生活をしている竜人族としてはとても貴重で有り難いものだったので、ガトーからの提供を快く受け入れていた。もし人族から直接提供されるとなると、過去の歴史を顧みても、竜人族の力を宛にして、政治的に能力を利用されてしまうと疑ってしまうだろう。だが、魔王ガトー直轄であればその心配はない。


 なのでこの六年の間で、魔族と竜人族とはそれなりに友好関係になっていた。正確には、ガトー一族とだけ、なのだが。実はガトーが竜人族に無償で人族から得た食料等を提供している事は、ガトー一族しか知らない。


 ガトーがシャリアを竜人族の住む里へ向かわせなかったのは、後で追手が向かう事を判っていたガトーが、竜人族との関係を、魔族の幹部達に知られたくなかったからである。それに、ガトー自身、アイシャを人質に取られてはいても、魔力さえ戻ればどうとでもなる、と思っていたのも理由の一つではあるが。


 ただ、その考えは浅慮だったと、後悔する事になるのだが。



長かった第六章が終わります。

この更新から第七章です。

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