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救出に向かうガトーだが

いつもお読み頂き有難う御座いますm(__)m

ブックマークまでして頂いてお待ち頂いている方々、感謝ですm(__)m

※上書き保存していたはずの内容が消えていました。至急修正致しました。


「ガトー様! きっと罠です! お考え直しを!」


 シャリアの必死の引き止め。ガトーの右腕をしっかり掴んで離そうとしない。そして、シャリアの言う事も理解はできるガトーは、そのシャリアの手を離さず、黙って見ている。それでもアイシャが気になって仕方がないのだが。


「そうだとしても、俺は行かないと」シャリアが自分の事を真剣に心配してくれている事が分かるガトーは、無理矢理シャリアの手を外そうとせず、そっと空いている左手をシャリアが掴んでいる腕に添えた。


「しかし……、しかしガトー様に万が一の事があったら……! それに今、ガトー様は相当魔力を失っている筈です」涙目になりながら必死に訴えかけるシャリア。


 シャリアはキロットやグンターと同じく、ガトーの娘二人と幼馴染でもある。なので家族ぐるみでガトーやアイシャとも交流があった。ガトーに対しては特に、魔王とその幹部の一人、部下という立場以上に。だからこそ、ガトーの身の上を案じているシャリア。実はガトーがシャリアに命じて、人族で増えてきた魔物の調査をさせていたのも、自分の家族と同様に信用できる人材だからだったりする。


「シャリアありがとう。でも、罠だと判っててもとりあえず向かうよ」それでも、一刻も早くアイシャの元へ向かい、無事を確認したいガトーは、未だ縋る様に腕を掴むシャリアを今度は振り払った。そして空中で旋回しケナスの屋敷へと飛んでいく。腕を引き離されたシャリアは、唇を噛み締めながらも仕方なさそうに、同じく空中で旋回し、ガトーの後を追った。


 ケナスの屋敷は魔王城から近い。因みにケナスは飛べるがルナートはその図体故飛べない。一応翼は持っているのだが。ついでアイシャも元々翼を持っていないので、ケナスは二人に合わせて、歩いて屋敷まで移動していたのだった。


 なのですぐにケナスの屋敷までやって来れた二人。距離も然程なかったのでシャリアもすぐにガトーに追いついた。そして空から一気に滑空し、館の入口に降り立つ二人。そしてガトーは躊躇なく入口の鉄製の柵をゴバーン、と大きな音を立て破壊し、そしてスタスタと何事も無かったかのように中に入った。それに続くシャリア。


「……静かだな」あれだけ大きな音を立てたにも関わらず、誰も出てこない。ガトーは一応自分がやってきた、と知らしめるために、わざと大きな音を立てたのだが。ケナスは魔族の幹部だ。なのでそれなりの人数の使用人が屋敷で働いているはずなのだが、人の気配を一切感じない。ガトーが振り返るとシャリアと目が合い、二人はコクリと頷いた。


 そして周りを警戒しながら館の扉を、今度は静かにキィと開ける。赤い絨毯が敷かれ大きなシャンデリアがぶら下がる豪華な玄関入口内。しかし中も人の気配を感じない。


「誰もいないようですね」続けて中に入ってきたシャリアは、フワ、と黒い翼をはためかせ、吹き抜けになっている玄関のシャンデリア辺りまで飛んで見る。そして二階の様子をキョロキョロ見渡してみたが、やはり誰もいなさそうだ。


「グギャアア!!「ギャアギャア!」そこへ、突然ガトー達が入ってきた玄関から、一斉に十匹程の、肌が紫色のゴブリン達が中になだれ込んできた。


「なんだ?」当然ガトーにとってはゴブリンなど取るに足らない相手だが、突然入ってきた弱小のその魔物を不思議に思うガトー。しかも紫色という事も気になった。そしてそもそも余り頭の良くないゴブリン達は、ガトーとの実力差が分からないからだろう、一斉にガトーに襲いかかった。


「こいつら殺さない方がいいかな?」当然ガトーなら瞬殺なのだが、突然現れた事も気になる。罠かもしれないと思ったガトー。なのでゴブリン達には手を出さず、次々襲いかかる攻撃をひょいひょいと躱す。そして一旦攻撃が止んだタイミングを見計らって、シャリア同様、バサ、と黒い翼を広げ、玄関前吹き抜けのシャンデリア辺りまで飛び上がった。


「グゲ? ギャアア!」「ガギャア!」そんなガトーを悔しそうに見上げるゴブリン達。


「なんだあれ?」見下ろしながら訝しがるガトー。だが、一方シャリアは、ガトーとは違う方向を見て、驚愕の表情を浮かべた。それは二階の廊下の奥の方だ。


「……ガトー様。あちらに……」「ん? どうし……アイシャ!」視線の先には、二匹の紫色をしたゴブリンチャンピオンに両脇を抱えられた、紅いドレスの所々が破れ、美しい肌が露わになった、グッタリしているアイシャがそこにいた。


「があああああ!!」それを見つけた途端、怒りと焦りが入り混じった咆哮を上げながら、ガトーは一気にアイシャの傍まで飛んでいく。だが、ガシーン、と見えない障壁に阻まれてしまう。「チィ! 小癪な!」怒りで血が昇り、その薄黒い障壁に気づかなかったガトー。更にアイシャを気遣い、力一杯向かっていかなかったのもあって、その薄い黒い障壁を破壊出来なかったようだ。なので改めてその薄い障壁を壊そうと、拳に黒い瘴気を貯めようとすると、「「「「シャドウバインド」」」」と突然複数の詠唱が聞こえ、ガトーは一斉に沢山の黒い触手に包まれた。


「ぐあ! くそっ! 誰だああ!! ケナスかあああ!!」いきなり多くの触手に襲われ、驚くと同時に大声を上げるガトー。そして引き剥がそうとするが、既にかなりの魔力と体力を消耗している事もあって、複数のシャドウバインドから中々逃れられない。


「余り暴れると、アイシャ様の身の安全を保証しかねますぞ」そこで、とある聞き慣れた声が、ガトーを制するように言葉を発した。


「……! お前は!」


「ほれほれご覧なされ。アイシャ様を抱えているゴブリンチャンピオンの理性も、そろそろ限界のようですぞ」その声の主は、以前メディーの王城から風魔法でやってきた手紙をガトーに手渡した、腹心の一人のものだった。


「どういうつもりだ!」シャドウバインドに捕えられながらも、グイと顔を突き出し鬼の形相で叫ぶガトー。


「分からないのですか? おとなしくして頂かないと、アイシャ様がゴブリンチャンピオン、いや、下にいるゴブリン達に襲われる、という事ですよ」


「その声……! ケナスかああああ!!!」今度はケナスが淡々と説明をする。そしてその声を聞いたガトーは、バーンと、一気に爆発するようにシャドウバインドが破裂させた。だが、いつの間にかケナスを含む、八人の魔族の幹部達は、もう一度「「「「シャドウバインド」」」」と八人一斉に唱え、八つのシャドウバインドがガトーを捕えた。


「ぐるあああ!!!」普段ならこの程度、何度でも破る事が可能なガトーなのだが、相当魔力と体力を消耗していてうまくいかない。今も怒りの形相ながら、フーフーと肩で苦しそうに息をしている。額から伸びる黒い角からも蒸気が立ち込めるほど、その怒りは尋常ではないのだが、体がついていかないようだ


「もっと冷静になられたほうが宜しいかと。先程のゴブリン達は既二階のこちら、我々の後ろに待機しております。その意味がお分かりかな?」


 そう言ったのはルナート。確かにいつの間にか下にいた十匹程のゴブリン達は、二階の幹部達の後ろにいて、艶かしく太腿や美しい双丘を露わにしたアイシャを見て、ダラダラ涎を垂らしている。


 ガトーがハッとした隙に、更にシャドウバインドを唱えガトーに重ね掛けする八人の幹部達。合計十六回の沢山の触手の魔法に、まるで縄で縛られるようにガトーは体を拘束された。現状のガトーではさすがにこの拘束を解く事が出来ない。既に相当魔力を消費してしまっているガトー。紫色の巨大な丸い魔物、元ティータに放った一撃。他にも怒りが収まらず、無駄に地面に大穴を開けたり、たった今も八人の魔族の幹部達によるシャドウバインドを、怒りのまま解き放った際、これまた魔力を使ってしまっている。


「ぐうああああ!!!」普段なら余裕綽々でその拘束から逃れらる筈だがそれが出来ない。目の前には気を失っているアイシャが、ゴブリンチャンピオンに捕えられている。そして幹部達の裏切り。様々な負の感情が入り混じり、まるで獣のような雄叫びをあげるガトー。


「いい加減おとなしくして頂かないと。ほら、アイシャ様がゴブリンに襲われても良いのですか?」ケナスはそう言って、気を失っているアイシャの腕を掴み、ゴブリン達に元に放り投げる仕草をする。ゴブリン達には理性はない。そちらに投げられてしまえば、アイシャがどうなるか想像に難くない。


 ただ、そのゴブリン達は、どうやらアイシャを抱えている二匹のゴブリンチャンピオンの手下のようで、ゴブリンチャンピオンの指示がない限り、自由気ままに動く事はなさそうだが。


 ……そうか成る程。あの丸い魔物とティータもこいつらの仕業か。俺の魔力を削ぐための。ふう、ふう、と方で息をしながら、少し冷静になったガトーはようやくそこに気がついた。そして、自分を取り囲むようにギズロットとシャリア以外の魔族の幹部達八人をギロリと睨み付ける。こいつら、結託して俺を裏切ったんだな。しかも結構以前から準備していたのか、と思いながら。だが、目的が分からない。


「……何がしたいんだ?」魔力を相当失った影響で、沢山のシャドウバインドの触手を剥がす事が出来ないガトーは、ギロリとケナスを睨みながら質問する。


「まあ、それは追々」ようやく魔王ガトーを抑える事が出来た。成功した、という安堵からか、不敵な笑いを浮かべる魔族の幹部達八人。


 ※※※


「クッ、急がないと!」


 慌てて魔族の都市の入口から飛び出す、一人の影。


「風魔法があれば……」そして悔しそうに呟きながら、何かから逃れるように必死の形相で空を舞う。バサ、と黒い翼をはためかせ、魔族の都市から出てきたのはシャリアだった。そしてその後を複数の魔族達が追いかける。


「シャドウアロー」「シャドウストーン」それぞれの闇魔法でシャリアに攻撃を仕掛ける魔族達。それをうまく躱しながら、どんどん魔族の都市から離れていくシャリア。


「はぁ、はぁ。どうして、こんな事に……ガトー様とアイシャ様が心配だが、私一人ではどうしようも出来なった……!」


 悔しそうに攻撃を仕掛けてくる魔族達を振り返りながら呟くシャリア。


 アイシャ様を人質に、ガトー様も同じく捕まってしまった。まさかこの世界最強の魔王ことガトー様が捕えられるとは。どうやら以前からこの計画は謀られていたようだ。きっと人族で騒ぎになっている魔薬の件と関係しているに違いない。そう考えながら、ひたすら追手から逃げ続けるシャリア。


 ガトーは自分が捕まっている間、幹部八人達に見つからないよう、こっそり自身の指の先から、髪の毛程の細く黒い糸を一本、作り出してシャリアに体に刺していた。「?」チクっとした痛みと共に、『ここはいいから逃げろ。メディーへ行ってナリヤとケーラに接触して事の次第を伝えろ』と、念話を送ったのだ。


『し、しかし……、お二人が』痛みの原因が分かったと同時に、シャリアは不安気な表情をガトーに向け返事をする。


『俺達は、俺の魔力が回復すればどうとでもなる。魔族の都市内では誰が味方か分からない。だからメディーに行って欲しいんだ』


 息を飲みガトーを見つめるシャリア。その様子を見ていいから早く行け、と言わんばかりに顎をクイと外へ動かす。そして刺していた黒糸をシャリアから抜いた。


 奥には魔族の幹部八人。彼らから二人を救出するには、さすがにシャリア一人では厳しい。自分が命を賭して向かっていったところで、アイシャとガトーを救えるか自信がなかったシャリア。


「必ず戻ってきます!」苦渋の表情でシャリアは、ガトーの指示通り黒い翼をはためかせ、一人表へ逃げ出した。


 だが、すぐに追手がやってきてしまった。不幸中の幸いか、追手の中に幹部は誰一人としていないようだ。ガトーを制するには八人全員が必要だからだろう。追手の何人かは倒しながら逃げるシャリア。だが、追手はどんどん増えてくる。その中には、シャリアの部下も複数混ざっている。


「確かに魔族の都市内では味方の判別が難しそうだ……。くそ!」


 追手を確認しつつ舌打ちし、更に加速するシャリア。ふと、ティータが魔薬によって巨大化した事をシャリアに告げたのは腹心の一人だった事も思い出す。さすがに研究所にいる魔族達は仲間だと思って間違いないだろうが、彼らは研究者であるため戦力としては厳しい。そして、無駄に命を賭けさせる訳にはいかない。


 さすがに奴らも、魔王ガトーとその妃アイシャを殺すというような愚かな真似はしないだろう。そこは賭けでもあるが、ガトーの指示以外、いい方法が思いつかなかった。


「逃げずに一旦留まって倒したほうがいいか……」未だ追ってくる魔族達。既に魔族の都市から飛び出して結構時間は経っているのに、それでもしつこく追ってくる。体力と魔力をかなり消耗しているものの追手は数人。そう決めたシャリアは、空中で留まり振り返って、追ってきた魔族達に対し臨戦態勢を取った。


 だが、


「ぐわあ!」突如後ろから攻撃を食らったシャリア。「な、何故……? これは、光属性?」シャリアの黒い翼に突き刺さっていたのはホーリージャベリン。神官が使える光属性魔法だ。まさか後ろから、しかも光属性の攻撃を食らうとは思っていなかったシャリアは、疲労が蓄積していた事もあり、その攻撃で上空で気を失い、そのまま落下してしまった。


 だが、地表に落ちてきたシャリアを、とある白服の美丈夫がドサ、と捕えた。


「へえ。この子もかなりの美人だな」


「手を出すな。俺はあいつらと話をしてくる。ここで待ってろ」


 不意打ちをしたのはギルバート。そして、追いかけてきた魔族達にコンタクトを取ろうと、黒い翼を広げ飛び立っていったのはロゴルドだった。二人は木陰に隠れ、少し前からシャリアと魔族達がこちらに向かって来ているのを見つけ、様子を見ていたのだ。


 シャリアがこちらに向かって逃げて来ていて、追手は和平反対派の仲間達だと気づいたロゴルドが、ギルバートに命じてシャリアに攻撃させたのだった。


「綾花はいなくなったけど、この子でもいいね」じゅるりといやらしく舌なめずりするギルバート。そんなギルバートの腕の中で、今日一日色々あって相当披露しているシャリアは、気絶したまま暫く起きる事はなかった。







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