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とある事実に驚くアイシャ

いつもお読み頂き有難う御座いますm(_ _)m

ブックマークまでしてお待ち頂いている方々、感謝ですm(_ _)m

「先程から無駄だと言っているのに」


「ある意味、よく頑張るな、と感心はするがな」


「……うう、くそっ」


 蹲るアイシャを見下ろしながら、呆れた顔をするケナスとルナート。もう何度目か分からないアイシャの抵抗。魔法を使おうとしたり、使役の能力を使って魔物を呼び寄せようとしてみたりするものの、全て事前に激痛が襲い、その都度こうやって苦しみながら蹲っているのである。


 しかもナリヤとケーラが、隷属の腕輪を付けられている可能性を感じさせるような反応を二人は見せたので、そこも問いただそうとするアイシャなのだが、二人は全く取り合おうとしない。


「もう敬語はいいな。おいアイシャ。さっさと立て。これから一緒にとある所へ来て貰う」


「……ぐっ! 私を呼び捨てにするなんて! 何様のつもり?」


「いい加減立場を理解したらどうだ? 隷属」


「な? ちょっ……、ああああああ!!!」またも下腹部に耐え難い激痛が走る。そして再びその場に蹲るアイシャ。


「全く。気だけは強いのだからやりにくい」「まあ、だから魔王の妃に成りえたのだろうがな」


 ふぅー、ふぅー、と痛みに耐えながら、それでも二人をキッと睨むアイシャ。まだ懲りていない様子に、さすがの二人もため息をつく。そしてケナスはアイシャの側でしゃがみ、顎を掴んでクイと自分の方へ向けた。その美しい瞳は、痛みに耐えていたからか涙目だ。それでも睨む事を止めないのだが。


「言う事を聞かないでいるなら、今度はその体に言って聞かせる事になるぞ? いいのか? ()()()以外にその美しい体をまさぐられても」


「ケナス! あなたガトーまで呼び捨てに!」そう食って掛かるアイシャに対して、若干いらだちを感じたケナスは、思い切り頬を叩いた。「あう!」頬を張られ驚いた表情をするアイシャだが、それでもキッとケナスに向き直る。叩かれたせいか切ったようで、口からは少し血が滲み出ている。


「どうなんだ? いいのか? これから向かう先には男達もいるんだがな」今度はケナスがアイシャを睨み付ける。そして思わせぶりな事を伝える。その脅しを孕んだケナスの目を見て、アイシャはツゥと涙を頬から伝わせながら、悔しそうな瞳をケナスに向け、ゆっくり立ち上がった。


「ガトー以外の男に、私の体を触らせる訳にはいかない……」そう呟きながら。そして、ようやく指示に従ったアイシャを見て、やっと言う事を聞いてくれたか、と、傍から様子を見ていたルナートが、大きく太った体を揺らしながら、息を吐いて安堵の表情を浮かべた。


「……ちょっと待って。男達がいるって? これから何処に向かうの?」


「私の屋敷だ。既に()()()()()()()()()()()()からな」


「他の……、幹部達?」こんな事しでかしたのは、この二人だけじゃないって事? ケナスの言葉に驚いたアイシャ。そして何度もどういう事? と問いただすも、ルナートとケナスはそれ以上アイシャの問いに答える事なく、ケナスの屋敷へと向かった。


 ケナスは魔族の幹部の中では武闘派の一人である。魔王の側近として、魔王城で何かトラブルがあれば、すぐに向かう事ができるよう、魔王城の近くにケナスの屋敷があった。


「……なんで、こんな事したの?」だから、ケナスとルナートの今回の行動が分からない。ようやく冷静になったアイシャは、改めて今回の騒動の理由が知りたくなった。本来であれば、こういった騒動が起きた際、率先して、ガトーやアイシャを守る立場の人間なのだから。


 だが、質問を変えたアイシャの問いにも、相変わらず答えない二人。ずっと沈黙したままケナスの屋敷へ向かう二人に、もう逃げられないと悟っているアイシャは、色々気にはなっていたが、仕方なく黙ってついて行くしかなかった。


 そしてケナスの屋敷に辿り着く。さすが魔族の幹部とあって大きな屋敷で、白塗りの大きな館が奥に見える。アーチ状の入り口の前には鉄製の柵で造られた門があり、それをおもむろにギイと開き、館には向かわず庭の左の方へ歩く二人。何故館に向かわないの? と不思議そうな顔をしながら、アイシャも二人についていくと、その先には物置のような小さな小屋があり、二人はそこに入っていった。


 そして中の奥の方にあったベッドをひっくり返すと、その下に扉がついていた。ケナスがそれを上に引き上げると、下へ降りる階段が現れた。「入れ」とそこでケナスがアイシャに命令する。恐る恐る言う通りにするアイシャ。下まで降りると、そこには五十畳はありそうな白い壁の大広間に出た。そしてアイシャは驚愕の表情を浮かべる。


「ようやくおいでなすったか」「結構遅かったな」「フン。粗方アイシャ様がごねたんだろう」三人が入ってくるなり、奥から複数の声が聞こえてきた。


「その通りだ。良く分かったな」「さすがガトーの妃、といったところだよ」それに答えるケナスとルナート。


「あ、あなた達……。あなた達、どうして?」


 そして、絞り出すように声を出すアイシャ。そこには、シャリアとギズロット以外の魔族の幹部計八人が、大きな楕円形の机を囲むようにして、並べられている椅子に揃っていた。


 ※※※


「ダークハンド」


 ガトーのみが使えるダーク系の魔法で、空を飛びながら自らの拳の周りに黒い瘴気を纏わせる。そして元ティータだった、大きさ約10mはあろうかという紫色の魔物の上空まで進むガトー。


 アイシャの部屋まで空を飛んでやってきてみれば、ティータの特徴である薄い蝶のような、四つの羽をつけた紫色の大きな化け物が、アイシャの部屋辺りで暴れているのを見つけたガトー。あれが報告にあった元ティータか、と、その羽を見てすぐに分かったようだ。因みにシャリアはといえば、ガトーのスピードについていけず、未だ結構後方にて追いつこうと、必死にアイシャの部屋へ向かっている最中である。


 そしてガトーは元ティータの様子を確認し、黒い瘴気を拳に纏わせたまま、上空で一旦羽ばたきを止め、グライダーのように翼をピンと張り、逆さになって重力に従い一気に滑空して元ティータへ突撃した。先程倒した紫色のデブの魔物同様、この元ティータもきっと相当強いだろう、そう予想して、滑空の力も利用して思い切り拳を叩き込もうと考えたのだ。


「うらああ!」音速を超えるスピードと、ダーク系の瘴気を纏わせた拳の力を爆発させ、元ティータの横っ面へ殴りかかるガトー。ゴパアーン、と思い切り殴られ、ドドドド、という大轟音と共に、壁を突き抜け魔王城の奥まで一気に吹っ飛ぶ元ティータ。不意打ちな上、相当強力なパワーを横っ面に思い切り叩き込まれた元ティータは、奥の壁へ頭を突っ込んだまま、足だけピクピクしつつ動きが止まった。


「……はあ、はあ。これで、気絶してくれたよな?」先程の紫色のデブの魔物との戦いで、かなり魔力を削がれたガトーは、肩で息をしながら、スタ、と、瓦礫だらけのアイシャの部屋の前の廊下に降り立った。


 殺せないなら気絶させればいい、そう考えたガトーは、程々の力でティータに攻撃を仕掛けたのである。チラリと元ティータを見てみると、どうやらうまくいったようで未だ足だけ微かに動いているものの、奥の壁に突っ込んだまま動かない。その様子にホッと胸を撫で下ろすガトー。


「そうだ! アイシャ! アイシャいるか!」そして息を切らせながら、既に相当崩れてしまっているアイシャの部屋の中へ入っていくガトー。「アイシャ! いたら返事してくれ!」大声で叫びながら、落ちてきている天井をひっくり返したり、倒れてきている土壁を避けたりして、アイシャが埋もれていないか探すも見つからない。


「ん?」そうやってガトーがアイシャの部屋の中を捜索していると、この部屋にあるには不自然な物を発見し手に取った。鉄製の小箱だ。まるでこの部屋が瓦礫で埋もれるのを予測していたかのように、やや頑丈な造りになっている。不思議に思ったガトーは蓋に手をかけ開けてみる。鍵がかかっているわけではなかったので簡単に開いた。


「はあっ、はあっ……ガトー様!」そこで、ようやくシャリアが追いつき、既に破壊されているアイシャの部屋の入口から中に入っていくと、いきなり怒気を含んだ、小動物なら一瞬で即死しそうなほどの、黒い瘴気を孕んだ殺気が、ガトーの体からゾワっと溢れ出した。


 その悍ましい程の殺気のせいで、ガトーを中心に砂埃が舞う。「クッ!」その殺気に当てられシャリアが、アイシャの部屋の入口付近で立ち止まってしまった。そしてゾワっと悪寒を感じ一気に汗が吹き出る。


「……あいつめええええ!!!」クシャ、と何か書かれていたメモを握りつぶし、「がああああああああ!!!」と、まるで獅子の咆哮の如く絶叫するガトー。そして殺気と黒い瘴気だけで、ドン、という大きな音と共に部屋の壁が一気に吹き飛んだ。「うわあ!」同時にシャリアもその圧で飛ばされそうになるが、何とか両腕をクロスにして顔を砂塵から守りながら踏ん張る。


「ガトー様! どうされたのですか!」そして部屋の外から様子のおかしいガトーに声を掛けるシャリア。そんなシャリアをチラリと一瞥し、ガトーは何も言わず黒い翼をバサ、と大きく広げ、またも空中に飛び立った。


「え? ガ、ガトー様! どちらへ!」慌ててガトーを追いかけるため、自身も黒い翼を広げ空中に飛び出すシャリア。


「ケナスの屋敷だ」そう呟いてポイ、と空中で無造作に鉄の小箱に入っていたらしい、丸まった紙をシャリアに投げたガトー。


 何とかシャリアはそれを空中でキャッチし、開いて見てみると、そこには、「アイシャ様は我々が預かった。詳しくはケナスの屋敷にて」と書いてあった。







最近中々更新が進まず申し訳ありません。

私情にて多忙だった事もあり、中々更新出来ませんでした。

来週には落ち着きますm(_ _)m

※次回2-3日後に更新予定です。

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