彼らが登場。そして綾花と合流
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※今回、更新前に修正点を見つけ、更新が遅くなってしまいました。
申し訳ございません。
また、片桐綾花の挿絵を頂戴しました^^とても素敵な絵ですので、宜しければ活動報告に
添付しておりますので、ご覧頂きたくm(__)m
「……はあ」ポクポクゆっくり馬を進めながら、白い息と共にため息を吐く、背中に斧を背負った青年。
「あーもう! また戻るんだからそれまでの辛抱だって、お前自身も納得してたじゃないか!」同じく馬に跨がり、白い息と共にイラッとしながら悪態をつく、腰に剣を装備し背中に盾を背負った青年。
「そうなんだけどさあ。……ちぇ、お前は良いよなあ」
「何が?」
「リシリーちゃんが一緒だし」
「あら、バッツさんも私と一緒でしょ?」背中に弓矢を背負った、名前が出てきたので答えたリシリーも、白い息と共に馬に跨がりながらバッツに嫌味なツッコミ。
「……どうしてそう、分かってるくせに意地悪言うかなあ」バッツの泣きそうな情けない顔に、ついおかしくてフフフと、いたずらっぽく笑うリシリー。
そう、彼らは先日までガジット村にいた、健人のお友達二人とリシリーである。冒険者である彼らは、ガジット村から少し離れた、とある村からの要請で、魔物討伐のため向かっている最中なのだ。その村はガジット村から馬で十日程の距離。アクーとの中継地として栄えていたガジット村とは違い、メディーとどこかの都市との中継地という訳ではないが、メディーにも近くそれなりに人口が多い村である。
そしてジルムとリシリー、そしてバッツが今回、その村からの魔物討伐の要請を引き受けたのは、自分達の冒険者としての力を向上させるためという目的もあった。現在ガジット村周辺は魔薬の件が片付いたのもあって殆ど魔物がいない。しかもあの村は王城直属の兵士がいるので警護も必要ない。なので手持ち無沙汰だった彼らは、今回の話を村長のガルバントから聞いて、真っ先に手を挙げたのである。
神官であるエイミーをガジット村へ送迎した後、アクーに戻るという選択肢もあったが、戻ってもアクー周辺は元々比較的魔物が少ない地域。しかも元から冒険者達も少なからずいるので、それで十分事足りている。なのでアクーに戻っても彼らが魔物討伐の依頼を受けられるかさえ微妙だった。だから彼らは今回の依頼を喜び勇んで引き受けたわけである。その村はヌビル村同様、普段は余り魔物がいないらしいのだが、最近増えてきたので、冒険者を派遣して欲しいという依頼が来た、という訳である。
そして当然、治癒治療のためにガジット村に派遣されているエイミーは同行できない。それが寂しくて、既に旅に出て一週間以上経った今も、バッツはグチグチ言っているのである。
「……ん?なんだあれ?」ため息つきながら飽きもせずグチグチ言っているバッツに、いい加減呆れてきたジルムが、遠目で何か不思議な物体を発見した。小さな風の渦巻き? 竜巻のように見える。リシリーもジルムの言葉で同じ方向を見る。しかもそれは、この舗装された道の上をこちらに向かって進んできているように見えた。
「もしかして、魔物かしら?」リシリーのその一言に、さすがにしょぼーんと肩を落としていたバッツもハッとする。そして顔つきが代わり馬上ながら背中の斧を右手に構え、リシリーも背中に背負っていた弓と矢を使えるよう、馬上で装備し、ジルムも同じく、馬上で剣の柄を掴み背中の盾を装備した。
結構なスピードでこちらに近づいてくる竜巻。三人はお互いを見合って頷き、その小さな竜巻のようなものに警戒しながら、すぐ戦えるよう、三人揃ってサッと馬から降りて、いつでも攻撃出来るよう、臨戦態勢を取る。
「……人が乗ってる?」「みたいね」「しかも子どももいるんじゃないか?」何となくその正体が見えてきたが、三人揃って怪訝な顔をする。そういう魔法を使う人型の魔物かも知れないが、どう見ても人族だ。
それでも警戒を怠らない三人だが、そのうち一人の女性が、その小さい竜巻からひょい、と降りた。よく分からない相手に、より一層怪訝な顔で、武器を構えたまま降りた女性に近づく。
「ねえあんた達、もしかして冒険者?」緊張しながら近づいてきた三人に対し、大きなハート型の白銀の杖を持った、黒髪に黒い瞳の美少女が、気さくな感じで先にバッツ達に声を掛けてきた。
「……可愛い子だった」「おおマジだ……」近づいてようやく見えた容姿に、つい見惚れてしまうバッツとジルム。そして可愛い子だから、と勝手に判断してすぐさま武器を収めた。
「は?」なんだかポッと頬を赤くしてるっぽいジルムとバッツに、こいつら何言ってんの? と怪訝な顔をするポニーテールにした黒髪に黒い瞳の美少女。
「あ、えと、キチガイ二人でごめんなさい」そこで同じくやってきてたリシリーさんが頭を下げた。二人をきちんと貶しながら。
「ちょ? リシリーちゃん?」「キチガイは酷いよ!」コンビのようにすかさず突っ込むキチガ……もとい二人。
「アハハ! 何そのコントみたいなやり取り」三人のやり取りがどうやらツボった様子の、黒髪のポニーテールの美少女。つい腹を抱えて笑ってしまった。耳から首筋には白いイヤホンが揺らいでいる。そして未だ竜巻の上にいる二人の子ども達に向かって、ちょっと待っててね、と声を掛け、バッツ達の近くにやってきた。
「こんにちは。あなたの言う通り、私達は冒険者なの。今からツトル村に向かうの」リシリーは頭を下げながら挨拶し、説明をした。
「あら。私達と同じだ。じゃあ一緒に行く?」そして黒髪の美少女がそれに答える。
「「行く!」」で、ジルムとバッツがすかさずハモります。
「……いや、あんた達に聞いてないけど、まあいいや。私は綾花って言うの」
「アヤカちゃん、か。変わった名前だな……。そういや俺達の知り合いにも、変わった名前で黒髪に黒い目のいけ好かない奴がいるな」
「ああ。あいつは確かにいけ好かないな。ハーレムみたいに可愛い子囲ってるからな」
「?」誰かを思い出しながら、若干涙目で恨めしそうにブツブツ呟く男二人を見て、不思議そうに首を傾げる綾花。
※※※
「タケト……ね」お互い挨拶をし終え、一緒にツトル村に向かう面々。迷子になった綾花と一緒だった二人の子ども達が住んでいる村は、正にツトル村だった。子ども達に干し肉を与えた場所から然程遠くなかった事もあり、魔物には結局遭遇しなかった綾花と子ども達。
そして、タケト、という名前を聞いて、ふと考え込む綾花。
「そう。アヤカちゃんと同じ髪に同じ目の色でさあ。ホント死ねって思うよ」
「そうそう。あいつのおこぼれに預かるのも無理だしなあ」
「おこぼれって……ジルムってそんな事考えてたんだ?」
い、いや今のは冗談だよ! と冷ややかなジト目で見つめるリシリーに、慌てて弁解するジルムをよそに、未だ考え込んでいる綾花。目的地が同じという事もあり、バッツ達は馬で、綾花と子ども達は小さい竜巻で一緒にツトル村に向かう事にしたのである。その道中、バッツ達の友人が、黒髪に黒い瞳だと聞いたので、綾花はずっと思いにふけっているのである。
……タケトって日本人の名前みたい。という事は、私以外にも同時期に、この世界に来た日本人がいるって事? 五年前、もう六年前か。その時の私のいとこの薫ちゃんとは別にって事だもんね。だって薫ちゃんはそもそも女だし。それにタケトって名前、どっかで聞いた事ある気がするんだよなあ。けど、ありきたりな名前だし。うーん。
「ねえ。そのタケトって人、今はどこにいるの?」何かが引っかかる。それを何とか思い出そうと、とりあえずタケトという人物の所在を聞いてみる綾花。
「多分メディーだよ。……そういやマシロちゃん、元に戻る事出来たのかなあ?」
「マシロちゃんなあ。あの白い猫がマシロちゃんってタケト言ってたけど、未だ俺は半信半疑なんだよな」
「マシロ?」ジルムとバッツとの会話から出てきた、もうひとりの名前に反応する綾花。その名前も日本人のような名前だったからだ。
「その、マシロって人はどんな人なの?」なので当然気になる綾花は、二人に質問した。
「マシロちゃんは猫の獣人なんだ」
「でも、あれだけ猫とかけ離れている獣人って中々いないんだけどね。見た目ほぼ人間だったし。ていうかめちゃくちゃ可愛いんだよなあ」
「……そうだった。あいつマシロちゃんもいたんだったな……なあもう、タケトやっちゃうか?」
そうすっか、と危ない同意をしているジルムを気にする事なく、更に二人のしょーもない会話に呆れているリシリーをも気にする事なく、またもウンウン唸りながら考え込んでしまう綾花。
……猫の獣人、ねえ。猫の名付け親が日本人だからそんな名前になったのかも? じゃあやっぱり、今現在この世界には、私以外の日本人がいるのかな?
「ねえ、お姉ちゃん大丈夫?」ずっと難しい顔をしながら、一人押し黙って考え込んでいる綾花を気遣った、小さな竜巻に一緒に乗っている女の子。
「あ。ああ、ごめんね。大丈夫大丈夫」そしてありがとう、と言いながら笑顔で女の子の頭を撫でる綾花。ついでに男の子もギュッと抱きしめた。
「お姉ちゃんいい匂い」頬を赤らめながら嬉しそうな顔になる男の子。そして綾花も笑顔を返しながら、今度は男の子の頭を優しく撫でる
「……俺もお姉ちゃんとか言ったらやって貰えるかな?」そしておかしな事を呟いている剣を腰につけ盾を背負ってる青年。男の子にちょっと嫉妬混じりの視線を送りながら。
「……そんなジルム嫌いになっちゃいそう」そこでリシリーの攻撃。もとい口撃。
「あ。いやそうじゃないんだって! 男なら誰でもああいうの憧れるんだって!」そして変態発言をしたジルムは慌てて訂正するも、リシリーのジト目はそのまま。
「ハハハ、ほんっと、楽しいパーティーね」ジルムとリシリーのやり取りに、つい笑ってしまう綾花。
だが、
「……うぅ。ヒックヒック……グズッ」綾花は小さい竜巻の上で、不意に泣き出してしまった。
「え! ど、どうしたの?」「アヤカさん? 大丈夫?」「お姉ちゃん! どこか痛いの?」いきなりの事で驚く面々。皆綾花を気遣って慌てて声を掛ける。小さな竜巻に一緒に乗っている二人の子ども達も、心配そうに綾花を見上げている。
「グス……ア、アハハ。ごめん、違うの。違うの」そんな皆の心配する声に、慌てて涙を拭いながら、笑顔で答える綾花。
「私、こんな楽しい気持ちになったの、この世界に来て初めてだったから。こんな温かい気持ちになったのも。……ずっと楽しくなかった。ずっと苦しかった。何をやっても嬉しいって思う事もなかった。そしてナリヤ……友達もいなくなっちゃって」
「だから、君達の会話聞いてて、皆仲良しみたいで。私もホントはそういう感じで、この世界で生きていくつもりだった。それなのに、ずっと出来なかった。理由はわかんないけど。だから羨ましかっただけ」
未だ鼻を啜りながらも、若干無理に笑顔で理由を話す綾花。
「よく分かんないけど気にすんな」バッツは綾花を元気つけようとサムズアップでニシシと笑う。有難う、と涙を拭きながら笑顔を返す綾花。ちょっとキチガイ的な変態だが、基本バッツは良い奴なのである。
「あ、そうだ。俺達ツトル村に行くのって、魔物退治の依頼受けてたからなんだけど、良かったら一緒にやる? 報酬も分配するよ。バッツ、リシリーちゃん、いいよな?」
「ええそうね。アヤカさんって魔法使いよね?」そう言ってチラリとウインドクッションを見る。「魔法使いがいるのは私達も助かるし」
ジルムの問いかけにリシリーは笑顔で答える。そして三人の心使いを嬉しく思う綾花。ツトル村に子ども達を送った後、メディーに戻るにしてもお金は必要だ。出る前に多少持ち合わせは持ってきてはいるが。それに、ギルバートやロゴルドと一緒にいたが、ずっと孤独な気持ちは抜けなかった綾花。一緒にいてもずっと他人のままだった気がしていた。だから本当の意味での仲間は、ナリヤがいなくなってからずっといなかった。
そう言えば、ナリヤは無事なのかな? メディーに行って落ち着いたら、ナリヤの行方も探してみよう。……どうして今までは探そうとも思わなかったんだろう?
ふと思い出した過去の友人について、不思議に思いながらも、綾花は二つ返事でバッツ達の申し出を、アイドル時代を彷彿とさせる美少女スマイルで了承した。この世界に来て初めて、仲間と言える存在になりそうな三人だったから。
「……エイミーちゃん、ごめん。俺アヤカちゃんに心が傾きそう」
「こらバッツ。そもそもお前、エイミーちゃんの彼氏でもないだろ? だから俺がアヤカちゃんと」
「ちょっと待てジルム。お前こそリシリーちゃんがいるだろ?」
「だってリシリーちゃん冷たいんだもん」
「アヤカさん、おかしな二人でごめんなさいね」
「アハハハハ! ほんっと、皆面白いね! あ、そうそう。私もリシリーって呼ぶから、綾花って呼び捨てでいいよ」
「分かったわ。じゃあアヤカ。宜しくね」
未だ、やいやいやり取りしているおバカな男二人を、何処か楽しげに見つつ、リシリーに笑顔でこちらこそ、と答える綾花。そしてその笑顔に二人の子ども達も嬉しそうな顔になる。
「お姉ちゃん、元気になったみたいで良かった」「僕も嬉しい」
ありがとう、と美少女スマイルで二人の頭を撫でる綾花。そしてまたもやそのスマイルにポケー、と見惚れるおかしな二人。
「あ、見えてきたみたいね」リシリーが前方を見て声を上げる。そして全員はそのまま、子ども達が暮らしバッツ達が依頼を受けた、ツトル村の入り口に向かっていった。
数日後更新予定です。