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迷子の綾花とメディーの混乱継続中

いつもお読み頂き有難う御座いますm(__)m

ブックマークまでして頂いてお待ち頂いている方々、感謝ですm(__)m

※片桐綾花の挿絵、Mick様より頂戴致しました!とても素敵な絵なので、

是非ご覧頂きたくm(__)m

挿絵(By みてみん)

 大きな木に座ってもたれ、モグモグとパンを咀嚼しながら、曇天の空を見上げる綾花。雪か雨が降りそうだなあ、嫌だなあ、とか考えながら、はあ、とため息交じりの白い息を吐く。冬も深まったこの時期、一応防寒はしていると言っても、雨か雪が降ってきたら、余計に寒くなるし、野営をする際、どこか木陰か岩の影を探さないといけない。土魔法を使って屋根を作る事も出来なくはないのだが。


「せめて道が見つかれば……」ゴクン、とパンを飲み込みつつ呟く綾花。


 その時、「クゥ~」と何かの音が聞こえた。「何の音?」ビクっとその音に反応し、傍に置いていた大きなハートがついたミスリルの杖を持って立ち上がった。それから臨戦態勢をとる綾花。


 魔物? それとも、もしかしてギルバート達が追い付いてきた? あらゆる可能性を考えつつ、綾花は杖を構えながら、キョロキョロして警戒する。だが、


「あ、あの……」綾花がいた大きな木の反対側から、おずおずと小さな女の子と男の子が、少し震えながら現れた。


「こんな森の中でどうしたの?」何の音かは分からないけど、どうやら正体はこの子達みたい。ホッとしながら子ども達に質問する綾花。


「私達、木の実を集めてたらこんな森の中まで来ちゃったの」女の子が恐々と答える。綾花が女性という事もあって、さほど警戒はしていないようだが、それでもどこか怯えた様子の二人。どうやら姉弟のようて、年齢は八歳と五歳くらいだろうか?


「お姉ちゃん、僕お腹減ったよぅ」そんな、緊張している姉を気にせず、つい本音を言ってしまう弟と思しき男の子。


「ご、ごめんなさい! 朝から何も食べてなくて……」慌てて男の子を自分の後ろにやり、頭を下げる女の子。だが、その女の子のお腹が「クゥ~」と可愛く鳴った。一気に赤面する女の子。


 フフ、と微笑みながら、綾花は黙って腰のポーチから、余っていた干し肉を女の子に渡した。


「持ち合わせこれしかないけど」


「いいの?」


 申し訳なさそうな女の子に、気にしないでいいから、と笑顔で答える綾花。そして姉から干し肉を受け取った男の子が、先にガブリと干し肉にかぶりついた。それを見てコクコクと頭を下げお礼をしながら、女の子も勢いよく干し肉にかぶりつく。


「ほら。立って食べちゃ行儀悪いよ。こっち座って。パンもあるから」そう言って綾花は、自分が持たれていた大きな木の根元に座るよう二人を誘う。モグモグしながら二人は、黙って言う通りにそこに座った。


「急いで食べちゃ喉詰まっちゃうよ。とりあえず水出すね」今度はカバンからパンを出して二人に与える。それから「ウォーター」と唱え、指先から水魔法で水を発生させ、それを用意したコップに水を注いだ。


「お姉ちゃん魔法使いなの? 冒険者なの?」クリスタルを使った様子がなかったので、女の子がびっくりして質問した。この世界で属性魔法が使える人族は希少なのだが、冒険者なら属性魔法を持っている人族がいてもおかしくはない。そして四属性(クアッド)は、この世界には過去を振り返っても綾花一人だけだ。


「うん、そうだよ。実は私迷っちゃってて」二人の様子を微笑ましく見つめながら、今までずっと何かに追い詰められ、不思議と自由が利かず、いつも偏頭痛と吐き気に襲われていた事を考えると、この世界に来て初めて、癒しを得たような気持ちになる綾花。


「じゃあ、私達の村に来る?」ゴックン、と最後のパンの一切れを飲み込み、綾花の用意した水を飲み干した女の子が、綾花に聞いてみる。


「え? この辺りに君達の村があるの?」


「道は分かるんだけど、魔物が怖くて動けなくて」


「丁度良いね! じゃあ私が魔物から守ってあげる。だから二人の村に案内して貰っていいかな?」


「うん!」「お姉ちゃん、僕に任せといて!」


 こら! 偉そうに言っちゃダメでしょ! と男の子が女の子に怒られているのをみて、アハハと笑う綾花。可愛いなあ……そういや、久々にほっこりした気持ちになったかも。ふと、そんな事を思う綾花。それから、「ウインドクッション」を唱える。いつもよりやや大きめの、直径2mくらい、地表から約50cmくらいの竜巻を作り出した。そしてその上に荷物を置く。


「よし、二人共この上に乗るよ」驚きつつもキラキラした好奇心たっぷりの目で、綾花の作り出した竜巻を見ている二人に、可愛いなあと、二人を見て思いながら声を掛ける綾花。


「あれ? でもこれ、風魔法? クリスタル使ったの?」さっき水魔法使ってたのに?


「そうだよ。私風魔法も使えるんだ」キョトンと首を傾げ質問する女の子に、エッヘン、と胸を張る綾花。


「ま、詳しい説明は向かいながらするよ。とりあえず、これに乗ったら馬より速いから」そう言いながら、これに乗るって? と不思議そうな顔をしている男の子を抱きかかえて竜巻の上に乗せ、次に女の子も抱きかかえて乗せた。


「うわあ! お姉ちゃん! この上ふっわふわだよ!」「ほんとだ! この魔法凄いね!」


 先程までの疑問は何処へやら。珍しい魔法にはしゃぐ子ども達。それを見てフフンと自慢気に胸を張る綾花。そういや魔法を褒められたのも初めてかも。そんな事を思いながら、今度は綾花自身が、大きなハートが付いたミスリルの杖を、棒高跳びの選手のように使い、うまく上に飛び乗った。


「じゃあ行くよ」目をキラキラさせている子ども達を前に座らせ、二人が落ちない程度にスピードを抑えながら、綾花達は村へ向かった。


 ※※※


 健人と白猫が二体の巨体の魔物と、その頭辺りを飛んでいる魔族の様子を瓦礫の影から伺っていると、すぐにリリアムとケーラが追いついた。


「あ! あれギズロットだ!」ケーラがその存在にすぐ気づいた。


「誰なの?」「……魔族の幹部の一人。和平締結反対派の一人」


「て事は、今回の騒動の首謀者かも知れない?」そうだね、と健人の言葉に頷くケーラ。それから二人は、そっと傍の木に馬を繋ぎ、健人が隠れる瓦礫までやってきた。


「そのギズロット、とかを倒したら、あの魔物を止められるのかしら?」


「ギズロットが隷属をしているって事だったらね。でも、あれだけの大きな魔物に、腕輪を付ける事は出来ないはずだし」そもそも、魔物に隷属の腕輪ってつけられたっけ? さっき戦ったハーピーやキラービーのように、元人間なら効果はあるだろうけど。それに、元人間としても、あれだけ大きな魔物の腕に付けるのは不可能のはずだけど。


『耳についてるのは、その例の腕輪じゃないかにゃ?』「え?」ケーラがそう考えていると、白猫から念話が飛んできた。白猫はまるでピアスのように穴を開け、、耳についている例の木の腕輪を見つけたようだ。


「耳についてるんだ、なら、この魔物自体も……」さすがにケーラを含め、ここからある程度距離がある上、20mもの巨大な魔物の耳を見るには遠すぎる。だが、神獣である白猫にはどうやら見えるようだ。そして白猫がその腕輪らしきものを発見したというのであれば、この二体の魔物も元人間という事だろう。そうなれば、魔物の頭の辺りを飛んでいるギズロットが、その魔物を隷属している、と言って間違いなさそうだ。


「確かに、そうじゃないとあれだけの強い魔物を操る事なんて出来ないもんね」ケーラがそう結論付ける。


「じゃあ、計画的に、あの大きな魔物を作った、という事か」


「なら、元孤児の人達が魔物にされたのも、計画的だった、と考えられるわね」


 健人とリリアムの言葉に、ケーラが少し考え込む。


「……ギズロットは倒さず、捕まえて自供させた方がいいね。計画的と言う事なら、その意図を確認しないと」ケーラの言葉に二人は頷く。ケーラ自身も今回の件を調査している立場として、事の真相を探りたい気持ちがある。


「じゃあ、魔物を倒し、ギズロットとかいう魔族を捕まえるって事だな。」健人がそう言って二人は頷く。それから三人と一匹は、作戦を立て始めた。


 ※※※


「あそこだ! 騎馬隊は俺に続け! ファンダル! 歩兵隊は任せた!」「はっ!」


 ドド、ドド、ドドと鎧を着た総勢百人程の王と所属の兵士達が、防具を付けた馬を駆り、一斉にギルド中央部へ向かう。息も絶え絶えに王城に報告に来たギルド長ハギルによると、そこではきっと、既に魔物達と冒険者達が戦っているが、魔物達のレベルは高い上に数も多く、苦戦しているだろうとの事。騎馬の先頭には王城一強いとされる獅子獣人のグオール将軍だ。ギルド長ハギルの報告を聞いた王の勅令にて、急いで魔物達を討伐するためやってきたのだ。


「む! あいつは!」騎馬を駆り先を走るグオール将軍が魔物を見つけたようだ。そして自身の盾を馬上で前に構える。馬のスピードを利用して、盾で体当たりするつもりだ。


「うおおおおお!!」気合一閃。騎馬の勢いそのままに、その魔物にシールドバッシュを浴びせるグオール。だが、その魔物は簡単にヒラリと上空へ躱した。


「……何を考えている?」モルドーでした。


「待ってくれ! この魔物は味方だ!」慌てて勘違いしたグオールに声を掛けるナリヤ。


「味方だと?」勢いよくモルドーに突っ込んだグオールは、躱され勢いよくそのまま突っ走りそうになるも、急いで馬の手綱を引いて馬を止めた。ブヒヒーン、と高らかに響く嘶き。


「全く。見境なく攻撃してくるとは。人族とは相変わらず愚かだな。いや、あれは獣人か」上空で黒い大きな翼をバッサバッサとはためかせながら、グオールの様子を見ながら呆れた様子で呟くモルドー。


「……ん? 魔物達はどこだ? 沢山いると聞いて急いでやって来たのだが」ナリヤの声掛けで落ち着いた様子のグオール。そして辺りを見回してみる。すると、魔物達があちこちで既に死骸になっているのが見て取れた。その数約二十。ただ、被害に遭った冒険者も一定数いるようで、レムルスが必死に治療に当たっていた。


「これは……! ハーピーにキラービーか? これだけの数、全て倒したのか?」魔物の種類と数を見て驚くグオール。冒険者達の方が多いようだが、それでも空を飛ぶ事が出来る、この高レベルの魔物と評される魔物達を、これだけの数倒したとは到底信じられないようだ。


「あのモルドーが殆ど倒したのですよ」引き止めた時には忘れていたが、今はきちんと敬語を使い説明するナリヤ。上空のモルドーに視線をやりながら。


「……お前は、魔族か。あれは使役された魔物なのだな……しかし吸血鬼とは。成る程、全て合点がいったわ」吸血鬼は相当強い魔物として、五年前の魔族との戦いでも骨を折ったのを覚えているグオール。吸血鬼が味方なら、ハーピーやキラービー程度なら、相手にならないだろう事は想像できたようだ。


 そして正確にはナリヤの使役している魔物ではないのだが、そこを詳しく説明する必要はないだろう、とモルドーの主については言わずに置いたナリヤ。


「犠牲者はいないようだな。とりあえず良かった。皆の者、よくやった」そして冒険者達に労いの言葉をかけるグオール。


「残念ながら、まだ終わりではなさそうだぞ」グオールが自分の事を理解したのが分かったモルドーは、ファサ、とゆっくり羽を扇ぎながら、グオールの側にゆっくりと降りた。


「モルドー殿と言ったか。先程は失礼した。して、それはどういう意味なのだ?」グオールはモルドーに、先程突然攻撃した事を謝罪しながら、モルドーの真意を確認する。


「ほう。獣人とはいえ、礼儀を弁えていると見えるな。先程の件は気にするな。……王城に向かって、かなり強い魔物が向かっているのだ」ここの魔物達を倒しながら、モルドーはその事をずっと気にしていた。徐々に近づいてくる事で、相当強い魔物が迫っている事が分かったのである。そもそも、魔物が近づいてくるだけで、モルドーには魔物の強さを感じる事など出来ないのだが、その魔物は、その強さゆえ感じざるを得ない、という事のようだ。


「しかも二体いるようだ……ん? この魔素は……ケーラ様?」徐々に近づく大きな魔素。そして更には、その近くに、自身の主がいる事に気づいたモルドー。


「ナリヤ様。ここはもう問題なかろうと存じます故、その魔物達の元に向かいたく。ケーラ様が近くにおられるようなので」


「何? ケーラが? ケーラはタケト達と共に西に行ったのではないのか?」モルドーの言葉に驚くナリヤ。


「左様で。ですが間違い御座いません」そう言い残してモルドーは、黒い大きな翼を広げてはためかせ、再び空へ舞い上がり、二体の大きな魔素を感じる方向へ飛んでいった。



不定期更新中ですm(__)m

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