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ギルド本部前での混乱と、それぞれの動向

いつもお読み頂き有難う御座いますm(__)m

ブックマークまでして頂いてお待ち頂いている方々、感謝ですm(__)m

すみません、寝坊してしまい更新少し遅くなりました^^;

「ク、クソ!」血が滴る左腕を抑えながら、悔しそうに上空の魔物達を睨むキロット。持っていたハルバードはキロットからかなり離れた場所に落ちている。どうやら魔物との戦いで落としてしまったようだ。黒い翼は今は縮小している。どうやら体力も相当消耗しているようで、飛ぶのは難しい様子だ。


 グンターも足を怪我しているようで、跪いてキロット同様、上空を悔しそうに見上げている。グンターの黒い翼は畳まれておらず、右半分が真ん中から折れている。息がかなり荒く、苦しそうだ。


「二人共大丈夫か! レムルス治療を!」そんな二人を様子に気づいたナリヤは、上空から襲いかかるハーピー達の猛攻を、蹴りと拳で何とかいなし躱しながらレムルスに大声で指示をする。そしてその大きな声に反応し、分かった、と手をあげ返事するレムルス。たった今別の冒険者の治療が終わったところ。二人の場所まで然程遠くない。立ち上がって急ぎ二人の元まで走り出したレムルス。


 だが、そこへ一匹のキラービーが、カチカチと鋏のような口を鳴らしながら、走るレムルスに背後から襲いかかる。その高速の動きに、冒険者ではないレムルスは気付く事が出来ない。「うがああ!」ガリガリ、と背中の血肉を削る音がレムルスの体に聞こえた。鋭い口で背中にかぶりつかれてしまった。


「あ、ああ……」ドサ、とその場に倒れ込むレムルス。襲われたショックと急激に血を失ったせいか、一気に顔が青ざめる。背中の一部が食いちぎられ、そこからドクドクと血が溢れ、徐々にレムルスの白衣は赤く染まっていく。そしてレムルスは、その場にうつ伏してしまい、身動きが出来なくなってしまった。


 一方、一発で仕留めそこなったのを悔しそうにしながら、レムルスの肉片を咀嚼した後、カチカチと空中で口を鳴らしながらレムルスを眺めているキラービー。そして再びブーンと羽音を立てながらレムルスに襲いかかる。今度は一気にレムルスを喰らおうと、鋭い口を更に大きく開き、上空からレムルスに向かって特攻してきた。


「レムルス!」不味い、と呟きレムルスの様子を見たナリヤが大声で呼ぶ。だが、レムルスはピクリとも動かない。白衣が赤く染まりうつ伏せたままのレムルスに、焦りの表情を浮かべるナリヤ。だが、彼女自身も、目の前の魔物の攻撃を躱すのに精一杯だ。


「クッ」仕方ない、ナリヤは決心する。自分に対し攻撃を仕掛けてくるハーピーから、一旦バックステップし距離を取る。そしてハーピーに背を向けレムルスの方へ体を向けた。それから「シャドウウォール」とナリヤが唱えると、黒い壁が一気にナリヤの足元から顕れる。それは高さ3m程の黒い壁。そしてそれを、ビュンとレムルスの少し上辺りに飛ばした。


 ガシーン、とレムルスに襲い掛かっていたキラービーの口が、シャドウウォールによって間一髪阻まれた。「間に合った」とホッとするナリヤ。


 だが、先程までナリヤに攻撃をしていたハーピーが、その背中に向け鋭い足の爪で襲いかかる。高速で飛来してきたその攻撃に、ナリヤはレムルスを救助した後で反応できない。


「はあ、はあ、ナ、ナリヤ、さん、あぶ、ない」自分の目の前に飛んできた黒い壁が、何処から来たのか何とか上体だけ起こして顔を上げ、確認出来たレムルスは、ナリヤがそれを放ったと理解するも、そのナリヤは今まさに攻撃されようとしている。血まみれで息も絶え絶えなレムルスだが、ナリヤの後ろから迫るハーピーに気づいて声を上げるも、その声はナリヤには届かない。


 だが、レムルスの視線に気づいて後ろを振り返ったナリヤ。しかし、もう間に合わない。それでも、ナリヤもそうなる事は覚悟の上だった。


 光属性持ちのレムルスが死んでしまっては、ここで苦戦を強いられている冒険者達の治療が出来ない。魔物達は殆ど健在なのだから、ここに唯一いる神官のレムルスが死ぬ、と言う事は、ここの冒険者達が全滅するという事を意味する。そう思ったナリヤは、自分よりレムルスの救助を優先したのだ。もし自分が攻撃を受けても、レムルスさえ無事であれば治療して貰える、と踏んだのだ。


 ただ、殺されてしまえば終わりなのだが。そこはナリヤの賭けでもあった。


 これでいい、と小さく呟くナリヤ。そして何とか振り返り、キッと食いしばりながら腕をクロスにして、ダメージを最小限に抑えようと、何とか攻撃を受ける準備をする。当然無傷では済まないだろう事は分かってはいても、覚悟ができていても恐怖が頭をもたげる。だが、これ以上は対処できない。


「ナリヤああああ!!」足の痛みを堪えながら、グンターがナリヤの様子に気づいて叫ぶ。だが、彼も怪我をしていて動けない。


 ナリヤが覚悟を決め、目を強く瞑ってハーピーの攻撃を受けようとした正にその時、バン、と何かの衝撃音が聞こえ、ナリヤを襲おうとしていたハーピーが真横に吹っ飛んだ。ドーンと付近にある家の壁にハーピーは激突し、その部分だけクレーターのように凹み、押し潰れたような状態でハーピーは絶命した。


「間一髪、間に合いましたな」ふう、と、そう呟きながら安堵の表情を浮かべるのは、以前もナリヤを救った吸血鬼だった。


「モルドー! 来てくれたのか!」最悪死を覚悟していたナリヤが、最強の助っ人登場にぱあと表情を明るくする。すんでのところで、モルドーがハーピーに横から蹴りを入れたのだ。


「まあしかしながら、まだ闇までは少し時間もありますので、私本来の力は出せませんがな」今はまだ夕方。もう少しで夜になろうとしているとは言え、まだ真っ暗とはいい難い時間帯だ。モルドーは暗闇になると闇の効果という特殊な能力で、レベル80の強さになる。そうでなくても、モルドー自体はそもそも強いのだが。


「それでもモルドーが来てくれたなら形勢逆転だ」だから、モルドーの話を聞いてもテンションが高いナリヤ。


「そうだレムルス! 早く自身の回復を!」ハッと思い出したナリヤが、急いでレムルスに声を掛ける。瀕死の状態のレムルスはそれに返事出来なかったが、何とか自分に「ヒール」を唱え、傷を癒やした。


「ふむ。キロットとグンターですか。確かに彼らでは力不足ですな」一方モルドーは、ナリヤと同じ魔族の二人を見つけ呟く。そして突如、自らのコウモリ型の翼をバサ、と大きく広げた。長さ2mほどにまで広げたその中から、物凄く小さなコウモリが百羽程度、バサバサ、と、羽音を立て捕まっているのが見える。


「行ってこい」そうモルドーが呟くと、小さなコウモリ達は一斉に魔物達へ襲い掛かった。


 ※※※


 ズーン、ズーン、と地響きを立てながら、王城へ向かう高さ20mにもなる二つの巨体。その背後には、黒い翼をはためかせながら、ギズロットがその巨体の頭辺りを飛んでいる。


 移動する間、辺りの家々をブン、と腕をふるい破壊していく二つの巨体。その圧倒的なスピードとパワーに巻き込まれる、家の中に避難していた住民達。血しぶきと肉片と何らかの骨が混じった瓦礫が、巨体が通った両側に無造作に撒き散らされていく。


 この二つの巨体、ギガントサイクロプスは、単に王城に向かうのに邪魔なので、家の中にいる人々共々、家々をぶち壊しながら真っ直ぐ進んでいる。当然、少し横に移動すれば、邪魔する建物がない、王城に続く道はあるのだが、この二つの巨大な魔物は、どうやらわざと家々を破壊し人々を殺しながら、王城に向かっているようである。


「しかし、これだけ強いとガトー様でも苦戦したかもな」他人事のように、無碍に殺されていく人々と家々を見下ろしながら呟くギズロット。


「まあさすがに、破壊しながらでも速いな。後はプラムがうまくやれるかどうかだな」


 ※※※


「ふう」黒くしなやかな濡れた髪をタオルで拭きながら、一息つく綾花。丁度風呂上がりのようで、今は一糸纏わぬ姿だ。明日にはここ元山賊の一軒家を出て、魔族の都市に向かわないといけない。結局、この一軒家に色々揃っていたので、買い出しは必要なかったのも、出発が早くなった理由なのだが。


「フンフフーン」それでもご機嫌な様子の綾花。前の世界でアイドルとしてデビューするために練習した曲を口ずさみながら着替え始める。その時、ポトン、と、とある白い物が、綾花のスカートに付けているポケットから落ちた。


「……忘れてた。というか、これどうせ使えないんだけど」紐状のそれをつまんで持ち上げながら愚痴る綾花。それは以前、この世界に初めてやって来た時に拾った、ブルートゥース専用の白いイヤホンだ。


 丁度今、歌を口ずさんでいたからか、何も聞こえないのを承知で、何の気なしに耳につけてみた。


 すると、


「……何か偏頭痛がマシになった気がする」ずっとズキズキしていた頭痛がいくらか和らいだように感じる。プラシーボ効果かな? とか思いながら、風呂上がりという相乗効果も相俟って、一層ご機嫌になる綾花。


「まあ、精神的なものだったのかも。最近ずっと生活自体がつまんなかったし、()()()()()は訳分かんないし、相変わらず災厄は手掛かりさえ掴めないし。明日ここ出なきゃいけないのは嫌だけど、気分がマシになっただけ良かったかな?」そして着替えを終え、ギルバートに風呂から上がった事を伝えるため、彼の部屋に向かった。


 コンコン、と部屋のドアをノックする綾花。それに反応したギルバートが、キイと無言でドアを開けた。


「お風呂上がったよ……って、どうしたの? 怖い顔して」


「さっきロゴルドから聞いたんだ。もう手を出していいってさ。傷つけなきゃいいってさ」


「何の事?」首を傾げる綾花。それに答えず、ギルバートは「部屋に入れ」と命令した。


「なんで? 何か()()()()()怖いから今はヤだ」どうもギルバートの様子がおかしい。嫌な予感がした綾花は、ギルバートの()()()()()()()


「……逆らった、だと?」綾花の反応に驚くギルバート。だが、ギルバートはもう限界のようだ。逆らった事も苛立ちを増長させたようで、綾花に襲いかかろうと両手を上げた。だが、


「待て」と、奥の廊下から冷めた声が聞こえた。「無理矢理はやめとけ」


 ロゴルドがいつの間にかそこにいた。そして、ギルバートの様子がおかしかったので身構えていた綾花が、突然のロゴルドの声に驚いてそちらに顔を向ける。


「アヤカ。ギルバートは最近お疲れのようなんだ。兵士達に追いかけられていたのもあってな。ようやく落ち着く事が出来たからか、ついタガが外れたようだ。ギルバートも男だ。勘弁してやってくれないか?」


 思いつく限りの言い訳を繕うロゴルド。そしてギルバートに顔を向けキッと睨む綾花。その視線にハッとするギルバート。


「ご、ごめんアヤカ。僕どうかしてたみたいだ」上げた両手を下ろし、頭を下げ謝罪するギルバート。


「……今度やったら許さないからね」さっきまで上機嫌だったのが台無しだ。機嫌を損ねた綾花は、プイとその場から立ち去り自分の部屋に向かった。


「何故だ? 命令が効かなかった」「……」狼狽えるギルバートに、顎に手を当て無言で何か考え込むロゴルド。


「無理矢理はやめとけ、って、ロゴルドが言ってた。……どういう事?」一方、自分の部屋に向かいながら、ロゴルドの言葉が気になった綾花だった。



明日更新出来るかちょっと微妙です。申し訳ありません。

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