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彼らに遭遇

いつもお読み頂き有難う御座いますm(__)m

ブックマークまでして頂いてお待ち頂いている方々、感謝ですm(__)m

「うわあああ!」


 ハーピーの大きな爪で地面に抑えつけられ、身動きできない男性が、恐れおののき絶叫する。それを理解したかのように、クパアと大きな嘴を広げ、男性を顔から喰らおうとした。


 が、


「にゃあああああああああ!!!!」白猫の大絶叫。それはハウリングを起こしまるで超音波のように辺り一帯に響き渡る。その大絶叫で空を飛んでいた魔物達は、羽が振動して飛べなくなり落下した。そして、今正に男性を喰らおうとしていたハーピーを含む魔物達は、その音波に耐えられず、その場に一斉に苦しそうにふさぎこんだ。


 それを確認した健人は、急いで捕らえられている人々の元に向かう。アクセルとブーストの効果が残ったままなので、音速の如き動きで近づき、魔物の傍から次々と引き剥がす。


「ウググ……」「ああ、痛い、痛い」だが、救出した人々は各々呻き声を上げる。魔物によって捕えられ、空中から落とされた衝撃のせいで、骨折していたり打ち身を患い苦しんでいるようだ。その様子を見て申し訳無さそうな表情を浮かべながら、とりあえず健人は、未だあちこちで蹲る魔物達の傍から、人々を次々と引き離した。リリアムが来たら治療して貰おう、と心の中で呟きながら。


「しかし真白、そんな事も出来たんだな」ふう、と一息つき、一所に人々を纏めて座らせ、後ろで待機している白猫に振り返り声を掛ける。


『そうだにゃ。これが神獣の能力なんだにゃん!』ニャッフン、と自慢気にフフン、と鼻を鳴らす白猫。因みにこの音波は魔物のみに効果があり、人々には一切効かない。なので救出された人々からすると、単に猫が大声で鳴いてだけのように思っているようだ。そもそも、急に魔物達に襲われた事もあり、魔物達が何故蹲って苦しんでいるかまでは、把握する余裕はないようだが。


 だが、そんな状態の魔物達も、徐々に回復してきたようで、ムクリ、ムクリ、とあちこちで起き上がり始めた。


「皆さん! 出来るだけここから離れて下さい!そうだ、とりあえず神殿の中に!」その様子を見た健人が、再度人々が捕まってはまずいと指示をする。そしてここから少し離れたところに、以前自分達が神官達を捕まえに行った神殿と孤児院があったのを思い出し、ひとまずそこに避難するよう伝えた。


 健人の言葉を聞いた人々は、急いで怪我人を抱え、魔物達が起き上がる様を青ざめながら一目見て、慌てた様子で神殿方面に逃げ出した。


 そして健人は魔物達に向かい合い、スラリとオリハルコンの刀を抜く。


「魔物だからってこの人達を諦めたくない。メディー中央に行った魔物達は無理かも知れないけど、せめてここにいる人達は倒さず捕まえたい」


『無茶言うにゃあ』呆れた感じで念話する白猫。だが、健人は白猫の言葉には答えず、アクセルとブーストの能力そのままに、一気に魔物達の方へ駆けていった。


 一方魔物達は、ようやく白猫の咆哮から回復し、起き上がる事は出来たものの、未だ地面から飛び立つ事が出来ない様子。それを見越して健人は、次々と魔物達の羽を切り裂いていく。飛べないようにするためだ。


「グギャアア!」「ギャアア!」痛みに叫び声を上げるハーピーとキラービー。だが、羽が使えなくても反撃できないわけではない。痛みに耐えながらもハーピー達は、うまく起き上がって健人を大きな目で睨みつつ、足の鋭い爪で健人に襲いかかった。だが、それを簡単に躱しながら、今度は逆刃で足に打撃を加えて骨を折り、ハーピー達を完全に動けなくしてしまう健人。


 次にキラービーがガシャガシャと蟻のように健人に走って襲いかかる。その数五匹。ガチガチと無機質な顎の音をさせながら、一斉に健人に食らいつこうと飛び掛かる。だが、それをサッと躱し、それぞれ六本あるキラービー達の足を、健人は逆刃で関節辺りを叩いて折った。


「グ、ググアア」「ギュイイ……」その場で動けなくなり悶えるキラービー達。動く手段を一切断たれた魔物達は、悔しそうに健人を睨み上げる。そして作業を終えた健人は、ふう、と息を一つ吐いて刀をしまった。


 丁度そのタイミングで、馬に乗ったケーラとリリアムがやってきた。


「これ、どうしたの?」健人の周りに転がっている魔物達を見て、不思議そうに聞くケーラ。健人の実力であれば、全滅させる事は容易なはずなのに?


「ああ。殺すのもどうかと思って、とりあえず身動きだけ封じたんだ」


「相変わらずねえ」ケーラが何か言う前に、馬を近くの街路樹に繋ぎ、降りてきたリリアムが呆れたように声を掛けた。健人の意図を理解したようである。そして優しい笑みを健人に向ける。


「でも、元に戻す方法、分からないんだよ。それに、ナリヤ姉さんが向かった先の魔物達は、きっと殺されるよ。モルドーを応援に行かせちゃったし」ケーラも馬を街路樹に繋いで、健人の元にやってきながら呆れたように話す。


「それも分かってる。でもせめて、最低限でも、何か出来る事がないか探りたいんだ」


 ケーラの言いたい事はよく分かっている。こんな事しても無駄かも知れない。だけど、眼の前で蹲って未だ俺達を憎々し気に睨んでいるこの魔物達は、元々孤児だった人達なんだ。今まで何度か倒してきた、魔物化した連中とは全く違うんだ。隷属の腕輪を付けられて虐げられ、好きなように弄ばれた人達。この人達は何も悪い事してないのに、更に魔物にされて殺されるなんて、可愛そう過ぎる。


 ……ケーラの言う通り、ナリヤさんやレムルスを含む冒険者達が戦っている魔物達は、諦めるしかないけど。本当はそれも悔しい。だからせめて、ここにいる人達だけでも救いたい。これは完全に俺のエゴだけど。


 そう、心の中で一人呟きながら、健人がグッと悔しそうに唇を噛みしめる。その様子を見たリリアムは、健人の心中を察したかのように、そっと健人の腕に絡まり寄り添った。


「タケトのやりたいようにすればいいわ。私はずっと、あなたの味方だから」ニコ、と超絶美女スマイルを健人に向けるリリアム。その表情は思いやりに溢れている。ありがとな、と健人はリリアムの頭を撫でて笑顔を返す。


「あ、コラ! ボクだってタケトの味方だよ!」抜け駆けしたなあ! と勝手にプンスカしながら、ケーラが負けじと健人の腕にからもうとした途端、


「おお! おられたぞ!」「やった! すぐに見つかったああああ!」「イエッス!イエーーッスゥ!」


 何やらむさい男達が、喜びを孕んだ雄叫びを上げるのが聞こえてきた。その胸には、王都所属の名誉ある赤い紋章ではなく、誰かさんの名前が書いてあるワッペンが貼ってある。


「……なあ、あれって」「ええ。きっとアレよ」「ええええええ!! どうしてやってきたのーー!!」


 物凄くドン引きな健人とリリアムに、心の底からの絶叫をあげるケーラ。


「よしお前ら! 準備はいいな!」


「「「「「「おうともよ!」」」」」」


「「「「「「せーのっ! K・E・L・A、ハイ、ハイ、はぁぁぁぁぁあい!! ケーラさあああああああん!!!!」」」」」」


 寒空の下スクラムを組んで声を上げるむっさい男達。各々の体からは熱気と興奮した気持ちが蒸気となって立ち昇る。そして一糸乱れぬ阿吽の呼吸。さすが王都所属の兵士達。普段の訓練の成果がここでも発揮されているようだ。


「やっぱりそうだった」「そうね」「いやああああああああ!!」


 既視感ある光景に呆れ顔の健人とリリアムに、まるでムンクの叫びの絵のように両手を頬に当て、寒空に向かって叫ぶケーラ。


 そう。彼らは、ガジット村にてケーラのダンスを見て親衛隊になった兵士達である。


「さあケーラさん! 我々があなたをお守りします!」そのうちの一人が無駄な動作なくサッと、ニコやかぁに微笑みがら、ケーラの元にやってきて跪く。すると残りの兵士達も一斉に、ザザっと一糸乱れぬ動きでそれに習う。


 ケーラの目の前には、十人程の屈強な兵士達が横並びにズラーと立膝をついて並んでいる。


「……ねえタケト。どうしてこうなったの?」紅い瞳をウルウルさせ健人に縋るケーラ。そして物凄く怯えた様子で健人の腕にヒシ、と捕まり、健人の背中側に隠れる。怖い、と呟きながら。


「そりゃあ、ケーラが魅力的だからだろ?」そんな様子がちょっと面白可愛かったので、少しからかってみる健人。ちょっと意地悪な顔にニヤニヤしています。


「……魅力的って、タケトに言われたら嬉しいけど……、やっぱタケトニヤニヤしてるし嬉しくない」プクーと頬を膨らます超絶美少女魔族さん。


 そんな様子を、身動きできない魔物達がポカーンとした様子で傍から見ていましたとさ。そして親衛隊、もとい兵士達は、ケーラしか目に入っていないようで、魔物達が一処に固められているのに気づいていないようです。余程ケーラをすぐ見つけた事が嬉しかったみたいです。


 だが、そのコントみたいな雰囲気を、白猫の念話が打ち砕く。


『健人様。あっちの方に物凄く大きい魔素を感じるにゃ』そう言いながら南方面をキッと見つめる。口調の強さで真剣なのはよく分かる。間違いなく只事ではない。


『あっちの方向って、確か魔物達が現れたスラム街の方だよな?』さっきまで自分達がいた孤児院の近くだ。


『そうだにゃ……。健人様不味いにゃ。その大きな魔素、メディーの中心に向かって移動してるにゃ。しかも二つもあるにゃ』


『大きな魔素って事は、強い魔物って事だよな?』そうだにゃ、と健人の問いに答える白猫。


 それは不味い。急いでそっちの方に向かわないと。だが、この魔物達も放置しておくわけにもいかない。


 少しの間健人が顎に手を当て考え込むが、ふと何かを思いついたようで、手のひらを拳でポン、と叩いた。それからケーラに耳打ちする。


「……ええ~~」物凄く嫌そうな顔をするケーラ。






更新が中々出来ず申し訳ありません。

ようやく復活出来ましたので、毎日更新とはいきませんが、

ボチボチ更新できるようになってきましたので、もう暫くお付き合い頂ければ幸いですm(__)m

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