ギズロットの怪しい動き
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「さて、我々はそろそろお暇しましょうかね」「そうですな」
とりあえずギズロットへ協力をした事で、自分達の身の安全は確保されこのまま逃げられると思っているヘゲナーとメルベル。ギズロットは二人の言葉に対し、「では、表に出ましょうか」と、二人を外へ誘った。
「しかしまあ、プラム殿に相談して本当に良かった」「全く。こうやってギズロット殿にもお会い出来ましたしなあ」
そしてハハハと笑う二人。
「しかし、これからどうされるおつもりで」そんな彼らにギズロットは一応、質問する。
「我々はこれから、メディーを出て、フームかウェンスの神殿にでも身を潜めようかと」
「なるほど。だがしかし、入り口の警備兵は大丈夫なのですか?」ギルドからの要請で、逮捕するよう通達されている可能性はあるはずだ。ギズロットがそう疑問に思うのは当然だろう。
「そこは抜かりないのですよ。警備兵達も一枚岩ではないのですから」フフン、と自慢気に笑うヘゲナー。その言葉にギズロットは返答はしなかったが理解した様子。裏で手を回しているという事なのか、と。
まあでも、それは叶わないのだがな、と、先に歩く二人の背中を見ながら、ほくそ笑むギズロット。
そしてスラム街の奥から少し歩いた、縦横20mほどの広場にやってきた三人。スラム街の住人達は、先程の魔物の襲来の影響でほぼ全員逃げおおせたようで、この広場を中心に立ち並ぶ家々や娼館、カジノ等は皆普段の喧騒は全く聞こえず、完全に静まり返っている。普段この辺りにたむろしている後ろ暗い連中や、ホームレスの姿さえも見えない。
「ではまた。出会う機会があれば」何もない広場にやってきて、しかもからっ風が吹き抜けたものあって寒さに身震いしながら、ヘゲナーとメルベルがギズロットに挨拶して立ち去ろうとした時、ギズロットは突如二人の背後から「シャドウバインド」を唱え、彼らの体を腕ごと、黒い縄のようなものでぐるぐる巻きにした。
「な! 何が起こった?」「ギズロット殿? 一体どういうつもりだ!」突然の事に驚く二人。
「すみませんねぇ。実は我々の計画には、あれだけじゃ足らないのですよ」そしてニヤリと嗤い、おもむろにポケットから、例の木の腕輪を二つ取り出すギズロット。
「そ、それは……。バカな真似はよせ!」「我々にそれは通用しないのは知っているだろう!」
「ええ。勿論」そう答えながらもギズロットは、シャドウバインドの黒い縄の一つを解き、先端を尖らせ、いきなり二人の耳を片方だけ、グサ、と突き破った。
「ぐああ! 何をする!」「何のつもりだ!」意味不明な攻撃におののき叫ぶ二人。そして血がポタポタと滴り落ちる片方の耳に、ギズロットは無理やり木の腕輪をねじ込んだ。
「うがあああ!「い、痛いいいい!」いきなりの事に驚きながら、激痛に叫ぶヘゲナーとメルベル。そして何とか強引に木の腕輪をはめた後、ギズロットは「隷属」と唱えた。「ご、ごあああ!「いぎゃあああ!」今度は腹の激痛に悶える二人。
「う、裏切ったなああ!」「わ、我々は大神官だぞ! こんな事をしても無駄だ!」怒りに震え目を血走らせながらギズロットを睨むヘゲナー。そしてメルベルは嫌な予感がしたようで、急いで自らの耳に「ホーリーリフト」を唱えようと口を開く。同じくヘゲナーもメルベル同様、「ホーリーリフト」を唱えようとする。
だが、その口が開いたのを待ってましたとばかりに、ギズロットは二人の口の中に、直径5cm程の赤紫色の玉を放り込んだ。「ム、ムグ?」「フゴ?」驚く二人。そしてお互いの口に入っているその玉を見て二人共青ざめる。
急いで吐き出そうとするも、ギズロットは先程耳を貫いた一本のシャドウバインドの縄を使い、二人の口を同時に塞いだ。そしてその上からギズロットが手で無理やり玉を喉の奥へとねじ込む。シャドウバインドの縄で不意をつかれた事もあり、ついそれをゴクン、と、二人は飲み込んでしまった。
ふう、と一息つくギズロット。そして二人を拘束しているシャドウバインドを解く。
「あ、あああ、ああああ……」「な、何という事を、何という事をおおお!」何をされたか理解している二人は、叫びながら絶望した表情を浮かべる。
「騙してすみませんねぇ。先程も言った通り、あれだけの魔物じゃ足らないんですよ。なのでお二方には特別、私でも到底倒せない強力な魔物になって貰おうと思いましてね。だから隷属が必要だったんですよ」
「この外道があああ!」拘束を剥がされ騙された事に怒るヘゲナーは、ギズロットに「ホーリーボール」を唱え攻撃しようとするが、隷属の腕輪(今は耳についているが)を付けられているため、腹に激痛が走る。
「うがあああ!」
「主に対して反目すると、隷属の効果が顕れる事は知っているでしょうに。……しかしお二人共、中々魔物にならないですな。この魔薬だと時間がかかるようだな……ふむ。この件報告しておいたほうがいいな」
どうやら赤紫色の魔薬は初めて使ったようで、どこか関心を持った様子で2人を眺めるギズロット。
「な、何故耳に付けたのだ?」ヘゲナーの様子を見ていたメルベルは、何とか現状を打破すべく、ギズロットから何かヒントを得る事が出来ないかを探ろうと質問をする。
「腕だと割れて壊れてしまうからですよ」何の気なしに答えるギズロット。それを聞いたところで、この二人はどうする事も出来ないのは分かっているからだろう。
「割れる? それはどういう……ウググルル、フグルルル」「グ、グボホオオ!!!」未だ耳から血が滴る二人が、突如獣のような唸り声をあげた。
「お? ようやく変化するか」その様子を確認したギズロットは、急いで二人の元から離れようと、背中の黒い翼を一気に広げ、バサ、っと羽ばたきながら空に飛び立ち距離を取った。
それからすぐに、ヘゲナーとメルベルは徐々に巨大化していく。ボコ、ベキベキと骨が壊れる音が聞こえ、顔がへしゃげ段々と原形を失っていく。そして二人共、直径2m程のただのまん丸の肉塊と変化した。そしてそこから次に、ボコン、ボコンと音を立てながら肉塊のあちこちがイボのように膨らむ。そしてそれらは腕や足となりその肉塊からニョキニョキと伸び、上部には首のようなものがボコン、と顕れる。そしてバキボキ、ボコンボコンと音をさせながら、徐々に背が伸び人の形になっていった。
「フグウウ……」「ゴアアゴオオゥ」最終的にそれらは、禿げ上がった頭の天辺に銀色の一本の角が生え、筋骨隆々の約20mはある巨大な体躯の魔物に生まれ変わった。大きな一つ目に口からは巨大な牙が覗いている。そして元ヘゲナーとメルベルだったその一つ目の魔物、ギガントサイクロプスの片耳には、それぞれ例の腕輪がついている。
「よし。成功だな」空中で黒い翼を羽ばたかせ、ホバリングしながら一部始終を見ていたギズロットは、ニヤリと嗤った。
このギガントサイクロプスは、サイクロプスという一つ目巨人の魔物が更に大きく強力になった魔物である。レベル80以上はあると言われる、デーモンより相当強力な魔物だ。巨躯から繰り出される圧倒的な打撃と、殆どの魔法を通さない防御力。しかも魔法耐性がある。しかしギガントサイクロプスは、光属性の魔法攻撃には弱い。なのだが、
「こいつら元は大神官様だからなあ。光属性攻撃にも耐えられる」フフ、と嗤うギズロット。ギズロットの言う通り、このギガントサイクロプスには光属性攻撃への耐性もある。しかもこの魔物は知能が高いので、隷属の効果が用いて命令をする事が出来るのだ。
「これで準備は整った。では、これから王城に向かうか」そう呟きながらギズロットは、巨大な二体の魔物を従え、スラム街から距離のある、遠くにそびえ立つ王城に向かった。
明日も更新出来るかな?^^;
これから不定期更新になります。
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