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メディー混乱始まる

いつもお読み頂き有難う御座いますm(__)m

ブックマークまでして頂いてお待ち頂いている方々、感謝ですm(__)m

いつも八時更新していたのですが、寝坊してしまいました^^;

 ※※※


「中々壮観な光景ですなあ」「いやはや全く」


 スラム街の奥にある、ギズロットの隠れ家の一番高い窓から、逃げ惑う人々と、それを空から追いかけていく魔物達を、暢気に見物している白服の男二人。


「しかしまあ、奴らは私達のコレクションでもあったわけだから、ちと勿体無い気もするが」


 確かに、とヘゲナーの言葉に、やや口惜しそうに返事をする、総神殿の大神官メズベル。だが、ギズロットは何の事か分からないようで、コレクション? と二人の会話を聞いて呟いてしまう。


「要するに、隷属の腕輪を付け言う事を聞くようにしていた女達は、我々のお気に入りだった、という事ですよ」ヘゲナーの説明に納得したギズロットだが、それと同時に神官という者達の性癖に、改めて呆れた表情になる。


「でもまあ、隷属の腕輪を付けたまま、魔薬を使うとは、考えましたな」そして感心するようにヘゲナーが話す。ヘゲナーの言う通り、今回ギズロットが隷属の腕輪を付けたままの、元孤児の女性達に魔薬を使ったのには理由がある。


 魔薬を使い孤児達を魔物にし、メディー内で暴れて貰う。これがギズロットの目的だった。だが、単に魔物になっただけでは、メディーの外に出ていってしまう可能性がある。ギズロットの目的はメディー内を混乱させる事なのだからそれだと困る。だが、隷属の腕輪を付けていれば、魔物化しても隷属の効果は残る。要する命令する事が出来るのである。但しそれは、命令を理解出来る知能があれば、の話なのだが。そして使用した人間は全て女性という事もあり、ギズロットも隷属の腕輪が壊れない魔物になるよう、魔薬を調整し、雌しかいない上、人族の言葉を理解出来る、ハーピーとキラービーの群れが出来上がった、というわけだ。


 アクーの外れのヌビル村辺りで始まった魔薬の研究開発は、現在使用者の意思で、ある程度出来上がる魔物を選定する事が出来るようになっているのである。


 そしてこのメディー内へ魔物を放つ計画は、本来ドノヴァンと実行する予定だったのだが、それは叶わなくなり、そしてギルバートに協力を要請しようとしてロゴルドにギルバートを呼び寄せるよう、ギズロットは指示していたのだが、ヘゲナーとメルベルがこうしてやってきたおかげで、ギルバートを介さずとも、当初の目的を達成できたのである。


 そのギルバートは、メディーには入る事は叶わないので、ギズロットにとっては結果的に良かったのだが。そしてその事はギズロットは知らない。


「そういやプラム殿がおりませんが?」ふと気付いたメルベルがギズロットに質問する。


「ああ。彼は今、魔族の都市に連絡して貰うため席を外しています。計画を実行したという報告のためにね」


 なるほど、と答えるヘゲナー。


「ところで、ギズロット殿は、メディー内にこうやって魔物を放って、何をしようとしているのですかな?」言われた通り、隷属の腕輪を使っていた女性達を魔物にはした。それは自身の保身を約束して貰ったからだが、理由までは聞いていなかったヘゲナー。彼やメルベルにとっては、メディーがどうなろうとどうでも良い。そのうち神殿妃の息子レムルスが、自分達を調査しに来るだろう。そうなったら捕まる可能性が高いので、土の都市フームか風の都市ウェンスの神殿にでも身を隠そうと思っている。


 なので、自分の身の安全さえ確保できれば、別にどうでも良かったのだが、気持ちが落ち着いたからだろうか、今更気になったようだ。


「……」だが、何の気なしに質問したヘゲナーの問いに答えず、黙って窓の外を見ているギズロット。訝しがるヘゲナーに、「まあ、それはおいおい説明しますよ」とだけ伝えた。


「こいつらも後で利用させて貰うわけだから、余計な事は言わない方がいい」二人に聞こえないくらいの声で小さく呟くギズロット。そして、二人に真意を気づかれないよう、再び正面を見据えニタァと口角を上げ怪しく嗤った。


「ん? 魔物達がスラム街の入口辺りの空中で動きを止めているようですな」メルベルが指さしたその先を見ると、確かに魔物達はメディーの人達を襲わず、空中で固まっているのが見えた。


「うーむ。一応命令したのは、人を襲え、という事だったのだが、もういなくなったようですな。思っていた以上に、逃げ足が早かったようで」


「まあ、ハーピーやキラービーは、元々人間の居場所を察知する能力がありますから、勝手に人が集まっているところに向かうでしょう」ギズロットの説明に、なるほど、と納得した様子の二人。


 ※※※


「隷属の腕輪? じゃあ、この魔物達って……」ナリヤの言葉にケーラが反応する。


「多分、元孤児達だと思うわ」その問いに皆が思っていた事を代表して、リリアムが答える。


「そんな……。嘘だろ? ただでさえ酷い扱いを受けていた人達なのに。更に人を喰らう魔物にされてしまったって事なのか?」


 ついさっき、魔物達によって人々がが喰われ肉片が落ちてくる様を見て、ついその場で吐いてしまっていたレムルスが、四つん這いのまま青い顔を上げ、驚愕し声を上げた。


「そういう事になるわね」未だ空中で羽音をバッサバッサ、ブブブブと立てつつホバリングしながら、こちらの様子を伺っている大勢の魔物達を見上げ、悔しそうな顔をしてリリアムが答える。神官達の事だ、きっと選りすぐりの美しい女性達だったであろうが、今はその面影は微塵もない。醜悪な魔物の姿だ。


 そして、先程ケーラを襲った時以外は、攻撃を仕掛けてこないのも気になっているリリアム。


「……魔物になってしまったら、元に戻す方法はないんだよな」健人も辛そうな顔で呟く。ついさっき、元々人間だったであろう、数匹のハーピーを倒してしまった。その事を悔やんでいるようだ。ケーラを守る事を優先したので、隷属の腕輪を付けているかどうか、確認はできなかったから仕方ないのだが。そして、魔薬に侵されると解除方法がない事を、誰よりも一番良く分かっている健人。ふと、かばんから顔だけ覗かせている白猫をチラリと見やる。


「一体誰がこんな酷い事を」歯ぎしりしながらケーラがそう言うと、空中でずっと待機していた魔物の集団は突如二手に分かれ、そして何処かへ向けて飛んでいった。その方向はメディーの西方面と中央方面のようだ。


 不味い、と思った健人は直ぐに「アクセル」「ブースト」を唱える。


「タケト! どうするの?」その詠唱を聞いたケーラが、移動を開始しそうになっている健人を呼び止める。


「とりあえず俺は西の方へ飛んでいった魔物達を追うよ。多分人を襲うために移動したんだと思う。中央にはギルド本部があるからあちらで対応して貰おう。ナリヤさん、レムルスさんと一緒にギルド本部へ行って貰っていいですか?」健人はケーラの問いに答えながら、ナリヤとレムルスに指示をした。


 分かった、とナリヤは返事し、ようやく回復したレムルスと共に、孤児院横に繋いでいた馬の元へ走った。


「リリアム、ケーラ。後から俺のところへ来てくれ。先に行く。場所は後でケーラに念話で連絡するから」


「分かったわ」「了解だよ」


 二人に声を掛けた後、健人は開放した能力そのままに、屋根に飛び上がりつたいながら魔物達の群れを追いかけた。


「よし真白! 奴らが移動する方向を教えてくれ!」『了解だにゃ』


 魔物になってしまったあの人達を元に戻す事は出来ないが、これ以上被害を出すわけには行かない。そう思って、空を猛スピードで西方面へ向かった。


「とりあえず私達も急ぎましょう」リリアムの声かけにケーラは頷き、ナリヤ達同様、急いで馬を繋いでいた孤児院裏手に向かい、健人の後を追った。


 ※※※


「た、大変だああーーーー!!」


 バン! と勢いよくドアを開け、はあ、はあ、と息を切らせながら、警備隊の一人が焦燥の表情を浮かべギルド本部に入ってきた。


「はぁ、はぁ、 キロット、と、グンター……急いで、ギルド長を」丁度目の前に、大神官達をギルド職員に引き渡した後の二人を見つけたその警備隊の男は、息を切らせながら声を掛ける。


「ギルド長? 何かあったのか?」


「……大勢の、魔物が、メディーの、スラム街に、出たんだ」余程慌てていたのだろう、未だ息が切れたままの警備兵の男。


「何だと?」その言葉に、ギルド本部内にいた大勢の人々が騒然となる。王都メディーの中に魔物がいるなど、五年前の魔族との戦いでこの都市を攻撃してきた時以来だ。


 その話を端で聞いていたギルド職員ヤックムが、先立ってギルド長の部屋に走っていった。それを確認したキロットとグンターは、ようやく落ち着いてきた様子の警備隊の男に声を掛ける。


「どういうこった?」


「分からない。そしてそいつらはこちらに向かってきてる」


 その言葉を聞いた二人はとりあえずギルド本部から表へ出る。すると、


「うわあああ!! 助けてくれえ!!」「ああ、いやああ!」「ママー! ママー! 怖いよー!!」


 スラム街の方向から、多くの人々がこちらに向かって、各々叫びながら逃げてきていた。その奥の空中には、警備隊の男が言った通り、多くの魔物達が見えた。


「な! 何だありゃ!」「あれは……、ハーピー? キラービーも? なんであんな高レベルの魔物がこんなとこに?」驚くキロットとグンター。


「でもグンター、何かおかしいぞ? 色が紫色じゃねえか」本来ハーピーは白い毛色、キラービーはハチの縞模様のはずだ。


「……あれが、ケーラが言っていた、魔薬を使った魔物なのか?」


 二人が驚いた顔で話している最中、魔物達は次々と逃げ惑う人々に追いつき、捕まえて空中へ浮かび上がる。


「チィ! 不味い! グンター行くぞ! 考えるのは後だ」「ああ!」


 ハーピーとキラービーを知っている二人は、浮かび上がった後何をするか知っている。彼らは背中の翼をバサッと大きく広げ、羽ばたいて空に浮かんだ。そして一気に加速し、正にこれから捕まえた人を喰らおうとしているハーピーの元へ急ぐ。


 向かいながらキロットは、背中に折りたたんで取り付けていたハルバードの柄を伸ばして構える。そして全長2m程になるそれを、ハーピーめがけてヴォンと振るった。ゴオという風切り音と共にハルバードが横薙ぎに振られる。が、すんでのところでハーピーはそれを躱した。だが、急に攻撃された事で、つい捕まえていた人を離してしまった。


「しまった!」ここは上空15m辺り。ハーピーに喰らわれなくとも、この高さから落ちると死んでしまう。


 だが、それを後からギルド本部の中からやって来た他の冒険者が、ギリギリのところでキャッチした。


「おーい! 落ちてきた人の事は任せろー!」そして空中で安堵の表情を浮かべるキロット達に呼びかけた。彼らに了解の合図で手を振る二人。


 それから地表にいる冒険者達も各々戦闘体勢に入った。魔法を使うものはそれぞれ、火や水、風や土魔法を詠唱し、空中の魔物達へ攻撃を仕掛ける。弓を使える冒険者達も同じく空中に向けて放つ。


 そして冒険者達の戦闘が開始されたのを確認したキロットとグンターは、未だ人々を捕まえている魔物の元へ向かっていった。




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