しぶしぶ說明
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「はあ……めんどくさ」
ものっそいダルそうに、深い溜息を吐きながら呟くケーラ。とりあえず表での騒動が落ち着いたので、再度宿に戻って皆で一緒に昼食を取ろうという事になった。それに不満なのがケーラである。未だ健人が心配で、本当なら遠慮なくくっついていたいのに、それが出来ない。さすがにキロットとグンター、幼馴染が二人いるのにイチャイチャするのは恥ずかしいようである。だからご機嫌斜めのケーラ。同じくリリアムも、先程健人との仲がバレてしまい、どうも気不味いので遠慮している。
とりあえず、こうなってしまったので仕方なく、しぶしぶ掻い摘んで、キロットとグンターに、健人との馴れ初めを話しているケーラ。健人がケーラに訓練で打ち勝ち、ヴァロックに修行して貰っていた事等、人族でも相当強いと話していると、
「はあ? この人族が強いだってえ?」ああん? てな感じでズズイと健人に詰め寄るキロット。当然、すぐにケーラがスパコーンするのだが。
「何言ってんの? さっき本気で殴る蹴るしてたの、全部躱されたくせに」ちょっと見下したような表情で突っ込むケーラ。そのツッコミにギクリとするキロット。
「確かに、あの動きは俺も見えなかったな」「ああ、私もだ。タケト。本当強いんだな」
「いや。たまたまです」悔しそうに健人を睨むキロットに、わざと気付かないフリをしながら、グンターとナリヤから褒められ謙遜する健人。
「それよりタケト、リリアム王女とも交際しているのか?」今度はナリヤが健人に気になっていた事を聞く。少し威圧した目で見つめながら。
「「……はい」」聞かれたのは健人なのに、リリアムも一緒に小さくなって返事する。
「なあ、ケーラ。ほんっとー、に、タケトでいいのか? いくら複数交際が認められている世の中とは言え、お前は立場ある身なんだぞ? しかももう一人の相手がリリアム王女だなんて……」
そもそも、人族と交際するだけでも大問題なのに、健人には更に他に交際している女性がいて、しかも相手はリリアム王女だというではないか。一介の冒険者が王族と交際しているなどと、それだけでも常識的にありえない。普通ではない。その事はいくら魔族といえど分かっているナリヤ。
なので、ナリヤが気になったのは、ケーラが恋心に絆されて、その現実を直視していないのではないか、という事だ。
「そりゃあ、本当はボクもタケトを独り占めしたいけど、タケトにとってリリアムも必要みたいだから」仕方ないよ、と肩を竦めるケーラ。今日の健人の様子を見て、リリアムに対する考え方を少し改めたケーラ。当然ケーラは健人を生涯支えていく気持ちではあるが、先程のように健人が情緒不安定になった時、一人より二人いた方が、健人をより落ち着かせる事が出来るだろう、と、リリアムの必要性も感じていたのである。
そして更に、健人には猫獣人さんもいるのだが、それについては暗黙の了解で黙っている事にした三人。その当事者の白猫は、既に健人のカバンから出て、我関せずってな感じで、床で昼食の肉にありついているのだが。
「な、なあ。タケトだっけ? リリアム王女がいるんなら、ケーラ譲ってくれてもいいよな?」そんな女々しい事を健人にお願いするキロット。当然ケーラは呆れ顔。これ以上無いほどの呆れ顔。リリアムも呆れ顔。ナリヤもグンターも……以下同文。
「アハハ。さすがにそれは無理だなあ」「何でだよ! お前贅沢過ぎんぞ!」苦笑いしながら拒否する健人に対し、突っかかるキロット。そしてまたもやケーラにスパコーンされてます。懲りてません。
「もう死ね! ウザい! 消えろ!」悪態つきまくってキロットを完全否定するケーラ。そしてスパコーンされ頭を擦りつつ、しょぼーんとなりながら地べたに正座する、身長190cmの筋骨隆々のキロット。背中の黒い翼が、またもやシオシオ~と昆布みたいになってます。その横では我関せずってな感じで、肉を旨そうにパクパク食べている白猫。
「まあまあケーラ。せっかくの同郷なんだからそんな邪険にしなくていいじゃないか」
「むう。タケトがそう言うなら……。ほら立ちなさい! さっさと座る!」仕方無さそうにキロットに声を掛けるケーラ。
「まああいつらのコントはともかくだ、今日ギルド本部に行ってきたんだが、やっぱり紫の塊、冒険者によって回収されていたみたいだ。ギルドでも扱いに困ってるって言ってたな。ざっと依頼が貼ってある掲示板見てみたが、以前より魔物討伐が増えていたしな」
「やっぱりそうですか。リリアム、ケーラ。後でギルドに行こう。報告もしないといけないから」ナリヤからの情報を聞いた健人は、リリアムとケーラに声を掛け、二人は頷いた。
※※※
メディーの都市の南側にある、とある貧困街。メディーほど大規模な都市であれば、こういった貧困街も存在する。商売に失敗した者、一般的な生活に馴染めず娼館で働く者が主に暮らしている。そして、犯罪に手を染める者達の受け皿ともなっている。この貧困街には、バラック小屋のような、木の板を張り合わせただけの簡素な家が密集しており、近くには娼館やカジノ、低料金で飲めるバーがいくつかある。余り宜しくない環境なので、メディーの犯罪の温床にもなっている。五年前の魔族との戦い以降、比較的平和となっても、窃盗や殺人などの犯罪が無くなる訳ではないのだから仕方ないのだが。
そんなバラック小屋が立ち並ぶ、貧困街の奥の方。同じく外見はバラック小屋だが、内装はまるで高級宿のように立派な内装になっている、とある家の一室に、二人はいた。
「……うーむ、ドノヴァンはどうやら失敗したみたいだね」カラン、と氷の入ったグラスを傾ける、豪華なソファに座る魔族の幹部。
「王妃が死んだ、という話は、一切聞こえてきませんもんね」それに答える、少年のような面持ちの魔族。その幹部の向かい側の椅子に座っている。
「しかしおかしいな。ドノヴァンはデーモンになったはずなんだが。しかも光属性だから王族でも倒せないはず……。王城内にあれだけの魔物を倒せる者がいるとは思えないんだけどねえ」
「デーモンにならなかったとか?」「いや、それはあり得ない」魔族の幹部ことギズロットは、少年のような見た目の魔族、プラムの言葉を即答で否定した。
「それにしても困ったねえ。このまま計画を中止するわけにもいかないし」はあ、とため息をつくギズロット。そしてグラスに入った酒を一気に煽る。
「どうします? ドノヴァンの部屋から回収してきた魔薬もそのままですが」そう言ってチラリと部屋の隅に纏めて置いてある、大きな袋に目をやるプラム。
「ギルバートを頼るか。あの男に力添えを頼むのは気が進まないんだが。まあ、勇者をどこまで洗脳出来たか、それも確認したいし、声を掛けるには丁度いいのかもね。よし、とりあえずロゴルドに連絡してくれ」
かしこまりました、とプラムは答え、立ち上がってギズロットに一礼し、踵を返して、綺麗な内装を施した部屋から出ていった。
「そういや、あの時私は王妃に顔を見られていたな。私の事を知る由も無いだろうから、大丈夫だとは思うが……」





