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本当のハーレムとは、本来辛いもの

いつもお読み頂き有難う御座いますm(__)m

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※この更新後、五日程お休みします。

「ハハ……。カッコ悪いとこ見せてしまった」


 グスっと鼻を啜り、グイと涙を手で拭いながら、恥ずかしそうに呟く健人。


「フフ。そんなタケトも可愛いわよ」「そうだよ! そういうとこもっと見せて見せて!」


 優しい佇まいのリリアムと、元気っ子ケーラがそれぞれどこか嬉しそうに健人に話しかける。元々責任感が強く、強がりで普段弱みを見せようとしない健人の、弱っているところを見る事が出来のが嬉しかったようである。そんな二人に苦笑いする健人。


「でも、無理してたのね」「うん。そうだね。我慢してたんだね」そしてすぐに二人は健人に優しく寄り添う。


「……そうみたいだ。俺も無意識だったみたいだけど」そんな優しい気持ちを与えてくれる二人に感謝しながら、ふと自分のカバンを見る。そこには、申し訳なさそうに、顔だけ出してずっと様子を見ていた白猫がいた。それを見た健人が、頭を掻いて申し訳なさそうに頭を下げてしまう。


 健人は真面目で正直な人間なので、三人の彼女それぞれ、真正面から真剣に向き合ってきた。一人にだけ愛情を与えれば良かった、前の世界の住人の健人にとって、三人も同じだけ愛する者がいる事が、本人が気付かないうちに相当負担になっていたようである。


 しかも三人とも相当な美女。周りからすれば羨ましい事この上ないのだが、それだけに本気な健人。一人一人に全力で愛情を注いでしまう。それが一人だけならまだしも、三人平等に全力で本気である事は、健人自身が思っていた以上のストレスだった。


 真白がいない今だからこそ、リリアムとケーラだけなのでまだ耐えていられたのだが、改めて真白の事を考えて、やはり彼女も大切だと思った健人。だからこそ、自分の気持ちを一体どこに落ち着ければいいのか、分からなくなったのである。前の世界ではあり得なかった贅沢な悩みなのだろうが、複数の女性と付き合うという経験がない健人は、三人とも全力で愛情を注いでしまう。不器用で真面目だからそうなってしまうのだが。


「マシロさんの事は、とりあえず棚上げにしていたらどうかしら?」


「そうだね。ボクもそれ賛成。今すぐ答えを出さなくても、きっとそのうちどうすべきか分かるようになるよ」


「……」二人の提案に即答できない健人。そもそも何が最善なのか分からない。


 ……リリアムとケーラからの告白を受け入れなければ良かったのだろうか? でも今自分は、この二人のおかげで相当幸せだ。そしてありがたい事に、この二人も幸せだと言ってくれている。真白も大事だったが、この二人も同じくらい大事だ。三人同じくらい大事? そんな器用な事、これからも自分に出来るのだろうか? 


「それが、この世界の常識なんだろうな……」二人の提案に返事せず、ふと自分の考えていた事が口に出た健人。


「そっか。タケトの前の世界だと、恋人は一人だけだったんだね」


「贅沢……と言うには、タケトには失礼よね。でも、マシロさんと、私とケーラを同じくらい大事に考えてくれるタケトだからこその悩みなのね」


 リリアムの言う通り、ぜいたくな悩みだ。それは分かっているけど、俺のキャパシティが足りないのも事実なんだ。真白以外のこの二人を適当に扱っていれば、気軽に考えていれば楽だったかもしれない。真白の代わりくらいに気軽に付き合っていれば、こんなに悩む事なかったかも。


 前の世界で浮気でもしておけば良かったのかもなあ。そしたら、もっと軽い感じでリリアムとケーラと付き合えたかも知れない。


 ……いや、やっぱりあかんわ。俺にはそんな適当な事、この二人には出来ひん。


「「愛されているんだ」のね」久々の関西弁で健人が一人思案している内容を理解したかのように、二人同じ言葉をハモる。


「タケト。ボク支えるよ。一緒にタケトの悩み、乗り越えようよ」


「そうね。一人で抱え込まないで。私は正式にあなたの伴侶になったんだから。もう妻として扱ってくれていいんだから。他人じゃないのだから」自分で言いながら恥ずかしそうに顔を赤らめるリリアム。


「……ちょっとリリアム。聞き捨てならない」私の方がリードしているのよ、と言わんばかりのリリアムを、ジロリと睨むケーラ。


「あら。言ってなかったかしら? 既にお父様お母様公認なのよ?」そんなケーラに対して、どこか自慢げにフフンと鼻で笑うリリアム。


「……よし、タケト。今から魔族の都市行こう! 私もタケトの、その、あの、……奥さんになる事パパに言うから!」そして(奥さん)と言ってしまい、勝手に恥ずかしそうにするケーラ。みるみるトマトのように顔が真っ赤になりました。


「何言ってるの? まだまだメディーでやる事沢山あるでしょう?」


「でもでもだって! リリアムだけズルい! ボクもタケトに愛してるって言って貰った! 後はパパの許しだけ貰えばいいんだもん!」


「そもそも、魔王の許しを貰えると思ってるの?」


「やってみないと分からないでしょ! リリアムだってドキドキしてたくせに! ガジット村ではあんなにオドオドしてたくせに!」


「はぅ! そっ、それは、そうだけれど」図星とつかれビクっとしてしまうリリアム。


 組んでいる腕を離さず、自分を間に挟んでやいのやいの言い合いしている二人が可笑しくて、つい笑ってしまう健人。それと同時に、やっぱり自分が、この可愛くて愛しい二人を受け入れたのは間違いじゃなかったと改めて思った。


「ハハハ。二人共大好きだよ」そして本音がつい出てしまう健人。


「え? 何? どうしたの?」「どうしてこのやり取りでそうなるのかしら?」優しく二人の頭を撫でる健人に、戸惑うケーラとリリアム。


「決めた。神獣完全化はやめる。最初の予定通り真白を元に戻す。そうするよ」


『……いいのかにゃ?』ずっと黙って三人の様子を見てた白猫が、初めてここで念話で声を掛けてきた。


「ああ。でも、お前が消えてしまうのか」


『それは全然構わないにゃ。私は本来存在しなかったにゃん。それよりも神獣の力が消えてしまうのが困るにゃ。こんな風に念話したり、危機察知が使えなくなるにゃ』


「いいよ。俺はやっぱり真白に会いたい。この二人がいても関係ない。真白は真白だから。この世界に来てから、真白とはそんな長い間一緒じゃなかったとしても、その時間は大事だったから」


「ごめん。俺やっぱり二人共大事だ。きちんと向き合えるよう、頑張る」


「……違うよタケト」「そうよ。そうじゃないわ」


「頑張らないで。苦しいなら遠慮なく相談して。ボクに沢山甘えて。もっと弱いところ、本音を見せて」


「無理してはまた同じ事で悩むわよ。もっと頼ってほしいの」


「……ありがとう」


『それでいいのかにゃ?』「ああ」念話で健人に確認した白猫は、おもむろにリリアムの側に駆け寄った。


『リリアム。私にホーリーリフトを唱えるにゃ』『え?』


 突然の白猫からの話に戸惑うも、とりあえず言われた通り「ホーリーリフト」と白猫に唱えるリリアム。すると、白猫の姿が消え、久しぶりのあの、白い猫耳に白い尻尾が付いた、懐かしの彼女が全裸で顕れた。


「「「……」」」驚く三人。


「……にゃ? え? あ、あれ? 健人、様?」


「……ま、真白。なのか?」


「ふにゃあ……。健人様あ……」健人の顔を見た真白の目から、どくどくと涙が溢れ出す。


「真白!」「健人様!」そして抱き合う二人。


「ああ! 真白、真白、真白ぉ……」「健人様、会いたかった、会いたかったにゃ……」


 号泣しながら強く抱擁しあう二人。


 だが、すぐに真白の体が透けてきた。


「え?」「にゃ? なんにゃ?」


 そして、真白はそのまま消えてしまった。真白がいた場所には、何か言いたげな白猫が佇んでいた。



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