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涙の理由

いつもお読み頂き有難う御座いますm(__)m

ブックマークまでして頂いてお待ち頂いている方々、感謝ですm(__)m


「遅いわね」「何やってるんだろうね」


 リリアムとレムルスが、未だ応接室から出てこない健人を気にかけている。すぐに済むだろうと廊下で待っていたのだが、かれこれ三十分は経過しているのではないだろうか。


 気になったリリアムが、意を決して応接室のドアをノックしようとしたところで、ドアが開いて健人が白猫を抱えて出てきた。


「ごめん。待たせて」その目は真っ赤に腫れ、頬に涙が伝った跡があるのを気にも留めず、謝罪する健人。


「……大丈夫なの?」当然、只事ではなさそうな健人の様子を心配するリリアム。そして後ろに控えているレムルスも、不思議そうな顔で、健人を見ている。


「リリアム。ちょっとケーラを交えて話がしたいんだ」目は赤いままで、それでも真剣な眼差しでリリアムに話しかける健人その様子を見て、大事な話だというのはすぐ気付いたリリアム。


「あの、レムルス。申し訳ないのだけど、後でまた合流でもいいかしら?」


「ああ。どうやら込み入った話があるみたいだね」リリアム? って今呼び捨てしたよね? と首を傾げながら。


 だが、疑問を感じたレムルスを気にする様子もなく、申し訳ありません、と健人は一言謝罪し、そしてリリアムを連れて、王城の外で出るよう誘った。


「レムルス。また夕方頃総神殿に行くわ」早歩きで王城の外に出ようとする健人を慌てて追いかけながら、リリアムがレムルスに声を掛ける。その声かけに分かった、と手を振りながら返事をするレムルス。


 ※※※


 ブルル、と預けていた馬が嘶くと同時に、その鼻から白い息が漏れる。もう冬はかなり深まっており、相当寒い季節。健人は厚手の麻製のコートを羽織り、リリアムは淡いピンクのガウンを羽織って馬に跨がる。因みにリリアムは、王城内にいた時のようなドレスではなく、冒険者スタイルなので、今はショートパンツにレギンスを履き、靴もパンプスではなく、冒険者用のブーツである。


 城門の警備兵に一礼し、馬の手綱を握って駆け出す二人。


『ケーラ。今大丈夫か?』そして馬を駆りながら、念話でケーラに声を掛ける健人。白猫は健人のカバンの中に丸まっている。


『タケトー! おはようー! 大丈夫だよー! 早く会いたーい!』そして相変わらずの元気一杯テンションのケーラ。先日健人に愛の告白をされ、完全ラブラブモードなのだから仕方ないのだが。


『ちょっとリリアムを交えて話がしたいんだ。ナリヤさん外して貰えるかな?』


『え? うん。了解だよ』様子がおかしい? 念話ながらも健人の真面目な、やや沈んだような念話に、首を傾げながら返事をするケーラ。


 そして三十分程馬を駆って、宿泊している宿屋の前に到着した。それを窓から確認したケーラは、ダッシュで下に降りていった。


「タケトー!」馬を預け、入り口に入ろうとしたところで、健人の胸に遠慮なくダイブするケーラ。どこか沈んだ様子の健人には、まだ気付いていないようであるが。


「……ハハ。ほんと、ケーラはケーラだな」やっぱり可愛いな。そんな事を思いながら、それでも憂いの表情は崩れず、優しくケーラの頭を撫でる健人。


「何それ?」嬉しそうにするも、健人の顔を見てハッとする。明らかに元気がない様子にそこでようやく気付いたからだ。若干目が赤いのも気になった。そしてチラっとリリアムを見るケーラ。目が合ったリリアムは、黙って頷く。


「何かあったんだね」


 ※※※


「……何言ってるの?」「……」


 わなわなと震え、明らかに怒り心頭の様子のケーラ。一方、リリアムは黙ったまま無表情で健人を見つめている。今三人と一匹は、健人とケーラが泊まっている宿の部屋で話をしているのだが、健人の発言のせいで深刻な雰囲気である。


「前、ボクに愛してるって言ってくれたよ?」


 ケーラは涙目になりながら、絞り出すように掠れた声を出す。健人から発せられた言葉は、それ程ケーラにとって衝撃的なものだったからだ。勿論リリアムにとっても。だが、ケーラのそんな様子とは違い、腕を組んで微動だにしないリリアム。悲しそうな表情ではあるのだが。


「……ごめん」


「謝罪なんて要らない!」声を荒げてケーラが健人の首を抱きしめるように掴みかかる。


「ボクの中にはタケトしかいないんだよ? それなのにそれなのに……、そんな……」


 掴みかかられても、何も抵抗をせず、されるがままになっている健人。


「勝手な事言ってるのは分かってる」


「そうだよ。勝手過ぎるよ」堪え切れず、紅く美しい瞳から涙を零れ落としながら、健人を睨むように上目遣いで見つめるケーラ。


「でも、俺もそんな強い人間じゃないんだよ。分かってくれ。一回リセットして、もう一回真白の事と、二人の事を考えたいんだ」


「ねえ。それって私達と別れないと無理なの?」そんなケーラと健人の様子を傍で腕を組んで見守りながら、リリアムが淡々と質問をした。


 健人は、先程の白猫との話で、一旦関係をリセットし、真白、そしてリリアムとケーラについて、改めて考えたい、そう思ったのだ。だから今、二人に別れを告げたのである。


「ボク達も当然、マシロさんを元に戻す協力するよ? ねえ、お願いだから、冗談でも別れるなんて言わないで。そんな怖い事言わないで」ケーラは未だショックを隠しきれない様子で、縋るように健人から離れない。頬を涙が伝いながら。


「とにかく、事情を話す方が先なんじゃないかしら?」白猫からある程度事情を聞いていて、大体の理由が分かっているリリアムは未だ冷静な口調。それでも、やはり健人から別れを告げられた事はショックなので、彼女の蒼く美しい瞳も、抑えが効かないように潤んではいるのだが。


 ※※※


 別れよう、という健人の言葉が相当ショックだったようで、ケーラはギュッと健人の腕に絡みついて離れようとしない。リリアムもやっぱり健人からの、別れる、という言葉は辛く、怖かったので、ケーラの反対側の健人の腕に絡まっている。


 そしてそんな美女二人に腕を絡ませている状況で真面目に、真剣に、真白の事について自分の考えを話す健人。


「神獣になって人化出来るようになれば真白が消える。そして真白は自分が消えても、今は俺にはリリアムとケーラがいるから、自分は必要ないと思ってるって言うんだ。神獣でも俺を守れるし、獣人の真白より役に立つからって。だから、元に戻る必要がないって言うんだ」


 別れようとは言ったが、二人の事は当然ながら心底大事で、強い想いを寄せている健人は、慈しむように二人の頭に手を置いて話している。だが、その瞳は、何かを見据えているように、何もない天井をずっと眺めている。


「俺も正直、分からないんだ。真白には戻って欲しい。でも、リリアムとケーラ、二人が大事なのも間違いないから」


「言いたい事は分かった。でもそれはそれとして、タケトに聞きたい。タケト、ボクの事嫌いになったの?」答えは分かっているはずのケーラだが、それでもうるうると紅い瞳が震えている。まるで怯えるかのように。


「そんな訳ないし、そうじゃないんだ」だが、そこで虚空を見ていたところから、ケーラを見て、即否定する健人。


「じゃあ、もう別れるなんて言わないで。嫌だよボク。嫌だよ……」そして健人の腕を更に強く抱きしめ、嗚咽しだすケーラ。相当ショックだったようである。


「私の事も、愛してくれているでしょ?」一方、昨日家族に既に紹介を終え、公認の仲となったリリアムは、ケーラよりどこか余裕があるようで、ケーラと同じように腕を絡ませてはいるものの、確信めいたように確認する。


「勿論だよ。だから悩んでいるんだ」今度はリリアムを見つめ即答する健人。


 ケーラと同じく、より一層強く健人の腕を掴むリリアム。だがケーラとは違い、美しい碧い瞳に若干涙を溜めつつも、強い目で健人を見据える。


「想い合っている同士なのに、別れるなんておかしいわ。昨晩も話したように、マシロさんを元に戻す手助け、私もするから」


 二人の想いの強さを改めて感じた健人だが、そこで我慢出来なかったようで、無意識にボロボロと涙を零し始めた。


「……俺、俺、どうしたらいいんだよお……。もう、わからないんだよお……」


 健人が堪え切れず泣き出した事に、驚いた表情になる二人。つい二人して見合ってしまった。健人のそんな、普段見せた事のない弱い姿にためらうリリアムとケーラ。だが、二人は握りしめていた腕の力を緩め、今度は黙って優しく健人に寄り添った。


「ごめんね。ボク、タケトの苦しみ分かってあげられなかった」そして健人の頭を抱きしめるケーラ。


「ごめんなさい。私も、タケトが思い悩んでいたの、気付いてあげられなかったわ」そして健人の胸にそっと寄り添うリリアム。


「だから、遠慮なく甘えて」「ええ、そうね。そういうところも、大好きなタケトがなんだから」


 自分を想ってくれる二人の美女に優しく寄り添われ、まるで堰を切ったように、遠慮なく嗚咽し続けた。二人に甘えるような様子で。



ようやく中盤超えた辺りまで更新できました^^;長くて申し訳ないですm(__)m

今後も色々な出来事が彼らを待っていますので、気長に読んで頂けたら幸いです。

てか、そろそろ感想とか感想とか感想とか、贅沢言うとレビューとか欲しいよー(´;ω;`)ウゥゥ

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