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レムルスと合流。そして思った以上に深刻な様子

いつもお読み頂き有難う御座いますm(__)m

ブックマークまでして頂いてお待ち頂いている方々、感謝ですm(__)m

※※※


「おはようございます」緊張した面持ちで、それでも丁寧に一礼し挨拶をする健人。


「ああ。おはよう」そんな健人に対し、どこか虚ろげな表情で挨拶を返すメルギド。娘と昨晩共にいたこの男に対して、どう接していいのか困っているようである。


「ウオッホン! タケト。早速だがここに来て貰ったのは、お前に話があっての事だ」そして何となく微妙な雰囲気の二人を見据えながら、柄のない眼鏡をクイと上げ、上目遣いで、健人にやや睨みをきかせながら声を掛けるビーナル。


「あ、はい」そして肩身が狭い思いをしながらも返事をする健人。正直早く王城から出ていきたい、そう思っていたりする。


 今朝朝食の前に、謁見の間に来るように言われ、一人でやってきていた健人。リリアムとの交際については、とりあえず認めて貰えたものの、言ってしまえばここ王城は(彼女の家)みたいなものである。そこに昨晩、娘の部屋に泊まってイチャコラして、翌朝父親と挨拶するという、前の世界であっても相当とんでもない状況なので、肩身が狭いのは仕方ないのである。


「シーナ様のご子息のレムルス様と、神殿の調査をしてほしいのだ」そんな居心地悪そうな健人を構いもせず、用件を伝えるビーナル。


「昨日話していた件ですね」シーナ様のご子息のレムルス様? という事は陛下の妾の子、と言う事か、と頭の中で考える健人。 


 そうだ、と返事をしながら話を続けるビーナル。


「お前は魔薬の件に相当深く関わっておるからな。魔族のケーラと共に、神殿内部の調査をして貰いたい。護衛も兼ねておる」


「護衛?」首を傾げる健人。魔物がいる洞窟や森に行くわけでもないのに?


「大方わかっておろうが、神殿は伏魔殿だ。シーナ様は欲にまみれた奴らからすると疎まれているのだ。そのご子息が今回、孤児院の調査をする事になったのでな。奴らが何をしてくるか分からん。そのためだ」


「私も同行するわ」そこへ遅れてやってきたリリアムが、話に加わった。


「おはようございます王女殿下。ですが、わざわざご同行する必要はないかと」ビーナルはリリアムに恭しく一礼しながら挨拶し、リリアムに返答した。


「私は王女である前に冒険者なのよ? そして私も魔薬と隷属の腕輪の件に深く関わってきているわ。健人とケーラと共に」


 しかし、とビーナルが反論しようとしたところで、メルギドが言葉を遮った。


「そうだな。リリアムが行った方が話が早いだろう。王族の立場の者が調査に加われば、神官共も無碍に出来まい。更にリリアムが言う通り、冒険者としても実力をつけているみたいだからな。大丈夫だろう」


 少し不満気な表情のビーナル。メルギドの言っている事は分かる。だが、ビーナルとしては、出来る限り、リリアムには危険な事に関わってほしくないのである。ビーナルはリリアムが王城に帰ってきた時点で、彼女の冒険者としての活動は終わっている、と思っている。王女にとって冒険者としての活動は、もう必要ないはずだからである。


「王女殿下。僭越ながらご確認致したく存じます。王女殿下は、これからも冒険者として旅を続ける予定で御座いますか?」


「ええ、勿論よ」当たり前よ、と言わんばかりに返事をするリリアム。


「陛下。それで宜しいのですか?」驚いた表情でメルギドに確認するビーナル。


「我としては、我が娘にこれ以上危険な目に合わせたくはない、というのが本音ではあるが」そこで一旦言葉を区切って、チラリと健人を一瞥して話を続けるメルギド。


「その、まあ、あれだ。タケトに付いていきたいのだろう?」そして余り言いたくない様子で、でも確認しないといけない、という微妙な表情で、メルギドはリリアムに質問した。


「ええ。その通りです」図星をつかれて頬を赤らめるリリアム。そんな様子のリリアムに、やれやれ、と仕方なさそうに首を振るビーナル。柄のない眼鏡がややしょぼくれた感じでカクンと下がった。


「よし。そうと決まれば、レムルス。こちらへ来い」そしてメルギドがおもむろにレムルスを呼んだ。すると謁見の間の影から、白い服を来た、水色の髪色のイケメンが、恭しく一礼して入ってきた。


「お久しぶりね。レムルス」「ああ。リリアムも元気そうだね」そしてお互い顔見知りのようで、にこやかに挨拶する二人。


「それとそちらが、タケトさん? でいいのかな?」「初めまして」それから健人を見て名前を呼ぶレムルス。それを笑顔で挨拶をする健人。リリアムとは異母兄妹であるレムルスにも、ライリーと同じように振る舞わないといけないと思った健人は、恭しく頭を下げた。


 ※※※


「リリアム。ちょっと真白と二人になりたいんだ」「ええ、分かったわ。じゃあ後で」


 朝食の後、メイが白猫を抱いて連れてきたのを受け取り、リリアムに声を掛ける健人。


「マシロ? もしかしてその猫の事?」レムルスが不思議そうに質問をする。猫と二人きりで話をするとはどういう事なんだろう?


「ああ。いいのよ。気になさらないで」説明するにはややこしいので、とりあえずレムルスの袖を引っ張り、健人から離れるよう促すリリアム。


 そして、すまない、と健人はリリアムに声を掛け、空けてもらっていた応接室に、白猫を抱いて入っていった。


『どうしたにゃ?』話なら別に部屋でしなくても、念話出来るのに? 不思議そうにする白猫。


『なあ真白。今見習いってのが完全に神獣になると、どうなるんだ?』そんな様子を気にせず、確認したい事を質問する健人。


『……神獣になるのは問題にゃいんだけど、人化が出来るようになると、この世界で過ごした真白の記憶が、完全に消えるにゃ』


『どうして?』どこか覚悟していたような、それでも驚いた表情で、理由を聞く健人。


『神獣というのは、特別な能力を授けられた、本来この世界にはいない生き物なのにゃ。どうやら私は、猫のまま健人様の元に来ていた場合、神獣になっていたみたいにゃ。でも光の塊さんが、どういう理由か知らにゃいけれど、私を人間にしたんだにゃ。でも魔薬の侵食から逃れるために、本能的に、もう一つの選択肢だった神獣の状態が現れた、と思うにゃ』


 白猫は自分の推測を語る。そしてその推測は概ね当たっている。白猫の言う通り、元々白猫がこの世界で、健人を守るための手段は、猫の姿のまま神獣化する事と、獣人となって側に仕える方法との二通りあったのである。光の塊は、転移した当時、この世界の言葉を理解できない健人の、人々とのコミュニケーションを心配して、白猫を獣人とする事を決めたのであるが、白猫も健人も当然その理由を知らない。


『だから、このまま進化し続けて、見習いを卒業して神獣になって、人化が出来るようになると、真白は完全に不要になる、と本能的に判断するにゃ。そうなると真白の記憶は消えてなくなるにゃ。そして人化してもそれは真白じゃないにゃ。()が、人化するだけにゃ』


『それはダメだ! 俺との思い出が消えて、真白がいなくなるのはダメだ!』


『……でも、健人様にはリリアムとケーラがいるにゃ』


『!』


 改めて白猫にその事を言われた健人は、焦りとも驚愕ともとれるような、複雑な表情をして固まってしまった。


『神獣は、思っている以上に強いにゃ。様々な能力が使えるにゃ。だから真白を消して、このまま神獣に完全に成り切って、健人様を守る方がいい……』「そんな訳ないだろ!!」


 真白を消す。白猫のその言葉を遮り、つい声を荒げる健人。


『……でも、もう真白は必要ないんじゃないかにゃ?』


「それは白猫、お前の考えなのか? 真白の意思なのか?」もう念話にするのを忘れ、感情的に白猫に話しかける健人。そして、やはり白猫は真白とは別人格なんだと、ここで改めてはっきり分かったようである。


『健人様はどうしたいにゃ?』健人の問いに答えず、じっと健人の目を見据え質問する白猫。


『リリアムやケーラがいるにゃ。真白が戻っても邪魔になるんじゃないのかにゃ?』


「真白が俺の邪魔になるわけないだろ」図星をつかれたかのように、苛立ちを顕にしながら、吐き捨てるように声を上げる健人。


『真白は……。多分、真白は迷ってるにゃ。リリアムやケーラといる、健人様との様子をいつも側で見ていて、とても迷ってるみたいだにゃ。猫になってかなり時間が経ってしまっていて、更に健人様が、リリアムやケーラと過ごした時間の方が長くなってるにゃ』そんな健人に対して、冷静な口調で話をする白猫。まるで言い聞かせるかのように。


『私は元々、健人様を守るためにこの世界に来たにゃ。健人様の恋人になるためじゃないにゃ。健人様の恋人は既にいるにゃ。なら、神獣完全進化して、健人様をずっとお守りする方がいい、そう、真白の淡い意思と、()の共通の意見だにゃ』


「……」淡々と語る白猫の言葉に、何も言えなくなってしまった健人。白猫の言う通りだと思ったからだ。だから返す言葉が見つからない。それに、リリアムとケーラは、今や健人の中で真白より大きな存在になっている。白猫との話で、それが改めて明確になった。だから、尚更言葉が見つからない。


「……どうして、どうしてこうなったんだよ」頭を抱えうつむく健人。


 ふと、目から涙が溢れる。その涙の理由は本人にも分からない。虚しさ、侘しさ、申し訳無さ、至らなさ。様々な想いの結晶のように、ポタポタと雫が床に落ち、滲んでいった。そしてそんな健人を慰めるように、「ニャーン」と一声鳴いて、白猫は側に寄り添った。





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