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魔族幹部会議は続きます

いつもお読み頂き有難う御座いますm(__)m

ブックマークまでして頂いてお待ち頂いている方々、感謝ですm(__)m

明日は通常通りAM8時投稿予定です。

 タッタッタッと長い廊下を、会議室へ向かう誰かの足音。そして会議室のドアをノックもせずバーンと勢いよく開けたその人影。


「では、これからどうするか、なんだけど……ん?」会議の途中、突然の来訪者に気付いて、会議室の入り口を見るガトー。


「おお、アイシャじゃないか! どうしたんだ?」真面目な表情だったガトーの表情がぱあ、と笑顔になり緩む。だがアイシャと呼ばれた見た目麗しいその魔族の女性は、どうやら怒り心頭の様子。ニヘラと表情を崩した、ガトーの座っている席の側にツカツカとやってきて、スパコーンとガトーの頭を叩いた。


「いったー! アイシャ、何すん……」「何するんだ、じゃなーい!」そして再度スパコーンするアイシャと呼ばれた魔族の女性。


「こら! ガトー! あんた捜索の魔法使ったでしょ! あれ全ての魔族に反応するんだからやっちゃダメでしょ!」


「だ、だってだってぇ」駄々っ子みたいに言い訳しようとする世界最強の魔王様。


「だってもクソもなーい!」だが言い訳する間もなく、またもスパコーンされる魔王様。


 そんな様子をあちゃあ、てな感じで見ている幹部達。どうやら日常茶飯事の光景のようです。


「王妃様。緊急だったので仕方なかったのです」アイシャを王妃と呼び、なだめるシャリアの言葉に頭を抑えながらウンウンと頷く魔王様。


「私達一般魔族民が気持ち悪い思いしてまでも、やらなきゃいけない事だったの?」シャリアに向かって声を荒げる、アイシャ王妃。捜索魔法は全ての魔族に影響を及ぼす。当然魔族の都市内で普通に暮らしている魔族達も例外ではない。ただ、ガトーから離れていればいるほど、その影響は弱くなるのだが、それでも、頭の中に金属音のようなものが聞こえるのは同じなのである。


 その言葉に頷く幹部達全員。そしてその原因の一旦となったルナートは、とばっちりが来ないか密かにヒヤヒヤしていたりする。


「あ、そう。んじゃ、仕方ないね」幹部達の様子を見て、ため息混じりに言葉を発するアイシャ。


「でも、突然やっちゃダメでしょ? わかってる? ガトー」


「うん、ごめんよアイシャ」アイシャにスパコーンされた頭を未だ手でスリスリしながら、素直に謝る魔王。


「ただでさえあんたの魔力はとんでもないんだから。ここに住む人達を不安がらせちゃいけないんだよ?」


「わかってるよお。ごめんよお」


「謝るのは私に、じゃないでしょ」


「じゃ、じゃあ後で魔族民にごめんなさいするよお」


「それでよし」そう言って今度は笑顔になってガトーの頭をナデナデするアイシャ。魔王様ちょっと嬉しそう。


 突然やってきたこのアイシャは、ガトーの妻で魔王妃である。妙齢とは思えないほどの美貌と、魔族らしからぬ白い肌。そして今着ている真紅のドレスは、足にスリットが入っており、背中が殆ど見えるセクシーなものだが、魔族の象徴である翼はない。額に申し訳程度にある角がなければ、人族だと言われても分からない容姿である。


 そしてガトーは、この美しい王妃アイシャに頭が上がらない様子。そしてこんな高圧的な扱いを受けても、ガトーはニヘラ顔のままだったりする。


「ガトー、ちゃんと後でごめんなさいやるんだよー」「あーい」どこか気の抜けたやり取りを交わす魔王と魔王妃。そう言って嵐のようにやってきたアイシャは去っていった。


「あ。そろそろ昼食の時間だね。アイシャとの昼食は外すわけにはいかないや」そう呟いて椅子から立ち上がり、アイシャの後を追っていこうとするガトー。


「え? あ、あのガトー様? 話はどう致します?」ガトーの咄嗟の行動に呆気にとられる幹部達。ケナスが慌ててガトーに声を掛ける。


「ああ。じゃあ昼食終わってから続きしよう」そう答えてガトーはさっさと会議室から出ていってしまった。


「……相変わらずだな」「本当、ガトー様はアイシャ様がお大事なのだな」「と、いうより、ご家族に対する愛情が深いな」


 いつもマイペースなガトーに、呆れた様子でありながらどこか微笑ましい、とも思っている幹部達。その中に、とりあえず切り抜けた、と、安堵した様子の者がいた事は、どうやら他の幹部達は気付いていないようである。


「しかし、まさかガトー様に知られてしまうとは。どうして知られたのか調べたほうが良いな。ギズロットに連絡しないと」幹部達もおもむろに席を立って昼食に向かう中、一人誰にも聞こえないよう、小さく呟くとある幹部。


 ※※※


「で? なんで捜索魔法使ったの?」


「ギズロットとルナートだけ来なかったんだよ。俺も最初は捜索魔法使わないよう、部下達に探させてたんだよ? でも見つからなかったから仕方なく使ったんだよ。結構大事な話だったんで、必ず来て貰いたかったから。ルナートは俺の捜索魔法に気付いて、後から来たんだけどね」


 人族の都市から仕入れた食材を使った料理に舌鼓を打ちながら、アイシャに說明するガトー。今は二人、魔族城内の食堂で昼食を楽しんでいる。魔族の都市は奥深い高い山の麓にあり、穀物が育ちにくく、食料となる動物も少ない。周辺にいるのは殆ど魔物である。なので食糧事情は余り良くないのだが、五年前人族と和平締結をした事で、こうやって人族の都市から、様々な食材を仕入れる事が出来るようになっていた。それまでは、人族以外のドワーフやエルフ、更には獣人との交易で仕入れていたのだが、食材は人族のものが種類が豊富で美味なものが多いのである。


 その人族から仕入れた鳥肉のステーキを嬉しそうに頬張るガトー。


「じゃあ、ギズロットだけエルフの里か竜人の里にいたの?」


「分からない。でもあっち側は流石に捜索魔法は使えない。俺の闇魔法が余計な影響を及ぼす可能性があるからね」


 そうね、と返事しながら、アイシャも鳥肉のステーキを丁寧にナイフで切り分け、口に運ぶ。


「人族の都市にいる可能性は?」アイシャのその言葉に、ステーキを切り分けようとしたナイフを止めるガトー。


「……メルギドから書簡が来ていたな。返事する必要があるから、それで聞いてみるか。俺は動けないし。ああ~、ヘンを先に行かせてしまったのは失敗したなあ」しまったあ~、と言った表情で、ガトーが顔をしかめる。


「ヘン? ヘンってナリヤが使役している?」その名前に反応して、アイシャもナイフを止めた。


「そうそう。さっきまで帰ってきてたんだよ。ただ、ナリヤは一緒じゃなかったんだ」しょぼーんとした表情で残念そうに返事するガトー。


「ヘン一人で帰ってきたって事? ナリヤの護衛をせずに?」ガトーと同じく、アイシャもそこが気になったようだ。


「まあでも、モルドーがナリヤについていたらしいんだ。で、今はケーラと合流してるだろうって」


「何があった聞いていい?」モルドーの名前まで出てきて、尚更気になったアイシャ。基本そういった事案には関わらないアイシャなのだが、娘達の話が出てくると別のようである。アイシャ言葉を受けて、ガトーは掻い摘んで説明した。


 ※※※


「では頼んだぞ」「承知しました」


 魔族の都市の入り口辺りで、周りを気にしながら小さな声で話す二人。そして一人はすぐさま踵を返して、魔族の都市から出ていった。


「何やってるの?」昼食が終わり、ちょうど研究所に戻ろうとしていたシャリアが声を掛けた。


「あ、ああ。シャリアか。野暮用だ」ギクリとしたが、何とか表情を崩さず答える事が出来た。まさか人がいるとは思っていなかったようである。


「野暮用、ね。今出ていった彼には配達でも依頼したの?」


「ま、まあそんなところだ。ところでシャリア、ケーラ様やナリヤ様は、どうやって隷属の腕輪と魔薬の件を知ったんだ?」


「どうしてそんな事聞くの?」


「情報の出どころを知るのも大事だろ? そもそもあんな突拍子も無い話、にわかに信じろという方が難しいとは思わないか?」


「ケーラ様とナリヤ様からの情報なのに? それに伝達のために使われたのはヘン。だから疑う余地はないでしょ」何言ってるの? と呆れた様子のシャリア。


「それもそうそうなんだが。しかし一体どうやって……」そう呟きながら、顎に手を当てる。


 因みに、シャリアがこの場所にいるのは、研究所から近いためだ。昼食が終わって一旦戻ってきていたのである。シャリアは自分が行っている研究については多言しない。それについて知っているのは他にはガトーだけである。敵味方関係なく、幹部に対してであろうと内緒にしている研究なのである。


 人族の都市で魔物が増加している事について調査を始めたのは、元々メルギドからの依頼だった。魔物の事は魔族に聞いた方が早いとの、メルギドの判断である。面倒だと思いつつも、人族からの様々な食材や便利な物を捨てがたいガトーは、とりあえず調査隊を結成して調べる事にしたのである。そしてこれをキッカケに、人族と交流し辛かった魔族達を、人族の都市に送り込んで、交流を活性化させたい狙いもあった。その第一歩として、魔王の娘であるナリヤが手を挙げたのである。それから徐々に、キロット達のような一般の魔族達も、メディーに向かうようになったのである。


 魔物増加の調査については伏せられているので、その事はガトーやシャリアを含めた一部の者しか知らないのだが、ナリヤやケーラが人族の都市に行っている事については、一応幹部達は知っている。調査のためというより、魔族と人族との交流が目的だと説明を受けているのである。


「そういやシャリアはこんなところで何やってるんだ?」ここは魔族の都市の入口付近。この辺り一帯は、建物がまばらな辺鄙な場所で、住まいとする家は建っていない。出入りする以外、余り立ち寄る場所ではないはずのだ。因みに魔族の都市は滅多に人が来る事がないので、入口には警備はいない。


「たまたまよ。あんたを見かけたのも理由の一つよ。外に出るわけでもないのに、こんな場所にいるのは不自然だからね」


 内心ギクリとするも何とか誤魔化したシャリア。研究所に戻ろうとしていた事がバレてはいけない。そして二人はお互いの事情を知られまいと、そこで会話を打ち切って、各々別の方向へ歩いて行った。






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