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もう一人のパパ登場

いつもお読み頂き有難う御座いますm(__)m

ブックマークまでして頂いてお待ち頂いている方々、感謝ですm(__)m

※すみません、5日程更新お休みします。次回更新予定は12/1です。


 ※※※


「ほう。メルギドから?」


「はい。こちらで御座います」


 人族の王メルギドを呼び捨てにしながら、部下と思わしき者から書簡を預かる男。ここは黒を基調とした部屋の中で、金銀の装飾が施された柱や魔物の絵が描かれた相当広い部屋である。その一番奥には一際目立つ、金で装飾された立派な玉座が設けてあり、そこには書簡を手にとって読みながら男が座っている。肩まである黒とオレンジの長髪、そして黒い角が申し訳程度に額の両端から二本生えている。背中には片翼1mはありそうな大きな黒い翼、顔は鼻筋の通ったイケメンの、明らかに魔族であるのが分かる特徴だ。瞳は赤と茶のオッドアイである。


「どのような内容が?」部下の男も、黒い翼が背中から生えており、玉座の男同様、額から角が生えている。こちらも魔族であるのが見て取れる。


「……勇者、か。まあ、いいんじゃないかね? どう思う?」部下の魔族の問いに答えたような、そうでないような返答をしながら、読み終えた書簡を片手でひらひらさせる、玉座の魔族の男。


「は? 何の事です?」怪訝な表情の部下の魔族の男。そもそも書簡の内容を聞いていないので意味が分からない。


「どうもね、勇者を名乗らせたい人族がいるらしい。でね、メルギドはそのせいで災厄が来るかもって心配してるんだって。で、どう思う?」


「ゆ、勇者ですと? と、言いますか、そんな大事な事、私めに判断を委ねるおつもりで?」びっくり仰天と呆気に取られる、が同居したような顔になる魔族の男。


「アッハッハ! 冗談冗談。聞いてみただけだ」そんな部下の魔族の男の顔が面白かったらしく、大笑いする玉座の魔族の男。


「全く。毎度毎度御冗談ばかり。しかもその話、結構洒落にならないと思いますが?」そんな彼に呆れた様子の部下の魔族の男。そこで、部屋の扉をノックする音が聞こえ、魔族の女が伝言のため入ってきた。


「ガトー様。つい先程、ナリヤ様の使役している魔物ヘンと、シャリア様が参りました」


 その言葉を聞いて、メルギドから送られてきたであろう書簡をポーイと放り投げ、身を乗り出す、ガトーと呼ばれた魔族の男。


「な、なんだって? ナリヤは? 元気なのか? 早くヘンを通せ、さあ通せ!」もうメルギドからの書簡には興味がなくなった様子の、ガトーと呼ばれた玉座の男。そして魔族の女は、一礼してヘンとシャリアと言う名の魔族の女性を呼びに行った。


「失礼致します」そしてすぐにヘンとシャリアが、恭しく頭を下げ入ってきた。


「ん? ナリヤは一緒じゃないのか? シャリアじゃないだろ?」


 先程シャリアの名前も伝えたはずなのに、と、ガトーがポイしたメルギドからの書簡を拾いながらため息をつく、先程から部屋にいる魔族の男。やはりと言うか、自分の娘の事が一番重要らしい。


「そもそもナリヤの護衛はどうした? ヘンよ?」ヘンはナリヤの護衛のために使役させた魔物であるはず。ナリヤが一緒ではない事を訝しがるガトー。


「実は、ナリヤ様のご指示にて、至急ご伝達したい旨があり、参上いたしました事、ご理解頂きたく」不味い、と思いつつも、主人には逆らえないヘンは、ナリヤから事付けを授かった事を伝える。


「ほーお? わが愛娘の護衛より大事な事ねえ?」


 その言葉と同時に、部屋一帯に一気に黒い瘴気が壁に伝って張り付くように広がり、ガトーから悍ましいまでの殺気がゾゾっと湧き上がる。その様子に恐怖し「ヒッ」と声を上げ怯える、ヘンとシャリアを案内してきた魔族の女。シャリアと書簡を拾っていた魔族の男は、一気にドッと汗が吹き出て、動けず固まってしまい、体が震えている。


 この玉座に座っていた魔族の男はガトー、魔王である。この世界で最も強いとされる魔族だ。対抗できる程の力を持っていたヴァロックと勇者カオルは今はいないので、人族にはガトーを倒せる者は一人としていない。ゲイルとアイラ二人でかかっても倒せるかどうか微妙なほど、強大な力の持ち主である彼は、正にこの世界史上最強、誰にも倒す事は不可能な存在なのである。


 そんな彼が殺さんとばかりに殺気を放っているので、ただそこにいるだけでも相当なプレッシャーなのは仕方ないのである。


 ヘンはそんな途轍もない、小動物ならその殺気で死滅しそうな程の圧迫感に震えながら、それでも負けじとキッとガトーを見据る。と言っても骸骨なので目はどこ見ているのか分からないのだが。


「……隷属の腕輪と、魔薬について、ご報告があります」ヘンがしゃれこうべの下顎をカタカタ震わせながら、何とか声を絞り出す。その一言を聞いたガトーは、部屋中に湧き上がっていた殺気を一気に霧散した。


「……どういう事だ?」ヘンの言葉を聞いて、ガラリと表情が変わる魔王ガトー。


 ※※※


「シャリア。その報告書はいつから?」ヘンの一言を聞いたガトーは、ようやく落ち着いたようで、魔薬の研究をしていたシャリアから報告を聞き、難しい顔をしていた。


「半年くらい前でしょうか? ケーラ様が使役されているモルドーより、魔薬のサンプルを預かってから調べて参りました」持参した資料の束をめくりながら、ガトーに説明するシャリア。


「……ちょっと待て。モルドーもここに帰ってきたの? ケーラの護衛をせずに?」呆気にとられるガトー。


「……その通りで御座います」ヘンがガトーの様子に、不味いと思った様子。


「ガトー様、ご安心下さい。ケーラ様はお元気でいらっしゃいます。モルドーから様子を聞いております」なので速攻ケーラの様子について、モルドーから聞いていた事を伝えるヘン。


「おお。何て言ってた?」先程のように部屋の中の者全員を殺さんばかりの殺気は出す事なく、ヘンの話が気になるパパことガトー。


「人族の冒険者と、リリアム王女と共に旅をしている、と伺っております」ホッと安堵した様子で、モルドーから聞いてた話を伝えるヘン。


「何だって? リリアム王女と?……アッハハ! さすがケーラ! 豪胆と言うか無鉄砲と言うか」ヘンの報告にどこか嬉しそうに笑うガトー。


「でも、せっかく一番安全だろうと思ってたアクーに送ったのに、まさか自分からメディーに移動してたなんてね」実は魔王ガトーの闇魔法で、ケーラは魔族の都市から一番遠く、比較的安全で魔族への偏見も少ないであろう、アクーに送っていたのである。この影転移魔法は、魔王ガトーにしか扱えない高等魔法なのである。


「今は既に、モルドーとナリヤ様はケーラ様の元に合流している筈で御座います。モルドーがナリヤ様を、ケーラ様の元にご案内しているので」


「なんでモルドーがナリヤをケーラの元に案内するの?」首を傾げ不思議そうに質問するガトー。


「……偶然一緒になったからで御座います」またも不味い、と思ったヘン。単にモルドーがケーラの元に既にいる、という事を伝え、安心させようと話しただけだったのだが、余計な詮索をされそうになった。だが機転を利かせ、真実を隠して嘘を言わないようにした。モルドーが偶然、ナリヤを発見した事は本当であるからだ。


「ふーん。まあいっか。二人が一緒なら俺も安心だし」そこは余り関心を持たなかった様子のガトー。そして余り追求されなかった事に再びホッとした様子のヘン。ヘンは隷属の腕輪をナリヤに付けられていた事を報告出来ない。主であるナリヤから口止めされているからだ。ただ、もし口止めされてなかったとしても、きっと自らの判断でその事を報告しなかっただろうが。ガトーがその事を知ってしまったら、人族は塵の如く消されてしまうだろう事は容易に想像出来るからである。勿論自分達も巻き添えになって。


「ヘン。とりあえずお前は再度ナリヤの元へ戻れ。おい、幹部達を呼べ」そしていきなり口調が変わるガトー。その様は先程までおちゃらけていた娘大好きパパではなく、魔王の風格だ。ガラリと雰囲気が変わった事を察した部下達は、皆一斉にガトーのいる部屋から急いで飛び出していった。


「あ、ヘン。ちょっと待て」ガトーの機嫌を損ねると不味いと思ったヘンは、色々追求される前に急いでナリヤの元に戻ろうとしたのだが、不意に呼び止められた。


「如何致しましたか?」なにか気付いたか? 嘘をつけないヘンは緊張しながらガトーに質問する。


「ナリヤとケーラはいつ帰ってきそう?」ねえねえ? てな感じで質問するガトー。娘大好きパパに戻っていました。


「申し訳御座いません。お二人に伺わないと分かりかねます」どうやら追求される訳ではなさそうで、再度ホッとするヘン。


「そっかあ。しょうがない。パパが早く帰って来てね、って言ってたって伝えておくように」宜しくねん、とパチンとウインクしながら話すパパこと魔王。


「……承知致しました」ギャップ萌えはしないものの、殺気を放っている時と普段とのギャップが正に天と地くらい差があるガトーにたじろぎながらも、言われた通り伝言を伝えるつもりにしている、真面目な魔物ヘンであった。


 ※※※


「ギズロットとルナートは?」


「方方探したのですが見当たりません」ガトーからの質問に、はぁ、はぁ、と息を切らしながら答える、部下魔族達数名。相当探し回ったのだろう。


「ふむ」ガトーは一言そう返事すると、目を閉じた。するおいきなりキーンと言う音が、部下魔族達と、会議室の椅子に座っている魔族幹部達の頭の中に聞こえた。突然の事に驚きながらも、この魔法を知っている彼らは、然程狼狽えはしなかったのだが、それでも徐々に冷や汗がにじみ出ている。皆、早く見つかってくれ、と願いながら。


「……ルナートは魔族の都市の中にいるけど、ギズロットがいないね?」どこか探るように、目を瞑りながら呟くガトー。


「まさかとは思うけど」そして更に魔力を増幅させる。キイイーンと部屋にいる魔族達の頭の中に共鳴音のようなものが響き渡る。彼らは不味い、と思ったがもう遅かった。


「グワアアア」「ああ、頭の中がああ!」「ガ、ガトー様! そろそろおやめに、ウ、ウグアア!」


 たまらずうめき声を上げ、椅子から転がり落ちてのたうち回る幹部達。だがお構いなしに出力を上げるガトー。幹部達の叫び声やうめき声が、会議室内にこだまする。部下の魔族達は、泡を吹いて意識を失っている。既に瀕死の状態だ。


 このガトー特有の魔法、(捜索)は、魔族のみが持つ魔素を感知する事が出来る闇魔法である。なので捜索できる相手は魔族のみである。魔族達が持っている小さなイヤリングの威力増大バージョンといったところか。デメリットは魔族達の様子の通り、近くにいる魔族達には、多大なる影響を及ぼし、まるで頭の中で金属音が共鳴しているような錯覚を起こしてしまうのである。しかも防ぐ事は不可能。更にこの魔法を唱えれば、相手側も感じる事が出来るので、探している事が伝わるのである。因みに、距離が離れていれはいるほど、共鳴音は小さくなり、影響も弱くなる。


 実は、魔族達に影響を及ぼさないようにする事も出来るのだが、わざとそうせず、幹部達の反応を楽しんでいたりするガトー。


「……いないな」そう呟いて魔法を止めたガトー。そしてバタバタ、と幹部達が一斉にその場に崩れ落ちた。巻き込まれた部下魔族達は、何とか死に至る事はなかったようだが、その場で全員意識を失っている。幹部達はどうにか意識を保っているようであるが。


「アグニにもいないか。まさかメディーにいないよね? 誰かギズロットが何処いってるか知ってる?」だが、そんな事はお構いなしのガトー。どうやらガトーが捜索魔法を使ったのは人族の都市アグニ辺りまでだったようである。いくら広範囲に捜索が出来るといっても限界があるようだ。そしておもむろに幹部達に質問するガトー。だが、皆首を横に振る。


「ケナス。君ギズロットと同じく魔族軍でしょ? 何か知らないの?」そこでケナスと言う魔族を指名して、再度質問するガトー。


「お恐れながら存じ上げません。そもそも我々幹部は、魔族の都市から出ないよう、ご指示を賜っております故」ケナスと呼ばれた魔族の男が、息を切らせつつ、未だ恐怖を感じた様子で、少し体を震わせながら答えた。


「だよねえ。だとしたら、竜族の里とかエルフの里とか? そっちはいてもいいんだけど」実際ガトーが指示したのは人族の都市に行くな、と言う事だけである。なのでドワーフの街やエルフの里等の、怨恨もなく昔から付き合いのある種族は、幹部も行って良い事になっている。


 じゃあそっちか? と思ったガトー。だが、さすがにそちら側に闇魔法を使うのは色々不味いので、捜索は出来ないのだが。


「しょうがない。ギズロットとルナートには後で来て貰うとして、君達だけでも聞いといて欲しい。隷属の腕輪と魔薬が人族の都市で見つかった。この意味、分かるよね?」


 ガトーの言葉にどよめく幹部達。当然ガトーの言わんとしている事はすぐに把握できた。書物庫に入って資料を閲覧し、使用した裏切り者がいる、と言う事であるからだ。





もうすぐ12月ですねえ(^ー^* )フフ♪

く~りすまっすが~♪こっとっしもや~ってくる~♪(何故竹内まりやなのかはスルー推奨で

閑話作っておりますので、それも別に更新予定です^^

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