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リリアムと王城で

いつもお読み頂き有難う御座いますm(__)m

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『じゃあ明日な』


『ちぇ~、しょうがないかあ。昨日は一緒にいたしね。了解だよ。今日はボク姉さんといるね』


 不満そうなケーラの念話での返事に、つい苦笑いしてしまう健人。ケーラに念話で今日は帰らない旨を伝えていたのである。先程まで神獣について書物庫で調べていた健人だが、夕方になりグオールが健人を迎えに書物庫に戻ってきた。とりあえず目ぼしい書物はほぼ目を通せた健人。そしてグオールと共に王族達の待つ部屋に向かいつつ、ケーラに念話を送っていたのである。


 そしてケーラに念話した通り、今日は王城に泊まる事になった健人。そしてこれから再度緊張の王族の方々との夕食会を迎える事になるのである。


「で、どうだった? 何か分かったか?」


「過去にも何度か、神獣と言われるものが出現した事がある、というのは見つけました」


 これからの夕食会のプレッシャーを覚悟しながら、長い大きい王城の廊下を、グオールと歩きながら会話をしている健人。書物庫で調べた中には、ほんの少しだが、神獣に関する記載がいくつか見つかった。全てかなり古い書物だったのだが。そこには、大きな鷲の神獣、全長5mはある兎の神獣、更に虎の神獣がいた、等とと書かれていた。それぞれ人とコミュニケーションが取れるのは共通しているが、その神獣達は、時代によって扱いが違う事も分かった。鷲の神獣はこの世界で災厄となった大きな魔物の軍勢と戦い、兎の神獣は、人々を畏怖させ恐れられた、有る意味魔物のような扱いを受けていた、というのである。全てに共通して言える事は、相当な能力を持っているという事であった。


 そして更に、虎の神獣は、人の姿になる事が出来たという記述が残っていた。


「おお。なら虎の獣人に会えばいいのではないのか?」その話を健人から聞いたグオールが、やや興奮気味に声を上げた。


「いや、それが……」健人の說明に食いついたグオールに申し訳なさそうに說明を続ける健人。人の姿にはなるのだが、それは夢の中に現れる程度のもの、という事である。それなら白猫も似たような現象を起こしている。


 ……ん? そう言えば前に、ケーラと一緒に夢の中のような場所で、真白が何か言ってたような?


 以前より少しではあるが、その時真白が言っていた事を思い出しそうになって、思案顔になる健人。


「そうか。余り参考にはならなかったようだな」健人の様子をよそに、申し訳なさそうにするグオール。


「いえいえ。ご協力有難う御座いました」それでも、異世界の、特に古い書物に触れる事が出来たのは有難かった健人。素直にお礼を言った。


 そして、白猫を元に戻すための情報が得られなかったにも関わらず、然程落胆していない自分に、健人は少し焦りを感じていた。


 ※※※


『私は席を外すにゃー』『ありがとう真白』


 白猫は健人にそう念話を送り、リリアムの部屋から出て、メイと共に出ていった。やはり緊張マックスになってしまった夕食会。しかも今晩は自分の部屋に泊まれ、とリリアムにものっそい強く、そして必死な感じで言われたのだ。若干眉をピクピクしていたメルギドだったが、リリアムが絶対一緒の部屋だと譲らなかったので、それもメルギドは渋々了承したのである。


 なので今はリリアムが王城で過ごした部屋にいるのだが、さすが王女の部屋。昨日ドノヴァンデーモンと戦った王妃の部屋と比べても全く遜色のない、とても広くて大きく、そして豪華である。広さは二十畳以上はありそうで、煌びやかな装飾が窓枠にまでも成されている。


「……いいの?」「ああ」


 半ば強引に健人と今晩一緒にいる事に成功したリリアムだったが、さすがに白猫は一緒だろうと覚悟していた。だが、どうやら白猫は部屋から出ていってくれるらしい。いくら猫とは言え、部屋にいると健人とアレコレ出来なくなる。なので白猫の申し出はリリアムも有難かったのだが、健人の何の気ない返事が気になったようである。


 正直今は、健人が勇気を出して家族に交際を認めるよう話してくれた当日の夜なので、リリアムは誰もいない二人きりなのは嬉しいのだが。そしてそれは健人も同じである。リリアムの家族に交際の事を話した今は、リリアムとの時間を大事にしたい。


 午前中に様子を見ていた事もあり、どこか白猫に気を使うような素振りを見せるリリアムを、遠慮せず抱き寄せる健人。いつもとは違う積極的な健人に、やや戸惑いながらも顔を赤らめ、嬉しそうな表情になるリリアム。


「もうリリアムの親に挨拶したんだ。だからお前は完全に俺のものだ」


 強く抱きしめ照れながらも宣言するようにはっきりとリリアムに伝える健人。今までは父親が王様である事で、何処か腰が引けていたが、今日交際を認めて貰えた事で、タガが外れたようである。グイとリリアムを抱き寄せ、おもむろに口をつけた。


「……もう」蒼く宝石のように輝く美しい瞳を潤ませながら、今度はリリアムからお返しのように健人に口づけをする。いつも以上に遠慮のない、男らしい強引な健人の態度が、とても嬉しくて仕方がない様子のリリアム。


 だが、ふと部屋のドアを見てしまうリリアム。そんな雰囲気でも、先程メイと出ていった白猫が気になってしまった。そして健人が強引な理由。勿論交際を認めて貰った事もその一つなのは承知だが、それ以外にも、何かを吹っ切るような、忘れるような、そんな感じもしたのである。


 ※※※


「そう言えば今日書物庫に言ってたのよね? 何かヒントは見つかったのかしら?」


 天蓋付きのキングサイズ以上の広く大きなベッドに二人、シーツを羽織りながら、リリアムがふと気になって健人に質問した。


「いや。単に神獣ってのが昔いたって事くらいしか分からなかった」透き通るような美しい、白い肌のリリアムの頬がやや紅潮している。それを愛おしく可愛らしく感じた健人は、優しくリリアムの頭を撫でながら返事した。


「そう……ねえ、大丈夫?」


「何が?」


「マシロさんの事よ」


「……」返事出来ない健人の顔を至近距離で見つめるリリアム。


「……困ってる」その蒼く美しい瞳に気圧されたのだろうか、絞り出すように健人はボソっと言葉を吐いた。


「そうみたいね」そう返事して健人の胸に寄りかかり、体を抱きしめるようにして頭をつけるリリアム。


「リリアムとケーラがさ、俺の中で物凄く大きな存在になってるんだよな。二人がいてくれて良かったと思うけど、真白に対する気持ちが……ブレてる」


「フフ。本当、正直ね」自分の存在がものすごく大きくなっている、その言葉が嬉しかったリリアムは、つい喜んでしまった。


「じゃあ、マシロさんに直接相談してみたらどうかしら? 今は結構意思疎通出来ているから、何かいい案が浮かぶかも知れないわよ」でも、やはり白猫の事は気になる。健人が書物庫で調べ物をしていた時の白猫の様子がおかしかった。更に自分は念話が出来ないため、必要な時は常に一緒にいたので、リリアムは獣人だった頃より、情が沸いているようである。


「そうだな。そうする。気を使わせて悪いな」


「何言ってるのよ。私はあなたの彼女なんだから。しかもお父様公認のね。当然よ」美しい微笑みを携えながら、甘えるように健人に抱きつくリリアム。


「一人で抱え込まないでね。マシロさんを元に戻すお手伝い、私も当然するわ」今日白猫から聞いた話は、白猫が健人に直接話するだろう。白猫にとっては繊細で大事な話だから、第三者が勝手に話していいとは思わないリリアムは、その事を黙っておく事にした。


 ありがとう、健人はそう返事した。それからもう何度目か分からないイチャコラを開始した二人。


 ※※※


「もう既に届いているかと」王族で使う伝令の風魔法は、田舎の村で使うようなクリスタルではないので、速さが違う。朝出せば夕方届く、まるでクリーニング店の謳い文句のようなスピードなのである。


「うむ。ご苦労、ビーナル」そして手配したビーナルを労うメルギド。


「しかし、宜しいのですかな? タケトを勇者などと」


「どうなるか分からんがな。奴の返事を待とうと思う」


「……何か分かりますかな?」


「何も分からなくても構わんのだ。我が知りたいのは、奴が再び災厄になりうるかどうかなのだ。こうやって先に布石を打っておけば、一番災厄となる可能性の高い奴の行動を知りうる事が出来るだろうし、勇者選定を検討している、と伝えておけば、奴も五年前のような事は考えまいて」


 なるほど、と返事するビーナル。


「何か返事が来たら教えてくれ。……はあ、今リリアムはタケトと……」


 そう呟きつつ、どこががっくりした様子で、それでも赤い厚手のガウンをバサっと颯爽と翻し、玉座の後ろの階段から降りていくお父さん。


「……タケトの奴め。ケーラとの関係がバレた時は、さすがに陛下も黙っておらぬぞ」


 メルギドの呟きを聞いてしまったビーナルは、柄の無い眼鏡をクイと上げキラーンと光らせながら、謁見の間を後にした。







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