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綾花について。そして魔族の都市がようやく出てきました

いつもお読み頂き有難う御座いますm(__)m

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「な、なあケーラ。そのタケトって奴はどんな奴なんだ?」朝食兼会議が終わり、食堂から出てきた魔族さん達。そしてキロットが我慢ならない様子でケーラに質問した。


「あんたに関係ないでしょ。そもそもそれ聞いてどうすんの?」答える義理もないし、そもそも余りキロットにはいい印象を抱いていないケーラが、ツンとして答える。


「い、いやそれは……」


「まさか襲おうとでも思った? 最低だね、ほんっと最低」そう予想したケーラが、卑下した視線でキロットとジロリと見る。


「ち、違う! そんな事考えてないって!」フラれた腹いせを我慢できる自信はなかったキロット。図星をつかれたようにドキっとしてしまう。そしてこれ以上嫌われるのは流石にヤバいと思ったキロットは、必死の形相で否定する。


「今はあれこれ考えないほうがいいぞ、キロット」ケーラのキロットに対する態度がキツいのも悪い、と思ったお姉さんが間に入った。半ば呆れ顔で。


「グンター。キロットを頼むぞ」そしてグンターに向き直り、宜しくと声を掛けた。


「え? あ、ああ」ナリヤには積極的に話できないグンター。唐突に声を掛けられ、赤面しながらも頷いた。


「とりあえず、だ。何か分かったら連絡してくれ。私達は暫くメディーにいる予定だからな」グンターの恥ずかしそうな表情を不思議に思ったナリヤだが、これからケーラと二人だけで話をするので、気にしないようにした。


 そしてキロットとグンターが自分達の元から去っていったのを確認して、ケーラがナリヤに話しかけた。


「で、姉さん。大事な話って何かな?」


「……さっきプラムの名前が出ていただろう? 実は私も接触していた」


「……え?」ナリヤの告白に驚くケーラ。


「私とギルバートはもう一人、パーティを組んでいた人間がいた。アヤカと言う人族だ」


「アヤカ?」聞いた事あるな? とふと首を傾げるケーラ。


「タケトと同じように黒い髪で黒い瞳の、自ら勇者と名乗っていた女だ」


「あ」思い出したケーラ。以前アクーにいた際、ゲイルから聞いた話だ。そう言えば三人パーティだったと言っていた。


「でも、それがプラムとどう繋がるの?」和平反対派のプラムと、今回の魔物増加の件を調査している責任者の一人である、和平賛成派のナリヤが接触していたというのは、余り喜ばしい話ではない。きっとなにか事情があるのだろうとは思ったケーラだが、それでもやや不安気な表情で質問する。


「……魔薬をプラムから譲り受けたのだ。アヤカの洗脳に使うためにな」


「ええ!」ナリヤの更なる告白に、再度驚くケーラ。勇者を洗脳?


「その、アヤカって人を洗脳してたの? 姉さんが?」


「正確にはギルバートが、だ。私は魔薬の調達のためにプラムと接触するよう依頼されたのだ」


 どうも込み入った話になりそうだったので、一旦二人は泊まっている宿に戻ってきた。そして健人とケーラが使用している部屋に二人で入る。周りに聞かれていい話ではないので、二人きりになれる場所を選んだのだ。


「ギルバートは、勇者であるアヤカを洗脳していたのだ」そして部屋にある木の椅子に座り、神妙な面持ちで続きを話すナリヤ。


「何のために?」同じく机を挟んだ向かい側の椅子に座りながら、真面目な顔で聞いているケーラ。


「そこまでは分からない。ただ、その、私にしたみたいな仕打ちは、どうもアヤカに対しては我慢していたようなのだ。アヤカも容姿端麗なのにな」


 ギルバートがナリヤにしていた仕打ちとは、ケーラも思い出したくはない、性的と言うには悍ましい暴力の事である。しかし、そのアヤカという人物には、ギルバートはそういった行為には及んでいない。しかも隷属の腕輪を使わず、洗脳をしていたらしい。そもそも、洗脳していても言う事を聞かせる事が出来るわけだから、性的な関係を迫るのは容易だったはずだ。それなのに、あの鬼畜ともいえるギルバートが一切手を出していない事が、不思議というよりどこかおかしいと思ったケーラ。


「やっぱギルバートを捕まえたほうがいいね」余りに不可解で、不快な存在であるギルバートを捕まえないと、どうも不味い気がしているケーラ。


「そうだな。まだ移動していなければ、今はアグニにいるはずだ」モルドーに助けられてからまだ十日程度なので、未だギルバートと綾花はアグニにいる可能性が高いと踏んだナリヤ。


「姉さんはギルバートを追いかけるの?」


「……正直、ギルバートに対抗するには一人だと厳しい。勇者であるアヤカもいるからな。ギルバートに洗脳されているから、きっと敵対するだろうし」


「ボク達も行こうか? 正直ボクはそのギルバートをとっちめてやりたい」


「ケーラの気持ちは有り難いが、これは私の問題だ。迷惑をかける訳にはいかない。とりあえずヘンが帰ってきてから考えようかと思っている」


「迷惑だなんて……。あ、そうだ。姉さん。ボクからも話があるんだ」遠慮している姉にちょっと不満そうにしつつも、今度はケーラが、昨日王城で起こった事の顛末をナリヤに説明した。


「……まさか。王族全てが洗脳されていたとはな。先程キロット達と話ししていた内容にも繋がるが、神官と和平反対派の魔族との繋がりは、結構深いようだな」


 何やら見えないところで何者かが何か良からぬ事を画策している、そう感じずにはいられないナリヤとケーラだった。


 ※※※


「ようやく辿り着いたな」


 木々は紫と黒い葉で覆われ、蔦が巻き付いた、枯れている様子なのにしっかりと根を張り立っている木々がで、鬱蒼と茂る暗い森の中、しゃれこうべの口をカタカタ言わせながら、茂る藪や草木を上手く躱しつつ、目的地に向かう、麻のローブを身に纏った骸骨。


「ギャッギャア」突然、体長5mはある大きなトカゲの魔物が、行く手を遮るように襲いかかった。が、それを見つけた途端、しゃれこうべのくぼんだ目の奥がギラリと赤く光り、その魔物達を物ともせず、大きな鎌をヒュンヒュンと振り回し、まるで雑草を刈るかの如くサクサク殺していく骸骨。


「フン。この程度の雑魚なら放置、という事なのだろうが。一応しっかり処分はしといて欲しいものだな」


 ぶつくさ独り言を言いながらサクサク処分していく骸骨。そしてトカゲの魔物の屍が数十匹程度、自分の周りに散見としているのを気にも留めず、目的地を目指すべく走り続けた。


 それから三十分ほど走ったところで、灰色で3m程の高さくらいのレンガが積まれた壁が見えてきた。壁を見つけた骸骨は、壁と平行に右に移動する。少しするとアーチ状の形をした、木の蔦で出来た入り口が見えた。


「ようやく辿り着いた。さて、ここからは慎重に入らねばな」そう呟いた骸骨ことヘンは、その場でグルンと横回転し、透明色になった。これはヘンの变化の能力の一つで、周りからヘンの姿が全く見えなくなる。


 魔王の娘ナリヤに使役されている魔物だというのに、魔族の都市に入る際、人目につかないよう能力を使い慎重に中に入っていくヘン。そしてモルドーに教えられた、とある一軒家の前に辿り着いた。


 ※※※


「どうしてヘンがやってくる?」やや紫の肌色の見た目麗しい魔族の女が、ヘンを見て訝しる。ここは先程ヘンがやってきた一軒家の地下である。ナリヤを含めた調査員が、極秘裏に、最近増えている魔物の調査を行っている拠点である。ヘンが他の魔族に見つからないよう、透明になってここにやってきたのは、反対派の魔族に拠点を知られないようにするためであった。


「ナリヤ様のご指示だ」無機質に魔族の女の問いに答えるヘン。骸骨なので表情はさっぱり分からない。


「……まあ、使役された魔物が嘘つくわけないか」


 そういう事だ、と答え、用件を伝えるヘン。アクーでロゴルドとビルグが、神官と結託して魔薬を使い、魔物を拡散していた事を、モルドーから依頼され伝えにきたのである。


「神官ねぇ……。神官ってのは神に仕える偉いさんじゃないの?」首を傾げる魔族の女。そもそも魔族は人族の情報に疎い。殆どが一度も人族の都市に行った事がないから仕方がない。彼女も例外ではなかったので、神官の本質を知らないのである。


「その辺りの事情は私にも分からん。因みにこれを調べたのはケーラ様だ」


「ケーラ様? じゃあモルドーが来ないのはどういう理由だ?」首を傾げる魔族の女。


「……言えない事情がある」その件について説明するという事は、ナリヤがパーティメンバーの神官に隷属の腕輪を付けられ、凌辱されていた事を説明しなければならなくなる。ナリヤから、その件に関しては、内密にするよう指示されているので、ヘンは説明できない。


「気になるな」


「そこは察してくれ。口止めされているのだ」ヘンは魔物なのでそもそも嘘がつけない。何か事情があるのだろう、と深く追求するのはやめた魔族の女。


「何か複雑な事情があるのか。まあその点は、ナリヤ様にお会いした時に聞けばいいか」


「そうだ。こっちも魔薬がどうやって作られたか分かったぞ。前にモルドーに持って来て貰ったサンプルを分析出来たからな」ふと思い出したように一旦ヘンの元から離れ、何かしらの資料だろう、紙の束を持ってくる魔族の女。


「魔薬を作るには、魔物の死骸と人の死骸が必要なんだ。魔物の発生方法は、使った死骸に関係なく、魔薬にかけた血が何の魔物かが関係するみたいだ。出来たらガトー様が管理している書物庫で調べたいんだが。あそこは幹部以上じゃないと入れないしな」そして紙の束をペラペラ捲りながら説明する。


「……その魔薬の製法は、元々書物庫に入っているという事か?」そこで重要な事に気づいたヘン。


「お察しの通りだ。隷属の腕輪もそうだが、魔薬の製造法は、幹部でないと知る事が出来ない」 





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