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勇者命名?

いつもお読み頂き有難う御座いますm(__)m

ブックマークまでして頂いてお待ち頂いている方々、感謝ですm(__)m

※『剣鬼ヴァロックの地球転移』連載中です^^ https://ncode.syosetu.com/n3797fc/

不定期更新ですがお読み頂ければ幸いですm(__)m

 未だ泣いているリリアムに、健人が肩に手を置き優しく寄り添っている。それを微笑ましく、だがまだ若干微妙な表情で見守るメルギドとライリー。


「しかしあれだけ沢山見合いの申し出があったのを全て断った結果、冒険者を選ぶとはねえ」先程もメルギドが言っていたが、ライリーも同じ事を呟く。余程意外だったようである。


「グス、ヒック。お兄様。タケトはただの冒険者じゃありませんわ」嗚咽しながらライリーに釘を刺すリリアム。


「悪い悪い。悪口を言ってるわけじゃないんだ。タケトも気分を害したなら謝るよ」慌てて弁解するライリー。


「いえ。大丈夫です。仰る通りだと俺も思いますので。リリアム王女と俺とは、そもそも身分が違いますから」


「ただの冒険者じゃない。か。タケト。その黒い髪と黒い瞳なのだが……」ふとメルギドが気付いたように声を掛ける。


「あ、勇者じゃないです」


「……質問の意図が分かったか」まだ何も言っておらぬのだがな。速攻否定されちょっとびっくりするメルギド。そもそも王の言葉を遮るなどと、不敬に当たるのだが、それでも否定したと言う事は、本当に違うという意思表示なのだろう、とも思った様子。


 確か以前、ここメディーには、健人と同じく黒い髪で黒い瞳の勇者と呼ばれた者がいた。彼女は王城への来訪を何度も断っていたので、彼女は勇者ではないのかも知れない、と思っていたメルギド。勇者が現れる=災厄が訪れる、と言う事なので、メルギドはそれの真意を確認したかったのだが、結局それは叶わなかった。


 実際は、単に綾花が面倒だと思っていただけなのだが。


 なので、目の前にいる同じ特徴を持った健人に、勇者であるか確認したのである。だが、即否定されたので、メルギドは一応安心した様子。


「……そう言えば、以前ゲイルがここに来た時に話していたぞ。そうだ。ゲイルは確かに、異世界から来たらしい者の名前をタケトと申しておった」しかしそこで、半年以上前、ベルアートと共にメディーにやって来た際、ゲイルが謁見した時に話した内容を思い出したメルギド。アクーに現れた異世界の人物は、黒い髪で黒い瞳だと言っていたはずだ。


「タケト。お父様には正直に話してもいいんじゃないかしら」メルギドの言葉を聞いて、既に泣き止んでいたリリアムが健人に提案した。リリアムの言葉に分かった、と相槌を打つ健人。


「……実は、ゲイルさんが仰っていた通り、俺はこの世界の人間じゃないんです」リリアムの言葉に意を決した健人が、メルギドに自分の事について話をし始めた。長くなりそうだから椅子に座るよう促され、一礼して椅子に座り、そしてこの世界に来た事などを話し始めた。更に白猫、真白についても、この機会に説明した。白猫は雰囲気を悟ったのか、話をしている最中ずっと、床に丸まって大人しくしている・


「証拠があります」一通り説明し終わった健人は、おもむろにポケットからスマホを取り出した。


「おお、それは! 間違いない。カオルも持っていたものだ!」健人が取り出したスマホを見て、まるでおもちゃを見つけた子どものように、喜び勇んで健人の横にドカっと座るメルギド。そしていきなり赤い厚手のガウンを着た、立派の王冠をかぶった顎髭たっぷりの王様が隣にやって来て、びっくりする健人。


「ほれ。早う操作してくれ。異世界の様々なものが見れるのだろう?」健人が引いているのを気にする事なく急かすメルギド。その様子で健人は、何故メルギドが嬉しそうにしているのか分かった。どうやらこのスマホがどんなものか知っているようだ。そしてリリアムも、以前見た事はあっても興味あるようで、メルギドと反対側の椅子に、健人を挟むような感じでいそいそと座った。


 一方初めて見るライリーには、どうして父親がそんなに嬉しそうにしているのか分からず首を傾げる。リリアムも興味津々の様子なので、ライリーも二人と同じように健人の近くの椅子に腰掛けた。


 もう六年前になろうしている、勇者カオルを含めた魔族との諍いの解決。その後メルギドと接見したカオルは、健人の予想通りスマホをメルギドに見せていたのである。初めて見る異世界の様子や、そのスマホという物自体に、当時のメルギドは大層興奮したのだ。それが再び見れるので、メルギドはテンションが上がっているのである。


 そして早速スマホの電源を入れる健人。それから写真が保存してあるフォルダを開けフリックして、前の世界で撮影した写真を見せた。


「これは……。とても綺麗な絵だね」ライリーが不思議そうに、でも感心しながら、その小さな画面を見つめている。


「これは写真と言うものです」そして以前、ケーラとリリアムにもやったように、スマホをライリーに向け、いきなりバシャ、と撮影した。


「な! なんだ今のは!」「うお! 魔法か?」フラッシュに慌てふためくライリーとメルギド。どうやらカオルは撮影まではやっていなかったようでメルギドも驚いている。そんなコミカルな二人を見て、ちょっとおかしそうに口を抑えて笑うリリアム。


「これを見て下さい」そして今撮影した写真を二人に見せる健人。


「「……」」画面を見て呆気にとられる二人。そこには、驚いた表情で手で顔を遮っているライリーと、遠目にびっくり顔のメルギドが写っていた。


「私も初めてこれ見せられた時は驚きましたわ」そしてどこか自慢気なリリアム。私は既に知っていましたのよ、と言わんばかりに。


「そしてこれがそこの猫、真白が獣人の時の姿です」そう言っていくつかの真白の姿をスマホで見せる健人。声を掛けられたので、丸まっていた体を起こし「にゃーご」と一鳴きしてみる白猫。


「……美しい女性だな。ケーラに負けじとも劣らず」お兄さんのコメントがちょっとアレなのはとりあえずスルーしつつ、次に動画見せ、「にゃー」という語尾を確認して貰う健人。


「……さすがに凄いものだな。我がそれを見たのは二回目だが、何度見ても感心するわい」真白がアクーの洞窟前の砂浜で元気一杯はしゃいでいる動画を覗き込むように見ながら、ふと呟くメルギド。それから今度は、前の世界の動画を見せた。


「これが、勇者カオルとタケトがいた世界の技術なんだね。ゴーレムのような箱型の馬車のようなものが動いているのも不思議だね」以前リリアムからも聞いたゴーレムという言葉。健人にはさっぱり分からないが、どうもロボット? のような物らしい、と言う事は理解出来ている様子。


「更にこれも撮影したんです」さつえい? と意味の分からない言葉が健人から出てきて首を傾げる二人。そしてスマホの画面を確認する。


「……もしかして、これは」二人が健人の顔を見る。彼らも良く知っている画像だったからだ。


「はい。アクーの洞窟にあるアナザーヒールの魔法陣です」


「あ。そう言えばあの時、その機械を光らせていたの思い出したわ」ポン、と手のひらを拳で叩いて思い出すリリアム。


「これを書き写せば、これからはあの洞窟に行く必要はないんじゃないかと思ったんですが」


「そうか。リリアムはタケトと共にあの洞窟に行ったのだな。タケトの申し出はありがたいが、あそこに行くのは、魔法を得るだけが目的ではない。自ら赴いて獲得してくる事も重要なのだ」


「なるほど。分かりました」メルギドの言葉に、やはりそういう理由もあったか、と思った健人。役に立つかも、と思い撮影していたのだが。


「相分かった。確かにタケト、お主は異世界の人間だ」スマホを見て満足? して、そして納得した様子のメルギド。


「あ、それと真白なんですが、どうやら今は神獣というものになったらしいんです」白猫の一連の不思議な能力は、グオールから聞いた神獣というものである事が理由だと、白猫に確認したので間違いないだろう。今白猫はその神獣とやらの見習いらしいのだが。


「神獣か……。ふむ。良く分からないが不思議な力を持った動物、と言う事だろう。だから昨日、その猫が魔薬混入に気づいた、という訳だな」メルギドの問いにはい、と答える健人。


「それでこの後、獣人であるグオール将軍に、神獣について聞く予定です」


 なるほど、と顎髭を触りながら答えるメルギド。そして急に真剣な目つきになった。


「ところで気になったのだが、タケトよ。お主リリアムを置いて、いつか前の世界に戻る、なんて事はないだろうな?」そして少し威圧感を増しながら、ジロリと健人を見て聞いてみるメルギド。王の風格漂わせるその威圧感は、健人を圧倒させるには十分な迫力である。


「それ自体無理です。前の世界で俺は死んだので」その様子に圧倒されつつも、即答で否定した健人。


「そうか」健人の言葉に安心したメルギド。ふっと力を抜いた。


「タケトよ。我から提案なのだが、お主勇者を名乗ってはどうだ?」


「へ?」




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