健人の決意
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「タケト様。お待ちしておりました」白い息を吐きながら、城門前で恭しく頭を下げる、門番の兵士二人。
「おはようございます」そんな丁寧な挨拶に若干緊張しつつ、門番の兵士二人に挨拶を返す健人。それから門番二人は大きな城門を開けた。今健人は、昨日やって来た王城の城門前にいる。メルギドと約束していたのでやって来たのである。他にもグオールとも話する予定だ。
「既にお話は伺っております。どうぞ中へ」城門前まで馬に乗ってやって来た兵士の一人が、健人に頭を下げ中へ誘った。それに従う健人。そして昨日と同じく、長い大きな城の扉に続く、石畳の道を馬で駆け、それから城の大きな扉の前で馬を預け、開けて貰って中に入った。
「おはようございます。ここからは私が案内いたします」扉の中の傍では、メイが待っていて恭しく頭を下げた。
「あ、おはようございます。宜しくお願いします」既に待っていて貰っていた事を申し訳なく思った健人。挨拶を返しながら同じく頭を下げた。
「フフフ。いよいよですわね」そしていたずらっぽく笑うメイ。ちょっと楽しそうな顔で。
「……ハハハ」そんなメイのからかうような微笑みに、乾いた笑いで返すしかない健人。
そして案内されたのは、謁見の間ではなく、昨日魔薬と隷属の腕輪について話をした応接室だった。
「陛下はこちらでお待ちです」そう健人に告げてから、コンコンとドアをノックしたメイ。
「陛下。お連れ致しました」「うむ。入れ」
中からの返事を確認した後、赤い大きなドアを開け、どうぞ、と健人を誘うメイ。緊張した面持ちでメイに会釈をし、健人は黙って中に入った。それを確認したメイが、一礼してドアを閉めて出ていった。何やら拳をグッと握って健人に目配せしながら。
「陛下。今日はわざわざお時間をお取り頂き、ありがとうございます」メイの様子が気になりつつも、居直って椅子に座る前に、片膝を付いて恭しく礼をする健人。部屋の中には、他にライリーとリリアムがいた。ソフィアは一応軟禁という事で、隔離の部屋にいるので、ここにはいない。
「苦しゅうない。気楽にしてくれ」手をひらひらさせ、立ち上がるよう促すメルギド。リリアムも物凄く緊張した表情で、健人を見ている。ライリーはこれから何の話をするのか分からないので、ちょっと楽しそうな様子。昨日の魔薬や隷属の腕輪といった、深刻な話ではないのは、事前にリリアムから聞いているので。
「タケト。昨日は大義であったな」たっぷり蓄えた髭を触りながら、微笑みつつ健人を労うメルギド。
「いえ。解決出来て良かったです」メルギドの言葉に感謝の意を込めながら答える健人だが、これから話す内容を考えると、緊張が止まらない。
「何か褒美を遣わそう。何が良い?」
「……」
「どうした? 我が用意できるものなら、何なりというが良い。この度の功績は、それだけ大きなものだからな」遠慮しているのか、もしくは緊張しているのかのどちらかだろう、そう気遣ったメルギドは、ニコニコして話しかける。健人の緊張をほぐそうとしてくれている。
「……リリアム王女を」
「ハッハッハ! そうかそうか。リリアムを所望か。リリアムなら…………は?」笑っている途中で健人が欲しいものが何か、気づいた様子のメルギド。ポカーンとものっそい呆気に取られた顔をしている。リリアムが欲しい? 冗談を言っているのか?
「実は、リリアム王女と、お付き合いさせて頂いております」そこで思い切って伝えた健人。ひたいに汗が滲む。そして言っちゃったー、という感じで目を見開いて健人を見るリリアム。
「お付き合いって、もしかして、恋人同士って事かい?」まるで時間が止まったように、口をあんぐり開けたまま固まってしまっているメルギドに代わり、ライリーが唖然としながらも健人に質問する。
「……はい」まるで小動物のように小さくなって答える健人。その様子を、ちょっと可愛い、とか暢気に思っていたりするリリアム。
「リリアム。彼の言った事は本当なのか?」そして今度はバッとリリアムに向き直って確認するライリー。
「……本当です」だが、ライリーに面と向かって言われ、リリアムも急に緊張した顔になる。顔は真っ赤だ。
「え?いやちょっと、え? は? うそん?」健人とリリアムを何度も交互に見ながら、王様らしからぬ狼狽えようのお父さん。またはお義父さん。いや結婚してないのでそれはまだですね。
「お父様。私は真剣です。タケトの事が……」「ホーリーリフト」リリアムが意を決して何か言おうとしたところで、お父さんが不意打ちでリリアムに向かって手のひらを広げ、ホーリーリフトを唱えた。
「……洗脳されてませんわよ」突然のお父さんの行動に呆れ顔のリリアム。因みにホーリーリフトは、洗脳や隷属の腕輪等、何もない時にかけられても何も起こらない。なのでお父さんの手のひらがリリアムに向いただけという、何となくシュールな光景になってしまった。
「……みたいだな」洗脳じゃないと信じられない、というくらい、信じられないと言った表情のメルギド。そしてそんなお父さんに失礼ね、と呟きブスっとするリリアム。
「……しかし、あれ程沢山あった見合いの話を断っていたリリアムが、まさか冒険者とそうなるとは」ようやく気持ちが現実に追いついてきたのか、ふーむ、と唸りながら髭を触りつつ考え込むメルギド。
「お父様。お叱りにならないのですか?」激昂して怒鳴られる覚悟をしていたリリアムと健人は、意外と落ち着いている様子のメルギドに驚いた表情を向けている。
「叱ったところで、恋仲を解消できるのか? するのか?」
「絶対にしません」毅然とはっきり言い切ったリリアム。その目には覚悟と決意が表れている。それを汲み取ったらしいメルギド。そしてそのまま、健人を見る。健人も同じく、真剣な眼差しでメルギドを見ている。
「ワハハハ! 絶対とまで言い切るのか。そうか。余程タケトに惚れ込んでいるのだなリリアム」緊張が溶けたような感じで突然大笑いするメルギド。そんなメルギドに驚く健人とリリアム。そしてライリー。
「それにアイラもそうだったからな。ゲイルは元々ただの冒険者だ」
ああ、そうでしたわ。と思い出したように呟くリリアム。メルギドの言う通り、過去魔族との戦いを解決すべく、魔王と対峙した勇者メンバーの一人、ゲイルは一介の冒険者だった。それがその時の功績を讃えられ、統治する者が丁度不在になっていたアクーの新しい伯爵として爵位を与え、恋仲となっていたアイラと結婚したのである。
「まあ、まさかリリアムまで冒険者を選ぶとは思いもよらなかったが」フフフ、と何処か楽しそうに微笑むメルギド。
「私は、彼と共に人生を歩んでいく覚悟なのです。王族を辞めてもいいと思っているくらいなのです」そしてリリアムも、自身の決意を父親に伝える。
「そうだろうな。お前は賢い子だ。何の後ろ盾を持たない、貴族でも何でもない、一介の冒険者と恋仲になるという事は、それらいの覚悟がないといけない事くらい、当然分かっておろう。もしかしたら神官にならざるを得ない、とまで考えたであろうな。それでもタケトを選んだ。それは相当な覚悟と決意だ。それを親としては応援しないわけにはいかん」
「……お父様。では、将来、私がタケトと一緒になっても、私は王族のままでよいのですか?」
「当たり前だ。そんな事で我を悲しませるな。そもそも、お前が選んだ相手だ。それを否定する理由などないだろう。余程の事がない限りは。昨日の出来事で、タケトという人物をある程度知る事が出来た。タケトなら、リリアムを大事にしてくれるだろう」
そうであるな? と健人に目配せするメルギド。
「勿論です。絶対悲しませたりはしません」決意の籠った眼差しで、メルギドを見返す健人。
「そうだな。タケト。リリアムを悲しませるような事はするな。それだけは守れ」穏やかな表情だったのが一転、真剣な、何処か威圧的とさえ感じるような迫力で、健人を見据えるメルギド。さすが王の風格と言ったところか。
「はい」だが、その視線にたじろぐ事なく、しっかりとメルギド見据え、ただ一言返事をする健人。その真剣な眼差しに、健人の覚悟と決意を見たようで、安堵したようにフッと顔をほころばせ、微笑むメルギド。
「しかしまさか、あのリリアムがねえ。タケト。兄としてもリリアムの事を宜しく頼むよ」何処か諦めたような表情で、それでもにこやかに健人に声を掛けるライリー。
「勿論です」その表情に、何処かホッとした気持ちになる健人。
「……お父様。お兄様。ありがとうございます」そしてリリアムはホッとした表情と、そして緊張が溶けたのだろう、一筋の涙が頬を伝った。
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