魔族の皆さん集合
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※『剣鬼ヴァロックの地球転移』連載中です^^ https://ncode.syosetu.com/n3797fc/
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「おはよう」半ば呆れ顔で二人に挨拶するナリヤ。
「おはよー姉さん」「おはようございます」一方ケーラは大満足といった感じで、とても元気そうである。健人は若干疲れた表情。そしていつも以上にラブラブモード全開で、健人の腕に絡みついているケーラに、改めてため息をつくナリヤ。
結局昨晩、窓を直してもらった後も、ケーラは健人と一緒にいたかったので、昨晩ケーラと一緒に出掛ける予定だったのを諦めたナリヤは、そのまま同じ宿に泊まったのである。そして今は朝になって、ナリヤがケーラを呼びに部屋にやってきていたのであった。
「しかし、本当仲いいな。というか、ケーラ。タケトの事が本当に好きなんだな」
「そうなんだよ~」ニヘラとちょっと気持ち悪い笑顔で返事するケーラ。その顔に健人もちょっと引いていたりする。
「……愛されてるんだな」「アハハ」呆れ顔のナリヤに苦笑いの健人。
そんな二人の会話の最中でも、ずっとケーラは健人の腕に絡まったままだ。昨晩の健人からの告白のせいなのだろう、ケーラの気持ちは、これまで以上に強くなっているようである。
「ケーラ。今日はナリヤさんと出かけるんだろ? ほら、行って来いよ」優しくケーラの頭を撫でながら、腕を離すよう促す。
「……タケトも来ない?」離れたくないケーラは、健人を誘ってみる。
「それはダメだろ。ナリヤさんも気を使うし」ナリヤもうんうんと頷いている。
「ほら、ケーラ。行くぞ」見かねたナリヤが無理やりケーラを引っ剥がす。「あ、姉さんもうちょっとー」そして名残惜しそうに健人を見るケーラ。
「じゃあな」引っ張られるその様子がちょっとおかしかった健人は、少し笑いながら見送った。
「ま、何かあったら念話出来るしな」そしてそう呟きながら、健人は一旦部屋に戻った。
「さて、と。久々に一人っきりだな」しかも白猫もいない。完全な一人というのは、いつぶりだろうか?
そして健人が早速やった事は、スマホを取り出し、写真と動画を見る事だった。昨晩のケーラとのやり取りで、自分の気持ちを確認したくなったのである。
「……」なので、見ているのは、懐かしの恋人である。
「ハハ、そういやこんな事あったな」アクーの洞窟の近くの海岸ではしゃいでいる、今は白猫になった真白を見て、つい笑顔になる健人。他にも、二人で撮った写真をフリックしながら一枚一枚じっくり、忘れていた何かを思い出すように眺める。
「……でも」その後、何かを続けて言おうとしてふと止めた。口に出して言わないほうが良いような気がしたのだ。
「充電は……、48%か。もう余り見ないほうがいいかもな」当然ながらこの世界に充電器はない。そう呟いて、出かける準備をした。今日はこれから王城に向かい、メルギドと話をする予定である。他にも、グオール将軍とも会う予定だ。
※※※
「……はあ」ため息をつくケーラ。
「……そんなに私と一緒にいるのが嫌なのか?」ちょっと不機嫌なナリヤ。
「そんな訳ない。ないけど。けど……」慌ててナリヤの言葉を否定しつつも、どうもまだ後ろ髪を引かれる様子のケーラ。
「ねえ、姉さん。どうしよう。ボク、タケト病だ」ふざけた事を言っているが、ケーラは本気だ。うるうる涙目で訴えかけるようにナリヤにズズイと顔を近づける。
「そ、そうだな」そんな真剣な眼差しの妹をグイと押し返すナリヤ。
「今までもずっと、タケトが好きだったけど、昨晩の事があってから、もう頭の中タケトしかいない」そしてハッと気づく。なるほど、リリアムもこんな感じなのか、と。
「まあ、その病気は私には治せないが、とにかく今日は大事な話をしないといけないんだぞ?」昨晩何があったのかは詳しくは聞くつもりもないナリヤ。どちらにせよ、その病気を治癒出来るのは、この世で一人しかいないだろう、と心の中で呆れながら。
そして、分かってるよ、と言いながらも、時折宿の方を名残惜しそうに振り返るケーラ。
そんなケーラを見て、ため息をつくナリヤ。そして姉妹でそんなやり取りをしていると、大通りのど真ん中を突っ走る大きな人影が向こうからやってきた。大通りは馬車専用のはずなのに。
「ケーラあああ!!!!」そしてその人影は、物凄い大きな声でケーラの名を叫んだ。
「げ。なんであいつが」そしてその人物が誰か分かったようで、びっくりした顔をするケーラ。
「あー、あいつか」あちゃー、と言った顔をするナリヤ。健人への想いにほだされている今のケーラには、会わない方がいい人物だ。
そして近くまで走ってやってきた体のゴツいその男は、いきなりケーラに抱きつこうと飛びついた。が、それをヒラリと躱すケーラ。ズドーンと大きな音を立てて地面にうつ伏せでぶつかる男。背中から羽が生えているので魔族なのは分かる。
「お、おい! 避けんなよ」顔を地面にぶつけたらしく、鼻が真っ赤になったままケーラを見上げるゴツい体の魔族の男。身長190cmはあろうかという巨体に、額の両端から黒く大きな角が出ている。
「……」それに返事せず腕を組んで見下ろすケーラ。
「俺だよ! キロットだよ!」必死な形相の、キロットと言う魔族の男がケーラに向かって叫ぶ。
「分かってるよ。なんでメディーにいるの?」めんどくさそうに答えるケーラ。
「俺ここに住んでるんだよ。なあ、ケーラも俺ん家来いよ」鼻っ柱を摩りつつ起き上がり、ケーラに手を差し伸べる、キロットと名乗った魔族の男。
「行かないよ」ツーンとした態度で腕を組んだままそっぽを向くケーラ。
「キロット。久しぶりだな」そこで傍にいたナリヤが、とりあえず挨拶をした。
「あ。ナリヤ様。お久しぶりです」隣にいたのに、どうやらケーラしか目に入っていなかったようで、声をかけられ気づいた様子のキロット。
「しかし、いつからメディーにいるのだ?」
「十五日くらい前? です」キロットはナリヤと話したいわけではないが、魔王の娘なのでぞんざいにはできない。だから一応答えるが、キロットはケーラと話したい様子。そしてケーラにはため口。
「なあケーラ。こうやって出会う事が出来たんだ。ケーラは俺の許嫁なんだから、家に来るくらい気を遣わなくていいんだぞ」そして早々にナリヤとの会話を打ち切って、改めてケーラに話しかけるキロット。ケーラが断ったのは、キロットに気を遣った、と勘違いしているようである。
「は? 許嫁? 誰が?」びっくりした顔で聞き返すケーラ。
「え? 何言ってんだケーラ。約束したじゃねぇか」キロットも、はあ? てな顔。
「そんな約束してないんだけど?」
「え? いやいやケーラ、何言ってんだよ?」
「あー、盛り上がっているところ悪いが、ケーラは無理だ、キロット」はあ~、とため息をつきながら、頭を掻きながら間に入るナリヤ。
「……どういう意味ですか?」やや殺気を含んだ低い声で返事するキロット。それを見たケーラがポカーンとキロットの頭を叩く。
「いって! 何すんだよ!」
「何すんだよ、じゃない! 姉さんに殺気向けんな!」そしてもう一回ポカーンする。
「とにかく、ナリヤ姉さんの言う通り、ボクはタケトのものなんだから」そう言ってケーラはフン、と腕を組んでキロットから顔を背ける。
「……タケト? 誰だそりゃ。とにかくケーラ。悪い冗談はやめてくれ。せっかく久々に再会出来て俺もテンション上がってんだからさぁ」
「冗談じゃないよ」「そうだな。正直、私も冗談であってほしいと、どこかで思っているがな」
姉さんどういう事だよ! と姉妹で仲良く言い合いしている最中、どこの誰だか知らない男の物だと公言するケーラに、ショックを隠せない様子のキロット。信じられないと言った様子でわなわなと震えている。
「あのねえ。あんた昔からずっと勘違いしたまんまなんだよ。ボクはあんたに一度も恋愛感情持った事ないのに、一方的に迫ってきてたの、ほんっとウザかったんだからね」そんなキロットにツーンとしてケーラが冷たく言い放つ。
「え、えええ? ケーラ。何言ってんの?」ケーラの言葉に呆気にとられ、狼狽えるキロット。
「あんたは魔族の中でも強くて幹部候補だったから、ボクも控えめにしてただけなのに。パパに無理言って認めて貰ってたみたいだけど、ボクは最初からあんたには一切興味なかったんだから」そしてケーラからの最終宣告。ええ~、と情けない顔をするキロット。ちょっと泣いてるっぽい。
「い、いやでも……」
「タケトは私も知っている。そしてこの二人が相当仲睦まじいのもこの目で見ている。二人の間に割って入るのは不可能だと思うぞ」更にナリヤからの追撃。お姉さんからも最終通告を喰らい、この世の終わりのような絶望した顔をするキロット。
三人がそんなやり取りをしている間、もう一人、キロットのやってきた方向から誰かがやってきた。
「はあ、はあ。やっと追いついた……。ああ、いきなり走り出したのはケーラ様を見つけたからか」息を切らせキロットを追いかけてきた人物も、どうやら魔族のようだ。キロットと同じく黒く大きな角が額の両端から二本伸びているが、銀縁のメガネを掛け、身長は170cm程度の、筋骨隆々なキロットとは違い、細身のイケメン。黒いローブのようなものを着ている。
「グンターも久々だね。今更(様)付けなんて要らないし丁寧な話し方しなくていいよ。昔のままでいいよ」そんな眼鏡イケメン魔族をグンターと呼び挨拶するケーラ。
そもそもキロットは最初からケーラを呼び捨てで呼んでいた。それはキロットが様付けして呼ぶと、距離感を感じるから嫌だという彼なりの拘りと、魔王に一応認められたと言う事で、キロットが勝手に呼び捨てにしていただけなのだが。そしてそれを気にしていないケーラだから許されているだけである。そしてナリヤはキロットの対象外なので、魔王の娘として敬語を使っているのである。
「ああ。久しぶりだなケーラ。それと……ナリヤ様」やや顔を赤らめながら、伏目がちにナリヤに挨拶するグンター。
「ハハハ。グンター久々だな。私にも(様)付けはいい。キロットもな」ポンポンとグンターの肩を叩くナリヤ。そして益々顔を赤くするグンター。
「な、なあケーラ。二番目とか、どうよ?」悔しいが我慢して、百歩譲ってタケトという男が一番手だとしても、二番手でもいいから、ケーラとそういう仲になれるなら、それで妥協してもいい。そう思ったキロット。
「要らない」だが、即答で否定したケーラ。彼女は健人以外考えられないので当然の回答だ。めっさ期待していたキロットがケーラの即答に、そんなあ~、とまるで地獄にでも行ったかのような、絶望する叫びを上げながら、四つん這いになってがっくり項垂れた。





