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越前的な? 

いつもお読み頂き有難う御座いますm(__)m

ブックマークまでして頂いてお待ち頂いている方々、感謝ですm(__)m

『剣鬼ヴァロックの地球転移』と言う、この小説のサブストーリー不定期で更新しています^^

宜しければ読んでみてくださいm(__)m 

https://ncode.syosetu.com/n3797fc/

「魔薬のせいで妬みの感情が膨れ上がっていただけだから、今は大丈夫よ……、いや、それは言い訳ね。やっぱり私はあんたが嫌いなのよ」涙の溜まった瞳でへたり込んだままジロリとシーナを見上げ、本音を答えるソフィア。


「アハハ。そうね。私もあんたがいけ好かないわあ」そして唐突に頬に手の甲を当て、甲高い笑い声をあげるシーナ。


「でも、陛下が選んだのはソフィア、あんただったのよ? それにお互い陛下を取り合ったのは若い頃の話。今はお互い歳を取ったんだし、そんな気持ち、下らないわよね?」


「ええそうね。下らないわ。本当、下らない」そう呟きながら、既に涙の跡がなくなった瞳でシーナを見つめ、おもむろにドレスのスカートをパンパンとはたいて立ち上がるソフィア。


「全く。本当バカな事をしたわ。洗脳されていたとは言えね」ふう、とため息をつくソフィア。


「ねえ陛下。処罰は必要ないんじゃないかしら? だってもう、ご覧の通り毒気が抜けた顔してるわ。陛下さえ良ければだけど」


「うむ、そうだな」シーナの言葉に、何だか嬉しそうに微笑むメルギド。


 そして何だかこの三人のやり取りが、とても仲のいい友達同士みたいな雰囲気になって、呆気にとられる健人とケーラ。リリアムやライリー、そして他の者達は、この三人の関係を知っているので、寧ろ安堵している様子ではあるが。


 メルギド、ソフィア、そしてシーナは、過去に色々問題があったとはいえ旧知の仲だ。周りが思っている以上にお互いを理解し合っているのである。なのでメルギドは、ソフィアの処遇について、シーナを利用して穏便に済ませようとしたのだ。そしてメルギドのそんな策略? を理解したシーナが、わざとぞんざいにソフィアを呼び捨てにし、気軽に話せる雰囲気を作ったのである。更にシーナとメルギドの事をよく分かっているソフィアは、彼らのその策略に、心の中で感謝しながら乗った、という訳である。


 ソフィアの罪は、メルギドとライリーに、メイが魔薬を使って洗脳していた事を知っていたにも関わらず放置していた事。そして神殿妃シーナを蹴落とし、自分がその地位に成り上がりたいドノヴァンの策略に、直接的ではないにせよ協力していた事。この二点である。


 どちらも、ソフィア自身が洗脳されていた事が原因に違いないのだが、シーナに対する嫉妬心が再燃した事が原因である事も間違いではない。


「では、シーナとしては、ソフィアに対して罰を必要とはせんのだな?」


「ええ。だって何もされていませんもの。しかも主犯はドノヴァンでしょう? 彼がリリアム王女と結婚するための画策の手伝いを、ソフィアがしていただけでしょう? それだって結局、魔薬とやらのせいなのだし」因みに洗脳についてシーナは、健人達がドノヴァンデーモンと戦っている最中に、ビーナルから説明を受けている。


「……ありがとう、とだけ言っておくわ」ソフィアの小さな謝礼の言葉に、気にしないで、と手をひらひらさせるシーナ。


「だが、城内の兵士達もこの騒動は知っておる。なので謹慎という事で、暫く隔離の部屋にいて貰うぞ」実はこれはメルギドの気遣いである。魔物となったドノヴァンによって部屋が荒らされ、片付けが必要な期間、隔離の部屋にいて貰う、という事なのである。それであれば、罰として隔離の部屋に閉じ込めた、という体裁に出来るし、そして騒動の本質を知らない兵士達は、一時的な部屋の移動だと思うだろう。


「……その程度で宜しいのですか? 私は陛下と息子と娘を裏切っていたようなものなのに。しかもドノヴァンに協力してシーナまでも」


「そもそも洗脳されていたのだから仕方なかろう。ソフィアのせいだとは我も思っておらん。そしてシーナの件は、もう良いと本人が言っておるではないか」


「それに、お前を厳罰に処したとしたら、メイはもっと重い罪を科せないといけなくなるが?」一呼吸置いて、そう伝えるメルギド。


 そう言われてハッと気づいたソフィア。ふとメイに目をやると、申し訳なさそうに小さく頭を下げた。メルギドの言う通りである。娘を人質に取られていたとは言え、魔薬に侵されていないにも関わらず、実行犯であるメイこそが、一番重い罪を科せられないといけないのだが、これまでのメイの働きを考慮して、メルギドの恩情で赦して貰っている。これでもし、ソフィアに厳罰が下れば、メイも当然罰を受けないといけなくなる。


 全て、メルギドの計算の上での裁きなのである。


「陛下……申し訳、申し訳ありません」またも、うっうっ、と再びへたり込み、嗚咽するソフィア。そんな母親に二人の息子と娘が寄り添った。


「ライリー。リリアム。ごめんなさい……。本当に、ごめんなさい」泣きながら謝罪するソフィア。


「いいのです。お母様も洗脳されていたのですから」そんなソフィアに、優しく寄り添うライリー。


「そうですわ。気に病む事はないのです」そしてリリアムも同じく気遣いながら、ライリーと共に母親の傍に寄り添った。そんな三人の様子を、蓄えた顎髭を触りつつ微笑みながら見ているメルギド。そしてシーナも何処か安堵した様子で三人を見つめている。


 うーんまるで大岡裁きだなあ、と、その様子をずっと黙って傍から見ながら、メルギドに感心していた健人。当初魔薬で洗脳され、横暴な口の聞き方をしていた時とは偉い違いだ、実は王様は凄く良く出来た人なんだなあ、と。


「そして、タケトとケーラ、更にわが娘リリアム。デーモンと言う強敵をよくぞ倒してくれたな」やや声を張りながら、今度はメルギドからの最大の賛辞が、健人達三人に贈られた。


 そして声をかけられ、ケーラが片膝をついて恭しく頭を下げた。それに習り同じく片膝をつき頭を下げる健人と、リリアムは立ち上がり右手を胸に当て頭を下げた。良い良い、と姿勢を崩すよう促すメルギド。


「しかし、さすがに今日は色々ありすぎたな」健人達が立ち上がったのを確認してから、ふうー、と深い息を吐きつつ、つい独り言を呟いてしまうメルギド。そして玉座に深く座リ直した。王城内でのこんな大きなトラブルは、メルギドが王になってからは初めての事である。


「陛下。一介の冒険者の俺でよければ、お話したい事があるのですが」洗脳が解けてからのメルギドは、物腰が柔らかく、身分に関係なく、相手を理解してくれようとする人物のようだ、そう確信した健人は、緊張しながらも思い切って声を掛けてみた。


「……真剣な顔だな。分かった。何やら大事な話なのだな? 良いだろう、話を聞こう。我とライリーの洗脳を暴き、デーモンを倒した功労者だからな。だが、今日は勘弁して貰えないか? 色々あって疲れたのだ。良ければ明日、改めて時間を取ろうと思うが」


「はい、それで問題ありません。ありがとうございます。お時間を取らせて申し訳ありません」恭しく片膝をつき、頭を下げる健人。どうやら王族に対する儀礼にもなれてきた模様。ここでもフリーター時代、バイトを掛け持ちしていたがための器用さが発揮されたようである。


「気にするな。この度の活躍を考えれば、話をする時間を取るくらい造作もない」手をひらひらさせ、労うメルギド。そんなメルギドの気遣いに、改めて感謝して、健人は再度頭を下げた。


『タケト。本当にあの話をするのね』『ああ。けじめだからな』ひょいと白猫を抱きあげ、念話で健人に声を掛けるリリアム。


『でも、改めてその話をするのかと思うと、今更ながら緊張してきたわ』


 俺もだよ、と念話で返しながらリリアムに微笑む健人。そんな健人を、頬を赤らめて少し恥ずかしそうに微笑み返すリリアム。


「ウオッホン! もうそろそろ日が暮れるようですな」どうやらビーナルは健人とリリアムの様子に気づいた様子。わざとらしい咳払いで雰囲気を誤魔化したようである。そんなビーナルを苦笑いしながら見ているメイ。グオールは不思議そうに首を傾げているが。


「お似合いだと思いますよ」「喧しい。そういう問題ではないわ」コソコソ話すメイとビーナル。ちょっと楽しそうな感じもしないでもない。


「リリアム。今日は我々と共にいてくれるのだろう?」そんな二人の様子には気づいていないメルギドが、リリアムに声を掛けた。


『今日は家族水入らずでゆっくりしたらどうだ?』『そうね。ここに戻ってきたの久々だし』健人と離れるのは少し寂しく思うが、久々の家族との団欒も大事だと思ったリリアム。メディーから離れて約一年位は経っているのだし、母親も気になる。


「分かりましたわ、お父様。積もる話も沢山ありますし」ニコっとメルギドに微笑むリリアム。


「そうか。良かった良かった。我も久々に色々話が聞きたいからな。アイラとゲイルの事もな」嬉しそうに笑うメルギドに、リリアムも微笑み返した。


「では、タケトとケーラ。また明日会おう。今日は大義であった。グオールとビーナル、メイももう良い。シーナもご足労だった」


 メルギドの言葉に、その場にいた全員が深く頭を下げた。それを確認したメルギドは、玉座から立ち上がり、赤いガウンを翻して、玉座の後ろにある階段を降りていった。


 ※※※


「色々大変だったな」城門の前にビーナルとメイが、健人とケーラを送り出すため来ていた。グオールとファンダルは、今回の件の報告をまとめるため、資料をまとめているようで、来られなかったのである。シーナは早速、ドノヴァンの所業について確認する必要があるのと、隷属の腕輪と魔薬の件を調べる必要があるので、早々に王城から総神殿に帰っていた。


「わざわざここまで来て頂いてすみません」「ありがとうございます」申し訳無さそうに頭を下げる健人とケーラ。


「気にするな。お前達のおかげで色々解決したのだから。私に対する色々な事も不問に致すぞ」フハハと笑うビーナル。そう言えばこの人の笑う顔見るの初めてだなあ、とふと思った健人。


「ありがとうございます」そう思いながら頭を下げる健人。


「いろいろ面倒かけてごめんなさいね」そして今度はメイが二人に頭を下げた。


「いえいえ。リリアム王女の事、宜しくお願いします」


「普段は呼び捨てなんでしょ?」フフ、とちょっと悪そうに微笑みながら耳打ちをするメイ。


「え? いや、まあ……」苦笑いするしか無い健人。呼び捨て? どうやら耳打ちが聞こえた模様。ビーナルがギロリと健人を睨む。


 気まずそうな健人が頭を掻いていると、そこで兵士が、預けていた馬を引き連れてやって来た。そして再度ビーナル達にお礼を言い、馬に跨る健人とケーラ。


「また明日参ります」


 健人はビーナルにそう伝えて、城門の方にケーラと共に馬で駆けていった。




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